賛否両論
村の特産は異世界です
・賛否両論
竜人族10人の身柄確保の情報に、比喩的表現ではなく世界が沸騰した。まあ彼らの襲撃で、わかっているだけで数万もの命が失われたのだ。騒ぎにならない方が異常と言うのは確かに違いない。
従って、今日も記者会見と言うものが開かれることになった。ちなみにこの会見だが、出席者は副所長である立木さんだよ。だってあっちも、立木さんの方がやりやすいと思うんだ。と言うことで、テレビテレビと。おおっ、眠そうな顔をした立木さんが映っているよ。
「3日連続で、IMO研究所の立木副所長においでいただきました。ところで立木さん、いつの間にか経理担当から副所長になられたのですね。おめでとうございますと言っても宜しいのでしょうか? ご活躍が認められたと言うことですよね?」
「最初に、おめでとうを疑問形で言われたのがすべてだと思いますよ。はっきり言って、面倒を押しつけられたと思っていますので」
うん、その自覚はしっかりあるよ。ただなぁ、後沢や堀内からも賛成されたんだ。
「それはお疲れ様としか言いようがありませんね。それはそれとして、これで立木さんも責任ある立場となったわけです。本日は、色々と質問に答えていただきたいと思います」
「一応お断りしておきますが、民間の研究所であると言うスタンスを崩しませんので悪しからず」
うん、やっぱり立場が付いてくると、攻撃的になりにくいな。まあ記者席を見る限り、問題のありそうな奴は紛れ込んでなさそうだし良いだろう。
「竜人で宜しかったですか、立木さんに最初のコンタクトがあったと伺っています。その状況を教えていただけないでしょうか?」
「説明しなければいけないこととも思えないのですが……昨日の会見で、休暇を取ると宣言したかと思います。その休暇を取るため、妻と二人で蓼科にある本がとても豊富な温泉宿に行くところだったんですよ。もうね、頭が疲れたので、のんびり本でも読んでリフレッシュしようと思ったと言うことです。良いですよ、本の一杯有るラウンジと言うのは。本に囲まれて美味しいコーヒーを飲む。至福の時間だと思うんですよ」
「ほう、蓼科にそんな素敵な温泉があるのですね。寡聞にして知らなかったのですが、後でこっそりと宿の名前を教えてください……ごほん、個人的な話は置いておくとして、それはとても素敵なプランですね。でも、こうしてここに居る以上、休暇を取れなくなったと言うことですか」
3回目ともなると、お互いシンパシーと言うのが生まれるのかな。なんか、とってもフレンドリーな対応をしてくれるよ。違う、まともにぶつかると粉砕される。だから、ご機嫌取りから始めていると言うのだね。
「そう言うことです。いえ、3日間の休暇は確保したんです。ですから、2泊3日の予定で車で温泉に向かったんですよ。そこで予感と言えば良いのか、悪寒と言えば良いのか、ただならない気配を感じてチェーン脱着場に車を止めた、と言うことです。ちなみに、研究所では空間転移の検出を続けています。だから接触があるとすれば、空間転移を使わないと予想はしていました。そして予想通り、彼らは空間転移を使ってきませんでした」
「そこで、竜人と接触されたと言うことですね」
「そう言うことです。そこで接触したのが、インテグラと名乗る女性形態の竜人と、カングーと名乗る男性形態の竜人と言うことです。接触してきた理由は、彼らを保護して欲しいと言うものです。なぜ私かと言うと、私が弱いからなのでしょうね。ただはっきり言って手に余りますので、荷造り紐で拘束して諸星氏の前に引っ立てました」
「また、荷造り紐ですか?」
「ええ、また荷造り紐です」
お互いに苦笑が浮かんでいるのは、1巻100円ちょっとで売っている荷造り紐が活躍したことだろう。だけど荷造り紐って、かなり使い勝手が良いんだよ。
「それで、IMO研究所としてどのように対応されるのですか?」
「そう質問される理由は理解しています。ただその質問自体、イレギュラーであることをご理解頂きたい。そもそもIMO研究所の目的は、異世界からの訪問者に対処することではないんです。御衣黄研究主任の説明があったとおり、研究の目的は人類の老化に対する挑戦なんです。繰り返しますが、異世界からの来訪者に対峙することではないのです。ちなみに本業の方は、京都の本山教授の協力を得て徐々にですが進んでいます」
「その本山教授ですが、立木さんの人脈と伺いました。それは正しい情報なのでしょうか?」
「居酒屋で意気投合したのを、人脈と言うのならそうでしょうな。ちなみに、私たちの場合は居酒屋ではなく温泉旅館なのですが」
「なるほど、人の出会いと言うのはどこであるのかわからないと言うことですか」
「それはそうなのですが、私の個人的情報をほじくり返すことに意味があるのですか?」
「3日連続で会見をしている。それだけで、立木さんが注目を集めていると言うことです。SNS等で評判になっているのをご存じありませんか?」
そうなの、そうなのか、だったら俺は? 今のところ、特にないのか。そうか、露出が少ないのが良くないんだな。
ちなみに聞いておくけど、立木さんの評判はどうなってる? なんだい、その『立木寝ろ』と言うのは。そうか、会見に出る度にぼろけていくのが理由なのか。ちなみに他の評判は? ごく一部からは蛇蝎のごとく嫌われている。蛇蝎のごとくって……確かに毒は吐いたけど、そこまで嫌われることなのかな?
