修学旅行と社会見学
村の特産は異世界です
・修学旅行と社会見学
夕食は、ホテルのメインダイニング……で良いんですよね。とてもシックなレストランでいただきました。うん、フレンチのフルコース。沢山ナイフとフォークが並んでいるんだけど、どれから使えば良いの? そっか、外から使っていけば良いのね。だそうよフローリアンさん、女神様でもマナーはわからないよね。
それでお母さんはコースじゃ無いんだ。そっかぁ、コースだと量が多いんだね。だからアラカルトでスープとサラダ、それにエビフライ……それってエビフライなの。
「ここのエビフライは、開いて揚げてあるのが特徴なのよ」
へえ~、だから見覚えのある形をしていないんだ。でも、それってエビを大きく見せるためじゃないの? 違う、こう言うスタイルなんだね。
それで料理は美味しかったかって? 勿論、美味しいに決まってるじゃ無い……ごめんなさい、少し見栄を張ってしまいました。かすみ姉さんは美味しいって喜んでいたけど、私にはちょっと微妙だったかな。その、お肉は美味しかったと思うのよ。それにデザートは本当に美味しいと思えたし。でも、それ以外、例えばクリームスープとか、まったりとしたお味で、うん、よくわからなかったのよ。
それで、フローリアン様は、美味しかった? そう、美味しいと思えたのね。ただ問題は、何を食べても美味しく思えてしまうこと。うんわかる。あっちの料理って、何を食べてもまずかったもの。
夕食が終わって、少しだけお散歩タイムになりました。でも、明るいときと違って、夜の奈良って少し不気味だと思う。女神様がいるんだから、危ないことが無いのはわかっているのよ。流石に集落よりは灯りがあるけど、それでもやっぱり街の中は暗かったわ。うん、お店も開いていないし。
でも、猿沢の池だっけ。回りに行灯……で良いんだよね。行灯が点されていて綺麗だと思った。後は三条通、少しだけどお店も開いていたわね。鹿ちゃんは……夜はねぐらに帰っているんだって。
少しお散歩をしてホテルに戻って、後は楽しいおしゃべりタイム。そこでお友達から言われた、高校資格認定と受験の話をしたわけ。そこでフローリアン様に、女神の恩恵を貰おうと思ったの。だって、私にはその権利があると思うのよ。でもお母さんと姉さんに、ズルはいけないと叱られてしまいました。やる気になってるお母さんと姉さん、ちょっと怖いと思ってしまいました。
お話が終わったら、お風呂に入ってお休みの時間。ベッドはふかふかで良かったんだけど。お風呂は……うん、あっちの世界よりはずっと良かったと思うわよ。でも、集落で贅沢を覚えてしまったの。広い浴槽と洗い場の無いお風呂、どうすればいいのかお母さんに聞いてしまったわ。そっかぁ、基本はシャワーなんだね。
取りあえず歩き回ったお陰で、夜はぐっすり眠れました。悪い夢を見なくなったのは、それだけ落ち着けたからと思いたい。と思ったんだけど、お母さんが手を握ってくれていました。ありがとうお母さん、もうちょっとだけ甘えさせてね。
朝食は洋定食を頂きました。うん、卵料理……エッグベネディトって言うのね。よくわからなかったけど美味しかったわよ。でも、一番美味しかったのはカットフルーツ。パンも美味しかったんだけどね。
朝食を終えて一休みしたら、ホテルをチェックアウトしました。ここから近鉄奈良駅までは……タクシーを使うんだ。フローリアンさんに頼めば、駅まで繋げてくれるよね。若い子に楽を覚えさせてはいけない……タクシーだって『楽』だと思うんだけどな。あっ、かすみ姉さん鹿ちゃんのクリップありがとうございます。使い道はこれから考えるけど、可愛くて良いと思いました。
近鉄奈良駅から京都まで、ちょっと綺麗な特急列車を使いました。あをによしって言うんだ。茶色い電車が可愛らしいと思いました。中は、なんか豪華だし。
30分ちょっとの旅行で、無事京都駅に着きました。椅子が外を向いていたんだけど、あれって意味があったのかな? うん、見えた景色って『田舎』しかなかったもの。まあ京都に近付いたところで、それなりにお寺も見えたんだけどね。
でも近鉄奈良駅と京都駅って、世界が全然違いました。もうね、建物の大きさが全然違うんだもの。大都会と地方都市って感じ? そうか、間違っていないんだ。だからお父さんも、京都を後回しにしたのね。
それで、これからはどうするの? なるほど、かすみ姉さんがガイドしてくれるんだ。かすみ姉さん、頻繁に京都に出張しているもんね。それで、これからどこへ? なんで、にやりと笑ってくれるのかしら。
最初の目的地は、やはりと言えば良いのか北野天満宮でした。いえ、世界遺産になっているのは知ってるわよ。でも、北野天満宮が最初って、昨日の話が影響しているよね。なるほど、だから次は清水寺になるのね。一応その前に金閣には行くんだ……話を聞いていると、これぞ修学旅行って感じがするわ。
北野天満宮に奉られているのは、菅原道真さんなんですね。菅原さんって、学問の神様なの? 中学の社会科教科書に出ているはず。う~ん、出ていたかなぁ。高校の日本史……遣唐使あたりの話なの? ヒューヒューって言っても良いかな。
本殿で受験成功のご祈祷をして貰ったんだけど……それってフローリアンさんの方が御利益があると思うんだ。ほら、ちょちょちょいって私の頭を良くしてくれるとか。なにフローリアンさん、女神にも出来ないことが有るって言うのは。ねえ、昨日と言っていることが違ってない?
