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海・海・海!

村の特産は異世界です


・海・海・海!


 上里集落、そしてブーランジェリー王国のお披露目は、無事終わったと思います……無事だったよね、うん無事だった無事だった。

 そこで一つだけ疑問なんだけど、途中でワイバーンが襲撃してきたよね。あれって、演出なんだよね? だって、あまりにも都合が良すぎるんだもの。しかも竜人たちがドラゴンフォームで現れたら、襲ってきたとき以上の速度で逃げていったでしょう。なんと言えば良いのか、かなりのやらせ臭がしたのよ。


 それは良いんだけど、ブーランジェリー王国って結構凄いと思ったわ。見た目って、まんま中世のヨーロッパなのよ。それなのに、下水道が完備されていたの。そして一部には、上水道もあったわね。だから、街中を『上を気にせず』歩くことが出来たのよ。うん、中世のパリをイメージして言ってるつもり。

 ただ水事情はあまり良くないみたいで、王族でも毎日お風呂に入るのは難しいそうよ。だからコロナ王女……もう王妃様か、コロナ王妃様が帰りたがらない訳ね。違う、お風呂だけじゃ無い。食べるものも、全く追いつけていないと言うのですか。


 あとブーランジェリー王国の特徴は、至る所に魔法が活用されているところね。ほら、中世のヨーロッパだったら、部屋の灯りはロウソクが使われていたでしょ。でもブーランジェリー王国だと、少なくとも王宮では魔法で灯りを点していたのよ。電気の代わりだと思えば、中世ヨーロッパより進んでいるのよね。

 だからアリシア首相なんて、『ファンタスティック』って喜んでいたわ。オルティアさんは……二度目なので驚いていなかったわね。だから感心していたのはEU圏から来た人たちが多かった。それ以外のアジア、アメリカ、日本の記者さんたちは、感心はしていたけどあちらほどじゃなかったって感じかな。


 公開が終わったと思ったら、なぜか立木さんが思いっきり頭を悩ませていました。もしかして女性関係を整理しようと考えている? 違う、自分は奧さん一筋……すみません、それって笑うところですか?

 それはそれとして、何に頭を悩ませているのですか?


「諸星さんにお疲れ様のご褒美を差し上げたいと思ったのですけど……どこが良いのかと考えたんです。流石に温泉だと新鮮味が無いじゃ無いですか」


 確かに、うちって温泉旅行が定番になっていますよね。それを新鮮味が無いと言われたら、その通りと言って差し上げます。

 それで、趣向を変えるとしたらどこにするんです? 海、海ですかぁ……山の中だと考えると、確かに気分が変わって良さそうですね。それで、海と言ったら糸魚川ですか?


「いえ、それじゃご褒美にならないでしょう。ですので、沖縄辺りを考えているんですよ」


 それじゃあご褒美にならないって……外で言うと色々とお叱りを受けますよ。しかし沖縄かぁ……いいなぁ、沖縄って行ったことがないんだよね。それで、当然私たちも行くんですよね?


「諸星さんだけですよ。一人旅も経験……一人じゃ有りませんけどね。ただ、どこまで連れて行くのかで悩んでいるんです。諸星さん、セレスさん、ルーテシアさん、ヴェルファイアさん、センティアさん、エリザベスさん、コロナ様、セリカ様……流石に8人は多いのかなと。あと、部屋をどうするのかと言うのも有りますね」


 今あげた女性って、全部諸星さんのお手つきってことだよね。こうしてあげられると、いつの間にと言いたくなるほど増えているのね。

 でもセレスさんとエリザベスさんは、大谷村対応をして貰ってますよね。二人ともいなくなって大丈夫なんですか?


「その程度なら、私が対応すれば良いだけですよね」


 立木さんなら、能力的には問題ないと思いますよ。ただなぁ~


「そう言う時には、私が怖いお年寄りに化ければ良いだけです」


 それは勘弁。中林村長さんだったら、きっと歓迎してくれると思いますよ。いっそのこと、居酒屋にでも行ってみたらどうです、懇親の意味で。


「Norichanが近くにありましたね。確か、宮崎ぢどりの。小上がりがありますから、まあ行ってみても良いと思いますよ。どうです、小谷さんも一緒に……いえ、今のは忘れてください」


 どうして、誘いかけて止めてくれます? そんな真似をされると、とっても気になるんですけど。


「いえ、年寄りの中に挟まれるのは退屈かなと。これが温泉旅行とかなら良いのですが、小谷さんにとっては地元ですよね」


 そりゃあ、地元ですし、おじさんばかりと言うのは間違っていませんけどね。ところでオルティアさん、どうして目をキラキラとさせて近付いてくるんですか?


