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誕生

村の特産は異世界です


・誕生


 私は誰か、と問うてくれますか。でしたらお答えしますけど、その前に跪いて頭を垂れなさい。何しろ私は、世界を統べる女神ですからね。そう女神エンビジョンと言うのが、私の名前なのです。

 それはそうと、どうして興味を失った顔をしてくれるんですか。なんです、女神は食傷気味と言うのは。女神と言うのは、とても尊い存在なのですよ。それを食傷気味と言いますか? 天罰、与えてあげましょうか。


 それで、どうして私が出てきたのかと聞いてくれますか。それなんですけど、邪神が邪魔者の排除に動いたんです。どう言うことかと言うと、甘い囁きに騙された大馬鹿者がいたと言うことです。そのせいで、私は切り札の2人を失ってしまいました。はい、勇者エクシブと大魔法使いラズライティシアの2人です。コーメー・モロボシですか? あのですね、あの男は私の管轄外だったりするんです。そもそもあの男、一体何者なのですか? 私の世界に、あんなとぼけた男は居ないはずなんですよ。

 あれが魔王、ですか。流石に、まさかと言わせていただきます。あんなとぼけた、と言うのか、間の抜けた魔王なんて存在しませんよ。だから放置していたんですけど、それが隙になったのでしょうね。王宮内にはびこる大馬鹿者が、コーメー・モロボシの討伐命令なんか出してくれたんです。ええ、切り札の2人にです。多分ですけど、潰し合いをさせようと考えたのでしょうね。その策がまんまと当たって、3人……正確には4人なんですけど、もう一人のエルフはどうでも良いですよね。それで3人の消息が掴めなくなってしまいました。


 焦りましたよ。ええ、もの凄く焦りましたよ、当然ですよね。だってあの苔生したエルフ……実は顔見知りだったりするんですけど。私が地上で活動していた時にも生きていた、化け物みたいな存在なんです。それなので、正面から喧嘩をしたら私でも危ないぐらいの実力者だったりしたんですよ。

 その化け物が、己を犠牲にして封印するしかないなんて。管轄外ですけど、なんて化け物を送り込んでくれたんです? もうね、嫌がらせかと思ってしまいましたよ。


 それでも、焦っているだけではいけませんよね。だから女神の力を使って、ですね。捜索なんかしたんです。そうしたらなんですが、厄介な場所にいるのを見つけてしまいました。はい、上位神の直轄地になっている場所にいたんです。なんでそんなところにって言っても良いですよね。

 でも苔生したエルフは、私の世界の住人なんですよ。あと可愛らしい勇者エクシブ君も私の物なんです。ですので、返してくださいと言うのは正当な権利だと思うんです。それに帰ってきて貰わないと、ですね、この世界が危なかったりするんですよ。あの世界の住人を攫ってくるわけじゃないんですから、責められることでもないと思っています。はい、私としては、ですよ。


 それでですね、返してくださいって言いに行ったんですよ。でも、門前払いよりも酷い『無視』にあってしまいました。『ごめんください』って呼びかけたのに、だぁれも相手にしてくれなかったんです。ねえ、酷いと思いませんか? 思いますよね、だから私が強硬手段を執るのも許されると思うんです。

 どんな強硬手段か、ですか。取りあえず、苔生したエルフを拉致してくるんです。あの化け物がいるだけで、こちらがぐっと有利になるんですよ。だから個人的思いとは別に、化け物を優先すると言うことです。


 ただですね、私の世界に比べてあちらは広すぎるんです。ですので、居場所を掴むのに苦労なんかしてしまいました。それでもなんとか見つけたので、後は作戦を練って拉致すればオッケーと言うことです。

 ただですね、その前にバカンス、しても良いですよね。ええ、あちらの世界ってグルメが充実しているんですよ。だからですね、お仕事前にちょっと羽を伸ばそうかなと。南国、南国で良いんですよね。青い空と青い海、それを眺めながらさわっとしたお酒なんか楽しんでいたりします。お金、お金ですか、私は女神なんですよ。飲み終わったところで転移をすれば問題ないと思いませんか?


