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取りあえず研究所

村の特産は異世界です


・取りあえず研究所


 後沢たちは、どうやら自衛隊より真面目に金儲けを考えているようだ。何のことかと言うと、彼らは宴会後に翼人のお持ち帰りをしなかったのだ。勿論、ハイエルフの持ち帰りもしていない。割と早めに第二に戻り、夜遅くまで何やら話し合っていたようだ。

 しかも翌朝朝食にも出てこなかった。従って彼らの朝食は、翼人のデリバリ便と言うことになった。トースト用のパン二斤に、ベーコン、目玉焼き、リンゴの籠盛りがデリバリーの中身である。飲み物は、予め用意しておいたコーヒーと大谷村牛乳のパックである。第一の朝食と比べると、質素と言って良いものだろう。まあ、俺にしてみればあちらの方が常識に近い朝食なのだが。


「何か言ってくるかと思ったんだ……」


 昼を過ぎても音沙汰がなかったので、逆に心配になったぐらいだ。ただお昼の出前は頼まれたので、生きているのは間違いないようだ。そして夜も、簡単な夕食の出前をしただけだった。寝食は忘れてないが、最低限と言うのが彼らの本気を示していた。


 そんな生活が1週間ほど続いた。ちなみに、その間自衛隊からも何も言ってこなかった。勿論、新しい来訪者とかもやってきていない。嵐の前の静けさ……そうで無いことを願っているのだが、嵐の前の静けさと言っても良い平穏な時間が流れていった。


「諸星さんが言いたいことは理解出来ますよ。なんと言うのか、怖いぐらい平和って感じです。勿論、これが良いことと言うのは確かなんですけどね」


 平和を嘆くのは、絶対にやってはいけないことに違いない。ただこれまでのばたばたを考えると、未だに信じられない所があったのだ。

 そして俺の懸念は、小谷さんにも共有されたものだった。その辺り、これだけで終わるはずがないと言う強迫観念があったのも確かだ。


「後沢さんたちが出てこないので、宴会も開きにくくなりました。ただ宴会ではありませんが、夕食時の余興は盛んに行われていますよ。エルフたちがキレキレのダンスを踊っているの、知ってますか?」


 知っているかと言われたら、知らないと言うのが俺の答えになる。あまり干渉すべきじゃないとの助言に従い、用がないときには別宅の方に来ないようにしていたのだ。従って、夕食は翼人便を使った出前か、セレスの手料理と言うことになっていた。

 そうか、キレキレのダンス……ねぇ。しかし、どこでそんなものを仕込んだんだ?


「その辺り、服部さんの仕込みみたいですね。テレビとかトベやチクタクを見て、エルフたちが真似をしたのが始まりみたいです。それがあまりにも様になっているので、服部さんが素材を集めてみたいです。ただこうして見ると、彼らはとても身体能力が高いんです。後ですね、音感で良いんでしたっけ。そちらの素養もあるみたいですよ」


 意外と言ったら叱られるのかな。まあ、ダンスの得意なハイエルフが居ても良いんじゃないか。


「それはそうなんですけどね。それから諸星さん、楽器を弾いてみたいと言う要望が出ているんです。楽器を与えても宜しいですか?」


 良いのかと聞かれたら、別に構わないと言うのが答えになる。勿論、予算の範囲……予算ってあったっけ?

 いやいや、無いと言うのもおかしいよな。それはそれとして、無駄遣いをしないのであれば構わないのだが。


「ええっと、予算ですよね。私も忘れていたんですけど……後沢さんから滞在費? を貰っているんです。どれだけ居るつもりなのか、1の後ろに0が8個付いていました」


 0が8個ね……ああ、1億円ってことか。それが滞在費なのか? 第2の宿泊費は、一泊幾らなんだ?


「金額が大きいので問い合わせをしたら、足りなかったのかと聞かれてしまいました。使い道にしても、限定しないから自由にしていいのだそうです。ただ、こんなザルなお金の使い方をしていてはいけないんですよね。薄墨さんが簿記二級を持っていたので、取りあえず出納管理をして貰うことにしました。後は、税金をどうするのか考えないといけないんです。勿論、予算計画・管理も必要なんです」


 税金かぁ、税金だよな、税金ね。収入がある以上、税金を払う必要があるよな。


「ええ、税金を忘れてはいけないんです。一応菅谷先生に確認したら、報償費の方は申告しないで欲しいとのことです。脱税を推奨するのではなくてですね、納税から私たちのことを辿られないようにするためらしいですね。土地建物の固定資産税は、所有者が自衛隊なのであちらが支払っているようです」


 そうなると、税金の対象は贈与に関する物だな。そこそこの金額を贈与されているので、贈与税も結構な額になりそうだ。ところで、後沢が支払った宿泊費はどうなるんだ?


