魔界ごと転移
村の特産は異世界です
・魔界ごと転移
余が魔王になって……うん、数えるのが嫌になるぐらいの時間が過ぎている。多分だが、100年では利かない時間が経っていると思うのだ。その間、思い出したように勇者が攻め込んできた。なんと迷惑なと言っても許されると思うぞ。そして攻め込んできた勇者なのだが、今のところ討ち漏らしたことは無いはずだ。
だがな、どうして毎度毎度攻め込んでくるんだ。今までの戦いで、勝機なんか一度も無かったよな。それになんだ、前回なんか女神まで一緒になって攻め込んできたぞ。勝敗と聞くのか、こうして余が話しているのがすべてだろう。あいにく女神は取り逃がしたのだが、攻め込んできた勇者様一行と1千の軍団は美味しく頂かせて貰ったよ。うん食べ過ぎは良くないからね、だから3千ぐらいかな。後々のために見逃してあげたんだよ。
余は思うんだよ。どうして人間という奴は、無駄なことを繰り返すのかと。いやまあ、確かに余の軍団は、主食として人間を食べている。だって仕方が無いじゃ無いか、他にまともな食い物が無いのだからな。それに過去一度交渉とか言うものをして、人間が食い物を差し出してきたことがあったんだ。その食い物なんだが、はっきり言って喧嘩を売っていると思ったよ。なんでこんなまずいものを差し出してくるのか、仲良くする気がないと言っているようなものだよね。刺激が……そう、刺激が全くないのだ。
それにしても、余は人を滅ぼしてはおらんのだぞ。確かに人を食料としておるが、それにしたところで限度と言うものを考えておるのだ。いい加減諦めても良いのでは無いか?
「それは、あなたが気まぐれに集落を滅ぼすからでしょう」
なんだコレオス。余に責任があると言うのか? 確かに集落を滅ぼしたが、あれはあちらに責任があると思うぞ。何しろ余が気分良く散歩をしておったのに、大きな声を上げて興を削いでくれたのだ。立場を考えれば、責は滅ぼされた集落側にあるはずだ。
「大きな声を上げて……あれは、悲鳴と言うものです。悲鳴を上げて逃げ惑う人を、あなたは追い立てて頭から丸かぶりされたのです」
頭から丸かぶりって……それが人を食うときの作法だと昔教わったぞ。俺は作法に煩いから、教えられた作法を守っているだけのことだ。
「私たちの立場では、確かに仰るとおりです。ですが人の立場に立ってみると、あなたは残酷な捕食者なのです。これまでどれだけの人が食われ、どれだけの国が滅びたことか。人の立場に立てば、あなたは倒すべき敵と言うことです」
コレオスよ、余が悪いと言っておるのか? 違う、状況の説明をしているだけと言うのだな。どちらかと言えば、余の疑問に答えることになっている。なるほど、余への答えにはなっておるのだな。
ならばコレオスよ、余はどうすれば良いのだ?
「あなた様は、何一つとして変える必要は無いと思われます。それが、王として君臨されると言うことなのです。それに、人ではどう頑張っても我々に勝つことは出来ません。女神を擁した前回でも、なすすべ無く我らに蹂躙されたのかと」
そうか、余は変わる必要は無いのだな。もしかしてとは思ったのだが、食生活を改善しろと言われるのかと考えておったのだ。
「あなたの食生活を改善……私に、人を食べるなと仰るのですか?」
そうか、お前たちも同じものを食べておったな。ならば、余だけ食生活を改善しても仕方が無いと言うことか。
ところでアクトロス、外が騒がしいように思えるのだが?
「陛下におかれましてはご機嫌麗しく」
うん、前口上はいらないから。それで、何故外が騒がしいのだ? まさかとは思うが、懲りずに勇者が攻め込んできたと言うのか?
「ご高察の通り、召喚された勇者が攻め込んで参りました。そこそこ出来るようですが、果たしてここまでたどり着くことが出来るのかは疑問です」
そうか、またあいつら異世界から勇者を召喚したのか。余が言うのもなんだが、余所様の迷惑を考えておらんのだな。この世界のことは、この世界の者が責任を持つものでは無いのか?
「流石は聡明なる陛下。他の世界から攫ってくるのは、世の理に反する行為かと思われます」
ところでアクトロス、余の目にはお前の機嫌が良くないように見えるぞ。
「陛下のお目を汚したことをお詫びいたします。またぞろ面倒を持ち込まれたのです。どうしても不機嫌になろうかと言うものです」
そうか、もしかしたら勇者が女だったとかではないのか?
「流石は聡明なる陛下。ですが、一つ間違いを指摘させていただきます。確かに美形の勇者は好ましいのですが、凜々しき女勇者も別の味わいがございます」
搾り取るのでは無く、堕とす楽しみと言うことか。うん、余は個人の趣味にどうこう言うつもりはないぞ。それはそれとして、女神は同行しておらんのか?