 それで、いつ拉致を決行するのか、ですか。それなんですけど、リゾートは他にもあったりするんです。優先順位、ですか? これまで働きづめだってんですから、休暇を楽しむことを優先するのは当然だと思いますよ。




 ねえ武見君、ちょっと弱音を吐いても良いかな。うん、愚痴じゃなくて弱音なの。わかってると思うけど、グラ母さんのことなのよ。

 ほら、竜人の遺伝子は私たちと同じって話、以前したことがあったわよね。だったらさ、出産も同じだと思ってもいいと思うんだ。でもね、陣痛が始まったのは良いんだけど、そこから全然進まないのよ。しかもグラ母さん、高熱まで出てしまったの。しかも衰弱してきたって……まるで子供に命を吸われているみたいなのよ。

 だから今は、シア母さん、シオンさんが魔力をフルパワーで充填中。そんな環境にいられない……私だと即死するって言われたのよ。だからこうして、外に出て弱音を吐いているところ。あれを見せられると、竜人の子供が少ないのも理解出来るわ。あっ、お父さん起きてきたの?


「寝ていられないからと言うのが答えです。ですので、これからグラの所に行ってきます」


 うん、そうね……じゃないわよ。いくらお父さんでも、あの魔力が高密度で充満した環境は無理だと思う。だってお父さんの細胞でも、高魔力条件下での実験で耐えられなかったのを覚えてるよね。シア母さん、あの時以上の魔力を使ってるって言っているんだよ。

 それに言っては悪いけど、お父さんに出来ることは何もないわよ。このままシア母さんたちに頑張って貰って、状況が好転するのを待つしか無いのよ。


「武見君も同じ考えですか?」

「産婦人科の知見はないんだ。ただ、バカみたいな魔力を浴びたらどうなるのか。それぐらいはわかっているつもりだ。俺と御衣黄さんだったら、間違いなく即死するレベルの魔力に満たされている。魔力に耐性のある立木さんだが、流石に今までのとはレベルが違っている」


 だからお父さんはここで待っているしかないの。これ以上は、諸星さんに来て貰うしかないと思ってる。さも無ければセレスさん。だってフローリアンさん、パナメーラさんもわからないって言っているのよ。

 あっ、優美姉さん、北斗さん。お父さんを止めてくれるかな。お父さん、グラ母さんの付き添いに行くって言ってるのよ。慶子母さんも止めて欲しいのよ。


「あなたは、それが必要なことだと思っているのですね?」

「そうだね、必要なことだと思っているよ。それからかすみちゃん、私は自殺願望なんか持っていませんよ」

「私が言えるのは、悔いの無いようにしてくださいと言うことだけです」


 ち、ちょっと、幾らお父さんでも無謀だから。ねえ、なんでみんな止めないの?


「そう言われても……お父さんだからねぇ。ねえ、陽佳ちゃん」

「お父さんだからで済ませるのもどうかと思いますよ。でも、やっぱりお父さんだからかなぁ」

「無茶をするのは今に始まったことじゃないと思うんだ。そもそも、IMO研に関わること自体が無茶だったんだしな」

「お父さんは、勝算のないことはしませんよ……滅多にかな」


 それじゃあダメって言って良い。言っても良いけど、お父さんを止められないと言ってくれるんだ。そっかぁ、止められないんだ。私もそうじゃないかと思ったんだ。

 だってさ、武見君。


「だってさと言われてもだな……俺に、どう答えて貰いたいんだ?」

「自分の作った魔道具を信じている……で良いんですよ。私だって、無策で飛び込むわけじゃ有りませんからね。一応お産についても勉強してきました」


 ねえ、それってここで言うことかしら。重い空気に耐えられなくなったって……本当に、そんなことで良いの?


