↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/109

プレデター2

村の特産は異世界です


・プレデター2


 仕切り直しの記者会見は、結局波乱もなく……と言うこともないんだけど。質問自体は波乱もなく終わったと思います。


「だから、私はいらないと言ったんです。それから、これがアップルパイ」


 確かに、立木さんの出番はなかったですね。でも、いざとなったら介入するつもりはあったんですよね。ええっと、そんなものは無い。諸星さんを出した時点で、いざと言う時の方向性が変わってくるのですか。そう言われてみれば、確かにそうなんでしょうね。でもですよ、準備をしておくのは必要だと思うんです。

 それはそれとして、アップルパイありがとうございます。前にも食べたことがあるんですけど、美味しいんですよね、ここのアップルパイ。


 ところで立木さん、どうしてお出かけの準備をしているんですか? 最初の話通り、温泉に行ってくる。確かに、そんなことを聞きましたけど……今からキャンセルすると、キャンセル料が100%掛かる。それに、相手も忙しい身だからドタキャンは出来ないと言うのですね。


「昨夜は無理を言ってしまいました。ですので、そのお詫びの意味もあるんですよ」


 そう来ましたかぁ。そりゃあ、色々と無理を言った気もしますけどね。だけど皆さん、ノリノリだった気がするんですよ。なんです、あのわざとらしい演技。あの人たちはそんなキャラクターではないと言うのですね。だから無理を言ったことになると言うのですか。はいはい、そう言うことにしておきましょう。

 でっ、もう2時ですけど。これからどうやって? そうですか、ラズライティシア様の空間転移を使うのですね。しかもあのお二方を迎えに行く……まあ、埼玉でしたっけ? 昨夜はご自宅に居たんですからね。でも、ラズライティシア様を好きに使っていませんか?


「われが好きでやっているのに、シズカは何を問題としておるのだ?」


 いえ、エクシブさんは置いていくのかなぁと。それからですね、たまには家族旅行をしてくれても良いと思うのですよ。


「そうか、だがのぉ、ぬしはここを離れられるのか?」


 諸星さんが居れば、問題はないと思いますよ。ですよね、諸星さん。そうですよね、問題はありませんよね。


「だそうだキヨヒコ、部屋が一つ無駄にならなくて良かったな」

「そうですね、予想通りと言えば良いのか。駄目だったらどうしようと思っていましたよ」


 ええっと、ですね。私が文句を言うのは織り込み済みだったのですか? そうですか、織り込み済みだったのですね。織り込み済みかぁ、そんなに私はわかりやすいですか。でも、ケイコさんは良いんですか?

 温泉旅行はのんびりと行きたい。だから、あの人たちと一緒は可能な限り避けたいのですね。あのぉ、私はよく知らないのですけど、そんなに賑やかなんですか、あの人たち。どうなんです、御衣黄さん。

 あっ、顔を背けましたね。つまり、ケイコさんの言うとおりと言うことですか。だから御衣黄さんも、行きたいとは言わなかったのですね。


「一応諸星氏にも許可は取っていますよ」


 そこまで私の行動はわかりやすかったのですか。そうですか、わかりやすかったのですね。くどい、ええ自分でもくどかったと思っていますよ。

 それからですね、少しだけ準備に時間を貰えますか。構わない、二人をピックアップしてここに戻ってくる。でしたら、急いで準備をしますのでおいていかないでくださいね。




 ここが有名な温泉地と言うのは知っていましたよ。でも知っているのと実際来るのは随分と違いますね。まあ僻地具合は、私の故郷と大差は無いのですけど。そうですか、知名度がかなり違うと言うのですね。そりゃあ、大谷村の知名度は低いと思いますよ。でも、スキー場で言えば勝っていると思うんですよ。

 温泉ランキングでは大差で負けている、と言うのですね。それって、東京からの距離が理由だと思うんですよ。


 そんなことはどうでもいいんですけど、良いですよね、白濁した温泉と言うのも。日の光を受けて、水色に見えるのもポイントが高いと思います。しかもゆっくりお湯に浸かって……それは集落でもそれは出来る……のかなぁ、なんかいつも慌ただしい気もするけど。それはそれとして、ゆっくりとお湯に浸かってテレビでニュースを見る。同じことをしていても、なぜか心がゆったりとするんですよね。それになんです、あの床が白く固まっているのは。ちょっと新鮮な気持ちになれました。

 しかし菅谷先生……もう菅谷総理と言わないといけませんね。就任早々来客がひっきりなしになっているんですね。各国大使どころか、お隣さんからは外交部トップが急遽来日してますよ。あの人って、いつも人を見下した目をしているからきらいなんです。だから、今回はどんな顔をしているのか興味がありますね。それにおおっぴらになっていませんが、かなりの被害が出たと思うんですよ。そりゃあ、退治したんだったら大げさに発表しますもんね。


 でも、日本にも出来ることは限られていると思うんです。巨大生物退治が出来ることは一度も言っていませんよね。常識的に考えて、あの巨大さは脅威でしかないと思いますよ。100m超級って……勇者のエクシブさんでも『逃げる』と即答したぐらいですから。