「うち、旅館業を登録していませんからね。従って、宿泊に関して料金を取るのもおかしいんです。あとですね、大谷村と長野県に住民税を支払う必要もあります。忘れてはいけないのですが、国民年金と健康保険料の支払いも必要です」


 ちなみに、小谷さんはその辺りどうなってる?


「私の雇用主は菅谷先生ですからね。住所も東京にありますから、税金から社会保障費関係は東京で支払われていますよ」


 自衛隊員も同じだと思うから、国民の義務を果たせていないのは俺たちだけと言うことになるわけだ。困ったな、そっちの方から足が付きそうな気がしてきたぞ。

 しかも真っ当に申告するためには、住民の登録も必要になってくる。ああ、エルフたちの戸籍とかも必要になるのか。外国人にして、在留許可にした方が良いのか?


「特別在留許可にしても、結構面倒ですからね。帰化申請をして帰化した方が後々楽だと思います。住民票は、後ほど纏めて大谷村役場に届けておけば大丈夫ですから」


 わかっていたのだが、この世界で行くていくには様々な手続きが必要なんだな。それを考えたら、あちらの世界は楽で良いことになる。


「その分、こちらは社会保障が手厚いと思ってください」


 それはそうなんだが、俺たちは払う一方になりそうだな。


「病気になったら……普通の医者には掛かれませんね。だとしたら、静かに暮らすためのコストと考えてください」


 本当に静かに暮らせるのか……悪い、今のは聞かなかったことにしてくれ。


「ええ、聞かなかったことにした方が平和ですね。間違いなく」


 そんなことを話していたら、セレスが声を掛けてきた。どうやら、篭もっていた後沢氏たちがやってきたようだ。

 久しぶりと言って入ってきた後沢は、ちょっとだけ無精ヒゲが伸びていた。それを気にした俺に、苦笑交じりに慣れないことをしたのだと言ってくれた。

 慣れないこと?


「ああ、ブレーンストーミングって奴だな。紙を沢山広げて、何をしたら良いのか、どこに問題が存在するのか、どう解消していけば良いのかとか、学生の時にやったようなことをしたぞ」

「それで出てきたと言うことは、何らかの結論が出たと考えて良いのか?」

「そうだな、どう歩き出すかぐらいは決めてきたぞ」

「具体的には?」


 俺たちに関係する以上、無関心で居るわけには行かない。


「ここに研究所を作ることにした。IMO Lab.って奴だ。ちなみにIMOは、不老不死から来ている」

「イモ? イモータルってやつか?」

「ああ、そのイモだ。だから……じゃないがロゴは、山芋をモチーフにすることにした。ネバネバで糸を引く所から、長生きを連想させることにした」


 ロゴが山芋……どこかの民芸料理屋か。どう見ても、山芋と先端バイオテクノロジーとの関係が見えないのだが。


「ださくないか?」

「意図的……と言うことだ。まさか、エルフや翼人をイメージに使うわけにはいかないだろう。あとはだな、ちょっとした茶目っ気って奴だな」


 それを言われれば、確かにそうとしか答えようがない。エルフや翼人じゃ、ありきたりと言えば良いのかそのものズバリだからな。しかし、茶目っ気で山芋ね。毛が生えているんだよな。


「ちなみに、研究所長はお前になって貰う。それ以外の住民は、基本的に研究所の社員として登録する。正式には株式会社IMOで、研究所はその一部と言うことになる。当然社長もお前に任せることにした。発行株式は、俺と堀内が折半で持つことにした。当然だが、上場する予定は一切無い」

「つまり、俺を含めて翼人やエルフたちも、社会的地位を得たと考えて良いのだな?」

「社会的地位と言うより、社会的立場をはっきりさせたと言うことだな。そのあたり、はっきりさせておかないと揉めることになるんだよ。お前も、国税の査察なんか受けたくないだろう?」

「ああ、まっぴらごめんと言うのが正直な気持ちだ」

「法務関係は東京でやるが、経理担当をこちらに派遣することにした。ただ、人選はこれからと言うことになる」

「……大丈夫なのか?」


 新しい人材を迎えると言うことは、それだけ情報漏洩のリスクを負うことになる。情報漏洩がなかったとしても、人間関係をぶち壊す恐れもあったのだ。


「駄目だったら、孝明がなかったことにしてくれれば良い。その程度の人材だと考えてくれれば良い」


 あまりやりたいことじゃないのだが、最悪リセットを考えれば良いと言うことか。

 それからと、後沢は研究所の入れ物のことを持ち出した。


「バイオ系の研究所だ。それなりに、セーフティレベルを満足した入れ物が必要になる。加えて言うとだ、セキュリティの問題も出てくるんだ。だから、入れ物は新しく作ることになる。具体的には、第二だったか、そこから道なりに5km程上っていったキャンプ場跡地だ。本宅、別宅その1、その2は社員住宅扱いとする」