「こんなもの、気負ってもどうにもなりませんよ。それからかすみちゃん、念のため諸星さんとセレスさんに控えて貰っていてください」


 ええ、もう止めないから。諸星さんたちにはすぐ来て貰うからね。

 もの凄く軽い調子でお父さんが転移していきました。シア母さん、シオンさんがいるから、もしものことはないと思うけど……これでうまく行ったら、私は現代医学を疑うわ。勿論、うまく行って欲しいと思ってるわよ。


 取りあえず諸星さんに連絡するから待っててくれるかな。ええ、可及的速やかにここに来るように。来ないと、また冷たい視線を向けて差し上げます。はい、着替えてすぐに飛んでくる。ぐずって罵って欲しくなければ、急いでくることね。

 はい、これで諸星さんの呼び出しは終わりました。終わったんだけど、どうして揃って冷たい視線を向けてくれるの? 呆れてる……そんな態度をとっていると縁遠くなる。陽佳ちゃんさぁ、世の中には言って良いことと悪いことがあるのよ。私だって、お父さんの前では借りてきた猫のように大人しいんだからね。それから慶子母さん、口を押さえて笑わないように。


 ああっ、他にも連絡するところを忘れてた。本当はお父さんの仕事なんだけど、大芝先生にこちらの事情を伝えておく必要があるのよ。だってシア母さんとシオンさんが、馬鹿げた魔力を展開しているんでしょう。だとしたら、大芝先生のところが大騒ぎになっていると思うから。

 と言うことで、大芝先生に連絡……はい、御衣黄です。ちょっとですね、お父さんは手を離せない事情があるんです。はい、グラ母さんの出産に関してです。それでですね、シア母さんとシオンさんが、バカ魔力を放出なんかしているんですよ。ひょっとして、先生のところの観測値がノイズまみれになっていないかなぁ、なんて思って連絡をしました。いえ、連絡が遅くなったのはお詫びいたします。と言うことは、観測値が使い物にならなくなったんですね。誠に持って申し訳ありませんとしか言いようが有りませんですはい。


 それで状況はどうなっているか、ですか。はい、私が赤んぼうを取り上げる予定でいたんです。その私が連絡しているのがすべてだと思ってください。今はですね、人知を超えた世界へと突入しているところなんです。その人知を超えた世界に、お父さんが入っていってしまったんです。

 なら大丈夫……大丈夫なんですか。いえ、私も大丈夫だとは思っているんですよ。ええ、全く科学的じゃ有りませんけどね。と言うことなので、取りあえず失礼させて頂きます。


 ふぃ~っと息を吐いたら、本山先生のご登場。いえ、迷惑なんて言うつもりは有りませんよ。先生のおかげで、色々と助かっているんです。ただちょっと、精神的に辛いかなぁ、なんて感じていたりするんですよ。


「取りあえず飲み物を用意した。皆さん座られたらいかがでしょう」


 そうね、じりじりしていても何も解決しないものね。だったら……お酒はないと思うわよ。一応ノンアル……お酒も用意してあるが、そちらは乾杯用なんですか。ちょっと気が早いって、言っても良いですか?

 それに北斗さんは、お酒を飲まれないそうですよ。だからノンアルも用意してある。ええ、そうでしたね。でしたら、それまではコーラでも飲んでいますよ。ちょっと疲れたので、糖分補給をした方が良いのかなと。


 こんな時に、気の効いた話なんか出来ませんよね、普通は。勿論コミュ障の有る私が、話なんか振れるはずがありません。それに、どんな話をすれば良いのか、全くわからなくなっているんです。

 それなのに優美姉さん、北斗さんはどうかと聞かないでください。ええ、お父さんに『息子の嫁になって欲しい』と言われてときめいたことはあるんですよ。だけど美波さんでしたか、お目に掛かって勝てないと言うのがしっかりわかってしまったんです。コミュニケーション能力のある美人って、私の一番苦手とするタイプなんですよ。