「分析によると……いえ、分析するまでもないのですけど、排除された女性活動家、もとい、女性記者の関係ですね。民主主義の敵とか、政府の犬とか罵倒されています。ただ関係者の中には国会議員もいるのですが、今のところそちらは沈黙を守っていますね」
それは、賢明な判断だと思うよ。言論の自由はあるけど、その自由にしても無制限じゃないんだからね。違う、そんな高尚な考えからではない。だったらなんで……下手に絡むと世論にフルボッコにされるからと言うのだね。異世界と言うだけでもすごいのに、各種問題を解決しているのが決め手になっている。テレビ局が、立木さんのことをコメンテーターで狙っているんだ。そうか、それで俺は狙われていないのか? 今のところ、それはないと言うのだね。そっかぁ、もう少し露出した方が良いのかなぁ。
「ちなみにですね、セレスさんを芸能関係者が狙っているようです」
なぜセレスを。いや、確かにセレスは綺麗だと思うよ。でも、さほど露出していないよな。
「銀座のブティック……で心当たりがありませんか?」
銀座のブティックって、衣装の代金で写真を撮ったところかな? そうか、あれが注目されているのか。だったら、その線で俺も注目されていないか。そんな話は聞いていない……そうか、聞いていないのか。
「後はですね。ハイエルフたちも注目を集めていますね。こちらはトベとチクタクが理由なんですけど、見た目と体のキレが評価されています」
確かに、あれはすごいよね。だったら、翼人の方はどうなんだい? そうか、注目はされているけど使いにくいと評価されているんだ。日本では、翼人よりもハイエルフの方が受けが良いのが理由なんだね。
「竜人に対する公聴会を、日本で行うことになったと伺っていますが。当然立木さんもご存じですよね?」
「ええ、公聴会への出席依頼が研究所に来ています。ちなみに、その対応は所長の諸星さん、秘書の小谷さんが行うことになっています」
「小谷さんですか、確か菅谷総理の私設秘書の方だったかと?」
「諸星さんたちが帰還してから、ずっと一緒に行動されてきた方です。ある意味、もっとも諸星さんに信用されている方と言うことになりますね」
「また、癒着と騒ぐ人が出そうな関係ですね」
この人、明らかに馬鹿にしているよな。そうか、報道関係者として、あの手の奴は嫌いだったんだな。
「勝手に騒いでくださいと言うのが正直な所です。もう、なんと言えば良いのか、どうして私は馬鹿です、考えることを止めましたと大声で叫んでくれるんでしょう。自分たちは報道と言う既得権を振り回すのに、そのくせ既得権を悪いことのようにわめき立てるんです。理系の私には、その矛盾した神経を理解することが出来ないんですよ」
「いつもながら、辛辣なご意見をありがとうございます。色々と考える所のあるご意見なのですが、私の立場では肯定も否定も出来ません。では、ここからは各社の質問を受け付けることにいたしましょう」
ああ、ここでも牽制が効いているんだね。そうか、最初にインタビューした人もグルになっているんだ。
それで、竜人をどうするのか、かな。それって、聞く相手を間違っているよね。どうせなら、もう少し踏み込んで、だな。えっ、立木さん真面目に答えるの?