「オバサンナラダイジョウブ」


 自分で自分をおばさんと言いますか? そりゃあ、確かに年齢層的にはバランスが取れていますけど。バランスは取れていますけど、ラズライティシア様たちが見逃してくれますかね。

 なんです、色々と取引をすませていると言うのは。そうですか、この後の温泉旅行を邪魔しないと言うのですね。でもインテグラさんは? そっちも取引が済んでいる……立木さん、どうして耳を押さえているんですか?


「大谷村との付き合いは別にして、諸星さんたちの旅程を決める必要があるんですよ……ああ、先方から応答がありました。なるほど、倶楽部スィーツを用意してくれるんですね。2部屋で4ベッドルーム……少し狭いかも知れませんが、こちらよりはマシだから大丈夫でしょう」


 少し狭いって……1部屋がやけに広くありません? 170平米超って、私の家より広いんですけど。


「王様、王妃様が泊まられるんですよ。それを考えたら、4室確保しないといけないはずなんですよ。ちょっと、予算を考えてしまったと言うのか。1部屋1泊100万円するんですよね。2部屋4泊だと、これだけで900万ぐらいになるんです。ちなみに、一応朝食付きですけどね。これを4室にすると、2000万近くになるんですよ。経費で落とすことも可能なんですけど……ああ、ディスカウントしてくれてますね。それでも、夕食まで含んで500万ですか」


 もしもし、金額の桁が違っていませんか? いえ、コロナ様とかセリカ様は良いと思いますよ。お二人とも、王侯貴族ですからね。でも、諸星さんってバリバリの庶民なんですよ。その庶民の諸星さんをそんなところに押し込んだら……年末のお台場でも、居場所がなさそうにしていたぐらいなんですからね。

 なんです、物事経験だって。そりゃわかりますけど、身についてくれるんですかね。


 ところで、予算なんですけど。そんなに無駄遣いをしても大丈夫なんですか? なんです、色々と巻き上げていると言うのは。決め手は竜人って?


「竜人の脅威を管理することで、一桁億ほど引っ張ってきたんですよ。後はですね、荷造り紐さんを1mあたり100万円で自衛隊に売りつけたんです。色々と人を派遣して貰っていますから、これでも思いっきりディスカウントした価格なんですけどね」


 ええっと、今どれぐらい融通していましたっけ? 10万メートル以上、政府にも同じぐらい融通している。複数年の分割契約を結んだのですか。ええっと、いつの間に?


「後沢氏に動いて貰った結果です。その結果なのですが、年商500億が最低10年は確定したことになりますね。ただ、今年は補正予算がまだですから、200億ぐらいになるのかなぁ」


 ちなみに、荷造り紐さんのメートル原価はどれぐらいなんですか?


「400m巻1巻で200円ぐらいと言うのが材料原価です。それに手間賃を加えると、mあたり2円と言うところですかね」


 1メートル2円が、1メートル100万円に化けるんですね。もう、これだけを商売にしてもいい気がしてきました。


「その付加価値を作ったのが諸星さんと言うことです。それを考えたら、これぐらいの贅沢は安いものだと思いませんか?」


 つまり、荷造り紐さん5m分と言うことですよね。往復の航空券を合わせても、6mにもならないと言うことですか。それを指摘されると、確かに『この程度』と言って良い贅沢だと思いますよ。ただ、諸星さんの頭がオーバーフローしなければなんですけどね。


「お断りしておきますが、諸星さんにはホテル代を教えませんからね」


 ええ、それが正解だと思います。ホテル代を教えたら、間違いなく楽しめないと思いますから。


「ですので、レジャー情報を含めてセレスさん、エリザベスさんにインプットしておきました。ただエリザベスさんも、赤貧に喘いでいましたからね。保険として、セリカさんにも教えておきました」


 エリザベスさんか……シャルロットさんに教えて貰ったけど、ハイスクールの時も割と貧乏だったみたいね。美人だからもてたみたいだけど、アルバイトが続かなかったって言ってたわ。うん、お客さんにセクハラされたみたい。

 しかも、日本に潜入したときには、安いビジホに半額弁当でしょ。うん、経済観念はしっかりとしていると思うけど、割と底辺庶民のものなのは間違いなさそうね。ひょっとしたら、諸星さん以上に固まってしまうんじゃ無いかしら。


「それから、往復は航空機を使うことにしました。ここから羽田に移動して、そこから那覇まで移動することになりますね。那覇空港には、ホテルが迎えを出してくれます」


 なぜ空間転移を使わない……と聞いても良いですよね?