近くのお店でお菓子を食べてから、次はタクシーで金閣寺……鹿苑寺金閣が正式名称。そこって、拘るところなのかな。
それは良いけど、金閣寺は誰が作ったのかって?
うん、大工さん
ごめんなさい。だから、日本史は勉強していないのよ。足利義満って、室町時代の将軍様。昭和に燃えている、原因は放火なんだ。その放火を題材にした文学は何? ねえ、私が知らないのをわかってて聞いてるよね。
有名な作品、三島由紀夫の金閣寺。その三島由紀夫って人自体知らないんだけど?
ところで、京都には観光できたんだよね。さっきから、歴史の質問ばかりされてる気がするけど。文系の大学に行くのなら、これぐらいは常識で覚えていなくちゃいけない。そうですか、これぐらいは常識なんですね……
ねえ、理系に志望を変えて良いかしら。あの大学って、理系もあったよね。しかも偏差値、理系の方が低かったと思うんだ。ねえ、かすみ姉さん。どうして、可哀想な子を見る目をしてくれるの。可哀想な子を見たからって……どうしてそこまで言い切ってくれるのかな? だったら、理系の質問をしても良いか、ですか。してくれても良いけど、答えられるとは思わないでね。と言うか、絶対に無理だから。
だから、どうして3人顔を寄せ合って話をしてくれるの? フローリアンさん、どうして首を横に振ってくれるのかな。女神の恩恵でも、無理なことは沢山有る。これは、その出来ないことになっていると言うのね。
私の頭って、女神様がさじを投げるほどのものなの?
その後タクシーに乗って、清水寺に遊びに来ました。先に産寧坂を通るのは、何か意味があるのかしら。あっちに、清水坂って参道があるよね。
「フローリアンさん、この坂で転ぶと三年以内に死ぬて言われているんですよ」
「それは、呪いのようなものですか?」
「異世界があるぐらいだから、呪いがあってもいいのかなって」
ああ、だから先にこっちを通ったのね。確かに、異世界があるぐらいだし、呪いがあっても不思議じゃ無いよね。でも、フローリアン様が残念そうな顔をしているわ。
「申し訳ありませんが、呪いに関する物は掛かっていないと思います。いえ、私が見る限りでは、ですよ。ですから、本当に無いとは言いませんから」
「ううん、普通に迷信って言われてるから大丈夫。ひょっとしてと思ったんだけどね、やっぱりそんなことは無かったとわかっただけで十分よ」
「気にされるのなら、女神の呪いを掛けても良いのですけど」
女神の呪いって、恩恵とは違うことなの。そう、悪い方だから『呪い』なのね。ただやっていることは変わらない。
「なるほど、腐敗と発酵みたいな関係のことね」
かすみ姉さん、どうして理系の話に持って行ってくれるのかな。理系と言う程では無い。腐敗も発酵も、両方とも菌が関係している。人の役に立つのが発酵で、役に立たないのが腐敗と言うんだ。
「役に立たないとは言ったけど、腐らないと色々と困るのも確かなんだけどね」
うん、全然わかんない。それで、清水寺なんだけど……うん、清水の舞台から飛び降りると言うのは聞いたことがあるわ。飛び降り自殺の名所ってことだよね? ねえ、どうして可哀想な子を見る目で見てくれるのかしら?