「だってさ、北斗」

「昨日から、僕に何を言わせたいんだ?」

「御衣黄さんだったら、ハイエルフとか翼人とかのことを見逃してくれるのかなぁって。後は、そうね、一生食べさせて貰えるんじゃないの?」

「それからかすみ君だと、将来ノーベル賞を取ってくれるぞ」

「だから、皆さん僕に何を言わせたいんですか?」

「藍香さん、もうすぐもの凄いお金持ちになるって話ですよ。次のボーナスで、トベの収益とか印税とかが支給されるそうなんです」

「だぁかぁらぁっ」


 あっ、北斗さんが切れた。


「北斗、こんなものは暇潰しの馬鹿話なんだからね。だからお母さんも……もしもし、なにか本気になってない?」

「だって、かすみちゃん、藍香ちゃん、2人ともとっても良い子なんだもの。でも、2人ともって訳にもいかないし。面白いのは小谷さんなんだけど、ちょっと大酒飲みのところがね」


 ああ、シズカさんは面白い枠なんだ。最初に会った時には、随分と『出来る女です、きりっ!』ってやってたのになぁ。そりゃあ今は、しっかり冷凍マグロ芸で有名になってるんだけどね。でもシズカさん、将来の国会議員枠なんだよね。

 なんか、こうして見ると凄い人が集まってきたのかな?


「こうして見ると、一般人枠は私と北斗ってことになるのね」

「お姉さん、IMO研究所に入所してみます? もれなく、一般人枠から外れる権利が与えられるんですけど」

「私は、お父さんみたいに非常識じゃないからっ!」


 ああっ、なんか楽しいなぁ。本当は、楽しんでいちゃいけないと思うんだけど。だけど、こんな風に笑っていられるのって、なんか羨ましく思えちゃう。

 だったら、今の関係を続けるのが一番良いのかな。だって……


「今、揺れたよな?」

「間違いなく揺れたわね」

「地震ってことはありませんよね?」

「どこかで爆発でもしたのか?」


 本山先生。怖いことを言わないでください。だって、ちょっと離れた所に、冗談みたいな魔力が充満しているんですからね。

 ああっ、諸星さん登場。セレスさんも……ゼッタイシン様モードになっているんですね。でも、セレスさんの顔色が良くないんですけど。


「どうして、私の手に余ることばかり起きてくれるんでしょう」


 もしもし、セレスさんって一番偉い神様なんだよね。その神様の手に余るって、どゆこと?


「言葉通りなんですけど。今の爆発……で良いのですよね。まともに受けたら、この辺り一帯……ではありませんね。この星が消滅してもおかしくない密度があったんですよ」


 えっ、そんな爆発がっ! って言って良いわよね。だとしたら、お父さんたち大丈夫なのかしら。


「取りあえず大丈夫と答えておきます」


 あっ、お父さんっ! って、全員素早いわね。それでお父さん……とシア母さんかな。抱っこされてるのはシオンさんだよね。みんな、大丈夫なの?


「大丈夫ではあるのだが、流石に限界が来ておるな。シオンなど、魔力を放出しすぎて失神してしまった」


 シオンさんが失神するって、どんだけ魔力を放出したのよ。


「ああ、われも危ないところだったぞ。しかしなんだ、その甲斐あってグラは落ち着いたからな。だからかすみよ、チームを連れてグラの所に行ってやってくれ」


 グラ母さん、落ち着いてくれたんだ。流石はシア母さん、シオンさんだわ。


「結局、キヨヒコに頼ってしまったのだがな」


 そう言えばお父さん、あの魔力に晒されて大丈夫だったんだ。今更だけど、お父さんって変すぎない?


「流石に疲れましたけどね」


 疲れた程度ですむ方が異常だと思うわよ。だってシオンさんですら、気絶してしまったぐらいなんでしょう?


「うむ、われもかすみの言葉を否定できんのだ。あの高密度魔力に比べたら、魔王樹の即死魔法などそよ風のようなものなのだからな。その中に入ってきてすべての魔力を制御するなど、もはや人の所業とは思えなかったぞ」

「改めて主張しますけど、私はただの人ですからね」


 お父さん、この期に及んで『ただの人』なんて言ってくれるんだ。だったら、さんはいっ!