「そこまで決めたのか?」

「そこまで決めないといけないと言うことだ。キャンプ場に入る部分は私道になるから、県道からの分岐にゲートを作ることになる。後は、本宅側にもゲートを作ることになるな。ただ別宅その1、その2は県道に面しているのでゲートは作れない。だからまあ、目撃者には気をつけてくれと言うのが俺からのお願いだな」


 施設を作ると言うことは、それだけ外部の人間が出入りすることに繋がってくる。あと忘れがちなのだが、目の前を走っているのは県道なのだ。つまり道路の維持管理が、県によって行われていることになる。それに加えて、第二の前には林道が通っていた。どうやらこの林道、新潟県に通じているらしい。

 ただ管理が出来ていないので、通行できるかどうかはよくわからないのだが。


「だったら、ラズライティシア様の幻惑魔法で対処するか」

「具体的には?」

「中を見ても、本当の姿に見えないと言うものだ。じいさんばあさんはやり過ぎだが、普通の男女に見えるようにする。勿論、近付く奴はすべて事前に把握するための結界を張るのだがな」

「もしも可能だったら、近付きたくなくなる奴もお願いする」

「人避けだな。さほど難しくないと言っておく」

「と言うようなことを、膝詰めで話し合って決めてきた。東京に指示を出したので、キャンプ場跡の買収やら長野県との折衝を始めるはずだ。開所式には、長野県知事とかが出席してくるんだろうな」

「知事が、わざわざ来るのか?」


 驚いた俺に、根回しが必要だがと後沢は言った。


「人口が爆減りしている所に、最先端の研究所を作るんだ。しかも、働いているのは若者ばかりだ。県知事が色気を出しても不思議じゃないだろう」

「確かに、自分の成果と自慢をしたくなるのだろうな……頻繁に来られると面倒だが、たまに来る分には適当にあしらってやる。しかし若者か……殆どのやつが、明治以前から生きているんだがな。ルーテシアなんか、室町時代だぞ」

「それを言っちゃおしまいって奴だな。県知事の方は、その程度の扱いで良いのだろうな」


 どうして、そこで俺の顔を見る。しかも、不安たっぷりと言うのはどういう意味だ?


「まだ、何かあるのか?」

「何もないと思っているのか? 思ってないよな?」


 なぜそこで詰め寄ってくれる。取りあえず、心当たりはないと言っておこう。


「俺が教えられたのは翼人だけだったんだぞ。それなのに、1週間もしないうちにエルフが増えていた。同じようなことが繰り返されても不思議じゃないだろう。事と次第によっては、ちゃぶ台返しを食らうと言うことだ」

「お、俺じゃないぞ……少なくとも、俺はハイエルフが来るとは思っていなかったんだ」

「だが、こうして来ちまったよな? 同じことがあるとだな、大騒ぎになるかもしれないと言うことだ。二度あることは三度あると言うじゃないか、俺が心配してもおかしなことじゃないと思うぞ。否定できるか?」


 否定できるのかと言われると、否定できないのは確かだな。元々この地に居を構えたのは、異世界から戻ってくる奴を収容するためだったのだ。それを考えれば、まだあっても不思議じゃないことになる。


「そ、その時は、俺が丸く収めてやる、としか言えないな」

「ここに来てくれればそうなんだろうがな……まあ、違う所に来る奴までお前の責任には出来ないか」


 少なくとも、俺の手の届く所の問題だと思っている。勿論、日本だけじゃないな、世界が混乱することになるのだが。その意味では、ここに来てくれた方がありがたいと言うことか。