「思い切ったことをすることの例えなんだけど……理系の私でも知ってることよ」
それは育ってきた時代の問題で……実年齢で6歳差。言う程の年齢差は無い……目が怖いって言うのは言っては駄目なことかしら。
それはそれとして、はい、逃げました。清水の舞台からの景色も、なかなか良いものですね。それで、次はどちらに、音羽の滝ですか。滝って……雨樋から水が流れてるだけに見えるのは気のせい? そう、罰当たりなんですね。
「3筋の滝で願掛けするのよ。左から学業、恋愛、健康の願いが叶うと言われているわ。ただし、飲んで良いのは一つの滝だけ。一口だけ飲み干すことになっているわ」
それでかすみ姉さんは、どの水を飲むの? 真ん中、やっぱり真ん中か。一応かすみ姉さん、独身なんだものね。ちなみに私は……どうして、みんなでプレッシャーを掛けてくれるのかな。こう見えても、私だって女の子なんだよ、恋愛に憧れたって……はい、左側を飲むことにします。学業成就って、とっても大切なことだものね。
それでフローリアン様も願掛けするんだ。それで、どれを飲むのかな? 流石に長寿はシャレにならないと思うけど……真ん中、真ん中なんだ。元の世界に帰れない以上、この世界で生きていくことを考えなくてはいけない。それで、具体的な当てはあるのかしら? あれっ、かすみ姉さんが怖い目をしてる。
今日の宿ポーションホテルは、清水寺からすぐの所にありました。このホテル、有名な美食ブランドが手がけたホテルなんだって。だから、デザートがもの凄く美味しいんだって。なにこの部屋、凄く可愛いんだけど。それに、お菓子とかが沢山置いてあるんだけど。グルメバーって言うの? これ、全部食べて良いんだぁ。
でも不思議なんだけど、このホテルを予約したのはかすみ姉さんじゃ無いよね。どうしてお父さん、こんなホテルを知っていたんだろう。
ホテルに荷物を置いてから、近くにある錦市場へとお散歩に行きました。うん、奈良に比べて思いっきり人が沢山いる。しかもインバウンド? 外国人観光客の人が沢山いたわ。そっかぁ、母さんには落ち着かない環境なのね。私は……嫌いじゃ無いけどもう少し落ち着いていた方が良いかな。うん、何か疲れてしまいそうな気がして。
でも、沢山お店があって楽しいと思う。集落にいると、こういった楽しみって無いものね。美味しそうなお菓子もあるけど……部屋に沢山有るから遠慮した方が良さそうね。でも楽しいなぁ……うん、だから今は勉強のことは言わないで、帰ったら本気を出すから。
はい、いつもの小谷静香です。地元の観光協会さんにもご協力頂いたので、座敷にはこれでもかと言う程海の幸が並んでいます。でもねぇ、タコのオブジェって宴会に必要? なるほど、始まる前に写真を撮りたい訳ね。それを、観光協会のホームページの載せるんだ。立木さんに聞いてるから、それぐらいは協力させて貰うけど……でもね、ものには限度と言うものがあると思うんだ。あのね、まだ私は花も恥じらう独身女性なのよ。それに、芸人みたいに色物じゃ無いんだからね。だから、記念写真にタコのかぶり物はないと思うんだ。
なんです諸星さん、政治家たるもの汚れ役を買って出なくてはいけない。かぶり物上等って言うんですか? だったら諸星さん、タコさん被って貰えます?
「まっかせなぁさぁ~い」
いや、確かに被ってとは言ったけどさ。どうして、ノリノリでタコさんを被ってくれるのかな。なぜ立木さんまでかぶり物をしてくれます? オルティアさん、あなたが最後の砦なんです。ですから……ああっ、嬉しそうにかぶり物をしてくれたよ。ええっとセレスさんとクロアさんもかぶり物をするんですか?
ここまで来たら、私がしないわけにはいかないと思いませんか? 今更どうでもいい、最初に断ったのがすべてだと言うのですか?
「シズカよ、それを後の祭りと言うのだぞ」
だからラズライティシア様、神話の時代から生きてきた大魔法使いの威厳はどこに? だからインテグラさんも張り合ってかぶり物をしないでくださいよ。もしもしコロナ様、仮にもあなたは王妃様ですよね。流石にタコのかぶり物は問題だと思います。
「国王がかぶり物をしているのに、なぜ私がしてはいけないのでしょう?」
それが正論と言うのは認めますけど、認めますけど本当にそれでいいんですか? それから観光協会の皆さん、どうしてそんなにかぶり物があるんです? 念のため持ってきた……そんなところに念を入れなくてもいいと思うんです。
ああっ、教授連までかぶり物を始めてくれたよ。魔王様、なぜ魔王様までかぶり物を? そうですか、空気を読んだのですね。魔王たるお方が、空気を読むのは間違っていると思いませんか? ちっとも思わない……そうですか、私は何を被れば良いのでしょう? もしもし、全身かぶり物って……たこみちゃん。いえ、名前を聞いたわけじゃ無いんですけど。それだと、私である必要って有りませんよね?