 ところでエクシブさん、どうしてそわそわしているんです。夕食が近いから、今はしませんよ。違うと言うのですか、それにするのだったら有無を言わせない。そりゃあ、拒めないのはわかっていますけどぉ。それでも、私の気持ちも尊重して欲しいと思います。

 それで、どうかしたのですか。そうですか、お腹が空いてきたと言うのですね。だから今日の夕食が楽しみなのだと。立木さんの見立ては間違いが無いと言うのですね。

 その、なんと言えば良いのか、初めて会った頃の野性味が薄れてませんか? 仕方が無い、最近命のやりとりをしていない。一応危機感は抱いているので、ルーテシアさんと訓練を始めているのだと。そうですか、危機感を抱いていたのですね。でしたら、私は何も言いませんよ。


 あっと、電話が掛かってきましたね。はいはい、夕食の準備が出来たんですね。場所は……半個室の部屋が用意されているんですね。なんです、その他のお客様のことを考えたと言うのは。本当だから仕方が無い、ちょっと怖くなったと言っても良いですよね。


 しかし年齢層の高い宴会ですよね。絵面だけを見ると、どこかの会社かと思えてしまいます。でもお年寄りの二人なんですけど、世界的権威の方なんですよね。ええっと、ごめんなさい。お年寄りと言うのは不適切ですよね、お気に障られたのなら謝罪させていただきます。

 そう言う政治家的、木で鼻をくくったような謝罪は良くない。はい、ごめんなさい、そのですね、処遇は決まったなんて恐ろしいことを言わないでください。はい、お酒は好きですよ、好んで飲んでいるのも確かです。でも、好きだからと言って、限度と言うものが存在するんです。一升瓶と湯飲みを置くのは止めて欲しいと思うんですけど。これぐらいじゃないと駄目、そうですか、でしたら湯飲みはもう少し大きなのをお願いします


 それはそれとして、美味しい前菜ですよね。シナノユキマスって、山の中で取れるんですか。ええっと、集落の食事でも出ていたのですか。てっきりサーモンのお刺身だと思っていました。それはそれとして、これも美味しいですよね、とろっとして。

 それから馬刺しも美味しいですね。これは追加料理なんですね。なんですエクシブさん、私のを持っていかないでくださいよ。足りないんだったら、立木さん追加をお願いして良いですか? 信州牛のステーキも追加してある……大丈夫ですよ、エクシブさんの胃袋は常人の2倍じゃ利きませんから。


 ところで、そのお魚さんの入ったお酒は何なのですか。岩魚の骨酒……岩魚を焼いたのを、熱燗に入れたものと言うのですね。その味見……ありがとうございます。お魚さんの出汁が出たお酒と言うのも、結構新鮮なものなんですね。

 そうですか、次は河豚のひれ酒を試してみようと言うのですね。それって、このお宿にあるんですか。違う、山岡さんに用意させると言うのですね。はい、反対はしません。と言うのか、大いにやって貰って結構です。

 それで、この練り物みたいなのはなんですか。蕎麦掻きですか……蕎麦掻きってなんです。蕎麦粉にお湯を入れて、思いっきり練り上げたもの。昔は、こちらの食べ方が普通だったのですか。私たちが食べているのは、蕎麦切りと言うのですね。物知りなんですね、立木さんって……それはそれとして、蕎麦掻きももっちりとして美味しいと思います。それから笹で巻いた岩魚ですか、お酒が進みますよね、これ。なので、一升瓶をもう一本お願いして良いですか?




 少し失敗しましたかね。何のことかと言うと、小谷さんにお酒を勧めたことです。だからシア、少しだけ面倒を任せて良いかな。ああ、エクシブ君では気配りは難しいんだよ。


「それは構わぬのだが。シズカも相当溜まっておったのだな」


 まあ、ずっと留守番組で、色々と溜め込んでいるのがわかっていましたからね。彼女が志していた世界と違うのもわかっていたことなんです。考えないようにしていても、そのストレスも溜まっていたと思いますよ。それに、直面した世界が異常すぎると言うのも良くないのでしょう。

 今は心が麻痺しているから良いのですけど、正気に戻ったとき……戻れるのかな、戻って欲しいとは思うのですけど。その時には、周りが注意をしてあげないといけないと思うんですよ。それを諸星氏に求めるのは、かなり無理があるのもわかっているんです。何しろ、彼はまだ若いですからね。メンタルをやった部下の面倒なんか見たことがないと思いますよ。


「ならばキヨヒコ、ぬしはこの環境を受け入れているのか? なんだ大芝、キヨヒコが楽しんでいると言うのか。そうか、宇梶も同じ意見と言うのだな。開き直り……だがの、開き直るのも難しいと思うぞ」