なんだドーフィン、相変わらず冴えない見た目をしておるな。
「今更見た目のことを言われましても……女神フローリアンですが、今回も出陣しているのは間違いないようです。ただ、我らに見つからぬよう潜伏しているのでしょうか、今のところ警戒網に掛かっておりません」
そうか、あの女神はそそる見た目をしておるからな。今度こそ余の手で躾と言うものをしてみたいのだ。
「でしたら、女神の発見を第一にせよと命じて参ります。後は、カジャーが暴れすぎないようブレーキを掛けて参ります」
あいつかぁ、確かにあいつは強いのだがな。ただ熱くなると、周りが見えなくなるんだよ。くれぐれも、女神を滅するような真似をするなと釘を刺しておけ。
それはそれとして、そろそろおやつの時間だと思うのだが。アクトロスよ、活きの良さそうなのを二人ほど連れて参れ。それから、まだ勇者一行に手を出すのは罷り成らんからな。
「お楽しみは最後までとっておくものと心得ております」
うん、彼ら……今回は彼女たちなのか。彼女たちも被害者なのだからな、死ぬ前に労ってやるのも余の役目だと思っておるぞ。
「慈悲深き陛下、では活きの良さそうなのを2人ほど見繕って参ります」
ああ、任せる。それから、あまり固そうなのは止めてくれると嬉しいかな。あと、臭いのも止めてくれると嬉しいぞ。
なぜ私は勇者などしているのでしょう。未だに信じられないのですが、この首に巻かれた首輪……チョーカーと言った方が良いのかしら。このチョーカーの存在が、これが夢ではない……悪夢だとは思いますけど、夢ではないことを教えてくれます。
異世界召喚……なんて迷惑なと文句を言って良いと思います。だって私、普通の高校2年生の女の子だったんですよ。その普通の女子高生が、予備校の途中で穴に落ちてしまったんです。いえ、スマホを見ていたと言うことはないんです。普通に歩道を歩いていたら、いきなりズボっと落ち込んでしまいました。ええ、マンホールの蓋が開いていたと言うこともありません。だってその前に、猫の絵の書かれたマンホールを見ていたんですからね。むしろ、落とし穴と言った方が良いと思います。
いきなり暗い穴に落ちた私は、気がついたら知らない場所で知らない人たちに囲まれていました。しかも回りには、おどろおどろしい松明なんかが焚かれていたんです。もう、絶対に危ない場所だと思いますよね。そこで4人がかりで押さえ込まれて、首にこの黒いチョーカーを巻かれてしまいました。
ちなみにこの黒いチョーカーですが、女神のチョーカーと言うものらしいです。その効能は、各種の恩恵が授けられると言うものです。その一つとして、言語能力……つまり、こちらの人とお話が出来ると言うものです。そしてそのほかには、属性……で良いんですよね。属性と言うものが付与されるのだそうです。そしてその属性に従って、必要な能力も与えられるのだそうですよ。ちなみに私に与えられた属性は、なんと『勇者』なのだそうです。
どうして、こんな純情可憐で鞄よりも重いものを持ったことが無い女子高生を、『勇者』なんかにしてくれるんですか? 役割付与自体を認めるつもりはないのですけど、こう言った時には『聖女』が私には相応しいと思うんです。聖女は、召喚されたときに回りの人間を殴り倒さない……いきなり襲いかかってきたから仕方がないと思いません? 格闘は、乙女の嗜みだと思うんですよ。
それからですね、このチョーカーには忌々しい縛りと言うのが有るんです。どう言うものかと言うと、女神様に逆らえなくなるんです。ええ、物理的に逆らえなくなるんですよ。もしも逆らったりすると、泣きたくなるぐらいの苦痛を与えられてしまうんです。一度反抗したときなんか、もう涎はでるは、漏らしてしまうわで散々な目に遭ったんです。だから、渋々『勇者』なんかをやっているんです。
「ヨーカ、誰に説明をしているんだ?」
今声を掛けてきたのは、エルビス・コステロ。本人が自称するところ、アメリカの高校生なのだそうです。アメリカのハイスクール……響きが素敵だと思いませんか。素敵だと思いますよね、アメリカングラフィティの世界だと憧れたんですよ。
でもエルビスは……いえ、頼れる仲間と言うのは確かです。こうして魔王城まで一緒に攻め込んできたんですからね。頼れる仲間と言うのは確かなんですけど……
「ヨーカ、だから誰に説明をしているんだ? それから、遠回しに俺のことを下げてくれるな」
下げていませんよ。ただ、正直に口にしないだけで。それは良いのですけど、なかなか魔王城に侵入できませんね。キャロル、女神様は何か言ってきた?