なぜか全身かぶり物の私が中央で、全員の記念写真を撮ることになりました。これで、私は欠席扱いと言うことになるわけです。いえ、たこみちゃんはたこみちゃんです。中の人なんて存在しないんです! ですから、顔を出して写真を撮りましょうと言わないように。
始まり方に味噌が付きました……愛知県だけに。誰がうまいことを言えと言ったっ! あっ、自分で言ったのか。まあ、それはそれとして。
大宴会の開始は、上里集落代表である諸星さんの挨拶です。諸星さん、宴会挨拶は市会議員の必修科目とか言っていましたよね。今は立場が違う、IMO研究所の所長だと言うのですね。別にそれでも構いませんし、ブーランジェリー王国の国王様でも構いませんよ。ほらほら、司会の立木さんが手招きしていますよ。
「皆様お忙しい中、本日はIMO研究所視察旅行大宴会にご参加頂き感謝いたします。IMO研究所は、発足してからまだ半年ばかりの赤子のような研究所です。その研究所の宴会に、世界的権威の方まで参加して頂けるまでになりました。しかも異世界からのお客さんも加わって頂いております。この世界と異世界を繋ぐ架け橋として、IMO研究所はますます発展して参る所存です。では、皆様のご健康とIMO研究所の発展を祈念して乾杯を行います。皆様、お酒の用意は宜しいでしょうか……魔王様たち、普通一升瓶は乾杯に使いません。物足りないかも知れませんが、どんぶり程度にしておいてください。それからビゴ、ビスタ、アクアの3人はアルコール禁止です。お茶、ジュース、サイダーのどれでも構わないので……アクア、それってビールだよね? ビールだけどノンアル……白船君、君の責任においてちゃんと管理するように。こらエクシブ、乾杯前にビールを空けるな。だから、乾杯にリハーサルは無いんだよっ」
ああ、諸星さんが振り回されてる。うん、乾杯なんてしようと言うのが間違っているんだよね。このメンツが集まって、統制が取れると思う方が間違っているんだよ。うん、諸星さんって細かすぎるって菅谷総理にも言われてるし……
「ぜいぜいっ、とにかく健康と発展を願って乾杯っ!」
まあ、最後は適当になるわな。それはそれとして、かんぱぁ~い。そう言うことなので、私の所に一升瓶をお願いします。ねのひの純米大吟醸……ええっと、かの有名なゲーム会社の創業者の実家のお酒。へぇへぇへぇ……じゃあそれを小どんぶりでいただきます。飲む量が半端ない、ですか。いえ、最近どうも鍛えられたようなんです。
タコシャブに唐揚げ、お刺身もあるんですね。いやぁ、なんと言えば良いのか、噛めば噛むほど味が出てきますね。ええ、お酒が進んで困ってしまいます。
車エビの塩焼き……躍り食いもあるんですね。魔王様、車エビなら頭から生きているのを丸かぶりしていいからねぇ。伊勢エビは……多分固いと思うから無理しないように。大きな貝……大アサリって言うんですね。大アサリの炭火焼きって絶品じゃ無いですかっ!
いきなり小谷さんが全開になっていますね。しかし、あの小さな体のどこにお酒が消えていくのでしょうか。もしかして、おかしな恩恵とか持っていませんよね。
それはそれとして、本日はようこそお越しくださいました。いえ、畏まらなくても良いのですよ。今日はビゴさんはお客様ですからね。それからビスタ様、このような酒臭い集まりに出席いただき感謝いたします。これは悪い大人の見本ですので、あまり参考になさらないようにしてください。それからもう一つ、コロナ様とセリカ様の醜態は見ないようにしてあげてください。
ところでビゴさん、ビゴさんはまだ正式に婚姻をされていなかったかと。正室よりも先に、側室を迎えるのが一般的なのでしょうか。特に、そのような決まりはないのですか。今回招待されて、誰も年齢的に酒を飲めないのを問題だと考えたのですか。申し訳ありません、どうやら気を使わせてしまったようですね。
ところでピアッツァさんなのですが、ブレーキ……つまり、飲み過ぎないように抑えた方がよろしくありませんか?
「私の名代として、少し力が入りすぎているようです」
飲めるのが一人だからと言うことですか。ですが、お姉様も参加されておいでですよね。あまり気にされない方が……もう手遅れですね。ところで一つ伺いますが、ピアッツァさんは脱ぎ癖があるのですか?
「こちらの作法を知らないので、姉上に教習本を送っていただきました。その教習本で、姫騎士たるものの作法を学んだようです」
姫騎士の作法……ですか。どうして、姫騎士の作法と魔王様が関係するのですか? しかも、開始早々少しばかりいかがわしい格好になっている気がします。
「姫騎士と言うものは、魔王の配下に捕まり『くっ、殺せ』と言うのが定番だと伺っています」
セリカさんが、そのような本を送ったのですか。ではビゴさんに一つ役割を差し上げます。良いですか、これ以上過激な状態になる前に、勇者としてピアッツァさんを救い出してください。魔王様の方は、私から話を通しておきますので。
いいですね、不健全に見えても健全な宴会なんですからね。
と言うことで魔王様……なにかノっていませんか? なかなかそそる体をしている。自分に対して差し出された貢ぎ物だろう……
はっきり言っておきますが、彼女は今日の主賓ビゴ様の側室になられる方です。粗相をされたら、シアとインテグラをけしかけますからね。ここで魔王様に求められるのは、この場に相応しい即興芝居をすることです。魔王城公開に向けて、台詞の訓練をしていますよね。彼女を美味しくいただく……性的にと言う意味ではありませんからね。
「ふははははっ、姫騎士と言う以上、騎士である以前に女であるのは間違いあるまい。楽に死ねるなどと努々思うでは無いぞ。まずは余を存分に楽しませて見せよ。はははははは」
真に迫ってますね。なんですエクシブ君、そうですか、これまでで一番の演技と言うのですね。もしかして魔王様、素でやっていませんかね。
「ま、魔王などに負けて身を穢されるぐらいなら……くっ、殺せ!」
なにか、異様な盛り上がりをしていますね。なんです白船君、どうして涙なんか流しているんです。まさかリアルで『くっ殺』を見られるとは思っていなかった。いやいや、これは寸劇と言う奴ですからね。そうですか、出演者が本物だと言うのですね。
それから魔王様、素で感動とかしていませんか? 意外に気持ちが良い、もっと前からこうすれば良かった……いやいや、これはあくまで物語の中のお話ですからね。女神様で試してみれば良かった……命がけだったフローリアンさんに同情なんか感じてしまいますよ。
なんだ、この盛り上がりは。やるな立木さん。流石は年の功と言って良いのか。だったら俺も負けちゃあいられないな。ここは市会議員時代に磨いたとっておきの宴会芸を……どうしたセレス、国王が芸をするのは良くないと言うのか? 下々の者が芸をするのは、国王を楽しませるためと言ってくれるのか。
だがな、俺は親しみやすい国王を目指してみたいのだ。なんだコロナ、国王が芸をするのは良くないと言うのか? り、理由はなんだっ!