「竜人ですか。研究所の立場としては、研究対象と言うことになります。考えてもみてください、竜人は人の姿と竜の姿をとることが出来るのですよ。その仕組みを解明する手がかりがある以上、当研究所として研究対象とするのは当然だと思います」
「つまり、IMO研究所として利益を独占されると言うことですか? その研究結果は、人類の財産として共有されるものだと思いますがいかがなものでしょうか。加えて言うと、他の研究機関に対しても門戸を開放すべきと考えます」
おやおや、建前を前面に出してきたね。でもさ、その程度なら簡単に躱すことが出来るんだよ。
「他機関との関係ですが、すでに京都と協力関係を構築しています。従って、それ以上の要求は発足して間もないスタートアップには過剰な要求だとお答えします。それから、成果を共有することは考えています。ただ、民間企業である以上、正当な対価を得ることは許されるのではないでしょうか」
「繰り返しますが、門戸を開放することを考えられていますか? 具体的には、竜人の帰属先を言っています」
おや、どこかの息が掛かっているのかな。そりゃあ、あの力を見れば手元に欲しいと考えてもおかしくないよな。でもさ、とっても大切なことを忘れていると思うんだよ。
「研究対象とは言いましたが、実験動物と言ったつもりはありません。研究に当たっては、彼らと交渉し、合意の下行うことを考えています。従って、他の機関が同じことをされるのを妨げるものではないとお答えします。ただし、交渉の際には私どもに頼らないでいただきたいと申し上げておきます」
うん、答えとして正論と言うのは確かだと思うよ。ただあの惨状を見て、どうすれば俺たちを外して交渉できるのだろうな。
「門戸開放が、非常な困難を伴うことは理解しました。もう一つ伺いますが、他の機関との共同研究は拡大されますか」
「拡大しない方がおかしいと思いますよ。先ほど申し上げたことは、研究所としての利益のことを言っています。ただ人類の利益を考えれば、数多くの優れた方に関係していただきたいと思っています」
「そのお考えには、大いに賛同させていただきます」
「ただし、私どもは発足したての小さな研究機関なのです。従って、あまり多くを期待しないでいただきたいと思っています。正直申し上げると、圧倒的に人手が足りていないんです。幸い、彼らの寿命は私たちよりも圧倒的に長いそうです。ですから、ゆっくりと立ち上げていけば良いかと思っています」
確かになぁ、圧倒的に人手が足りていないんだよ。この条件で研究を続けるのなら、うちが独占してできる範囲でするしかないんだよな。
「IMO研究所の規模は理解いたしました。でしたら、業務範囲を広げる計画はあるのでしょうか。加えて言うと、更に資金を集める予定はあるのでしょうか?」
「そのことについては、所長の諸星さん、実質オーナーとなっている後沢氏、堀内氏へ質問していただきたい。副所長を拝命することになりましたが、私はハロワに登録していた身なんですから」
「立木さんが、ハロワに、ですか? ちょっと信じられないのですが?」
俺も、後沢に教えられたときには耳を疑ったからな。そして最近は、絶対嘘だと思うようになったんだよ。
「ハロワに登録したのは、引退して年金生活に入るつもりだったからと言うことです。要は、失業保険受給のためですね。年金までの繋ぎを考えたとご理解ください」
「個人事情をお話しいただき感謝します。ところで、転移検出システムですか。これを商品にはしないのですか?」
「こんなもの、どこに市場があるのでしょうね。将来的に市場があるのかも知れませんが、特許の権利期間内では無理だと思いますよ。そもそも計測値に基づく生成地点推定なんて、使い古された技術でしかないんです。特許にしたところで、新規性とか進歩性とか……簡単に拒絶されそうな気がしますよ」
業務拡張ね。確かに、考えないといけないのだろうな。空間転移検出システムは……これまで受けた恩恵に対する対価と考えておくことにしよう。なんて言ったっけ……パブコメ、違うな。奧さんありがとうございます。パブリックドメインと言うのですね。
ところで奧さん、またメッセージが来ていますね。ええ、お嬢さんと息子さんからですよね。はい、わかっていますよ。3日も連続してテレビに出れば、流石におかしいと考えても不思議じゃ無いですよね。
「いえ、一度こちらに顔を出したいと言ってきたんです」
立木さんのご家族なら、歓迎しますとお答えします。そうお答えしますが、大丈夫なんですか? 自分で言うのはなんけど、ここってかなり特殊な環境だと思うんですよ。その、普通の人にはちょっとつらいのかなと。
その心配はいらない。特にお嬢さんへの心配はいらないのですね。なんです、小さな頃から鍛えられていると言うのは。どちらかと言えば、息子さんの方が問題だと言うのですね。それにしても、多少程度なんですか。それはそれとして、お嬢さんは海外にいらしたと思ったのですが。そうですか、今度一時帰国されるんですね。
ええっとですね、ちょっと興味本位の質問なんですけど。その、御衣黄さんをどう紹介するんですか? お父さんの彼女、いいんですか、そんな紹介をしても。でしたらラズライティシア様は? 同じく彼女、ですか。いえ、そう紹介するしかないのはわかるんですけどね。特にお嬢さんの立場では、同年代の彼女って問題だと思うんです。同年代じゃ無くても、彼女と言うのは問題だと言うのですね。仰るとおりなんですが、本当に大丈夫なんですか。