「今のところは何も……」
ひょっとして逃げた? もしも逃げたんだったら、引き返してぎたぎたにしてやるんだからね。ええっと、このチョーカーを外さないと無理か。
「このチョーカーは、私たちでは外せないのを忘れたの?」
聖女のあなたでも外せないの。そっかぁ、外せないのか。
ちなみに聖女をしているのは、キャロル・ベアールと言う同年代の女の子。悔しいけど、ふわふわの金色の巻き毛をした美少女だと思う。しかも教会での奉仕が日課だなんて、どんだけ信心深いのかと言いたくなる生活をしていたのよ。でも、それだけ信心深くても、こんな目に遭わされるんだ……キャロルの信じる神様もバチモンだったと言うことね。
「ヨーカ、主を勝手に貶めないでください。これは、主から与えられた試練なのですからね」
試練かぁ、試練ねぇ、訳のわからない女神とか出てくるんだけど、あれってあなたの信じる神様の系列に居る女神なの? 違うよね、宗教に詳しくないけど、あんな女神様がいるなんて聞いたことが無いもの。しかもなに、フローリアンって。おじいちゃんが昔乗っていた車と同じ名前じゃ無い。有り難みがないよね、うん、有り難みがないと思う。
そっか、あれは邪神と言うのね。だとしたら、あなたも辛い立場にいるのね。だって、あなたが使う奇跡って、女神様に願わないといけないんだから。
「お願い、せっかく割り切っているんだから……」
そうよね、現実に向き合うことなんてできないよね。それはそれとして、なかなか防御陣を突破できないわね。こっちは、2千人の兵隊さんが露払いをしているんだよね? なんか、押し返されているのは私の気のせい? 気のせいじゃ無い、相手が強すぎると言うのね。
もうさぁ、諦めた方が良いんじゃ無いのかな?
そう言うわけにはいかないだろうって、でもさエルビス、この戦いってずっと負け続けてるんだよね。私たちが必死と言うのは確かよ、でもあっちって余裕綽々に見えるのよ。それでも、人は滅びていないんだよね。つまり、あっちも限度を考えてくれてるってことじゃ無いのかな?
だったらさぁ、今の境遇を甘んじて受け入れると言うのも選択肢だと思うのよ。下手をしたら、私たちが攻め込むのがあっちの娯楽になっているのかもしれないのよ。もうね、私たちを巻き込んで欲しくないんだけど。
その可能性は否定できないと言うのね。自分だって、とっくの昔に嫌気が差していると言うのか。それは、そうかキャロルも同じなのね。でも、他にできることがないからこうして攻め込んでいる……そうよね、チョーカーの罰ってきついものね。
異世界があるぐらいだから、神様が居てくれても良いと思うのよ。ねえ神様、私たちって何か悪いことをしたのかしら? してないよね、私なんて真面目な女子高生だったんだから。だから神様、私たちを助けてくれないかな。違うわね、お願いしますから私たちを助けてください。おかしな女神なんかに、好き勝手させないでくださいよ。
あっ、自己紹介を忘れてた。私は十河陽佳、当年17歳の女子高生……だと思う。だって、この世界に来てから、こっちの時間で1年ぐらい経っているんだもの。それなら、当年18歳の女子高生か。長い黒髪をした、自分でも美少女だと思っています。スタイルは……忘れてくれると嬉しいかな。成績は中程度、運動神経には自信が有るけど、特に体育会系の部活には入っていませんでした。
以上自己紹介を終わります……ところで私って、一体誰に自己紹介したのかしら?
うむ、なかなか美味であった。アクトロス、褒めてつかわすぞ。それはそれとしてだ、まだ奴らは諦めておらんのか? 確か2千だったか、以前は倍の4千で攻めてきたと思うんだ。それでなんとかたどり着いたのに、どうして今度は半分の2千なのだ? もしかして、奴らは余のことを舐めておらんか?
そうか、策を練っている可能性があると言うのだな。だから女神も、ここに姿を見せていないと言うのか。ならばコレオスよ、ぬしに一つ命令を下すことにする。
「つまり、守りを少し弱めろと」
うん、その通りなんだけどね。どうして、余の先回りをしてくれるのかな。こう言った時は、悪役らしく罠を張るところだと思うんだよ。なになに、余は悪役では無いと言うのだな。それを否定するつもりは無いのだが、同じことの繰り返しに、いい加減飽きが来ているのだ。
そうか、お前も同じことを考えているのだな。そうだよな、同じことを一体どれだけ繰り返しているんだろう。もうな、サービスで討たれてやっても良い気持ちになったぐらいだぞ。
ところでアクトロス、一つ教えてくれなかな。今度の勇者は、確か女だったよな。どうだ、そそる見た目をしているのか?