「羽田までは使いますよ。ただ、女性たち……諸星さんもそうなのですけど、もう少しこの世界のことを知っていただきたいと思ったんですよ。空間転移で移動ばかりしていると、この世間にある沢山のものを見ることが出来ないんです」


 ここと目的地以外を見ることが出来ないのだと。指摘されてみると、空間転移を使い始めてから車で移動することが無くなりましたね。


「こことリゾートホテルだけ……それでは、極端に世界が狭くなると思いませんか。私は、諸星さんだけで無く、コロナ王妃、セリカさんにもこの世界のことを知って貰いたいんです」


 立木さん、その言い方は年寄り臭いと思いますよ。年寄りだから仕方が無い……私は、年齢のことだけを言っているつもりはありませんからね。


「年寄り臭い、ですか。相手が諸星さんだけなら、そう言うことになるのでしょうね。さしずめ経験不足の若者に、世間と言うものを教えてやると言う所なのでしょう。ただ小谷さん、私はそれだけで終わらせるつもりは無いんですよ。ビゴさん、ええ、セリカさんの弟さんなんですけどね。一度温泉旅行にお誘いしようと考えているんです」


 温泉旅行、ですか。温泉旅行で、何を学ぶのでしょうね……ちょっと疑問がありますね。


「目的地は温泉ですけどね。途中で美術館……安曇野は美術館が結構沢山有るんです。その先では、農業体験できる道の駅とかもあるんです。一面の田んぼや果樹畑……農産物の直売場を見るだけでも得がたい経験だと思いますよ」


 つまり、社会見学のようなものを考えていると言うことですね。だとしたら、農業以外にも教えて差し上げたらいかがでしょうか。例えば……例えば、ですね、ええっと。


「酪農体験と言うのもありますね。考慮すべきこととは思いますが、あまり一度に詰め込むのもどうかと思いますよ。ゆっくりと消化をしながら、見聞を広めていけば良いと思っているんです」


 仰るとおりなんでしょうね。それで、ビゴさんの案内は立木さんがされるんですか。そうですか、言い出しっぺがするのが筋と言うのですね。それで、誰と誰が一緒に行くんです?


「シアとかインテグラ、後はオルティアさん辺りですかね。後はビゴさんの許嫁辺りが適当だと思います」


 ビゴさんって許嫁がいたんですか。いても不思議は無い。元々子爵家の跡取りだから居ない方が不思議。そう言われてみれば、いても不思議は無いんですね。ところで立木さん、どのような方かご存じなのですか? そうですか、これから確認するのですね。

 ただですね、私は別に問題があると思うんですよ。ええ、ラズライティシア様たちの問題です。どう言うことかと言うとですね、ビゴさんは一緒に移動されるんですよね。つまり、ラズライティシア様にとってはお邪魔虫になると言うことです。なんです、その親子二世代と言うのは。確かに、年齢的には間違っていないのでしょうね。




 いきなり遊びに行ってこいと言われても……いや、別に嫌と言うわけじゃないんです。ただですね、一応は研究所の責任者な訳だし、休暇を取るのなら調整と言うものが必要だと思うんですが。そう、調整が必要だから、思いつきで休暇を取るものじゃ無いと思うんですよ。

 調整なら、とっくの昔にすませている。このことは、菅谷総理もご存じと言うのですか。相手先……つまり、沖縄県に対しても連絡が終わっている。在日米軍も、俺たちが行くことを知っている。それで遊びにって、今度はどこの温泉ですか? 違う、温泉からは離れろと。ええっと、リゾートホテルってマジですか? そうですか、マジなんですね。しかも4泊もさせて貰える、往復はファーストクラス……あのぉ、ファーストクラスって何ですか? 新幹線のグリーン車のようなものですか。そんな贅沢をしても良いものなのでしょうか? 立場を考えろ、IMO研究所の所長だろう……ですか。IMO研究所って、スタートアップの小さな研究所ですよね。はい、立木さんは記者会見でそう仰っていたと思います。


「記者会見用の煙幕に決まっているでしょう」


 煙幕って……しつこく食い下がられない為の煙幕なんですか。だとしたら、実態は違うと言うことですか? なぜ、そこで上を向いてくれるんです? 先日、政府に対して何をしたのか覚えているか、ですか。


「英国首相までお迎えしておいて、スタートアップの小さな研究所と言わないでください。スタートアップには違いありませんが、存在感としては世界有数のものになったのをお忘れ無く」


 ええっと、所員が5人の研究所が、ですか。それが、世界有数の存在感と言いますか。マジですか、マジなんですね。

 旅行については理解しました。それで、なんでコロナたちまで? 首相たちの視察に協力してくれた。そのお礼を兼ねているのですか、だとしたらエリザベスは? 俺、また何かやっちゃいましたか?