「国王の芸が面白かったとき、芸を生業としている者が職を失うことになります。それはそれで問題なのですが、さらなる問題は面白くなかったときのことです。芸を見せられた者たちは、死ぬほどつまらなくても拍手喝采を送らなければならなくなります。国王たる者、民たちに理不尽を押しつけるのはいかがなものかと思いますよ」
そうか、面白くなかったとき問題だと言うのか。だがな、俺の芸は受けまくったのだぞ。そしてここには、職を失う芸を生業とした者はいないんだ。
「止めても無駄と言うことですか?」
俺には先頭に立って宴会を盛り上げる義務があるっ!
だから俺はステージに向かったんだ。うん、まだ魔王様と姫騎士ピアッツァさんの余韻が残っているな。ここでさらなる爆笑で、見事場を盛り上げてやろうじゃ無いか。
「諸星さん、ステイっ!」
立木さん、それは犬に指示を出すときの奴ですよね。どうして手のひらを下に向けて、ステイを言ってくれるんです? ああっ、条件反射で正座をしてしまった。
「諸星さんには、大トリで活躍して貰います。早すぎる登場は、進行の邪魔となることを理解してください」
俺が、大トリなのか。そうか、そうだよな。一番の大物が、最後に登場するのは日本の伝統って奴だもんな。ありがとう立木さん、俺は大きな間違いを犯さずにすんだんだ。それまでは、前座の芸を楽しむことにしよう。
流石は立木様ですね。正面から反対するのでは無く、持ち上げることで我が君をコントロールされています。なるほど、娘が夢中になるのも理解出来ますね。年の功……年齢的には私よりもずっと若いのですけど、年の功を感じさせていただきました。
それから立木様のことは認めましたが、魂にマーキングするのは良くありませんよ。亡くなられたら確保するため、だから現世に干渉するつもりは無い。あなたが現れた時点で、現世に干渉しているのを忘れないように。
はい、その反論は却下します。私は、ちゃんと後を任せる者を作ってから遊びに来ているんです。自由にしたいのであれば、あなたも後継者を作ってからにしてください。
「だから、自由にはしていないと思います」
こうして宴会に来ておいて、ですか? そうですか、瞬きする程度の時間でしか無いと言うのですね。しかも自分の行動で、宇宙に混乱は生じていないと言うのですね。
そうやって、否定の出来ないことで私を責めてくれるのですね。仕方が無いと思いますよ、だって死ぬほど退屈な時間だったんですから。それでも、後始末を押しつけないで欲しい……ですか。それは申し訳ないことをしたとは思っていますよ。だから、あなたが遊びに来るのを禁じていないんです。それでも、頻繁に現れるのが問題だと指摘しているんですよ。
「お母様と違って、ずっといるつもりはありません」
そうやって当てこすってくれるのですね。ずっといるつもりは無い……それは、立木様に残されている時間が少ないからですよね。そこで顔を逸らさないように、あなたの考えることぐらいはちゃんとわかっているんです。だから私は、諸星様を少し若返らせたんですよ。
次世代は今晩仕込む……もしかして、『あなたが酔って帰ってきたからよ』と言うのをしようとしていませんか? 意味がわからない、この世界に毒されている……ええっと、確かに意味が不明でしたね。それで次は、ロアですか? 流石に短すぎるので、違う名前を考えている。フィオレンティーナ……命名理由を聞いても良いですか? そうですか、立木様の黒歴史と言うのですね。嫌いじゃありませんよ、そう言う遊び心は。
アクアが飲めないので……アルコール飲料のことなんですけどね。飲めないので、俺も付き合ってノンアルですませています。後はですね、記録係の仕事を少ししようかなと。だからと言うわけではないのですが、宴会開始早々感動などさせて貰いました。
なんのことか、ですか。生『くっ、殺』を見せて貰ったからですよ。魔王様とピアッツァさん。もの凄く似合っていたと思います。ピアッツァさんは、ビゴさんの側室と聞いています。ちょっと線が太い気がしたのですが、彼女は姫騎士だったんですね。ええ、それで納得させて貰いました。『くっ、殺』をしているときの、屈辱を感じながら頬を赤らめる仕草。もうね、最高としか言いようがありません。これはですね、すぐにでも服部さんと共有しなくてはいけないと思ったぐらいです。