見た目は悪くないが、寸胴だと言うのか。そうか、そっちの楽しみは期待できないのか。だったら魔法使いと聖女は……聖女も女。金色の髪をふわふわの巻き毛にしたそこそこの美少女……なかなか良さそうだな。美少女だけど、幼児体型をしているのか。そうか、世の中うまく行かないものなのだな。
熟れた女体ならここにあると言うのか。嫌だよ、お前怖いから。
俺は嫌いと言ったのだがな、どうして喜んでくれるのだ。そう言うところもだな、お前の怖いところなんだぞ。だから、恍惚の表情を浮かべるんじゃ無い。頼むドーフィン、アクトロスを余に近づけるな。
なんだコレオス……そうか、命令通り守りを弱めたのだな。それで、首尾は……そうか、勇者たちが突破してきたと言うのか。ならば余は、魔王として迎えてやる必要があるな。どう、この黒マント、魔王っぽく見えるかな? 満点、そうか、威厳も十分と言うのだな。では、早速お楽しみの時間と行こうか。
ははは、よくぞ参った。褒めてつかわすぞ。
どう、魔王っぽくやってるかな。あと一息、上から目線で希望をへし折れと言うのだな。
どうだ、余の情けは。己の力で、ここまでたどり着けたと思っておるのか。さあ勇者よ、せいぜい余を楽しませてくれることだな。
ねえ、気のせいなら良いんだけど。我が軍が前に進んでない? そっかぁ、気のせいじゃ無いんだ。もしかして、兵隊さんたちの頑張りが報われたのかな。その可能性よりも、魔王が遊んでいる可能性の方が高い。でもさ、私たちって魔王を殺しに来たんだよね。だとしたら、私たちを近づけるのって命取りだと思うのよ。そっかぁ、負けるつもりは無いと言うのね。だから、これも娯楽の一つだと言うのかぁ。
それって、間違いなく性格が悪いよね。うん、性格が悪いと思うんだ。でも、進まないわけには行かないよね。だって、私たちは魔王討伐に来たんだもの。
ところで、あの美形が魔王なの? 顔色の悪いのを忘れれば、私好みのイケメンなんだけど。うん、ああいったタイプが私の好みなんだ。繰り返すけど、顔色をもう少し良く出来ないのかな。
でも、台詞は間違いなく魔王ね。うん、とっても上から目線で言ってくれてる。でも、イケメンがやると似合ってるのよね。やっぱりさ、美形は正義だと思わない? そうよね、キャロルも同意してくれるよね。
「そんなことより、俺たちはしっかり囲まれているぞ」
せっかく浸っていたのに、もう少し空気を読んでくれるかな。私たちが浸っていても、相手は見逃してくれないと言うのね。それを否定するつもりは無いわよ、無いけどさぁ。元々私たちだけの突入って、勝ち目なんか無かったよね。
エルビスも気づいていたでしょ、オークが私たちだけを通してくれたの。あれって、この場面を用意するためだよね?
「否定はしない、否定はしないのだが、俺は俺として出来ることをするだけだっ!」
ああっ、エルビスが自棄になってる。気持ちはわかるけどさ、私だって現実逃避しているぐらいだから。でも、その魔法って広域破壊魔法だよね。うん、周りに沢山敵が居るから、魔法自体は間違っていないと思うよ。それでも疑問があるのは、私たちは誰が守ってくれるのかなと言うこと。そっか、キャロルが聖壁を張れば良いのか。
だってさ、キャロル。
ほほう、広域破壊魔法を使ってくるか。うむ、この状況において、魔法の選択は間違っておらんぞ。間違ってはおらんのだが、その程度の魔法で勝てると思っておるのか? その魔法だが、余のくしゃみに耐えることが出来るのか?
なるほど、アクトロスが手助けをしてやると言うのか。そこで、余が焦りを見せると面白いと言うのだな。よし、採用っ! わからないように手助けをしてやってくれ。
よしよし、なかなか魔法が育ってきたな。では、余の出番と言うことだな。
なんだ、その威力はっ! 人の身で扱える魔法では無いであろうっ! これでいいのかな、なかなか迫真の演技になっている。 ところで鼻がむずむずしてきたのだけど、くしゃみをしていいかな。と言うのか、もう無理っ!
はっくしょん
ああ、ごめんね。せっかく練り上げた魔法なのに、くしゃみで吹き飛ばしちゃって。うん、悪気は無いんだ。ただね。練り上げた魔法が埃を巻き上げたのが悪いんだよ。そう埃、それを吸ったから鼻がむずむずしちゃっただけなんだ。
だから、もう一度仕切り直しと行こうか。おやっ、ようやく女神様の登場ですか。いいねぇ、相変わらずそそる体をしているよ。それで女神様、今度は何を見せてくれるのですかな?
「魔王ヴェルサティス、あなたに引導を渡しに来ましたっ」
うん、それ前回も聞いた。前回も聞いたけど、結局泣きながら逃げていったよね。力の差をちゃんと理解しているのかな。
それから苦言を呈するけど、余所の世界から人を攫ってくるのは良くないと思うんだ。だって、その子たちにも親兄弟が居たんだろう? そこから攫ってくるなんて、魔王の余でもしないことだよ。君は、善を司る女神様と言う建前のはずだろう。人攫いなんて、一番卑劣な犯罪だと思うんだ。
「あなたに食われた幾万もの民たちの命。その仇を今ここに討たんっ!」
話を聞いていないなぁ。ほら、勇者の女の子も、うんうんと頷いてるだろう。しかも3人とも、しっかり涙目になって頷いてるじゃ無いか。可哀想だと思わないのかな?