「大谷村対応で活躍してくれているんですよ。それに加えて、内縁ですが奧さんの一人だと思っているのですが……まさか、否定とかしませんよね?」


 いや、改めて否定するかと言われると……確かに、否定はしませんよ。でも、エリザベスを連れ回しても大丈夫なんですか? 沖縄ってことは、米軍とか沢山いますよね。部署が違うから大丈夫、あちらも変に絡んでこないと言うのですか。それにアメリカなら、情報局を含めて関係者が大谷村を彷徨いている。えっ、そうだったんですか!

 なるほどIMO研に喧嘩を売っても、損失の方が大きいと言うのですね。それに、下手に喧嘩を売るとプライドをへし折られる。世界的にも、恥を晒すことになると言うんですね。ええ、喧嘩を売られたら、倍以上にして返すつもりは大いにありますけど。

 それでヴェルファイアとセンティアも同じ理由と言うことですか? そう考えても問題ないが、ホテルに対するサービスでもあるのですね。竜人を連れて行く理由がないので、せめて翼人を公開した方が良い。ルーテシアがいるので、エルフも公開できるのだと。


「まだ、旅行に対して疑問がありますか?」


 ちょっと立木さんが怖いと言うのは言ってはいけないことですか。それで、出発はいつなんですか。そうですか、明後日からなんですね。ところで、羽田まではどうやって? シャルロットが送ってくれる……どうして、沖縄までではいけないんですか?

 なんです、社会勉強と言うのは。飛行機に乗ったことがあるのか、ですか。嫌ですね、それぐらいはありますよ……すみません、見栄を張ってしまいました。恥ずかしながら、一度も乗ったことが無いんですよ。だったら、エリザベスを頼れと言うのですか? なぜ、エリザベスに? アメリカから日本までは、空路を使ってきている。アメリカ国内も、長距離は空路の移動が一般的。そうなんですか、へぇへぇへぇ……


「だから、社会勉強と言わせていただきました」


 はい、確かに社会勉強が必要なのは理解しました。ただ、あまり俺のことを物を知らない子供のように扱うのを止めてくれませんか。経験したことが無さそうなことを重点的に経験させるつもり。だから、物を知らない子供と言うのは間違っていない。否定できる物なら否定してみろ……いえ、否定できないのを否定しません。ただもうちょっと、その手加減があっても良いと思いませんか?

 そうですか、二人だけだからきついことを言っている。誰かがいたら、絶対にこんなことは言わないと言うのですね。それでもですね、いえ、甘えと言うのは仰るとおりだと思います。


「ちなみに、セレスさんたちには沖縄行きのことを教えてあります。今頃、あなたに見せるための水着が届いている頃だと思いますよ」


 俺に見せるための水着……ですか? あっ、思わず喉が鳴ってしまった。


「部屋には小さなプライベートプールもあるんです。ただせっかく沖縄に行くのですから、天気が良ければビーチに行ってみた方が良いと思いますよ。皆さん、珊瑚礁の青い海は見たことがないと思いますから」


 恥ずかしながら、俺も見たことがないんです。ただ青い海と言うだけなら、南伊豆に行って見たことがあるんですけどね。

 そうですか、それとは違った趣があるんですね。伊豆の海は、いきなり深くなるから青が濃い。今度行くところは、サンゴの関係でビリジアンブルーになっているんですか。すみません、ビリジアンブルーと言うのは? そうですか、青みがかった緑色のことなんですか。良いですね、なんか楽しみになってきました。


「ですから、思いっきり楽しんできてください。気に入って頂けたなら、違う機会も用意いたしますので」


 えっ、いいんですか? 立木さん、お父さんと呼んでも良いですか? 駄目とは言わないが遠慮する……まあ俺の父親も存命ですからね。違う、お義父さんは立木さんの台詞……ええっと、ちょっとイミフなんですけど。


 と言う経緯を経て、羽田空港にまで来たのだが……しかしなんだ、どうしてJANAが俺にアテンドしてくれるんだ。そうですか、これも立木さんの手配してくれたんですね。ええ、国内線も国際線も、飛行機に乗ったことがありません。ですから、チェックインの仕方からわからないんですよ。

 はい、こちらの優先カウンターに行けばいいんですね。荷物が少ない……その荷物なんですけど、別便で送ってあるんです。持ち物はX線に掛けるんですね。それから、俺たちは金属探知機のゲートを通り抜ければ良い。


 ブーッ


 お、俺じゃ無いぞ。ルーテシア、一体何を持っているんだ。ナイフ、ナイフね……はい没収。ところで、何本隠しているんだ? はいはい、全部没収するから大人しく差し出すんだぞ。

 それからコロナとセリカ、その派手なアクセサリーは外してくれるかな。うん、それも探知機に引っかかってしまうらしいんだ。うん、素直なところは嫌いじゃ無いぞ……そこは好きと言えですか。そんな人前で……すみませんすみません、セキュリティを先に通ります。

 ところで、まだ搭乗まで時間がありますよね。ラウンジがある、さも無ければ空港内のショップで時間が潰せる。ええっと、でしたらラウンジで……ところで、ファーストクラスはこちらのはずですよね。どうして、更に上級なラウンジに案内してくれるんです?