竜人に対する公聴会なんだけど、日本で行うのは仕方がないのだろうな。何しろ竜人には、多くの人が食われていたからな。国連本部のあるニューヨークでも被害が出ているのだから、そこに加害者を連れて行けば過剰反応が起きても不思議じゃない。その意味で言えば、中国やロシアもダメだし、EUもダメと言うことになる。中東は……別の意味でも火種になるので除外されていた。
それはそれとして、どうしてハイエルフや翼人の出席も依頼されるんだ。目的は、被害を引き起こした竜人に対するヒアリングだよな。どう考えても、翼人たちに直接の関係はないと思うのだが? ただ菅谷総理にお願いされた以上、応えないと言う選択肢はないのだけど。その辺りが、俺の弱みと言うことか。
それでヒアリング会場だけど、選定にはかなりの苦労があったようだ。その中で最優先されたのは、いざと言う時の安全確保、周辺への被害拡大の抑制だったらしい。従って、人口密集地からは離れた場所が候補としていくつかあげられた。そして候補としてあげられた施設周辺では、猛烈な反対運動が広げられてしまった。
まあね、襲撃時の映像を見せられれば、反対したくなる気持ちも理解出来るよ。そもそもヒアリングが日本で行われることになったのも、襲撃を受けた各国の感情に配慮した結果だからな。ババを押しつけられたと思っても、少しも不思議はないと思うぞ。
対応に苦慮した日本政府は、ヒアリング会場として陸自の東富士演習場を使用することにした。ドンパチの訓練を行う場所なので、反対運動もあまり盛り上がらなかったようだ。しかも交通の便……空路が使えるので悪くないと言うのも良かったらしい。テロ対策の面でも、陸自が守るので問題が無いと言うのが決定理由になっていた。一部ネットででビッグサイト(聖地)と言う声も上がったが、論外と議論にもならなかった。
ちなみに、なぜか大谷村が手を上げたりしていた。ただ大規模会議を開催するには、要求される施設がないと涙を呑んで断念したそうだ。しかしなんだ、随分アグレッシブな村だと思うぞ。そうか、視察ツアーを勝ち取ったと言うのか。お陰で俺は、村長に頭を下げられてしまったぞ。
その公聴会なんだけど、開催は1ヶ月後と決定された。そこまで時間が掛かる理由は、第一に会場選定に苦労したことがあげられる。バラックを用意するにしても、出席者が1千名を超えてくれたのだ。そこに報道関係者が加わるので、サミットを超える準備が必要になってしまった。1万人を優に超える人々が集結すると言うことは、それだけ準備に時間が掛かると言うことだ。
その公聴会までの間なのだが、竜人10人は上里集落に逗留することになった。この辺りは、まあ、予想通りと言って良いのだろうな。ただ入れ物が足りなくなったので、パンの国も使うことになってしまった。うん、奧さんが優秀で助かったと思うぞ。何しろ指示をしなくても、視察団の受け入れ準備までしてくれたのだからな。機を見るに敏と言うのは、間違いなく優秀な証拠だろう。
太陽電池が並ぶ光景は、流石に壮観と言って良いと思う。通信回線の増強も行われたし、携帯電話の基地局まで建設されてしまった。ただなぁ、異世界の有り難みがなくなったと言えば良いのか。まあ、旧エルフ集落だけと思って見ないことにした。
「領民たちも喜んでいますよ」
なんでと聞いたら、『世界の中心に格上げされたから』と言うのが奧さん、つまりセリカの答えだった。こちらの世界から物資が運び込まれ、色々と設備が整えられていったのだ。当然食糧も運び込まれてくるし、消費される物資も各地から集められることになった。それに伴い人も集まってきたので、ポンパドール伯爵領は、王国一賑やかな場所になったのだそうだ。
それからコロナ、何か言いたげな顔で俺を見るんじゃない。ちょっと国王になって欲しい……王様なんて、腰掛けでなって良いものじゃないよな。
運良くと言って良いのかわからないのだが、工事の間が空いたので第二を使えることになった。従って、竜人10人を第二別館に収容することにした。いい加減人数が増えたので、自衛隊から増員をして貰うことにした。勿論、調理担当者の増強である。
「谷山竜司と言います。洋食系の料理を担当しています。趣味はハイエルフです」
「外村美鈴と言います。好物はアニキ系です。和洋中、特にカレーを得意としています」
うん、久しぶりに言おうかな。
大丈夫か自衛隊。
本当に久しぶりだと思うよ。特に外村さん、料理よりも先に『好物』と言ってくれたよな。しかもなんだ、『アニキ系』って。それはなんだ、むさい男が大好きと言うことなのかな。筋肉は正義って……もう一度言っておこうか。
本当に大丈夫か自衛隊。
「誤解されているようですが、イケメンも大好物です」
うん、そっちの情報は求めてないから。
この外村さんなんだけど、外見は結構可憐なんだよね。しかし自衛隊員って、豊満系は居ないのかな。それは良いのだが、その可憐な美女が、『筋肉大好き』って……だから自衛隊に入ったのかな。まさかと思いたいけど、その疑念を拭い去ることが出来ないんだ。
そしてもう一人の谷山さん……ちょっと落ち着いた感じのするそこそこのイケメンなんだよな。外村さんを見た後だと、常識人に思えるのが不思議だと思う。でも言っているのは、『趣味はハイエルフ』なんだよ。なんかもうね、世界にはオタクしかいないのかと不安になってしまったよ。
趣味があるのは悪いことではない。その趣味で、他人に迷惑を掛けていないと言うのだね。確かに迷惑は掛けられていないし、それが仕事の励みになるのなら悪いことじゃないよ。それから、ここは恋愛は自由だからね。そうじゃないと、白船君の立場がまずいことになるんだよ。ただトラブルを起こしたら、すべてを忘れて自由になって貰うから。