それから、その黒チョーカーだけど。それで、無理矢理言うことを聞かせているのだろう。それもねぇ、しっかり悪役のすることだと思うんだ。余は魔王だけど、流石にそこまであくどい真似はしないぞ。と言うよりも、余がするのは人間の丸かぶり程度じゃ無いか。
「あなたが余裕を見せられるのはここまでですっ!」
おおっ、なんか床から光が溢れ出てきたぞ。なるほど、これが女神様の奇跡ね……でも、これって神罰の奇跡じゃ無いよね。勇者召喚の奇跡っぽいんだけど……なんで、そんなものを今更発動させるのかな?
「陛下、これは我らを異世界に転移させる奇跡ではないでしょうか?」
なるほど、召喚の逆をやろうとしているのね。倒せないのならどこかに飛ばしてしまえば良いと言うのだね。つまり勇者たちは、余に対する目眩ましと言うことなのだな。うん、今回はよく考えたと思うぞ。その点は褒めてつかわそう。だがな、相変わらず余所様に迷惑を掛けてくれるのだな。その心根、女神には相応しくないと思うんだ。
それから言っておくけど、一人逃げられると思ってくれるなよ。そうか、聖女だったか、お前も気に入らないと言うのだな。魔法使い、お前も腹を立てておるのか。では、お前たちの気持ちを尊重してやろうではないか。
どうしたフローリアン、顔色が良くないぞ。まさか、自分だけは逃げられると思っておったのか? それこそまさかと言ってやろう。前回取り逃がした反省を、余がしていないとでも思ったのか?
それから、お前の奇跡は止めることは出来ないぞ。ああ、余も色々と退屈しておったからな。なかなか良い余興だと感心させて貰ったのだ。だから礼として、お前も一緒に連れて行ってやろう。そうか、涙を流すぐらい嬉しかったのだな。
『人でなし』
そう言われてもだな、余は元々人では無いのだぞ。だから、人でなしと言われても、その通りだとしか言いようがないのだ。
おおっ、これが女神渾身の奇跡と言うものか。確かに、外の世界ががらりと変わってくれたぞ。ただなぁ、転移するのなら山の中と言うのはどうかと思うぞ。せっかくだから、獣以外の生き物の居る場所にしてくれないか。まあ、今更手遅れと言うのは認めてやる。
困ったなぁ、余はこれでもグルメなのだぞ。近くに美味しい人が居てくれると嬉しいのだが。ああ、それから勇者よ、お前たちを食べるのは当面保留ということにしておく。そしてこれは、余からの忠告だ。アクトロスが優しくしてくれると思うが、努々油断はしないことだ。ちょっとな、彼女は困った趣味があるのだよ。そうか、それだけで想像が付いたと言うのだな。拷問はされないので……拷問よりも酷いかもしれんな。だから、注意をしたぞ、余に責任を持ってくるなよ。
それから女神フローリアンよ、お前の処分も当面保留することにする。せっかく異世界とやらに来たのだ、その探索から始めるのが常識だろう? 余に勝てるとは思わぬが、この世界にも勇者のようなものがいても不思議ではあるまい。
それからだが、お前を褒めてやることにしよう。そうだ、お前はその身を犠牲にして魔王である余を異世界に封印したのだ。残された者たちは、お前の功績を褒め称えてくれることだろうな。ただな、女神の加護を失った世界が、この先どうなるのかは余の与り知らぬことだからな。
散々脅されていたので、宿の外観を見て驚くことは無かった。と言うか、この温泉の寂れ具合、温泉街全体の秘湯具合が凄いなと思えてしまったんだ。ただ、温泉街から見上げる山々、北アルプスと言うのか? 違う、妙高戸隠連山なのか。まだ雪の残る山々がとても綺麗だと思うんだ。まあ、集落にいれば、嫌という程見られる景色でもあるのだけど。
それはそれとして、何です立木さん。そうですか、お三方への挨拶を先にしろと。仰るとおり、人間関係は挨拶から始めないといけませんね。
初めまして。上里集落代表、IMO研究所所長の諸星と申します。そして隣に居るのが、妻のセレス、ルーテシアです。はい、戸籍上の妻はセレスだけです。ですので、重婚はしていませんのでご心配なく。
初めましてじゃない、奥飛騨温泉郷で顔を見ているはず……すみません、あの時はドタバタしていてご挨拶がしていませんでしたね。いけないなぁ、市会議員にあるまじき失態だぞ。とにかく、これからもよろしくお願いします。なんです、それはこちらの台詞と言うのは。うちは、まだ何も実績の無い小さな研究所なんですよ。先生たちに頭を下げられるような大した物では無いんです。