「ところで、俺たちは思いっきり疲れたんだが?」


 任せっきりにしたことは悪いと思っている。だがな、人には出来ることと出来ないことがあるんだ。事業計画なんざ、市会議員に出来ることじゃないんだ。

 だから疲れていると言われれば、お疲れ様としかいうことは出来ない。いや、それだけじゃないな、まだ色々と出来ることはあるようだ。


「い、慰労してやるのは吝かじゃないぞ。それで、翼人とかの女性は必要か?」

「更に疲れさせてどうするつもりだ? まあ、ぱあっと騒ぎたい気持ちはあるにはある」


 確かに、あれは疲れるんだろうな。屈強な自衛隊員だから、耐えられただけなんだからな。後は、ラズライティシア様の演技指導も効いていると思う。

 だとしたら、ぱあっと大宴会を開くのが良いと言うことか。それならそれで、新しい出し物を見て貰おう。


「隠し芸……で良いのかな。ハイエルフたちが、新しい芸を仕入れたみたいだぞ」

「ハイエルフ……あの美形どもか?」

「ああ、あの美形どもだ。男も女も、こちらの流行に乗ってくれたようだ」

「それは、楽しみ……と言って良いのだろうな」


 ふうっと息を吐く所を見ると、本当に疲れているようだ。


「本当に疲れているようだな」

「まあな、久しぶりにらしくないことをした自覚はある。俺とか堀内は、こんな地道な作業をしない男なんだよ」


 だから疲れたと零した後沢は、セレスに向かってとんでもないことを言ってくれた。


「セレスさん。ちょっと膝枕を貸してくれ……良いだろう、減るものじゃないんだし」

「あいにく減るんだよ。だから俺は、お前に嬉しい強制力を働かせることにした。良いか、体力の先払いと言う奴だ。未来の体力を使って、今だけは元気になると言うありがたい奴だぞ」

「や、止めろ、それはちっとも嬉しくない奴だっ」


 まあ、そのつもりで提案したのだがな。


「なに、俺とお前の仲だ。遠慮する必要は無いんだぞ」

「だからいらんと言っているんだ。いいか、余計なことをするんじゃないぞ」

「俺は、親切のつもりでいっているのだがな。まあ、いらんと言うのなら無理強いするものじゃないな。それで、これから宴会までどうする?」

「取りあえず寝る!」

「御衣黄さんと? それとも堀内氏とか?」

「俺と堀内を一緒にするなっ!」


 つまり、堀内氏はそちらの趣味があると言うことか。余計なことを聞くんじゃなかったな。


「あいつは受けだからな」

「その情報、必要か?」

「ちょっと仕返しをしただけだ。ちなみにあいつらは、もう落ちているからな」

「そうか、お前は説明をしに降りてきてくれたわけだ」


 感謝すると頭を下げたら、大仰に驚いてくれた。おいおい、それは失礼じゃないのか?


「お前には、これぐらいがちょうど良いんだよ。とにかく寝るから、適当な所で起こしに来てくれ」

「うまいものを用意するように言っておく。後は、エルフたちにも張り切るように伝えておくからな。ところで、翼人はいるか?」

「後が面倒になるので止めてくれ」

「だそうだヴェルファイア、センティア、後沢を送ってやってくれ」

「話をちゃんと聞いていたか? それに、俺は一人で帰れるのだがな」

「まあ、ちょっとした空の散歩を楽しんでくれと言う程度だ。心配するな、二人は俺と関係をしている」


 だから、後沢相手に盛ることはない、はずだ。まあ、多分だが、ないと思って良いと思うぞ。だからのんびりと休んできてくれれば良い。良いだろう、二人ともとびっきりの美人なんだから。




 それから4時間後、別館その1に集落全員が集まることになった。いや、集めてみてなんなのだが、増えたなと言うのが正直な気持ちである。何しろ最初にこの地に来たときには、俺を含めて異世界組は5人だったのだ。そこに小谷さんを加え、6人と言うのが上里集落のすべてだったのだ。

 そこに自衛隊から2人、白船君と神代さんが加わってくれた。それでもまだ8名と、吹けば飛ぶような小さな集落だったのだ。


 そこに翼人が男4人に女が16人増えたのだ。それに合わせて自衛隊から4人加わったので、集落の人数はいきなり32人と4倍増である。しかも新年早々にハイエルフが、男5人に女が13人増え、ついでに子爵家令嬢1が増えたのである。これで、都合51人の大集落になってしまった。

 見た目だけなら10代後半から20代揃い、そして平均年齢だと数百歳と言う、極めて不思議な団体でもある。


「今日は、集落にとって大切なお客様を迎えている。まあ1週間前にも宴会をしたのだが、今日は特別な宴会にしたいと思う。翼人のみんな、ハイエルフのみんな、多分期する所があると思う。いいな、今日は出し惜しみは無しだ。君らの熱いパトスをぶつけてくれっ! それでは、乾杯っ!」


 いつもながら適当な挨拶をきっかけに、今までで最大の宴会が開かれることになった。ただ仕入れの間に合わない所があったので、高級食材は普段よりは控えめなのかもしれない。その分腕の見せ所と、山岡服部が張り切ったので、豪華さでは遜色の無いものになっていた。