「立木様にの指示に従っております」


 そうか、こんな所にまで手を回していたのか。でしたら、ラウンジで休むことにします。ところで飲み物は……おいてあるものは全部フリー、食べ物もフリーなんですね。い、良いのかな、なんか贅沢しすぎの気がするんだけど。

 それで何さん……三雲さんと仰るのですね。私に何かあるのですか?


「出来れば、記念写真を撮らせていただきたいと。勿論、無理にとは申しません」


 記念写真ですか、別にそれぐらい構わないんですけど。ところで三雲さん、後ろに沢山人が並んでいませんか? しかも皆さん、スマホを構えているんですけど。まるで芸能人になったみたいで、緊張なんかしてしまうんですが……

 はい、翼人の二人に翼を展開して欲しい。ええ、構いませんよ。と言うことなので、ヴェルファイア、センティアよろしく頼む。それからルーテシア、耳を隠さなくても良いからな。三雲さん、これで良いですか?


「無理を言って申し訳ありませんでした。それから、搭乗の際には翼を収納して頂けるようお願いいたします」


 翼を展開すると、椅子に座りにくいのは確かですからね。了解です、撮影が終わったら翼はしまうことにしますよ。


 ラウンジの洗礼……何かおかしい気もするが。うん、生ビールが美味しかったと思うよ。あと、なぜかおにぎりが美味しかったりしたと思う。コロナとセリカは、そうか、ドーナッツが美味しかったんだね。置いてあったワインも、いつもとはひと味違って美味しかった。多分と言うのか、かなり高級なのが置いてあったんじゃ無いのか?

 ラウンジの洗礼を終えた俺たちは、三雲さんの案内に従って機内に乗り込んだ。そうですか、最前列の8席が俺たちの席なんですね。確かに、後ろの席……エコノミーシートなんですね。それよりも、ずっと広くて快適そうに思えます。しかもなんです、お弁当まで付くんですか。

 羽田から那覇まで約3時間のフライト……この3時間って、ドアが閉まってから開くまでの時間ぐらいなんですね。


 ファーストクラスと言うことなので、最初に下ろして貰えると思っていました。だって、目の前に降機口があるんだよ。順番から言ったら、俺たちが最初と言うのが普通だと思うんだ。だけどキャビンアテンダントの女性から、『ご案内差し上げるまでこちらでお待ちください』って待たされてしまったんだ。しかも最前列にある降機口だけど、なぜか開いてくれないんだよ。そう言えば、ファーストクラスって12席あったんだよ。だけど残り4席は、誰も座っていなかったなあ。


「諸星様、お待たせいたしました」


 うん、待った……って言っちゃぁいけないんだろうな。おおっ、最前列の扉が開いてくれたよ。そうか、俺たち専用にしてくれたんだな。それで……そうですか、こちらに行けばいいんですね。いえ、何から何まで初めてなのでよくわからないんです。ええ、荷物は預けていませんよ。

 はい、こちらを通れば良いんですね。ええっと、これは何なのですかっ!


 いや、ゲートから出口の扉が開いたところで、一斉にシャッター音が鳴り響いてくれたんだよ。しかも頭の薄い人……誰? そうか、沖縄県知事なのか。沖縄県知事が笑みを浮かべながら握手なんか求めてきたんだよ。何が起きたのかわからないんだけど、握手を受けないわけにはいかないよね。それで握手をしたんだけど、またシャッター音が一段と高くなってくれたんだ。もうね、何が起きているのか全くわからなかったよ。

 沖縄は俺たちを歓迎するって言われても。ただ、プライベートで遊びに来ただけなんですけど。ですから、公式行事のことは何も知らされていませんよ。なんだセレス、夫には教えてありませんでしたと言うのは。そうか、立木さんから予告はされていたと言うのだな。


 それで、これからどちらへ……そうですか、沖縄県庁へご招待頂けるのですね。ええっと、ホテルの送迎車が来ているはずと教えられているのですが。そうですか、ホテルの車は県庁に回ってくれるのですね。一つお願いがある、翼人の二人に翼を展開して貰いたいと言うのですか。だそうだよヴェルダイア、センティア、お願いしても良いかな。そうか、竜人がいないので自分たちが主役と言ってくれるんだね。


 それから、それからかぁ……マスコミを引き連れて沖縄県庁に行って、そこで写真をどれだけ撮られたんだろう。それが終わって外に出たら、何かとっても物々しい車が県庁前に並んでいたんだよ。US Navyって……アメリカ海軍ってこと? 流石にちょっとまずくないか?