 シア、それが年の功と言うものですよ。後はそうですね、柔軟な頭と言えば良いのか。まあ、柔軟な思考とかは、年寄りの言って良いことじゃないんですけどね。

 それはそれとして、大芝、魔法についてわかったことはあるのか。そうか、まだ観測程度でしかないと言うのか。莫大なエネルギーが発生しているのはわかっているが、その根源がどこにあるのか見当が付かないと言うんだな。


「魔法の根源と言うのが魔力と言うのなら、われの中に蓄積されておるのだがな。そのことを言っておるのではないのか? そうか、違うと言うのだな」


 確かに、魔力と言う形でシアの体の中に蓄積されていますね。でもそのエネルギーなんですが、量的に人の体で作り出せるものではないんですよ。空間に穴を空けて別の場所に繋げる……理論的に可能でも、馬鹿げたエネルギーが必要になるはずです。とてもではありませんが、人の作り出せるものではないと言うことです。


「だから、どこかから汲み上げていると言う仮説を作ったのだがな。その、どこと言うのが全くわからないし観測が出来ない。この前のドラゴンでもそうなのだが、蓄積されたエネルギーしか観測できなかったと言うことだ。勿論、そのエネルギー量が膨大なのは確かなのだがな」

「つまり、魔力の根源のことを言っておるのか。言われてみれば、使った魔力はいつの間にか補充されておるな」

「その補充元がどこにあるのか、それがわからないと言うことだ。そして本山は、魔力の受容体となる細胞を調べている。だから立木、お前はまだ引退してはいけないんだ」


 いきなりなんです。それに、話の脈絡がありませんよね。酔っ払いに脈絡を求めるな……いやいや、こう言う時に酔いを理由にしちゃダメでしょう。

 それに、私は技術者……違いますね、研究者としては素人そのものなんですよ。あなたたちが使いこなしている公理・定理なんてものは、大学を出てから触れてもいない代物なんです。


「お前がいなければ、俺たちは魔法と言う存在とニュートリノ、重力波との関係性にたどり着けなかった。それが答えだと思っているのだがな」


 そんなもの、時間が解決する問題でしょう。今回の襲撃で、重力波とニュートリノは、特徴的な観測値を示しているはずです。その原因を辿ることで、魔法とか異世界とかとの関係性に気づくことが出来ますよ。


「それを否定するつもりはない。ただそれにしても、答えを知っているからと言うことも出来る。世の中に存在する、訳のわからない現象を結びつけること、橋渡しをすることにも大きな意味があるんだよ。どこのぶっ飛んだ奴が、魔法とニュートリノを結びつけてくれるんだ? 俺たちにはな、最初のヒントが大きな意味を持っているんだよ」


 私を持ち上げても何も出ませんよ。私はね、何もかもが中途半端なロートルなんですから。たまたま与太話がおかしな一致をしてくれた、その程度のことでしかないんです。

 人を馬鹿にするな、と言うのですか。そんな奴と、どうして俺たちが飲み友達で居られるのかと言うのですね。どうしてなんでしょうね、私には偶然としか思えないんです。なんですかシア、その『類は友を呼ぶ』と言うのは。言葉の意味ぐらいは知っていますよ、どうして私たちの関係でそれを言ってくれるんです。だから大芝、宇梶、我が意を得たりと頷くんじゃない。お前たちも、俺と同種と思われているんだぞ。


「おっさんの酔っ払いと言う意味なら同じだろう」


 そっちで分類してくれるのか。なんか違うと思うのは私の気のせいか?

 それはそれとして、そろそろ小谷さんを止めた方が良くないか。なんであの小さな体で、一升瓶が2本空けられるんだ。急性アルコール中毒を起こす前に……シアが酔い覚ましをしてくれるのか。だったら良い……訳はないだろう。そろそろ止めないと絶対にまずいことになるって。

 だからエクシブ君、強制的連行してくれないか。飲み足りない……もうちょっと待って欲しいって。何だ大芝、私が常識的なことを言っていると言うのか。悪いな、これでも管理職なんてものをしていたんだよ。若い奴はな、時々ブレーキを掛けてやらないといけないんだよ。手遅れ、手遅れって……シア、二人とも寝かせ付けてくれないかな。


「それは構わぬのだが、これでお開きとは言わぬよな?」


 言わないのだが……女将さん、出禁は勘弁してください。ええ、場所を部屋に変えて静かにしますので。ただですね、もう少しつまみを……漬物程度で結構ですから。

 その代わり、素面の時に写真を撮りたいのですか。大芝、宇梶、お前たちの出番が来たぞ。そうですか、シアの写真も欲しいんですね。テレビで見て感動した……でしたら、次は翼人も連れてくるのでよろしくお願いします。私、私ですか。私は単なる冴えないおっさんですので遠慮させていただきます。


 それからですか、食事処を使うのは遠慮することにしましたよ。宿泊客が私たちだけなら良いのですけど、他の客さんも泊まられていますからね。しかも宿には、翌朝の準備も必要なんです。だから私の部屋に場所を変えることにしました。なんです、それでも騒げば迷惑になる。大丈夫ですよ、こちらにはシアが居ますからね。こう言う時って、魔法が便利なんですよ。