それで立木さん、これからの予定は? 特にない、宴会まで各自自由時間と言うのですね。なるほど、ここには共同の無料の露天風呂があるのですか。この宿には? 露天風呂はこの時間帯は女性専用なのですね。男性が使えるのは、明日の朝の一部時間ですか。女性優先って、結構珍しくありませんか? だから、公共の露天風呂に行くと言うのですね。了解です、早速大自然の露天風呂を愉しむことにしましょう。
と言うことで、立木さん案内で露天風呂に来ることになりました。黄金の湯ですか、野趣溢れると言うのか、まんま自然の露天風呂ですね。そうですか、第二近くに似たような露天風呂があったのですか。でしたら、そちらも復旧させることにしましょう。それはそれとして……
確かに溶き卵だぁ~
なにこれ、湯ノ花と言うのですか。それがこんなに大量に浮かんでる……というか、本当に溶き卵になっていますよね。ええ、ちょっと凄いと感動させて貰っているんです。そうですよね、凄いですよね。なるほど、この辺りの温泉は湯ノ花が特徴なんですね。そして上に来るほど、湯ノ花の量が増えてくるのですか。確かに、これは一見の価値があると思いますよ。
「ここの他にも、露天風呂があるんですよ。長らく災害で使用できなかったのですが、ようやく使用できるようになったんです。ただ混浴なので、諸星さんにはお勧めしませんがね」
どうして、混浴だと勧めてくれないのですか。理由は明白、俺がセレスに執着しているからと言うのですね。執着かぁ……確かに、セレスの裸は誰にも見せたくないのは確かですね。若いなぁ……ですか。別に悪い意味では言っていない、そう言った感情も大切なのだと。適度な嫉妬と言うのは、良好な夫婦仲には大切だと言うのですね。
もしもし立木さん、ちょっと考え方が枯れていませんか? 否定しない、60を超えればこんなものと言うのですね。国会議員のエロ親父は特殊な例だ……それって、国会議員に対する風評被害だと思うんですよ。
諸星さんにはあんなことを言いましたが、私は一人で更に別の場所にある露天風呂。川原の湯に行くことにしました。一期一湯、一湯入魂……まあ、色々な言い方はあるのですけどね。混浴を期待したわけではありませんよ、逆に混浴だと面倒だと言う気もしますからね。それに混浴って……今回家族風呂が無くて良かったと心から思っているんですよ。
途中までは楽な道だったんですよ。でも、最後の最後に難関が待っていましたね。これって、橋が落ちなくても結構大変じゃなかったのかな。しかも足下がぬかるんで、歩きにくいったらありませんね。ここの所晴れてて良かったと、つくづく思わせて貰いました。後は……熊とか出ないことを願っていますよ。上では、カモシカを見たことがあるもんなぁ。女将さん、熊もでるって言っていたし。
しかし、貸し切りですね。まあ、運が良いと言って良いと思います。黄金の湯も人が少なかったので、この季節はこんなものなのでしょうね。ああ、青空が綺麗ですね。束の間の平和と言って良いのでしょうか、嵐の前の静けさと言い換えても良いのかも知れませんね。いけないなぁ、心配性になってどうするんだ。
最初は脳天気な翼人、そして次は奴隷狩りとハイエルフ……しばらく時間をおいて逃避行中の竜人族でしたね。襲来するものが、だんだん剣呑になってくるのは気のせいでしょうか。次はもっと扱いの難しい問題が起きそうな気がするんですよ。
そう思いませんか、セレスさん。
「その、お邪魔をして宜しいでしょうか。それから、セレスと言うのは私のことですか?」
そこに居たのは、年の頃なら二十歳ぐらいの女性である。金色の髪を頭の上で纏めた、こんな所に居るとは思えない美しい女性だ。スタイルは……出来れば隠して欲しいのですが、インテグラぐらいかな? とても均整の取れたスタイルだと思いますよ。
それでセレスさん、私に何かご用ですか?
「どなたか存じませんが、私はクロアと申します。ここは混浴……と聞いてきたのですが、男性専用でしたか?」
いえ、混浴で間違っていませんよ。ですから、女性のあなたが入ることに問題はありません。ただですね、もう少し隠していただきたいと言うのが本音ですね。
「でしたら、見なければ良いだけだと思いませんか?」
それは仰るとおりですね。繰り返しますが、どう言うつもりですかセレスさん。そうですか、人違いを主張されるのですね。でしたら、今はそう言うことにしておきましょう。それでクロアさんは、こちらには観光でこられたのですか?