「と言うことなので、取りあえず飲め」


 主賓と言うことで、俺とセレスがホスト・ホステスを務めることになった。従って、後沢と堀内には、俺がお酌をすることとした。


「いやいや、それは違うんじゃないのか?」

「どうして美人のホステスがいるのに、お前が俺たちにお酌をするんだ?」


 従って、二人からは猛烈な抗議を受けることになった。まあ、その辺りはちょっとした茶目っ気と言う奴だ。心配しなくても良いぞ、ちゃんと翼人の綺麗どころも用意してあるからな。


「だから、俺はセレスさんに酒を注いで貰いたいんだ」


 つまり、翼人の綺麗どころでは不満があると。仕方が無いな、子爵家御令嬢様にも登場して貰おうか。


「お前、わかっててやってるよな? 嫌がらせか、大スポンサー様に嫌がらせするのか?」


 強制力を働かせないだけ優しいと思うのだがな。とは言え、仕方が無いか。

 と言うことでセレス、後沢と堀内を労ってやってくれ。


「私で宜しければ。では最初に後沢様、お骨折りくださいましてありがとうございます」

「そうだよ、これでこそ報われると言うものだろう。だからセレスさん、こっそりと抜け出さないか?」

「申し訳ありません。私は、孝明様に一途なんです」


 とても素敵な笑みを浮かべ、そして勘違いを起こしようもないほどセレスはきっぱりと言い切ってくれた。


「堀内様にも感謝いたします」

「まあ、ありがたく頂いておくことにする。しかしなんだ、どうしてそこまでベタ惚れに出来るんだ?」


 その辺りは男の甲斐性……と言いたい所なのだが、俺にもわからない所がある。ただ理由を聞くと怖いので、聞かないことにしているだけだ。


「ベタ惚れの理由ですか。それって、言葉で説明できるようなことではないと思います。それから、ベタ惚れと言うのはその通りと申し上げておきます」

「なにか、聞いてて辛くなってきたな。おい孝明、お前は……お前たちはもう良い。御衣黄でも構ってやってくれ」

「その、私も辛くなるから遠慮したいなぁって」

「だったら、その綺麗どころとかを連れてきてくれっ」


 はいはい、俺たちは接待には向いていませんよ。大人しく酌をされていれば良いのに、セレスに言い寄るのが間違っているんだ。

 そう言うことなので、ハイエース、ヴェルファイア、ハリアーとポルテ、適当に人選してくれるかな。それから、性接待を考えるんじゃないぞ。自由恋愛を否定するのか? 否定はしないが、今日の所は遠慮をしてくれ。求められたら……か。その時はその時と言う奴だな。


 それから堀内氏は、男が良いみたいだぞ。


「おい、どうしてそんな話になる?」

「俺は、後沢に聞いたことをそのまま口にしただけだ」

「晋作、お前掘ってやろうか?」

「新司、掘られるんだったらお前じゃないのか? ちなみに、俺は男の趣味はないからな」

「お、俺だってそんなものは無いっ!」


 なんか、おかしな形でヒートアップを始めたな。それはそれとして、白船君、余興の方はどうなってる? そうか、最初はエルフの女性が行くのか。俺も見たことがないので、結構楽しみだったりするんだ。

 8人組なんだね。ところで、あの衣装はどうしたのかな。結構大胆と言えば良いのか、もの凄く似合っていると思うぞ。そうか、今日のために用意したと言うのだね。これも薄墨さんの活躍と言うのだな。流石は薄墨さんと言って良いのか、食材じゃなくてもいけるんだ。

 そうか、コスプレ系を得意としているのだな。ちなみにこれは、音ゲーのコスチュームと言うのだね。アイドル系の音ゲーって……今時のゲームってかなり作り込まれているんだな。


 ちなみにこの音楽は? そうか、これもゲーム音楽なんだね。他にも、アイドル系もあるんだ。将来的には、オリジナルにも挑戦する。問題は、オリジナルを作る人材だと言うのだね。悪いな、その方面では力になれないんだ。そうか、最初から期待されていなかったか。

 しかし、本当にキレキレなんだな。素人の俺が言っても説得力は無いけど、テレビでやっているのより凄くないか。そうか、間違いなく凄いのか。だから、一般公開したいと言うのだね。トベとかチクタクならば、正体がばれる心配も少ないのか。

 ちょっと悩ませてくれないかな。後沢たちにも相談してみる。取りあえず拍手拍手と。


 次は、エルフの男4人なんだな。いや、なんだ、もの凄く格好良くないか? 生で見てこれって、カメラを通したらもの凄いことになるんじゃないのか。間違いなくそう。踊りもキレキレ、しかも表情も決まってると。