 嘘っ!


 ええ、みんなの気持ちが一つになりました。もうね、セレスさんまで嘘って言ってくれたんですよ。本山先生、本山先生も声を張り上げていました。

 それは良いけど、すぐにグラ母さんの所に行かないと。武見君、後は任せる……と言ってもやることはなかったわね。取りあえず助産婦さんたちを連れていってくるからっ!




 はい、ここからは一番若い私、立木陽佳が引き継ぎます。それでお父さん、結局何をしてきたの?


「何をと言われても、ですね。子供たち2人に、早く生まれておいでと声を掛けただけですよ。あなたたちは望まれて生まれてくるのだから、何も怖がることはないのだと語りかけてあげたんです。ええ、ちゃんとグラの手を握りながら語りかけてあげましたよ」


 それなんだけど、どうやってあの環境に耐えたの?


「ちょっと魔道具の機能をフル活用しただけです。回りの魔力を使って、身を守る結界に似たような物を作っただけですよ」

「最後の爆発は、なんなのですか?」


 やっぱり、それって気になるよね。


「さあ……と言ってはいけないのでしょうね。ちょっと過剰な魔力を、外に捨てさせて貰っただけですよ」

「おかげで、外の世界が大変なことになっている……と文句を言ってはいけないのでしょうね」


 セレスさんの気持ちはわかるよ、だって2度目だしね。


「私は、世界の管理などしていませんからね。ただの人間に掻き乱されるような構造を作った方が悪いと言わせて貰います」

「前回より酷いことになっていると文句を言わせていただきます。ただ、前回の経験がありますから、収束させるのは難しくはないのですけど。でも、それなりに時間が掛かるんですよ」

「グラと子供たちの方が大切です、きりっ! ……で良いのかな?」


 ああっ、セレスさんがこめかみを押さえてる。そりゃあ、私たちに取ってはグラ母さんと赤ちゃんの方が大切なのは確かだけどさぁ。


「それから本山、ちょっと休憩室を借りたいんだが。ああ、シオンをベッドに寝かせてやりたいんだ。それからシアも……あなたも休んだ方が良さそうだね」

「うむ、流石のわれも泥のように眠りたいところだ。だからキヨヒコ、体力の前借りは要らないぞ。余計な気を回してくれるなと言っておく」

「しませんよ。それに、私も疲れていますからね。で、どこに行けばいいんですか?」

「仮眠室で良ければ、俺が案内しよう」


 と言うことで、本山先生、お父さん、シア母さん、シオンさんが退場。もうね、お父さんって変って言って良いよね。この前私が攫われた時にしても、神様以上に凄いことをしてるんだもの。

 それでお母さん、私たちは何をしていようか?


「近付いても大丈夫だったら、分娩室近くの控え室に行きませんか?」


 ここにいてもすることが無いのは確かなのよね。だったら、お母さんの言う通り、分娩室近くに行くことにしましょうか。諸星さん、セレスさん、それで良いですか? それからお兄さん、セレスさんに見蕩れないように……見蕩れても良いけど、諸星さんの奥さんですからね。


 全員で控え室に移動したんだけど、そこからの勝負は早かったと思う。うん、30分もしないうちに元気な産声が聞こえてきたんだ、2人分の産声ね。これで一山越えたことになるんだけど……諸星さん、どうかしたんですか?


「アルカナとイセッタなんだが、子供を作ることが怖くなったんだ」


 アルカナさんとイセッタさん……そう言えば、今回は見送りになっていたんですね。見送って良かった……これを見たら、超越を持っていても怖くて仕方が無いと言ってくれますか。その気持ちわからないとは言いませんけど、普通の人のお父さんがなんとかしたんですよ。だったら諸星さんとセレスさんだったら、大丈夫じゃないんですか?