 それはそれとして、私たちは結構注目を集めていました。まあ、シアが開き直って耳を隠さなかったことが大きいのでしょうね。ただ誰も声を掛けてこなかったのは……私のせい、記者会見で厳しいことを言ったから。怖くないですよ、私は温厚な年寄りなんですからね、プライベートでは。


 しかし飲みましたねぇ、一升瓶が2本も転がっていますよ。そして大の大人が2人ほど、屍のように転がっていたりします。ええ、世界的権威の二人なんですけどね。でも、ここで寝られると困ったことになるんだけどなぁ。仕方が無い、部屋を入れ替えることにしましょうか。

 その必要は無い。二人ぐらい、転移させるのは朝飯前なのだと。いや、それはそうなのかも知れませんけど、部屋に色々と臭いが篭もっている気がするんです。それを消すのも簡単なのですか。今更なんですけど、本当に何でもありなんですね、魔法と言うのは。




 こう言う時間って、すごく嫌と言うのは贅沢なのか。取りあえず集落も寝静まった中、俺はまんじりともしないでベッドの中にいた。ちなみにセレスとルーテシアも、目を開けたまま天井を見ていたりした。着衣については……今は触れないことにしておこう。

 なぜ俺たちが寝ていないのか、それは自衛隊……つまり、上杉さんたちの分析が理由になっている。俺たちが出席した記者会見、2度行われたあれだが、間違いなく世界中の耳目を集めたと言うのだ。まあ、菅谷総理のところに、各国から大使級以上が顔を出したのだからな。この異常な状況に於ける、人類の希望とか言うのになったのは確かなのだろう。ただなぁ、俺たちは一度も巨大生物、ドラゴンを倒せるなんて言った覚えはないんだぞ。


 それでも、人々の心を折ってくることが考えられる。それが、上杉さんたち自衛隊の分析だった。

 そしてその場合のターゲットは、予想は付くと思うがラズライティシア様だった。まあ、異世界から来た大魔法使いなのだから、警戒されるのは当然と言って良いだろう。そして襲撃されるのは、ここ俺たちの集落と言う分析だ。


 旅行のことを上杉氏に教えたら、少し時間をおいてから『その方が良い』と言う答えを貰った。敵の狙いを分散させることで、相手の考え方を分析することが出来るのだそうだ。だけど、100m級を投入されたら、ラズライティシア様でも厳しいのだがなぁ。


 やはり、待つのは精神的にかなり辛いな。


 そんなことを思いながら時計を見たら、時刻はすでに深夜1時になっていた。流石に今日はないよなと言いたくなる時間でもある。ただ昨夜の場合、この時間でもアメリカ東海岸が蹂躙されていたのだ。だったら、この時間に襲ってこないと言うのは考えられない。


 来るのなら、さっさと来てくれないかな。


 はい、来ましたよ。枕元に置いておいたアラームが、けたたましく警報を鳴らしてくれました。さて、襲ってきたのはどんな奴かな。

 それはそうとして、二人とも着替えが早いね。俺はまだ、パンツを穿いた所なんだが。なんだ、それが冒険者の日常ってのは。それにセレス、お前は受付嬢であって冒険者じゃなかったよな。


 そんなことはどうでも良いのだが、襲撃の方が問題だったな。ヴェルファイア、襲撃してきたのは何者なんだ?


「我が君に報告します。南の谷上空に、ドラゴンとおぼしき存在が2体出現しました。大きさは、馬鹿でかいとしか言いようがないんですが……こちらの言い方では、100m超級でしょうか」


 それで、襲撃はその2匹だけなのか。そうか、確認しているのはそれだけと言うのだな。

 ああジャック、観測結果はどうなっている。そうか、目の前の現象が大きすぎると言うのだな。なるほど、俺たちに対する目眩ましと言うことも考えられるわけだ。上杉さんの言っていた、こちらの観測能力を探られているんだな。

 それで、他に襲撃されている場所はないのか? 小さな反応が、南南西で検出できた。その辺りは、予想通りと言うことだな。そうか、かろうじてノイズの中から検知することが出来たんだ。ただ、これでデータが取れたので、次は確実に捉えることが出来ると言うのだね。


 ところでヴェルファイア、ハイエースたちは出撃したのかな?


「対ドラゴン兵器を持って出撃いたしました」


 そうか、あれを携帯して出撃をしたのか。だったら、しばらく様子を見ることにしよう。それから白船君、映像の方は取れているのかい?