 知ってはいたけど、思っていたのより数段上だったと言うのか。確かに凄いな、この手の知識が無くても、本気で凄いと思えてしまうぞ。


 ただ気をつけろよ。翼人の女どもの目が怖くなっているからな。男のエルフは貴重なんだ。カップリングするのなら、エルフ同士を優先しないと純血の問題が出るんだよ。ハイエルフと翼人、どっちの血が強いんだろう。


「ところで孝明。あれは凄すぎないか?」


 なんだ後沢、俺に近付いて良いのか。なに、あれを見せられたらそんなことは言っていられない。本気で活用方法を考えた方が良さそうと言うのだな。白船君が言うには、トベとかネット公開するのはどうからしいんだ。

 悪くない考えと言うんだな。そうか、悪くない考えなんだな。それでどうするんだ? そっちも人材を考えてくれるんだ。


 ちなみに翼人の方はどうだ? 最初のインパクトが大きすぎた。悪くはないが、比較の対象が悪いと言うのだな。確かに、エルフたちの後では地味に見えるな。

 だからと言って、そこで翼を展開するんじゃない。それからここは広くないんだからな、無理して飛び上がらなくても良いんだぞ。もう一つ言っておくが、飛んでいる姿は公開できないんだからな。わかったわかった、お前たちも十分に凄いんだよ。ただな、情報公開の問題が解決しない限り活躍できないんだよ。


 それで白船君、出し物はこれだけなのかな? 秘蔵ビデオはあるが、再生して良いのかわからない。ちなみに秘蔵ビデオって……ああ、自衛隊とか捕獲したときの奴か。翼人を捕獲したときのもある。確かに、全員の名誉に関わってくる映像だな。

 ただ、ここに居るのは全員関係者だろう。だったら、笑い話として公開してもいいと思うんだ。だったら公開する。準備をするから待っていて欲しいと言うのだな。


 お~い後沢、これから面白ビデオを映写するからな。


「面白ビデオ、だと?」

「ああ、面白ビデオだ。最初の奴は、翼人たちが現れた時の奴だな。その次が、自衛隊の襲撃未遂事件のものだ。そしてその次が、ハイエルフたちを保護したときの奴になる」

「加えてですね、異世界に攻め込んだときの奴と、ワイバーンを落とした奴も公開できます」

「ワイバーンのって、白船君はいなかったよな?」

「機材はこちらのを使いました。ですので、バックアップが残っていたんです。と言うことなので、最初は翼人たちを捕獲したときの映像です」


 これって、出現するのは撮れなかったんだよな。その代わり、しっかりドローンが活躍してくれたんだったな。


「本当に飛んでるってのは今更なんだろうな」


 ああ、今更だな。それから唄っているのは……キャプションを入れてくれたんだね。いつの間にと思ってもおかしくないと思うぞ。


「おい、なんだ、この酷い唄は?」


 何を今更……そうか、堀内氏はこの唄を知らなかったんだな。一応伝統的な求愛ソングらしいぞ。ただ歌詞は酷すぎるのだが。ちなみに冬コミで、日本語訳した聖地バージョンも唄ったんだ。そうか、あっちの映像もあるんだな。だったら、この後映してくれるかな。


「で、これが自衛隊が失敗した奴か。さっきの奴と言い、荷造り紐で良いのか。コスパが凄すぎないか?」


 150mで100円ちょっと。自衛隊員20名を捕まえるのに、2巻しか使っていないな。効果を考えたら、確かにコスパが良すぎるな。

 ちなみに翼人捕獲には、3巻で終わっていた。流石に奴隷狩り200人には、20巻使った気がする。それでも、総費用で2000円ちょっとか。どうだ後沢、護身用に2、3巻持って帰るか? そうか、使い道がないのか。


「あれだけの人数を、荷造り紐だけで確保しちまったか。おいおい、ワイバーンも荷造り紐か? 万能だな、荷造り紐」


 別に万能ってことは無いぞ。ただ、便利に使わせて貰ってるけどな。他の紐でも同じことが出来るのか、か。まあ、麻紐でも洗濯紐でも同じことを出来るんだろうな。ただ、重量を考えると荷造り紐は使い勝手が良いんだ。