「立木様が普通の人……疑問に思ってもいいと思うんです。いえ、肉体的に『普通』と言うのは否定しませんよ。だからと言って、本当に普通の人と言って良いのか。していることは、普通とは掛け離れていますよね」

「なにか、酷いことを言われている気がしてなりませんね」


 あっ、お父さんもう良いの? 生まれたのを感じたから来た……その答え自体、ちょっと普通とは掛け離れているんだけど。それはそうと、お父さん本当に大丈夫? そう、一応大丈夫と言ってくれるのね。

 なんて話をしていたらかすみさんが出てきました。ねえ、赤ちゃんに会えるのかしら?


「赤ちゃんは保育器に入っているわ。それからお父さん、グラ母さんがお話ししたいそうよ」


 だってさ、お父さん。そこで慶子母さんの手を取ってくれるの? そりゃあ、まあ、まっ、いいか。難しいことを考えても駄目なんだよね。




 陣痛……これが陣痛で良いのよね。陣痛が始まったと言うことは、もうすぐ子供たちが生まれるってことになるのか。嬉しいのかと聞かれたら、とっても微妙と言うのが答えになるわね。嫌ってことは無いのよ、だって愛する人との間に生まれた子供なんだもの。それに私たち一族にとっても、待望の子供と言うことには違いないんだから。

 それでも迷ってしまうのは、本当に子供を産んで良いのかと言うこと。だって夫……ワジャとの子供じゃないのよ。生まれた世界から逃げ出して、のうのうと別の恋人を作って身籠もってしまう。恥知らずと言われても仕方がないことだと思ってる。だから回りが喜んでくれるほど、気持ちがどんどん後ろ向きになってしまうのよ。この子たちの為には、こんなことじゃいけないのはわかってるのよ。わかってるけど、どうしようもなく辛いのよ。


 だから、この苦しみは私に与えられた罰だと思う。赤ちゃん、あなたたちはもっと私の命を吸い取って良いのよ。あなたたちは、ちっとも悪くないんだからね。罪、そう罪は私が償えば良いだけのことなんだから。

 だからシア、シオン、そんなに頑張らなくても良いの。この子たちは、私の命を食い尽くせば無事生まれてくるんだからね。誰も知らない竜人の真実、母親は子供を一回しか産めないこと。マイバッハ様は知っているようだけど、実は私も知っていたりするんだ。ワジャと私の間に子供がいないのは当然なの。だって私はこうして生きているんだから。でも、これで私も責任を果たすことが出来るんだよね。だったら、前向きに考えれば良いのかな? これで族長の妻としての役目を果たすことができる……だからキヨヒコ、そんな顔をしなくても良いのよ。貴方には、本当に沢山のものを貰ったと思っているのよ。子供もそうだけど、まさかもう一度人を愛することが出来るとは思っていなかったもの。


 ところで、どうしてこんなところにキヨヒコがいるの? シアとシオンが頑張ってるから、ここって普通の人がいられる場所じゃないのよ。そりゃあキヨヒコは変なところがあるけど、人としては普通と言って良いと思うのよ。

 愛する人を守るために来た。子供には母親が必要と言ってくれるの? 大丈夫よ、まだアルカナとかイセッタとか、女の竜人は沢山、じゃないか。それでも何人か残っているんだからね。


「子供に母親殺しの罪を背負わせるわけにはいきませんよ」


 父親殺しだって同じだと思うのよ。だからキヨヒコ、シアとシオンを連れて外に出てくれるかな。大丈夫、私が死んでも子供たちは無事生まれてくるから。違うわね、私の死を引き換えに子供たちは生まれてくるのよ。

 だから……口付けをしてくれるのね。ええ、これが今生の別れになると思う。だから、最後の口付けと言うのもロマンが有って良いと思うわよ。最後じゃない、これが始まりの口付けって……ありがとう、慰めでも嬉しいと思う。嬉しいと……なんだろう、急に眠くなってきたわ。ねえキヨヒコ、私に何をしてくれたの?