しかし、流石は立木さんですね。生『くっ、殺』を実現してくれるとは思いませんでした……違うのですか、場を納めるために仕方が無かったのだと。『くっ、殺』を仕込んだのはセリカさんなんですか。礼儀の教本として、その手の同人誌を送り込んだのですか。ひょっとして、薄墨さんが渡していたあれかな? だったら、薄墨さんとも成果を共有しないといけませんね。
個人の趣味には干渉しない。それでも、自衛隊に対して疑問を感じてしまった……と仰るのですね。ちなみにそれは、諸星さんの二番煎じです。諸星さん、ことあるごとに『大丈夫か自衛隊』って言っていましたので。
誇らしげに言うな、ですか。ですが、IMO研のトップ二人から同じ感想を貰ったんですよ。だとしたら、自分たちの成果を喜んでもおかしくないと思います。
「自分が年をとった……つくづく感じさせて貰いましたよ」
いえいえ、立木さんはまだまだお若いと思いますよ。流石に俺では、あの3人……すみません、4人でしたね。あの4人に狙われて、返り討ちにすることは出来ませんから。
それを言ってくれるな、ですか。でも、逃げられないのはわかっていますよね。回りは海だし、船で逃げても逃げ切れるものじゃありませんからね。何しろ空間移動能力者が3人も揃っているんです。いっそのこと、そのうちの一人と取引をした方が良くありませんか? そうすれば、相手にするのが一人で済むことになりますからね。
「後先を考えなければ有効な提案だと思いますよ。ただ明日以降も、私はIMO研に関わっているんです」
だから逃げても、一時しのぎにしかならないと言うのですね。はい、立木さんって勇者だったのですね。若輩者として尊敬させていただきます。
「だそうですよアクアさん。どうやら白船君は、複数女性との関係を望んでいるようです」
ええっと、どうしてそう言う返しをしてくれるんです。だからアクア、お前に不満を感じているわけじゃ無いからな。愛してくれるのは嬉しい……ただ、夜の相手が出来ないのが心苦しいって……もしもし、急に何を言い出すのかな? いや、嫌いとは言わないぞ。そのだ、可愛い系のエルフも良いのは否定しない。だけどな……なんだ、シエンタから相談を受けていると言うのは。安心したと言うのは何のことを言っているんだ?
「相談して良いのかわかりませんでしたので。ただユーイチロウ様に我慢をさせていたなんて……妻として気づけず申し訳ありませんでした」
そこは謝られるところなのか。違うよな、普通……その普通がよくわからないと言うのか。翼人でも、一人の男性を複数女性が共有するのは珍しくない。共有って、ちょっと意味が違っているよな。
「私が妊娠したので、ユーイチロウ様は注目を集めているんですよ」
それはなにか、翼人たちの注目を集めていると言うことなのか。そう、種族を維持するためには次世代が必要……ハイエースたちに頑張って貰えばいいんじゃ無いのか?
そうか、意外にひ弱だと言うのか。それに、彼らが頑張るのは今更と言うのだな。子供は多い方がありがたい。ああ、俺も子供は好きだと思うぞ。いや、だからと言ってだな。俺はお前を愛しているんだ。それとこれとは別……別で良いのか?
ところで立木さんは? 人のところをかき回していって、どうしていなくなってくれるんです? だからアクア、もう少し冷静に話し合いをしてだな。帰ったら早速って……どうしてそんなことになっているんだ?
白船君ざまぁって……俺の苦労が少しは理解出来たか? 嘘を吐け……エリザベス、嘘と言うのは何のことだ?
「コーメーは、心の棚を増設し続けているわよね」
こ、これはだな、そのだ、増設しなければお前とのことも無かったんだぞ。それでも良かったと言うのか?
「別に責めてるつもりは無いのよ。ただ、苦労なんて言うから突っ込んでみたのよ。じゃあ聞き返すけど、私とのことはあなたにとって負担だったの? その、もの凄く恥ずかしい格好とかもさせられたんだけど」
い、いや、負担なんて言うつもりはないぞ。うん、リズのことを愛しているからな。なんだヴェルファイア、私は愛されていないのかと聞くのか? そ、そんなことはないぞ、お前のことを愛しているからな。だからセンティア、私はと聞かないように。コロナとセリカ、だから自分はと言う顔をして迫ってくるんじゃ無い。
なんですルーテシア、その『好き者』と言うのは。俺が気にしているのは世間体だけで、女性を増やすことは喜んでいると言ってくれるんですか?