 そうか、暗視カメラと赤外カメラでバッチリ撮れているんだね。追加のドローンが役に立ったと言うんだ。それからこのことは上杉さんには、そう、ちゃんと伝わっているんだね。だったら俺は、事務所に行くことにしよう。


 しかしまあなんだ、意外に大きくないと言うのは言ってはいけないことか。だって以前に見た100m級は、出会った場所が洞窟の中だったんだ。しかも至近距離で顔を合わせたから、全体像が見えなかったぐらいなんだぞ。

 それに比べて、今回は山の上を飛んでいるんだ。そこそこの高度をとってるから、あまり大きく見えないと言うことだ。まあ、接近するハイエースたちは、月明かりに浮かぶごま粒にしか見えないんだが。


「集落の守りは大丈夫なのか?」


 迎撃に出た翼人たちには、例のものを持たせていますよ。なので、大抵の攻撃には対処が出来ると思います。

 それはそれとして、自衛隊は動いているのですか? そうですか、小松から出撃したと言うのですね。後は各務原から……とにかく観測をすることを優先したのですか。


 おおっと、臨時ニュースが入りましたね。ところでこの映像の出所は……こちらのドローン。ここまで準備をしていることで、相手も面食らっているだろう、ですか。

 それで、あの2匹の扱いですけど。可能なら捕獲をして欲しい。だが周辺に被害が出るのであれば、躊躇わずに撃破と言うのですね。いずれにしても、それなりの被害が出ると思いますけどね。どちらの被害が小さいのかですか、そうですね、捕獲の方が小さくなるのかな。ただ、捕獲した後の扱いが難しいのですけどね。加えて言うと、自爆をされたりしないのかと言うのも有るんですよ。


 ドラゴンの攻撃方法は……ニューヨークと同じで、ブレスを使ってきましたか。残念、それは一度見させて貰っている。と言うことで、ハイエースたちの展開した荷造り紐さんが障壁となって防いでくれました。こちらの手の内を見せないと言うことで、ハイエースたちが操っているように見せていたりする。

 ああ、今ので怒らせたかな。もの凄い咆吼が聞こえてきたよ。困ったなぁ、これで鶏さんが卵を産まなくなったらどうしよう。ええっと、そう言う問題じゃない。でも、それ以上の被害は発生しないよな。


 またまたブレスが来ましたぁっ! どうやらあのブレス、そんなに連発できないようだね。ところで上杉さん、捕獲した後のことを考えていますか。具体的に言うとですね、捕獲したら2匹をどこに運べば良いのかと言うことです。

 なぜ、そこで黙ります? まさか、考え無しに捕獲を持ち出したんじゃないですよね。そこまでは言わないが、大きすぎて運ぶ場所が思いつかない。自爆まで想定すると、安全な広い場所がないと言うのですね。だったら、自爆禁止を命令しておきますか? ありがたい、その方向でお願いをすると言うことですか。じゃあ、その方向で。


 取りあえずブレスと咆吼がうざいから、荷造り紐さん口を塞いでくれるかな。そうそう、ぐるぐる巻きにすればブレスや咆吼は出来なくなるから。後は縛り上げて……長さが足りるかな。大丈夫、10巻ぐらい持っていったと言うのだね。追加で出現しなければ、長さは十分に足りていそうだな。じゃあ、荷造り紐さんよろしくお願いします。


 しかし、まあ、なんだ。絵作り的には地味そのものの捕獲作業だな。下手に暴れられると、回りに被害が出るのでその方がありがたいのだけど。うん、流石は荷造り紐さん。完璧な仕事をしてくれたね。


「ハイエースから捕獲完了の報告がありました。どこに搬送すれば良いのか指示をお願いします」


 だそうですよ上杉さん、ちょっと待って欲しいのですか。良いんですけど、早く決めてくださいね。


「神岡から連絡。観測値が増大したそうです」

「こちらでも、観測値の増大を検出っ!」


 この緊迫感、アニメとかでよくある奴だよな。つまり敵さんは、まだ何かしてくるつもりと言うことか。だけど、自爆は出来ないように命令してあるんだ。重力波の方はどうかな、そうか、そっちには変化がないんだね。


「更に観測値が増大しました」


 ああ、肉眼でも確認できるよ。あれって、ドラゴンが燃えているよね。しまったなぁ、燃える方は禁止していなかったんだよ。今から、今からでも禁止し……しなくても良いと言うのかな。もう手遅れだし、手の内を明かす必要が無いと言うのだね。確かにその通りだから、セレスの言葉に従うことにしよう。

 それから荷造り紐さん、飛び火しないように守ってくれるかな。うん、山火事になったりしたらとんでもないことになるからね。


 それはそれとして、ラズライティシア様の方は情報があるのかな。今のところない、だとしたらまずいことになっている可能性がある訳か。

 それで立木さんとは連絡できるのかな。連絡が着かない……電波が圏外だと言うのか? おかしいなぁ、有名な温泉地だから携帯が通じるはずなんだが。ラズライティシア様が付いているから大丈夫だと思うんだけど。俺が行くべきかどうか、こっちが本当に終わったのかもわからないし。

 上杉さん、何か情報は入っていますか? 今のところ、何も入っていないのですね。何かが出たのはわかっていますから、大至急お願いしますよ。




 シア、今『ちっ』と舌打ちをしましたね。そうですか、邪魔が入ったのですね。それでも今の舌打ちは、少し品がないと思いますよ。いえ、怒ってはいません。ただ、あなたの魅力を少しスポイルすると思っただけです。まあ、あなたらしくて良いとも言えますけどね。