 のうキヨヒコ、ぬしは本当に非常識……非常識で良いのだよな。非常識な真似をしてくれるのだな。どうして、この高密度の魔力空間に入ってこられるのだ。いや、われらを愛していると言うのを疑うつもりはないのだぞ。疑うつもりはないのだが、それが理由になるとは思えぬのだ。

 ああ、入ってきた事実を認めるのは吝かではないぞ。ただな、それでも理不尽さを抑えることが出来ぬのだ。シオンか、そろそろ限界と言うのが答えになるな。われか、われもほぼほぼ限界だな。だがな、まだグラが落ち着いておらぬのだ。だったら、限界などと泣き言を言ってはおられんだろう……なぜシオンを気絶させたのだ?


「これ以上魔力を放出すると、命に関わるからですよ」


 なぜ、ぬしがそんなことを知っておるのだ? 確かに魔力の枯渇は、生命に関わることに違いない。特にわれらハイエルフにとって、魔力と言うのは命と同じ意味を持っておるのだからな。それから、厨二病と言うのは答えにならぬのを忘れるな。

 それでシオンを脱落させてどうするのだ? そうか、グラを眠らせるのか。それは良いのだが、それからどうするつもりなのだ? 胎児の魔力回路を一時的に停止する。正確には、暴走状態を解消すると言うのか。いっていることは理解出来るぞ、ただな、なぜぬしがそんなことが出来るのだ? それ以前に、なぜぬしがそんなことを知っておる。


「こんな小さな身体で、大量の魔力を制御できるはずがないと思いませんか? 竜人のドラゴンフォームよりも、更に膨大な魔力なんですよ」


 それを言われると確かにそうなのだが……それでも、なぜぬしが理解しておるのだ。そのことへの答えを貰っておらんぞ。


「その前に、グラを眠らせましょう」


 われの疑問を解消するよりは、優先順位が高いのは間違っておらんな。ああ、ぬしの言う通り子供に母親殺しをさせるわけにはいかんからな。しかし母親の命と引き換えとは、呪いといっても良いと思うぞ……もしや、これは呪いなのか? だとしたら、シオンが掛けたことになるのだが……


「呪いを掛けるのには悪意が必要ですよ。そしてシオンには、竜人に対する悪意はないんです」


 だから、シオンの呪いではないと言うことか。なるほど、色々と腑に落ちたのだが……ぬしは、どうして理解したのだ?


「マイバッハさんと話をさせて貰ったんですよ。まあ、聞き出すのに苦労しましたけどね」


 ああ、あれはぼけ老人に近付いておるからな。その意味では、自分もぼけ老人間近。ぼけ老人同士、お茶を飲みながら話をした……なあ、余裕だなと言っても良いか?

 そうか、必要な術式は組み終わったと言うのだな。それも異常と言って良いか? カズシを超えておるようにも思えるのだが。


「流石に武見君には敵いませんよ。ただ、彼も頭が固くなってきている……のかなぁ。知識がありすぎるから、どうしても正攻法に流れてしまうんですよ。それから朽木君と違って……そうでもないか。みんな真面目だから、イカサマを考えたりしないんですよ。まあイカサマと言うのは、ヤクザなエンジニア向きの考え方なんですけどね」


 そうか、ヤクザなエンジニアと言ってくれるのか。それで、そのヤクザなエンジニア様はこれからどうするのだ? 呪いを解く……ただ余計な魔力を処分する必要がある……すまぬな、余計な魔力を充満させて。

 それから、われはシオンとは違うのだぞ。だから口付け程度で誤魔化せると思ってくれるな……いや、だからと言ってするなと言う意味ではないぞ。それで、余分な魔力をどうするつもりだ。外の世界に捨てる……捨てても大丈夫ものなのか? さぁ、さぁと言ってくれたか。後はセレスたちに任せると言うのか。ああ、セレスにも働いて貰う必要があるのは確かだろう。


 グラ……違う、ぐらっだな。今、間違いなく揺れたよな。なんか酷いことになっておらんだろうな? 済んだこと、後は野となれ山となれ……改めて、無責任と言わせて貰おうか。セレスたちが頑張れば良い……言っておることは間違っておらんのだろうが、やはり無責任だとわれは思うぞ。