「おや、君は否定できるのかな?」
ひ、否定ぐらい出来ますよ。別に俺は、女性を増やして喜んでなんかいませんからね。か、数を目的としていませんからね。俺は、女性を愛するために心に広い棚を持っているだけなんです。
「つまり、元々増設の必要は無かったと言うのだね。だそうだよ、ポルテ、アルカナ、イセッタ、今晩は君たちに優先権をあげることにしよう」
こらこら、どうして俺の意思を無視して話をしてくれるんだ。い、いや、別に嫌いとか言っていないからな。ただな、ちょっと世間体と言えば良いのか……なんだ、そんなものはすでに無くなっていると言うのは。お、俺にはな、IMO研究所所長と言う世間体があるんだぞ。
それとこれとは別、沖縄でもしっかり反感を買っていると言ってくれるのか。
「確か君は、一夫多妻は男の甲斐性と開き直っていたと思うんだ」
ええっと、そんなことを言いましたかね。ええ、確かに言った気がします。ですが、それとこれとは別……別じゃ無い、無駄な抵抗をするなと言うのですか?
何だセレス、クロアさんと話をしていたのか。それで、どんな話を……話を逸らすのは良くない。
「我が君の場合、無駄な抵抗とは違うと思いますよ。そうですね、単なるポーズと言うのが正しいと思います。例えばポルテさん、アルカナさん、イセッタさんが別の男性を見つけたら、間違いなく落ち込んでくれると思いますよ」
そ、そんなことはないぞ。俺はだな、みんなの幸せを願っているんだからな。だからポルテに好きな人が出来てもだな、うん、ちゃんと祝福してやることが出来る男なんだぞ。
「でしたら、私が他の方に走っても大丈夫なのですか?」
せ、セレスが、別の男だとっ。だ、誰だ、俺の妻に色目を使っている奴はっ!
「コーメー、ぼろが出るのが早すぎだと思うわ」
ポルテとセレスでは、立場が、そう立場が違っているだろう。俺はまだ、ポルテには手を出していないんだからな。妻として立場を確立しているセレスとは違うだろう。
「でしたら、かすみさんはどうします?」
な、なぜ、そこで御衣黄さんが出てくるんだ。隠しても無駄、立木さんに走ったときに動揺していたと言うのか。そそそ、そんなことはないと思うぞぉ~
「コーメーがしっかり焦ってるぅ」
だからリズ、そんな顔で俺のことを見るんじゃない。ただなぁ、俺が世間体を気にしているのは間違っていないぞ。心の棚だって、頑張って増設したんだからな。
「増設できるのが間違っているって指摘するのはまずいのかな?」
そ、そんなことはない、俺は苦労して増設をしたんだ。元々増設できる余地があるのが間違っている。もっと言えば、増設することが間違っていると言ってくれるのか? なあ、俺を虐めて楽しいのか? いつも虐められてるから、今日はそのお返しと言ってくれるのか? おかしいなぁ、俺は虐めた覚えが無いんだが。
諸星さんが猥談に走っていますね。まあ、皆さん飲んだくれてるので問題は無いのでしょうね。
それで魔王様、楽しんでいただけているでしょうか。そうですか、私に感謝をしてくれると言うのですか。
「うむ、余はこのような食べ物を求めておったと言うのを思い知らされたのだぞ」
そうですか、もう人を食べたいとは思いませんか?
「これに比べたら、天と地、比較するのが間違っていると思うぞ。カレーも絶品だったが、このワタリガニなるものの味わいも最高だと思うぞ。さざえの壺焼き、生ウニと言うものも絶品だと思っておる」
そうですか、お気に召していただいて喜んでいます。ただ、今日召し上がっていただいているのは、私たちでも毎日食べるものでは無いことを理解していただきたいですね。そうですか、それぐらいは理解していると仰るのですね。
「それでも、この世界には美味が溢れておると思うぞ。毎日の食事に出てくるもの、いずれも前の世界とは比べものにならないのだ。人間たちも、このような食べ物を持ってくれば良かったのだ。そうすれば、余も人などを食わずにすんだのだからな」
なるほど、仕方なしに人を食っていたと言うのですね。宴会の席で言いたくなかったのですが、少しばかり苦言を呈させていただきますかね。ええ、苦言ですよ。
そのすべてが、魔王様が原因と言うのを理解されていますか? そうですか、理解出来ないと言うのですね。ではコレオスさん、あなたに伺います。人たちは、余裕のある生活をしていましたか。一所に定住し、今日見たような農場を営んでいたでしょうか?
「いえ……農場はあったかと思いますが、かなり荒れ放題になっていたかと思います」
では次の質問。時々集落を襲っていたかと思いますが、その集落はどのような集落でしたか?
「比較的落ち着いた、美味しそうな村人がいる集落が対象となっていました。申し訳ありませんが、今の質問にどのような意味があるのでしょうか?」
簡単なことですよ。美味しいものを作るためには、生活に余裕が必要だと言うことです。そして1カ所に落ち着いて、様々な工夫を凝らすことが必要なんです。いつ襲われるのかと怯えて暮らし、すぐにでも逃げ出せるような環境で、美味しいものを作る余裕があると思いますか?