 それで何が……確認するまでもありませんね。あの咆吼、隠すつもりはないと言うことですか。それはそれとして、少し身支度を調えていってください。ああ、緊急事態と言うのはわかっていますよ。ただあなたのしどけない姿を、他の男の目にさらしたくないだけです。


 俺は一体何をしているんだろう。酔い潰れているこの女、シズカを見ながら自問をしてみた。他の人間、ジエイタイとかから来た女でも、この女より美人と言うのは確かだろう。それから翼人やハイエルフたちなら、この女を遠くに置き去りする見た目をしている。それなのに、この女は俺の心の大きな位置を占めている。ラズライティシアとは違った意味で、手放すことの出来ない女になっているのは間違いないだろう。

 それでも疑問に思ってしまうのは、なぜこの女だったのかと言うことだ。飲んだくれていびきを掻いて……女らしさと言われるところからは、遙か遠くに居るのにな。しかも酔い潰れているので、俺を満足させてもくれない。おい、お前の男が欲求不満になっているぞ。さっさと酔いを覚まして、俺に奉仕をしてくれよ……この昂ぶりをどうしてくれる……ああ、ちょうど良い、ぶつける相手が出てきてくれたぞ。


 しかしこの格好は、流石に動きにくすぎる。出遅れは癪に障るのだが、あっちも似たようなものだろう。ズボンを穿いてスニーカーを履けば、形ぐらいにはなってくれるはずだ。


 そうか、ドラゴンなのか。大きいと言えば良いのか小さいと言えば良いのか、まあ100m超級だったか、そんなのじゃなかったことを喜んでおくことにしよう。大きさは……こちらで言う20m級だな。あちらでは、多くの冒険者が食われた大きさと言うことか。相手にとって不足はない……最近鈍っていたので、たまには暴れて見るのも良いだろう。

 聖剣を置いてきた……勇者と共にあるから、聖剣と言われているのだ。だから聖剣……名前は、そう言えば付けていなかったな。まあ、この戦いの後にでも名前を付けてやるか。


 こいっ


 右手を天に掲げ、一言呼べば俺の元に駆けつけてくる。それが勇者と聖剣の関係と言うものだ。ただ集落からは、少しだけ距離が離れていたな。だが手応えは確実にあるので、待っていれば駆けつけてくれるはずだ。

 しかしこのドラゴン、なぜ攻撃をしてこないんだ。わざわざ現れた以上、先日のように人を食ってもおかしくないはずだ。まあ、この辺りに居る人間は、極端に少ないから見つけにくいのかもしれないのだが。だとしたら、どうしてこいつはこんな所に現れたのだ? 俺たち……違うな、ラズライティシアが理由になっているのか? いずれにしても俺たちの敵なら、この俺が蹴散らしてやれば済むことだ。俺の剣も来てくれたから、そろそろ戦いを始めることにするか。


 勇者エクシブ見参っ!


 どうやら、少し出遅れたようですね。だからと言うこともないのですけど、エクシブ君が張り切っていますね。シア、エクシブ君の支援を……その前に、飲んだくれ二人を飛ばして貰えますか。そうですね、大芝の自宅辺りが適当でしょう。あの二人は、世界の頭脳ですからね。どんな些細なことでも、間違いがあってはいけないんです。


「それを、余計なお世話と言ってやる」


 なんだ大芝、起きてきたのかと言うよりお前酔っ払ってるだろう。それに宇梶、お前も思いっきり酒臭いぞ。人のことを言えないだろう、かな。俺は、シアに酔い覚ましの魔法を掛けて貰っているんだよ。


「だったら、俺たちにも酔い覚ましを掛けてくれ。水をがぶ飲みした程度じゃ、まだまだ頭がしゃっきりとせんのだ」


 だから、お前たちは逃げろと言っているんだがな。そうか、科学者として観察する義務があると言うのか。せっかく研究対象が現れたのだから、両の目でしっかりと見極めてみせると言うのか。まったく、この頑固者め。

 わかったわかった、逃げろとはもう言わん。その代わり、物陰にちゃんと隠れていろよ。特に炎関係から逃げられるようにしておけよ。シア、なんだ、結界を張ってくれるのか。だったらシアの張った結界から外に出るなよ。


「お前も、人のことを言えないだろう」


 俺は、お前たちとは違うからな。それにこのドラゴン、何か違和感があるんだよ。だから、その理由を見つけようと思っている。だったら良い、俺の勘を信じる……その、なんだ、あまり期待をしてくれるなよ。大丈夫、骨は拾ってやるって……俺はな、のんびりと余生をかみさんと過ごすんだからなっ。


「そんなことができると思っているのか」

「うむ、われが逃がすとでも思っておるのか?」


 いや、そろそろ勘弁して欲しいんだけどな。老後の費用……老後の費用ならIMO研のストックオプションってのがあるんだ。億り人確定……まあそれがなくても、年金でそこそこの生活が出来るんだよ。

 それはどうでもいい、さっさと違和感とやらを晴らしてこいって……お前たちが余計なことを言うからいけないんだよ。


「それでキヨヒコよ、どうして違和感とやらを抱いたのだ?」


 違和感ってのは、言葉にして説明できないからって言っちゃあいけないんだろうな。ただ、ここからは『推理』って奴になるんだよ。シア、あのドラゴンの行動なんだが、ちょっとおかしいと思わないか?