 それで米軍基地に連れ込まれて、しっかり挨拶なんかされてしまったよ。しかもだよ、アメリカ大統領とのテレビ電話って……合衆国はいつでも俺たちを歓迎してくれるのだそうだ。それからエリザベスたちのことは、しっかりばれていたらしい。この辺りは、立木さんも教えてくれたことなんだけどね。あれだけ大谷村役場に出入りしていれば、ばれない方がおかしいのだそうだ。

 特に問題としないので、いつ帰ってきても構わないのだそうだ。これって、政治決着って奴なのかな?


 一通りの行事を済ませ、ホテルに着いたのは午後5時のことだった。意外に早いのは、先方が気を使ってくれたのと、立木さんが早いフライトをアレンジしてくれたお陰らしい。ただねぇ、ホテルに着いたところで総支配人以下の出迎えを受けてしまったよ。それは良いのだけど、どうしてレイを掛けてくれるんだ? ここっって、ハワイじゃ無いよな?

 ええっと、ハワイのホテルなんですか。それで、沖縄が世界で2軒目なのだと。だから、今回はハワイ式のお出迎えになったんですね。いえ、恥ずかしながらハワイに行ったことが無いんです。


 どうしたヴェルファイア、センティアも何かあるのか? 空が青いし海も綺麗……うんそれで?


「その、飛んでも宜しいでしょうかと言うことなんですけど」


 ええっと、俺たちのことはしっかりばれていますよね。これ以上無くばれている。だとしたらですね、翼人二人の飛行許可を頂きたいのですが。ゲストのプライバシーを尊重して貰えれば可。むしろこちらからお願いしたい、ですか。


「差し支えなければ、飛んでいるところを撮影したいのですが?」


 だそうだよ二人、綺麗に写真を撮ってくれるそうだよ。そうか、喜んでと言ってくれるんだね。ようやく目立てるって……君たちも、色々と溜めていたんだね。

 それはそれとして、部屋にはどうやって……カートを出してくださるのですね。わざわざすみません……これは、通常のサービスの内なんですか。その、贅沢なホテルなんですね。ところでヴェルファイアとセンティア、もうすっかり飛ぶ気なんだね。




 今頃諸星さんたちは、沖縄に着いた頃かな。そうですか、フライトは遅れていないと言うのですね。だったら、もう到着していると言うことですか。

 ところで立木さん、一体何を見ているんです? トベの沖縄ニュース……ああっ、諸星さんたちが映っているよ。ところでこのおじさん、確か沖縄県知事だったよね。沖縄県知事が迎えに来てるんだ。


「こう言うときに顔を売っておく必要があるからですよ、先方の話ですけどね」


 そりゃあ、諸星さんとのツーショットって貴重ですからね。そうですか、こうして恩を売っておこうと言うのですね。この後は……ええっと、米軍なんか行っても大丈夫なんですか? あちらからお願いをされた。ファンタスティック・フォーのことは水に流して欲しい。本人たちの不利益にならないよう配慮する……って、いつの間に手打ちをしたんです?

 なるほど、菅谷総理経由で教えて貰ったのですね。でもどうしてばれた……エリザベスさんが大谷村に行ってるから、ばれない方がふしぎと言うことですか。ええ、納得です。それでこのことを諸星さんには? そうですか、一応教えてあるんですね。こちらは知らせておいた方が良いのは確かなんでしょうね。


「フライトを含めて、ちょっとした要人の扱いを受けていますよ」


 予備知識も無くそれって……間違いなく、諸星さんの頭が飽和すると思いますよ。それも計算の内なんですね……立木さんが同行しなかった理由がよくわかりました。立木さん、こう言うのは嫌いですよね。


「私は、金魚の糞ですからね。刺身のつまとも言える……そんな高級な物じゃ無いかな。ただの下働きをしているスタッフですから」


 それもちょっと……かなり違うと思いますよ。なんです、自分はそうでなくてはいけないと言うのは。あのぉ、まさかとは思いますけど、そろそろ引退できるとか思っていませんか? 諸星さんが逃がしてくれると、本気で思っているんですか? あと、ラズライティシア様とインテグラさんも絶対に逃がしてくれないと思います。諸星さん、強制力を使うのを躊躇わないと思います。幾ら観測気球を上げても、意味が無いのは理解していますよね。




 夕食は、ヴィラまでシェフが出張してくれた。うん、ヌーベルキュイジーヌで良いのか。とってもお洒落なフレンチを用意してくれたよ。綺麗と言うのは間違っていないと思う、ただ俺の舌が付いてきてくれなかったのが正直な所だな。


 ちなみに、ヴェルファイアたちは夕食前からご機嫌だった。その辺り、海の上を思いっきり飛んだのが理由なのだろうな。青い空に青緑色をした海の上を、白い翼を広げた美女が自由自在に飛び回る。ホテルの用意したカメラマンが張り切ったのは当然として、ホテルの観光客も浜辺にずらりと並んでくれたよ。ただなぁ、スマホで撮るには小さすぎるんじゃ無いのかな?