「つまり立木殿は、余が悪いと言っておるのか?」
あなたに原因があると言ったと思いますよ。あなたは、生産層のことごとくを潰してきたんです。比較的落ち着いた美味しそうな村人がいる集落、美味しそうと感じる村人がいると言うことは、それなりに作物も取れていたのだと思います。あなたがしたことは、そう言った村々を潰して回ったと言うことです。
差し出された食べ物が美味しくなかった。喧嘩を売っているようなものだと仰ったと聞いています。魔王様は、幸運を喜んだ方が良い。もしも尋問官が私でしたら、間違いなくその場であなたを滅していましたよ。理解出来ませんか、彼らは自分たちの命を守りたかったんです。そんなときに、喧嘩を売るようにまずいものを持ってくると思いますか? 彼らは、彼らの持っている一番良いものを持ってきたんですよ。それが、彼らの限界だったと言うことなんです。
「お前は、余が悪いと申すのだなっ! 支配者たる余が悪いと申すのだな!」
耳、それとも頭が悪いのですか。最初から、私はあなたが悪いと言っているんですよ。女神様のことを散々批判されたそうですが、彼女は彼女なりに必死に考えた結果なんです。確かに愚かしいことをしたと思いますが、その原因を作ったのは魔王様、あなたなんですよ。
「余が寛大なうちに、その口を閉じることを命ずる。さも無ければ……」
さも無ければどうなさいますか。私が言ったことを理解出来ないのなら、あなたに対する評価を変えないといけなくなるんです。まさか魔王様は、この世界でも強者でいられると思われているのですか?
あなたはブーランジェリー王国にも行きましたよね。あの世界で出来て、あなたの世界で出来ていないと言うことは、あなたと言う存在が足を引っ張っていたと言うことです。そのことを理解する頭をもたれていますか?
それから、ここで拳を振り上げないように。それをした瞬間、あなたは後悔することも出来なくなりますからね。別にシアやインテグラを頼らなくても、あなたの息を止めるのは難しくありませんからね。あなたも、この紐に見覚えがありますよね。
それ以前に、私に反論出来ない時点であなたの負けなんです。まず、それを理解されることから始めた方が良いと思いますよ。
「う、うむ、熱くなって申し訳なかった。確かに、立木殿の仰ることに一理あるのは認めよう」
ご理解いただけて幸いです。ただ、あなたは私を脅してくださいましたね。温厚そうに見えても、これでも結構腹を立ててなんかいるんですよ。ええっと、そこで温厚そうと言うのは嘘と言わないように。茶々を入れれば入れるだけ、自分の立場が悪くなるのを理解されていますか?
どうすれば許して貰えるのか、ですか。それを考えろと言うのは無理な相談なのでしょうね。
そうですね、集落に帰ったところで女神様に謝罪することを条件としましょうか。勿論、謝罪の意味を理解することが必要ですからね。口だけだった場合は、そうですね、エクシブ君でもけしかけてみましょうか。
「う、うむ、これからじっくりと考えて見る」
でしたら、引き続き宴会を楽しんでください。そうですね、後から何か出し物をして貰いましょうか。先ほどの寸劇ですが、なかなか面白かったと褒めて差し上げますよ。あれを励みに、新しい出し物を考えて見てください。いいですね?
出し物がつまらなかったら、ですか。その時はそうですね、荷造り紐で吊して帰ることにでもしましょうか。
途中から立木さんの話が聞こえてきたのだが……よくそんな余裕があったと言うのか。いやなんだ、殺気と言うのを感じてしまったんだ。うん、魔王様の殺気を。
だから気にしたんだが……気にしたんだよ。
立木さん怖い
なんで魔法も恩恵も持っていない立木さんが、あんなに堂々と魔王様に説教が出来るんだ? しかも説教の一言一言が、俺の胸を抉ってくれるんだ。そうか、まだ俺は表面しか見ていなかったと言うことなんだな。
それは良いのだが、別の一角が怖いことになっていないか。ラズライティシア様とインテグラが、明らかに殺気立っているんだが。ところでクロアさん、灰も残さないと言うのは穏便じゃないと思いますよ。それから立木さんは、あなたたちの力を借りるつもりは無いようです。ですので、大人しく見守っていてくれませんかね。大丈夫です、いざと言う時は俺が介入しますから。多分ですけど、必要はないと思いますけどね。
だけど、面白い出し物をしろと言うのは、かなりの無理ゲーじゃ無いのか。魔王様って、そんなことを考えずに生きてきたよね。何だセレス、それが美味しい貢ぎ物を持ってこいに通じていると言うのか。無理難題を押しつけて、出来ないことに責任を求める行為……言われてみれば、美味しい貢ぎ物を持ってこいに通じているんだな。
勉強になると言うのは言ってはいけないことか? 別に構わない、そのために立木さんが派遣されたと言うのだな。つまり俺は、後沢たちの思惑通り動いていると言うことか。なんか悔しい……そう感じることも大切だと言ってくれるのだな。ところでセレス、どうしてそんなに悟っているんだ? 細かなことは気にしない方が良い。いや、そう言われても気になってしまうのだがな。
鶴の恩返しの話を知っているのか、か? いや、知っているがそれがどうかしたのか?
愛知のお酒、美味しいですよ。
最初の定番『くっころ』の登場だったりします。