色々と不安を抱えた二人だったけど、料理の腕は確かだったようだ。そして意外なことに、カレーが好評を博してくれた。それに気を良くした二人は、ナンまで焼くようになったぐらいだ。しかも第一から、彼らのカレーを求めて第二に遠征する奴ら……ハイエルフとか翼人とか……まで現れる始末なんだ。
ところでコロナ王女、お昼時にお散歩ですか? なるほど、第二まで散歩に行かれるのですね。目的は……そうですか、カレーに嵌まっているのですか。それで今日は、カレーうどんに挑戦してみるのだと。でしたら、一つ忠告をさせていただきます。カレーうどんを食べるのに、その白いワンピースは不向きだと思います。せっかく綺麗なワンピースなのに、黄色い点々を付けたくはありませんよね。
しかし、王女様まで虜にしたのか。凄いな、カレー&スパイスの力と言うのは。なになに、早速王国にも導入したいと言うのですね。でしたら手っ取り早いのは、市販のルーを使う方法です。早速手配をする。薄墨さんにお願いしてくれれば入手してくれると思います。
ところで休暇を潰された立木さんなのだが、ぶち切れて1週間の休暇を強行してくれた。目的地は、ドタキャンとなった図書館温泉……そんな名前ではない、まあ、わかりやすくてい良いと思うよ。ただなぁ、前回のドタキャンで印象が悪くなっていないのかな。ひょっとしたら、出禁になっている可能性もあるんじゃないのか。
その心配はいらない。旅館側からは感謝されている。どうして当日キャンセルして感謝されるんだ。ちょっとわからないのだけど、理由を教えて貰っていいですか?
「会見の時に、具体的な場所を口にしたからです。あれから予約が殺到しているので、感謝されたと言うことです。ただ予約で一杯なので、無理を言って部屋を確保して貰いました」
なるほど、そう言う理由でしたか。だとしたら、当日も大変だったのでしょうね。そうですか、大変だったのですね。旅館に着いたら、支配人以下大勢のお出迎えを受けてしまったのですか。しかも宿泊客まで、スマホを持って殺到してくれたのですね。言ってはなんですけど、こうなることは予想できたことですよね。
そうですか、お陰で部屋に篭もることになったと言うのですね。ただラズライティシア様とインテグラは、積極的にロビーに行っていたと。そちらの理由も伺っても良いですか? なるほど、お土産物売り場に興味があったのですね。景色とカフェも喜んでいた……露天風呂のはしごもしていたんですね。
これは興味本位の質問なんですけど、立木さん、疲れは取れましたか?
「意外に落ち着いた時間を過ごすことが出来ましたよ」
あの二人と御衣黄さんが居て、ですか。もしかして、牽制し合ったからと言うことはありませんよね。違う、それだったら緊張感に溢れて寛ぐどころじゃないと言うのですね。ええ、そんな状況を予想したんですよ。でも、違ったと言うことですか。
「二人とも、とても落ち着いたものでしたよ。夜も、大人しく部屋で寝てくれました。まあ、家族風呂は……私が我慢しましたけどね」
その我慢したの方向が気になるのですけど、入らなかったと言うことではありませんよね。そうですか、それは許されなかったと言うのですね。ですよね、彼女たちが許してくれるはずがありませんよね。
これで十分休息もとったのですから、バリバリと働いて貰うのでよろしくお願いします。なんですか、そうは問屋が卸さないと。なるほど、お嬢さんと息子さんがおいでになるのですね。迎えに行ったりするので、しばらく手が回らないと言うのですか。
そうですか、これから奧さんと一緒に糸魚川までお迎えに行かれるのだと。おいでになるのは、お嬢さんとその旦那さん。息子さんとその彼女さんと言うことですか。ところで、どこに泊まられますか? 第二に部屋がありますけど、そちらを利用されますか? そうですか、すでに部屋の準備まで出来ているのですね。立木さんが段取魔と言うのを忘れていましたよ。
よしっ、今夜は大宴会だな。
はい、大宴会です。蟹の季節が終わったので、タグ付きのズワイガニは用意できませんでした。加えて言うと、牡蠣の季節も終わっていました。その代わりがホタルイカって、お酒のあてには良いけど、ちょっと地味ですよね。だからと言うことはないと思うのですけど、山岡さんが巨大タラバガニを仕入れてくれてました。後は、かなり大振りな毛蟹も沢山……勿論これでもかと言う程牛さんも用意してありました。
ところで、ラーメンコーナーも出来たんだね。その黒いラーメンって……有名な富山ブラック。見た目よりは、ずっとあっさりしていると言うのだね。そうか、ついでにカレーコーナーも出来たのか。串焼き……焼き鳥の気もするけど、あれはパンの国から連れてきた料理人なんだね。ますます混沌としてきた気がするけど、俺の気のせい……じゃないんだ。まあ、みんなが楽しんでいるから良いんだけどね。
それはそれとして、お父様にはお世話になっています。いえ、振り回されたりなんかしていませんよ。こんなこと、嘘を言っても仕方がありませんよね。ところでお嬢さん、そうですか、優美さんと仰るのですね。旦那さんは、陽介さんですか。初めまして、諸星孝明と申します。
そのですね、窮屈な思いをされていませんか。そんなことはない、ただちょっと驚いているだけ。それにしても、予想とは違っていたと言うのですね。宜しければですけど、どう違っていたのか教えて貰えますか?