「はい、ちょっと単独登山をしようと思ったんです。ただ、途中で挫折をして戻ってきてしまいました」
そうですか、もう少し説得力のある理由が欲しいと言うのは贅沢ですか? まだ雪の残る妙高は、あなたのような女性が軽装で単独登山をするような山ではありませんよ。
「だから、あなたを目的にしたと言いたいのですか? 申し上げにくいのですけど、流石に自意識過剰ではありませんか?」
なるほど、自意識過剰と言ってくださいますか。そして、この出会いは偶然と言うのですね。でしたら、私はこれで上がらせていただくことにします。あなたと言う存在が現れたことで、山奥の秘湯感が消滅してくれたんです。ですので、ここに留まる理由がなくなってしまいました。それに、体も十分温まりましたしね。
「そうですか、せっかくの楽しみを邪魔してしまったと言うことですね」
いえいえ、ここは開かれた混浴温泉なんです。ですので、私が勝手に浸っていたと言うことですよ。
「私が隠していないのに、殿方であるあなたが隠されるのですね?」
その辺りは、文化の違いとご理解ください。それに年寄りの貧相な体ですから、人様にお見せするようなものではないんです。
「それもまた、見解の相違があると思いますよ。そのですね、はしたないことと言うのはわかっているんです。ですが、ちょっと昂ぶりを感じたりしているんです」
多分ですけど、お湯で体が温まっただけだと思いますよ。ここのお湯は、体の芯まで温めてくれるんです。
「そこそこの説得力を持つ説明ですね。では、もう少し言い方を変えさせていただきます」
私を抱きなさい
意外に早く正体を現してくれたのですね。ええ、私は魔法も恩恵も使えない一般人です。ですから、強制力のある命令に抗えないことはわかっているんですよ。なので抱けと言う命令には抗えません……抗えませんから『精一杯』愉しませて差し上げましょう。
お帰りなさい立木さん。遅かったので心配したんですよ。なぜかセレスが一番心配していたんですけどね。それはそれとして、左腕を捕まえている女性はどなたですか? なにか、もの凄くデレているんですけど。そうですか、詳しい説明はあと、疲れているので一休みしたいのですね。
「本気で後悔なんか感じているんですよ」
なにをと聞かない方が良さそうですね。ええ、今は触れないことにしておきます。それで、その女性はどうするのですか? 宿泊者を一人追加……後から詳しい事情を教えてくださるのですよね。そうですか、説明の方法を考えると言うのですね。何か、もの凄く厄介なことになっていませんか?
それから立木さん、ラズライティシア様とインテグラのご機嫌取りをお願いします。ええ、先ほどまでは心配なんかしていたんです。でも今は、しっかり目が吊り上がっているんですよ。俺の手に負えませんので、よろしくお願いしますよ。ああっ、立木さんが連行されていったよ。
それであなたは? なるほど、お名前はクロアさんと仰るのですね。名前の由来は、お母様から一部を貰ったのですか。それは良いのですけど、どうして俺を『お父様』と言うんですか? この体は24ですし、転生前なら30になったのかな。子供を持ったことはありませんし、あなたのような大人の女性にお父様と呼ばれることはないと思っているんです。
それはそれとしてですね、色々と説明をして貰いたいのですけど。その前に、お腹が空いたので夕食を食べさせろと言うのですか。もしもし、ご自身の立場と言うのを理解されておいでですか?
「お腹が空いていては、口も重くなると言うものですよ」
そう来ましたか。だったら逃げないと約束……別に逃げてくれても良いのか。まあ、宴会で宜しければ楽しんでいってください。立木さんですか、自業自得ですけど捕まっているんです。ええ、あの二人ががっちりとガードしているんです。疲れているようだから、少し癒やしを与えたいって……もしかして、そちら系の方なんですか? ところで、誰があれだけ疲れさせたんでしょうね。
細かな事情を忘れるとして、美味しいですねこの料理は。はい、面倒を先送りしているのは自覚しています。繰り返しますけど、美味しいですよねこの料理。いえ、贅沢な食材を使っているわけでは無いんですけどね。地のものと言えば良いのか、新鮮な野菜とか川魚とか、山菜とか……そうですか、それが贅沢な素材なんですね。はい、お蕎麦も美味しいと思います。流石は新潟、地酒もとっても美味しいと思いますよ。
それはそれとして、小谷さん、一升瓶のお酒を湯飲みで飲むのははしたないと思うよ。だからと言って、コップ酒もどうかと思うんだ。しかも、どうして空の一升瓶が転がっているのかな? 美味しいから仕方が無い、岩魚の塩釜が美味だった。佐渡牡蠣の佃煮も酒が進む……また冷凍マグロになっても知らないからね。
ああ、御衣黄さんが教授たちと盛り上がっているよ。だけどなぁ、本山さんの首を抱えるのはどうかと思うんだ。意識していないと思うけど、しっかりと胸を押しつけているからね。そうやって、ペしぺしと頭を叩くのもどうかと思うんだよ。本山さんが嬉しそうってのは、取りあえず見ないことにするからね。それからシャルロットだけど、そうしていると孫に見えるよ……大芝さんたちの。