「うん、わからんな。普通にエクシブと戦っておるぞ」


 その普通ってのがおかしいと思っているんだ。そもそも、あれが普通なのかな? ニューヨークとかで、奴らは炎のブレスを使っていただろう。


「だが今は、エクシブが接近戦を挑んでおるのだ。ブレスを使うような暇はないはずだぞ」


 そう、今はブレスを使う暇はないのだろうね。だけど、エクシブ君が仕掛ける前のことを言っているんだよ。先制攻撃でブレスを使えば、エクシブ君の攻撃を受けることもなかったと思うんだよ。でも先制攻撃でしたのは、攻撃にもならない咆吼だけだっただろう。


「われが結界を張っておるから、先制攻撃を受けても怖くはないのだが……確かに、咆吼に意味があるとは思えぬな。咆吼さえあげねば、われの隙を突くことも出来たかもしれん。つまり、ぬしはブレスを使えない理由があると考えておるのか?」


 そう言うこと。シアを亡き者にするためなら、100m超級が出てくると思うんだ。だけど、出てきたのはずっと小さな20m級なんだ。集落側も襲撃を受けているけど、100m超級は他にも居たはずなんだよ。それなのに、現れたのは20m級と言う小型の奴なんだ。しかも、現れたくせに、威力のある攻撃を仕掛けてきていない。

 シア、私はね、実は大きな勘違いをしているんじゃないかと思い始めているんだ。あのドラゴン、本当にシアを狙って現れたのなかな、と。最初にあげた咆吼なんだけど、そのこと自体に意味があるのではと思うんだ。


「だとしたら、奴は何の目的でこんな人の少ないところに現れたのだ? それに、咆吼だけあげる理由があるとは思えぬぞ」


 それがわからないから、違和感があるって言ったんだよ。それでも可能性があるとすれば、あの咆吼は誰かに対する呼びかけと言うことだよ。もしもそうなら、私たちは『偶々』出くわしたことになるんだ。


「ならば、なぜ集落は襲われておるのだ。それ以上に、大勢の人が食われたのどう言うことなのだ?」


 すべての理由が一つに繋がるとは限らないだろう? そしてドラゴンは、人を殺すのではなく『食った』んだ。つまり、腹を満たす行動を取ったことになる。

 そしてシア、捜し物……例えば子供を探すときには、自分がここに居ることを教える必要があるんだよ。


「子供とな。子供が居ると言うのか?」


 例えばの話だよ。ただ、そう考えるとこのドラゴンの行動にも納得のいくところがあるんだ。ただ相手の常識は、私の持っている常識とは全く異なっているのだろうね。だから、全く別の目的と言うこともありえるんだ。

 ただわからないことは幾ら考えてもわからないだろう。だから、無駄かもしれないけど調べてみるのも悪くないと思うんだよ。


「つまり、われは何をすれば良いのだ?」


 確か探知魔法ってあったよね。半径1kmぐらいで、魔力の探知をしてくれないかな。あんな馬鹿でかい奴がいるからわかりにくいのかもしれないけど、シアならば出来ると思っているんだよ。


「ぬしにそこまで言われては、われも応える必要があるな。待っておれ、超精密探査と言う奴をやってやろう」


 シアが右手を横に薙ぐと、その足下に複雑な模様をした光の輪が広がった。ひょっとして、これが魔方陣と言う奴なのかな。それはそれとして、シアは今度は左手を横に薙いでくれた。するとどうだろう、先ほどの光の輪の周辺に、それを取り囲むように小さな光の輪が8つ外向けに展開された。


「ガイ、ガイ、ヒルミア……ギ、ミア、ライファーデ、ウンデ、ファローレ、ファイデ」


 シアが呪文を唱えるのに連れ、足下からの光が彼女を包み込んだ。それは、まるでそれ自体に力があるかのように彼女の髪をはためかせた。一緒に浴衣もはためいているのだけど、そっちは見ないことにしておこう。おかしいな、脱がせた覚えはないのだけど。


「リヒ、リヒ、サイゲ、デ、サッシェ」


 そして彼女を包んだ光は、頭上で収束して光の輪となった。それがすぐに解け、北へ向けて飛んで行った。


「キヨヒコよ、ぬしの言う通りだ。僅かだが、魔力を持ったものが近くに潜んでおる」


 でしたら、その何かを確認しに行きましょうか。シア、お願いしても良いかな。


「ぬしはここで待っておった方が……違うか、われと一緒の方が安全だったな。ならばキヨヒコよ、しっかりとわれに捕まるのだぞ。なに、われとぬしの関係だ、恥ずかしがらずに捕まって……なぜ、われを抱っこする?」