「もっと秩序がないと思っていました。思ったより、皆さんこちらの常識に染まられているのかな」
その辺り、お母様、ケイコさんが先生をしているからだと思いますよ。その分、ご迷惑をおかけしていると思いますが。
別に気にしなくて良い。そうなんですか? 結構タフな人だから、この程度でめげることはないと言うのですね。それでお父様のことですが……安心されたのですか。この環境を見て、色々と納得することが出来たからと言うのですね。あのぉ、これを見て本当に安心できるのですか? 責任者がそんなことを言ってはいけない。仰るとおりと言うのはわかっているんですよ。ただ、なかなか頭の方が受け入れてくれなくて。
では、楽しんでいってください。次は、息子さんの方だな。
ご挨拶が遅れました。責任者をしている諸星孝明と申します。それで、北斗さんと仰るのですね。それで、こちらの方は……朝倉美波さんですか。もしかして、特撮系とか言いませんよね?
理解出来ない、どうしてそんなことを言うのかですか。いえ、違うのなら別に構わないのですけど。
それはそれとして、東京で大手銀行にお勤めとか。そうですか、法人相手の職場なんですね。奧さん……失礼しました、こちらの方は……IT系ですか。失礼、とてもお綺麗なので、マスコミ系……女子アナですか、その系統かと思ってしまったんです。
学生時代にレポーターのアルバイトをしたことがある。ですよねぇ、とってもテレビ映えすると思うんですよ。どうです、こちらで広報担当をされてみるのは。そのですね、慢性的に人材が足りていないんですよ。流石に、いつまでも立木さんにマスコミ対応させるわけにもいかないと思うんです。そうですか、田舎の生活はしたくないと。仕方ありませんよね、ここは『ど』の付くぐらいの田舎ですから。
それで、楽しまれていますか。そうですか、結構楽しんでいるのですね。ところで、お酒を飲まれていないようですが……なるほど、普段からお酒を飲まれないのですね。いえ、立木さんを見ていたので、ご家族も飲まれるのかなと思ったんです。反面教師と言う言葉を知っているか、ですか。はい、そう言うことなんですね。理解いたしました。
では、楽しんでいってくださいね……
しかしなんだ、どうして俺はあんなに緊張していたんだ。なんだ小谷さん、理由は簡単と言うのか?
「諸星さんって、実はエリートが苦手でしょう」
エリートが苦手って……言われてみると、俺はしがない地方の市会議員だったな。大学だって、Fランよりは偏差値は上だったんだぞ。ところでその駅弁大学って、なに?
ちなみに、自分も東の大学法学部出身と言うのだね。ありがとう、お陰で少しリラックスできた気がするよ。東の大学、銀行員と言う圧に負けていたんだと思う。あれっ、小谷さんどうかしたのかな?