 ちなみにこの撮影会、西の空に日が沈むまで続くことになった。茜色に染まる空を背景に、二人の翼人が翼を広げて滑空してくれたんだ。もうね、ホテルのカメラマンが涙を流しながら撮影を続けていたよ。ホテルの支配人にも、宿泊費は要らないとまで言われたぐらいだ。尤も、支払いはIMO研究所の経理部門経由で支払われることになっていたんだけどね……経理部門?


 その勢いのまま、夕食はヴィラでと言うことになったわけだ。ちなみにこの夕食、コロナがいたく感心していたな。どうやら、食器を含めて贅を尽くした感じが気に入ったらしい。どうすれば王宮に取り入れることが出来るのか、調理をしていたシェフに真剣に質問……勧誘はよくないぞ。ええっと、爵位を餌にした。国王の頭越しにそんな真似をしてくれるのかな?

 夕食が終わった後は、なぜかセレスが仕切ってくれました。ただ何を仕切っていたのか、俺にはわからないようにやっていたな。


 ところで部屋にプールが付いているんですけど。後こっちは、温泉ですか。そうですか、やっぱり温泉なんですか。うん、上里集落と言えばやっぱり温泉だよね。

 ところで全員に質問。この中で海を見たことがある人はいるかな。ああ、リズは見たことがあるんだな。セレスとルーテシア、ヴェルファイアとセンティアは江ノ島の海を見たことがある。その意味言うと、コロナとセリカは見たことがないんだ。


「ですが、江ノ島の海とはかなり違うと思いますよ。その、とても美しいと感動させていただきました」


 まあ、俺だって見たことがあるのは駿河湾の海だからな。珊瑚礁の海なんて、生まれて初めてと言うのは間違っていない。それでコロナとセリカ、初めて見た海はどうだった?


「とても感動させていただきました。わが国にも海があるのですけど、伝え聞いた話では砂浜があるとは聞いておりません」


 なるほど、ヴェルファイアたちはどうだ? 喜んで、海の上を飛んでいただろう?


「空から見る海が、とても綺麗だと思いました。後はですね、空から見ると泳いでいる魚も見ることが出来ました。とても綺麗でしたし、とても感動させていただけたと思います」


 師匠は……まあ、その目を見れば喜んでいるのはわかるな。ところで明日なのだが、何かプランがあるのか? うんセレス、立木さんから情報を貰っていたんだよな。


「マリンスポーツと言うのですか。SUPと言うものがあるそうですけど、それでしたら空から見るのと大差が無いと教えていただきました。ですので、体験ダイビングをしてみるのが良いのだそうです」


 ダイビングか……海が綺麗だから、それも良いのかもしれないな。ただ心配なのは、俺以外の誰一人として泳げないと思うんだ。ごめん、リズは大丈夫なんだ。つまり、俺とリズ以外は海に潜るのは危険だと思うんだよ。


「それは、立木様も心配されておいででしたね。ですので、泳げなくても大丈夫な水中ウォークと言うものがあるそうです。ただですね、何もしないと言うのも優雅で良いと思いますよ」


 何もしない……と言うのは?


「ビーチで、ゆったりと時間が流れていくのを感じる。ここの所慌ただしかったと思いますので、何もしないと言うのも贅沢ではないでしょうか?」


 そうか、確かに贅沢なのだが。いかんな、せっかくだから遊びたいと考えるのは、まだ余裕が足りないと言うことなのか。


「それを悪いなどと言うつもりはありません。ただ私とコロナ様、セリカ様は海辺でのんびりとしようかと思っています。ヴェルファイアさんとセンティアさんは、まだ飛び足りないのだそうですよ。ルーテシアさん、エリザベスさんは、あなたと一緒にアクティビティですか。それを楽しまれてはいかがでしょうか?」


 コロナ、セリカはそれでいいのか? そうか、激しく動くのは自分のタイプでは無い。のんびりと飲み物を飲んで、海を眺めているのが楽しそうと言うのだな。そう言われるとだな、王妃様とマリンスポーツってのは似合わない気がするな。

 そう言うことだからルーテシアとリズは、マリンスポーツと言うことで良いのかな?