 これで映像は終わり。その代わり、いつものをやると言うのだな。まあ、あれはあれで宴会にはもってこいと言うのを認めてやろう。喜べ後沢、堀内。生の求愛ソングだぞ。


~こいのきせつがはじまった そとはゆき

 さむさなんかかんけいない からだはあつくもえている

 おとこがいたぞ さあまわりをとりかこめ

 かわいくせまれ ほんしょうはかくしておけ~


~こいのきせつがはじまった にわにはおはながさいている

 まわりのけしきをきにするな すぐにめにはいらなくなる

 おとこがいたぞ さあつかまえろ

 つかまえたなら おいしくいただこう~


~よってたかってしぼりとれ

 よってたかってしぼりとれ しぼりとれ~


 なんだ、歌詞を新しくしたんだな。マンネリを避けた……マンネリになるほど唄っていたかな。前よりマシに聞こえるけど、結果的には搾り取るのは変わらないのだね。

 しかし歌詞は酷いけど、本当に楽しそうに唄ってくれるね。しかも全員で輪になって……どうして俺たちを囲んでくれるのかな。そうか、今日の獲物は俺たちと言うのだな。身の程知らずな奴め、返り討ちにしてやろう!


「孝明、返り討ちは流石にモラルに厳しくないか? 体力的にもきつい……絶対に無理だろう」


 実行すればそうだが、これはその場ののりと言う奴だぞ。どう言うことか、か。つまりしないと言うことだ。


 なぜ、全員でがっかりしてくれるんだ。常識的に考えて、冗談に決まっているだろう。そこ、ラズライティシア様、舌打ちをしないように。

 ああ、確かに遠慮は無くなってきたな。ただな、どこか間違っていると言うのは俺の気のせいか。気のせいじゃない、そのつもりでやっている。そろそろ、全員で押さえつけることを考えていると。


 荷造り紐さん、そろそろ出番です。


 どうして、俺に絡みついてくる。空気を読んだ? なぜ荷造り紐が、そんな真似ができるんだ?




 それからの3週間は、特にイベントと言うイベントは発生しなかった。異世界人の追加がなかったのも、落ち着いた時間を過ごせた理由なのだろう。思い出したように宴会はしたのだが、それもかなり限度をわきまえたものになっていた。

 おかしいな、後沢と堀内は真面目人間なのか?


「真面目かと聞かれたら、不真面目と答えるぞ。ただな、不真面目な方向がお前とは違っているだけだ」


 おいおい、俺は真面目な市会議員様だったのだぞ。逆に、面白みがないと言われたぐらいなんだ。なに、そいつらは見る目がない。まあ、俺の真価に気づかないのだから、見る目がないのは認めてやろう。

 違う、こんな奴がまともであるはずがない。おい、随分と酷いことを言ってくれるな。どうして、おれがまともじゃないんだ?


 この環境で正気を保っている。そもそもここの狂気は、俺が原因だと言うのか。酷いな、俺は本当に常識人だと思っているんだぞ。

 常識人は、荷造り紐を武器に使わない。その辺りはまあ、思っていたより使い勝手が良かっただけと言うことだ。


 それはそれとして、東京に帰るのか? 取りあえず、ここで出来ることはした。これ以上東京を開けると、流石に事業に問題が出ると言うのか。それで、次はいつ来るつもりだ? この辺りの雪が解けたら、か。だとしたら、ゴールデンウィーク近くになるのだな。いや、白船君が調べてくれたのだがな。第二別館は、11月中旬から半年は閉鎖していたのだそうだ。

 理由? どうやら積雪が理由らしいぞ。だったら、ゴールデンウィーク明けに来るのだな。工事は先行して、4月ぐらいから始めるのか。さほど立派な建物を作るつもりはない、だから工期はそこそこ短くなると言うのだな。つまり、あと4ヶ月は何もないと思って良いわけだ。


 ところで一つ質問なのだが、どうやってここから帰るつもりだ? 見ての通り、本宅より下は除雪していないぞ。翼人に頼んで、国道の所まで運んで貰うのか? 嫌がらせは止めろ。普段どうやって食材を仕入れに行っているのか、かな。下のほぉ~にある駐車場に、仕入れ用の車が置いてあるんだ。ああ、翼人たちがとっても協力的でな。薄墨さんと一緒に飛び回ってくれてるよ。

 それでどうする?


「常識を考えれば、道の駅ぐらいまで送ってくれても良いよな?」


 別に、近場の駅まで送っても良いぞ。何だったら、糸魚川ぐらいまで送っても良いぐらいだ。だったらその方向で、かな。ところで、御衣黄さんはどうするんだ?

 そうか、ここに残るのか。東京に帰っても、することがないと言うのだな。それは良いのだが、一人で第二に住むつもりか?