それから御衣黄さん、どうかしたのかな。なんだい、その『負けた』と言うのは。社交的な美人は苦手とするタイプと言うのだね。『息子の嫁に』と言われてときめいたけど、勝ち目がないのを思い知らされたと言うのか。いやあ、もう趣味の違いだと思うぞ、その辺りは。
ちなみに、宴会へのご家族の評価は『ぱない』と言うものだった。盛り上がりが体育会系で、宴会芸がプロのレベルに到達していたからだそうだ。ファンタジーものは基礎知識として知っていたが、ハイエルフの美形ぶりが想像を超えていたそうだ。しかもあれだけ数が揃うと、それだけで圧倒されてしまったのだそうだ。
そう言えば、なぜかハイエルフたちが北斗さんの周りに集まっていたな。なに、最近存在意義に疑問を感じている。翼人とか竜人が目立っているのに、自分たちの集落内での評価が芸能関係だけになっている。いや、それで十分だと思うのだがな。
それで行動の理由は、ラズライティシア様の影響が少なからずある。それはなんだ、彼女が立木さんにベタ惚れなのを言っているのかな。そう、だから息子さんに興味を持ったと言うのだね。そこで失敗したのは、集団で押しかけたことと言うのだね。確かにね、寝室に連れ込むのに集団で行ってはいけないと思うよ。
ところで、彼は君たちの好みに合ったのかな。そうか、だから希望者が殺到したんだね。ご愁傷様と言ってあげるよ。
立木さん、どうもお疲れ様でした。そうですか、ご子息たちは喜んでおられたのですね。お嬢さんから何か言われませんでしたか……いえ、御衣黄さんのことなんですけどね。特に言われていない、その代わりご子息がお付き合いしている人から耳打ちをされた。ええっと、御衣黄さんのことですか? 違う、ご子息がハイエルフたちに迫られたことですか。つまり、苦情と言うことですね。
「どうやら、危機感を覚えたようです」
それって、どう言うことですか。どうして俺が感謝されるのでしょう。そうですか、結婚が早まりそうと言うのですね。怪我の功名と言うことなんですかね。
竜人たちなのだけど、意外なほど集落に溶け込んでいる。溶け込んでいるのだが、なぜか集落のヒエラルキーが更新されていた。トップに居るのはラズライティシア様とルーテシアなのだが、次席に竜人族が割り込んできたのだ。それに翼人が続き、最下位がハイエルフになっているそうだ。
ところでそのヒエラルキーなのだが、どうしてそんなものが作られているんだ? 秩序を保つために必要と言うのだね。ハイエルフなんだけど、最下位で不満は出ていないのかな。そうか、トップの二人がエルフなので問題は無い。いざとなったら、二人に泣き付くことを考えているのだね。
それからインテグラ、カングーだけど、ちょっと来てくれるかな。うん、1週間後の公開ヒアリングへの対応のことだよ。今更、泥縄って、難しい言葉を知っているんだね。そうか、似たような言葉は前の世界にも有ったのだね。それから言っておくけど、泥縄ってことは無いぞ。お前たちが、この世界になれたことを前提に話をするつもりだからな。
うん、出席者は誰かと言うのだね。今のところ、集落からは俺とセレス、それから小谷さんの3人だね。それから異世界組はヴェルファイアとハイエース、ポルテとハリアーの4人だよ。どうしたインテグラ、不満そうに見えるんだが? 不満そうではなく、実際に不満を感じていると言うのかい。
「なぜ、キヨヒコ様がおいでにならないのですか?」
うん、立木さんは留守番。俺と小谷さんが出席するから、集落には誰か重しになる人が必要なんだよ。だから立木さんが残って、ラズライティシア様も留守番と言うことになったんだ。なんだい、その厳重に抗議すると言うのは? 立木さんが行かないんのなら、自分も行くつもりはないと言うのだね。
うん、まず自分たちの立場を理解するところから始めようか。いいかな、君たちは大都市を襲撃して、多くの人を躍り食いしたんだ。そしてこの集落に対しても、ブレスを使って攻撃した実績がある。つまり、君たちは『敵』なんだよ。良いかな、そのところを理解してくれると厳しいことを言わなくても済むんだけど?
それでも納得がいかないと言うのだね。そうか、じゃあ立木さんに告げ口をしていいかな。立木さん、そう言う我が儘って嫌いなんだよなぁ。
それは卑怯と言うのかな。卑怯でも何でもいいけど、俺は面倒が嫌いなんだよ。そうか、だったらリーダーを降りると言うのだね。うん、それも立木さんに告げ口しておこう。うん、俺は理解の早い人は評価するよ。大丈夫、悪いようにするつもりはないからね。その代わり、立木さんとのことを協力して欲しいと言うのだね。俺は邪魔をしないつもりだけど、それだけじゃ不服と言うのかな。そうか、一緒に居る機会を増やして欲しいと言うのだね。それぐらいなら、飲めない条件ではないね。
ええっとだ、君たちの処遇は国連が決めることなんだよ。勿論、俺たちは処刑には反対するよ。処刑しろと言われたら、中立を宣言しても良いと思ってる。世論工作もしているから、処刑が決定されることはないと思うんだ。その代わり、ギブアンドテイクと言う言葉を知っているかな。うん、そう言うことだよ。君たちは色々と協力をさせられると言うことだよ。
その条件として、居住地を持ち出しても構わないと思うよ。多分だけど、彼らもリスクをとるつもりはないと思うんだ。リスクってなんだ……かな。何かの間違いで、君たちが暴れたときのことを言っているんだ。