うん、わかっていたけどエクシブは飲むねぇ。美味しいから仕方が無い、流石は立木の見立てだと言うのだね。一応立木さん、君より年上なんだよ。だからね、呼び捨てにするのは良くないと思うんだ。そうか、自分は勇者だから『偉い』と主張するのか。なるほど、勇者は偉いんだ。まあ、国王だって頭を下げるぐらいだからね。偉いと言うのは間違ってはいないのだろうね。うん、試しにだけど、俺と勝負をしてみるかな? それから、土下座はいらないからね。
そのですね、ちょっと苦言を宜しいでしょうか。ええ、コロナ様とセリカなんだけどね。もうちょっと、ご自身がされている格好を気にしていただきたいんです。温泉の浴衣と言うのは、とってもガードが緩いんですよ。こうして近付くとですね、見えてしまうんですよ胸元が。はい、先っぽまでしっかりと。
見えてしまうのでは無い、わざと見せていると言うのですか。ちなみに誰に……そうですか、俺に見せていると言うのですね。ほんのりと肌が赤くなっていて、そそられる色香だろうと言うのですか。否定はしませんけど、まだ宴会は続くんですよ。
続いて当然、まだまだ飲み足りない食べ足りないと言うのですね。この川魚……ええ、岩魚と言うのですけど。その焼いたのが絶品なのですか。ただあちらだと、塩が高級品なのでこんな真似をすると反感を買うのですね。ちなみに、これは塩だけじゃ無くて卵白も使っているそうですよ。
ところでお二人は日本酒でも……ああ、ワインを頼まれたのですね。このワインも上質、樽であちらに送りたいと言うのですか。伯爵としてそれぐらいの献上品を用意しても良いのですけど……お返しに王位をくださる。そちらは、謹んで遠慮させていただきます。遠慮はいらない……前にも言った気がしますけど、遠慮と言うのは遠回しに断っていることなんですよ。
ところで手遅れってなんです? もう布告は終わっている。周辺諸国へも招待状は発送済み。戴冠式は、日本国総理大臣にも立ち会って貰うことになっている。いつの間にそんな話が……だから菅谷総理は『手遅れ』と言ってくれたのかっ。
「セリカもそうですけど、跡継ぎを沢山作る必要があるんです」
だから、今夜から取りかかる。あのですね、男と言うのは飲み過ぎると役に立たなくなる生き物なんですよ。なんです、嘘はいけないと言うのは。他の殿方は知らないが、俺だけは絶対にそんなことは無いと言うのですね。心の棚だって、とうの昔に増設が済んでいるはずだろうと。
その、なんだ、増設する度に逼迫するのは俺の気のせいなのか?
それは良いのだけど……いや、ちっとも良くないか。それはそれとしてだ、クロアさんはどうしているんだ。そうか、セレスが相手をしてくれているんだな。ただな、一緒に居る姿を見ると、なぜか姉妹に見えてしまうんだ。クロアさん、どうかしたのかな? 姉妹では無く母娘だと言うのかな。あのさぁ、戸籍上は二十歳にしているけど、セレスはまだ18ぐらいなんだよ。
それは忘れるとして、何の話をしていたんだ。説教……セレスがクロアさんに説教をしたと言うのか? ごめん、ちょっと状況が理解出来ないんだ。それで、どんな説教をしたんだ? 言えない、母娘の秘密と言うのか? 繰り返すけど、母娘ってナニ?
「いえ、はしたない真似は良くないと説教をしていました」
はしたない真似はダメ……うん、駄目だよね。具体的には、何のことを言っているのかな。そうか、それも秘密と言うのか。だったら聞かないけど、クロアさんは何者なのかな? それも言えないと言うのか。だとしたら、何のためにここに来たんだい。
「お母様に苦情を言いに来ました」
だから、どうして二人とも母娘を前提に話をしてくれるのかな。ああ、どうせ説明してくれないんだよな。それで、苦情ってどんな苦情を言ったのかな?
うん、軽はずみな行為のせいで、末端世界に揺らぎが出ていると言うのか。一つ疑問なのだが、どうして苦情の宛先がセレスなんだ? それも秘密……それ以外にも謝罪が必要だったと言うのか。あまり聞きたくないんだけど、謝罪って何に対する謝罪なのかな? そうか、俺の予想が当たっているんだな。ちなみに今度はなに? なるほど、魔王がやってくるのね。魔王ねぇ……そろそろ来るかとは思っていたよ。それで、いつ頃? いつが良いかって……出来れば、今夜は避けて貰えると嬉しいな。うん、魔王が来ると、宴会が楽しめなくなるんだよ。
後は……できるだけ、みんなの迷惑にならない場所がいいと思うんだ。川とかせき止めたら、下流の人が大変だよね。地形を変えるのはもってのほかだと言っておくよ。承知した……承知されるのも嬉しくないと言うのは贅沢なのかな?
実は黄金の湯近くてカモシカなんか見かけたことがあります。熊じゃなくて良かったと心から思っていたりします。ええ、女将さんの話だと、たまに熊も出るみたいですけど