「お願いですから、本宅か第一の方に住まわせてください」


 そうだよな、雪の中に一人は寂しいよな。本宅側だったら小谷さんの家、そうでなければ第一になるのだが。そうか、第一の方が楽しそうでいいのか。ところで白船君、第一はまだ部屋があるのかな?

 資料館側にある。ハイエルフが増えたので、あちらも間仕切りをして使用を開始したんだね。ハイエルフたちが魔法で暖房しているので、結構快適な空間が出来ているんだ。


「こちらは、私たちが魔法で暖房しています」


 こらこら、そこで張り合わなくても良いのだぞ。翼人、特に女性が魔法に長けているのは知っているんだからな。

 それは良いのだが、燃料の方はどうなっているんだ。これだけの人数を食べさせるのだから、ガスとかの使用量も多いんだろう? この辺りって、都市ガスなんて通っていないよな。

 そんなことを気にする必要は無い。今は、電気で調理が出来ると言うのだね。その辺りは、自衛隊が頑張ったと言うことか。そうか、凄いな自衛隊。久しぶりに、感心させて貰った気がするぞ。もっと褒めて良い、どうも不当に貶められていた気がしてならないと言うのだね。

 いやな、それにはちゃんと理由があるぞ。それでも日本の防衛は、微塵も揺るいでいないと言うのだな。それって、日米安保のお陰じゃないのかな? それが無いとは言わないが、目立たない所で自衛隊の貢献が大きいと言うのだな。まあ、地方の市会議員程度じゃ知らないことも多いんだろうな。


 それはそれとして、後沢たちを送っていかないとダメなんだよな。


「それなんですけど、除雪をして貰っていいですか?」


 それは構わないが、何か理由があるのかな。そうか、ちょっと纏まった仕入れをしたいのだな。牛の枝肉を大量に仕入れたい。後は、寒ブリを2、3本仕入れると言うのだね。なるほど、コンテナ車を使うと言うのだね。


「ええ、今回はワゴンとコンテナ車を使います。後沢様たちは、ワゴンに乗っていただければ良いかと思います。どうせ、行きは空荷ですから」


 だったら、送って貰っていいかな。それで後沢、どこまで送っていけば良い?


「仕入れはどこでするんだ?」

「糸魚川中心で仕入れています。特別なものが必要なときは、金沢にまで足を伸ばしています。今回は、糸魚川か富山ぐらいですね」

「だったら、富山までお願いできるかな」

「富山ですね。畏まりました。出発は明日の朝ですけど、それでも構いませんか?」

「まあ、一日を争うようなものじゃないからな、堀内、別に構わないよな?」

「せっかくだから、金沢で遊んでいかないか?」

「金沢かぁ……どうですセレスさん、日本の古都を散策すると言うのは?」


 おっ、金沢散策か。確か寿司がおいしいし、お菓子も沢山良いのがあるんだよな。どうした後沢、すごく嫌そうな顔をしているように見えるぞ。


「嫌そうな顔じゃなくて、本気で嫌がっているんだよ。どうしてセレスさんを誘ったのに、付いてくる気でいるんだ?」


 俺抜きで、セレスが外出すると思っているのか?


「ええっと、少し気持ちが動いたと言っては駄目ですか?」


 ちょっと待て、本気で言っているのか。冗談で良いんだよな?


「どうした孝明、急に自信がなくなったじゃないか」


 くそっ、後沢の奴勝ち誇りやがって。それにセレス、なんだその余裕の笑みは。


「たまには嫉妬していただきたい。ただそれだけのことですよ。後沢様、ご協力に感謝いたします」

「俺も面白いものを見られたんだ。まあ、悪い役じゃないと思うぞ」


 お前ら、共謀したな。こらルーテシア、笑うんじゃない。


「孝明、慢心は命取りと教えただろう?」


 ええ、そんなことがありましたね。あれは、あちらの世界に渡ってすぐのことでしたかね。でも妻の愛を信じることを、慢心と言って良いんですかね。


「普通ならそんなことは言わないと思うよ。ただ孝明、君は『妻』が何人居るのかな?」


 それを俺のせいにしますか? だったら、セレス一人に絞っても良いんですけど。師匠、どうして剣を構えるのですか? それからヴェルファイア、センティア、こめかみに青筋を立てて迫ってこないように。

 それから後沢、堀内、煽り立てるんじゃない。これも、自分の利益のため。なあ、そろそろ強制力を働かせて良いか?


 うまい寿司を奢るのでそれで許せ、か。仕方が無い、約束だぞ。あと、蟹も付けてくれたら嬉しいのだがな。



IMO研究所、通称イモ研が出来ることになりました。ただね、研究所って作るのは大変なんですよ。はい、設備とかなんですけど。

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