 その辺りは、まあ、男の見栄と言う奴で……魔法で移動するのなら、一緒に居れば問題は無いのだろう? 内緒の話、こうすれば浴衣の中が見えないからね。


「そうか、これがお姫様抱っこと言うものか、やれやれ、ぬしは色々とわれを喜ばせてくれるのだな。勿論、この格好でも何も問題は無いのだぞ。エクシブよ、今しばしそやつと遊んでやれっ」


 空間転移はあったけれど、こうして直接飛ぶのは初めてだったかな。流石は神話の時代から生きてきた大魔法使い。あっと言う間に、1kmぐらいの距離を超えてくれた。

 そうか、あの光っているのが魔力を持っているのだね。ただ私の目の錯覚かな、人型が光っているように見えるんだよ。


「心配するな。われの目にも人型が光っておるように見えるぞ。それはそれとして、荷造り紐さんとやらを持っておるか?」


 出かけるときは忘れずに……昔、そんなCMがあったな。いや、まあ、そんなことは良いのだけど。切り札だから、忘れずに持ってきているよ。


「うむ、ならば捕獲は荷造り紐さんとやらに任せよう」


 そうだね。万能荷造り紐さんに任せることにしようか。と言うことなので、あの光っている人型を捕まえてくれるかな。


「流石は孝明の僕だな。抵抗をものとせずに捕獲してくれたぞ」


 まったく万能だな、荷造り紐さんは。おやおや、人型がドラゴンに変身したぞ。こっちが本当の姿なんだろうか。ただ幾ら変身しても、荷造り紐さんからは逃げられないと思うんだよ。これで、この襲撃は決着が付いたことになるのだろうね。


 小型ドラゴンを連れて戻ったら、まだエクシブ君が戦っていたよ。こうして見ると、エクシブ君は半端がないね。流石は勇者と賞賛しても良い活躍だと思うよ……ところで、小谷さんは酔い潰れていたんだっけかな?


「うむ、起こした覚えがないのだからな。後から文句を言われるのが目に浮かぶようだぞ」


 そうだね、せっかくエクシブ君がすごいところを見せてくれたのにね。ところで大芝、スマホとかで動画を撮っているか? そうか、撮っているんだな、だったら後から小谷さんに見せてやろうか。


「あのドラゴン、どうやらこちらに気づいたようだぞ」


 ああ、そしてこの小さなドラゴンが、彼か彼女か知らないけど、探し人……探しドラゴンだったようだね。狂ったように、こっちに向かってくるよ。エクシブ君、悪いけどもう少しだけ支えてくれるかな。それから言っておくけど、くれぐれも殺さないように。


「それでキヨヒコよ、ここはどう始末を付けるつもりなのだ?」


 勿論、大きい方のドラゴンも無力化します。どうやってって……まだ荷造り紐さんは沢山残っているんですよ。と言うことなので、荷造り紐さん出番です。あのドラゴンを捕まえてください。

 それからシア、翻訳魔法を頼めるかな。そう、大人しくすれば殺すつもりはないと伝えたいんだ。大人しくしなければ、かい。周りに被害を出すようなら、可哀想だけど殺すことになるのだろうね。


「余所の国で、大勢食われたと思うが構わぬのか?」


 その辺りの判断は、多分ですけど国……もっと大きな組織かな。国連辺りが考えてくれることでしょう。

 ところで大芝、一部始終録画できてるよな。せっかくの研究材料を、取り逃すような真似はしない。だったら良いのだが、そのデータをこっちにも送ってくれ。白船君に言って、すぐにトベに上げて貰うんだ。なぜ急ぐのか……かい? なに、世論と言う奴を味方に付けようかなと思っているんだ。うまく行けば、このドラゴンを殺さずに済むからね。


「立木、お前は相変わらず悪だな」


 おいおい、私のどこが悪なんだ。俺なんて、第三の人生を歩んでいる、どこにでも居るようなおっさんなんだからな。

 それからシア、嘘つきと言わないように。私は本気でそう思っているんだよ。それからこの後だけど、それは諸星氏に任せることにしようか。私たち、私たちは、もう寝るんですよ。何しろもうすぐ、午前3時なんですからね。年寄りはそろそろ目を覚ます時間……止めてください、そこまでの年寄りじゃありませんから。トイレに起きたりはしてますけど。

 それからエクシブ君ご苦労様。流石は勇者、全く危なげのない戦いだったね。でも手加減させて悪かったね……違う、一杯一杯だった。普段ならシアのバフを使っている……シア、エクシブ君の能力強化をしなかったのかな? 忘れてた、そうか、忘れていたのだね。まあ、無事だったから良かったことにしておこうか。


 一応、エクシブ君に謝っておいてくれるかな。




目立っていませんが、エクシブさんは勇者です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。