「つまり、交渉に使えると言うことですね?」
う~ん、俺としてはノーコメント。それから、俺が助言したと言わないように。厳しいことを言っているように思えるかも知れないけど、基本的に俺は君たちの味方だからな。
なになに、アルカナとかイセッタはどうかって……いきなりどうかしたのかな。女性とみてどう思うか、かい。いや、二人とも綺麗な人だとは思うよ。ただね、心の棚が増設されていないんだ。だから、夜のお相手と言うのは遠慮するよ。遠慮は必要無い、いやいや、遠慮と言うのは婉曲的に断っているんだよ。だったら、さっさと増設しろと言うのだね。いやいや、俺にも世間体と言うのがあってだね。
「事情は理解いたしました。世間体以外に問題が無いと言うのも理解いたしました」
いやいや、世間体は重要だからな。それだけは、繰り返して主張させて貰うよ。
それは良いのだけど、お互いの立場を明確にしておこうか。まずだけど、俺の立場はこの世界の人間側にある。ただ君たちの事情も知っているし、違う世界では常識が違っているのも知っているつもりだ。人や亜人の命の価値が、あまり高くないと言うのも知っているつもりだ。
だから、この世界の常識と言われるものを押しつけるつもりはない。加えて言うと、国連から命令される筋合いもないと思っている。俺が尊重するのは、実はとても狭い範囲なんだよ。具体的に言うと、今の内閣総理大臣に実業家の後沢と堀内ぐらいかな。忘れていた、杉村国会議員も大切だと思っている。だから、それ以外の指示には己の信条を優先することになるな。
どう言うことかって? 君たちの処刑には、反対と言うことだよ。まあ、そんなことには絶対にならないと思うけどね。理由は簡単、利用価値の方がはるかに大きいからだよ。
それで君たちの要求なんだけど、うん、要求しても良いと思うよ。と言うより、要求しないのはまずいと思うんだよ。君たちが屈したのは俺たちであって、世界と言う存在では無いと主張するのが重要なんだ。それを示す意味でも、要求することは大切なんだ。
それで、具体的には『保護』で良いのかな。そうか、それに加えて居住地を持ち出すんだね。10人が同じ所で生活すること。そして生活の拠点を、この集落であることを要求するんだ。
「その要求ですが、認めていただけますか?」
俺としては、認めるつもりでいるよ。そして俺が認めれば、この集落の決定と言うことになるんだ。立場としては、それぐらい俺の立場は強いんだよ。それから、人間関係で強制は出来ないからね。だからインテグラ、残念そうな顔をしないように。
居住地の要求は理解出来たよ。それ以外に、何か要求することはあるのかな。特に思いつかないので、助言があるのなら助言が欲しいと言うのか。そうだな、研究には協力するけど、誰も彼もと言うのは認めないと言うのはどうだろう。意味がわからない? それはだね、世界中を連れ回されることを防ぐ意味で言っているんだよ。その意味で言えば、協力するのは『ここ』と指定するのも手と言えば手だね。
それで、どうかしたのかな。聞きたいことがあると言うのだね。答えられることなら答えてあげるよ。それで?
「なぜ、私たちに便宜を図っていただけるのですか? 少なくとも、私たちは都市を破壊しましたし、大勢の人間を捕食しています。それに、この集落を襲撃しています」
だから、俺が同情的になる理由がわからないと言うのだね。う~ん、なんと言えば良いのかな。意外に、この世界に対する帰属意識が薄いからかな。確かに大勢の人が死んでいるけど、俺の知っている人たちじゃないと言うのがあるんだ。勿論、守りたい人が大勢居るのは確かだよ。しかも守りたい人たちが、時間とともに増えているのも間違いないね。立木さんやその家族だって、守りたいと考えるようになったのは最近のことなんだよ。
もしも君たちが、この後も人を捕食すると言うのなら別だけどね。この前だって、悪意で捕食したわけじゃないんだろう? だったら、済んだことに拘っても仕方が無いと思うんだ。その程度のことだと思ってくれれば良いよ。
感謝いたします、かい。せいぜい感謝してくれて良いよ。その方が、俺も遠慮無く命令できるから。
それはそれとして、セレス、ただいまってどう言うことかな。そう言えば、昨夜は顔を見なかったけど。
「村の奥さんたちと、パンの国を観光してきました。ついでと言ってはいけないのでしょうけど、あちらの農民の方と交流もして貰いました」
パンの国観光って……聞いてないけど。そうか、立木さんには相談したと言うのだね。どうして俺に相談してくれなかったのかな。忙しそうだった……いやいや、俺たちって夫婦だよな。
それから、責めているわけじゃないんだよ。こら、二人とも、俺を見て笑わないように。それからセレス、萎れなくても良いんだからな。立木さんに相談したと聞いたから、ちょっと嫉妬しただけなんだ。観光自体は問題ないと思うぞ。それに、農業指導も予定していたからな。ただ、ちょっとだけ先延ばしにしていただけなんだ。忘れていたのとは違うからな、やろうとは思っていたんだよ。
「セリカさんも、立木さんに相談されていましたね」
つまり、俺には問題解決能力がないと思われているのか。違う、俺の手を煩わせるような問題じゃないと言うのだな。なんか、単なる気休めに聞こえるのは俺の気のせいなのか。なぜ、気のせいと言ってくれないんだ。
所長と言う存在は、いてくれるだけでありがたい物です。