「ええっとですね、私もセレスさん側と言うことで良いですか?」


 いや、駄目と言うつもりはないぞ。何しろ楽しみ方は、人それぞれなんだからな。だから、リズが海辺でのんびりが良いと言うのなら、反対するつもりなど全くないぞ。

 と言うことで師匠、明日は俺と遊び倒しましょう。


「なるほど、君と冒険と言うのだな。うん、久しぶりに血が騒ぐね」


 冒険……まあ、アドベンチャーですから、冒険と言って良いのでしょうね。でもこの冒険ですけど、危ないことは全くない冒険ですからね。


「これまで生きてきた500年で、一度も経験したことが無いものなんだよ。だとしたら、立派に冒険と言って良いのでは無いかな」


 それを言われると、確かにそうなんですけどね。では、俺とルーテシアがマリンスポーツ、ヴェルファイアとセンティアが、自由行動で空を飛ぶ。そしてセレスたちは、海辺とかプールでのんびりと言うのだな。

 うん、何か危険が危ない気がしないでも無いのだが。どうしたリズ、自分がいれば危ないことには絶対にならないと言うのだな。ああ、強制力を使えば危険を避けることは出来るな。


「それ以前に、私たちのことは皆さんご存じですからね。ホテルの方も、気を使ってくださると思いますよ」


 あれだけ騒ぎになれば、セレスの言う通りと言うことか。ただ盗撮には気をつけてくれよ、4人とも、極上の美女と言うのは間違いないんだからな。しかも4人とも、かなり際どい水着を着てたよな?


「あれは、あなたに見せるための水着ですよ。私たちだけで海に行くときは、もっと大人しい水着を着ていきます」

「強制力を駆使して、盗撮は防いで見せます!」


 うん、ガードはリズに任せるから。後は、荷造り紐さんを持っていかなくても良いのかな? 流石に、そこまではいらない。だったら良いのだが、くれぐれも危ないことはしないでくれよ。


「ホテルの方に写真をお願いされたらどうしますか?」


 俺がいないところでの写真撮影は、原則として断るように。特に水着での撮影は原則禁止だからな。リズ、強制力を使いまくっても構わないぞ。


「それも、極端だと思うけど。それって、コーメーが嫉妬してくれたと思って良いのよね?」


 嫉妬と言うより、独占欲と言う奴だな。どうして俺の宝物を、他の奴らに見せてやる必要があるんだ。流石に見るなとは言わないが、写真に残すなんて言語道断だろう。


「それを嫉妬と言うんだけどね。良かった、コーメーが嫉妬してくれて」

「エリザベスさん、我が君はとても独占欲の強い方なんですよ」


 ええっと、俺ってそんなに独占欲が強いのか? いや、自分の奥さんの水着姿を、他人に見せたくないと考えるのはおかしくないと思うんだが。


 そして翌日、部屋で着替えてからカートで海に向かうことにした。ちなみに空を飛ぶヴェルファイアとセンティアも、なぜか水着に着替えていたりする。


「いえ、ちょっと上空からダイブしてみようかと」


 上空からダイブって……浅いところだと、サンゴにぶつかるから気をつけるように。なんだ、ダイブ自体は湖で経験済み……それでも気をつけてくれと言うのは間違っているのか? お前たちの綺麗な肌に傷を付けたくないだけだからな。

 細心の注意の元着水する。心配してくれて嬉しいと言うのか。何を当たり前のことを言っているんだ?


 それからセレスたち、日焼け止めを忘れるんじゃ無いぞ。後はだな、忘れずに水分補給をするように。それからリズ、守りの方はよろしく頼む。


 しかしなんだ、全員ワンピースの水着なんだな。それでももの凄くエロく見えるのは俺の心が汚れているからか? なになに、これでも大人しいのを選んだと言うんだな。そうか、それでも大人しい水着なんだな。

 なんでだろう、裸だったら昨夜も散々見ているのにな。どうして水着だと、また違った感動を覚えてしまうのだろう。申し訳程度でも、隠していることに意味があるのだろうか。その辺り、帰ったら立木さんに質問してみよう。


 それからそこの君たち、飛んでいるのは俺の奧さんだからな。今日は撮影許可を出していないから、望遠レンズで撮るのは遠慮してくれるかな。うん、スマホぐらいが許容範囲かな。あとだな、カバナにいるのも俺の奧さんだからな……一夫多妻は男の敵と言うのだね。これはだな、男の甲斐性と言うものなんだよ。

 ははは、嫉妬の視線がこれほど心地よいと言うのを知らなかったよ。なんです師匠、調子に乗るのは宜しくない。こっちにもカメラが向いているのを無視をするなと。


「私も、君の奧さんだと思っていたのだがね」


 いえ、奧さんで間違っていません。ですので君たち、こっちにカメラを向けるのも駄目だからな。格好良いからつい……なになに、俺って格好良い? そう、なら少しぐらいだったらいいかな。




夕焼けの海の上を飛ぶ白い羽の翼人、良いですよね

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