 それは良いとして、これで呪いは解けたのだな。ああ、グラが落ち着いたのは理解出来るぞ。それで、これからどうするのだ。ああ、グラと胎児のことを言っておる。そうか、いよいよかすみの出番と言うことになる訳か。だったらわれらは、疲れたので休む……そうだな、思いっきり疲れたと言って良いと思うぞ。実のところ、われも限界が来ておったりするのだ。


「シオンを抱っこするので、シアには自分で歩いて貰っていいですか?」


 負ぶってくれても良いのだぞ……いや、これは冗談で言っておるのだ。本気で悩まなくても良いのだからな。




 目が覚めたら子供が生まれていた……正確には、痛みで目が覚めたんだけどね。だって、もの凄く痛かったのよ。寝てなんていられないと思わない?


「グラ母さん、元気な男の子と女の子ですよ」


 あなた、かすみよね。かすみで間違っていないと言ってくれるんだ。ちょっと記憶が繋がっていないんだけど、キヨヒコたちはどうしたの? そう、疲れて眠っているのね。そうか、そこまで頑張ってくれたのね。

 それで、子供におかしな所はない? 一応五体満足……そこから先は、もう少し時間が経たないとわからないのね。産声が元気すぎるから、問題は無さそうに見えると言ってくれるんだ。でもかすみって、子供を取り上げた経験はなかったと思うんだけど?


「一応バックアップ体制など敷いています」


 ええっと、どちら様。水谷様と赤穂様……この道のベテランの方なんですね。本当に、御世話になりました。改めてお礼を申し上げます。


「それはそうと、胎盤とか臍帯血とか貰ってくからね」


 その辺りは任せるけど……最初にそれを言うと、マッドと言われるから気をつけた方が良いわよ。今更手遅れな所はあると思うけど。


「大丈夫。へその緒はちゃんと返すから」


 そう言う問題? まあ、貰ってもしょうがないから構わないんだけどね。

 それはそうと、どうして私は生きているの?


「どうしてと言われても、お父さんたちが何をしたのか聞いてないんだけど。とにかく、そんな暇が無かったと言う所ね。後から、二人して話を聞いてみましょうか」


 やっぱり、私は生きているのね。なんだろう、なにか気が抜けてしまったわ。どうして私、死ぬことばかり考えていたんだろう。妊娠鬱……一応病名はあるのね。病名はあるけど、多分違うと言ってくれるのね。そうじゃないかなぁって、私も思っていたのよ。なぜか、死ななければいけないって強迫観念に囚われていたのよ。

 わかってる、かすみに聞いても解決しないことぐらい。それから、赤んぼうを抱かせてくれるかしら?


「男の子から、それとも女の子から?」


 両方一緒って、言って良い? そうか、言っても良いのね。だったら、2人一緒に抱かせてくれるかな。

 そうね、意外に重いと思うわ。でも、この子たちが私とキヨヒコの子供なのね。あれっ、前がぼやけて見えなくなってきた……ねえかすみ、今ちょっと両手が塞がっているのよ。だから涙を拭いてくれるかな? ありがとう、でも無駄みたいね。こらえてもこらえても涙が流れてくれるから。

 それで、この子たちは……保育器に入れる。保育器って、なに?


「赤ちゃんを守るための装置って所かな。正常分娩では使わないんだけど、念のためだと考えてくれれば良いわよ。経過観察が終わったら、すぐにでも出してあげるからね」


 そう、この子たちを守るためのものなのね。ありがとうかすみ、改めてお礼を言うわ。


「グラ母さん、はっきり言って水臭いわよ」


 そう、そうかもしれないけど。やっぱり、お礼はちゃんと言わないといけないと思うのよ。感謝の気持ちって、言葉に出した方が伝わると思うの。


「だったらお父さんを連れて来るから……起きてるかな。まあ、お父さんのことだから絶対に起きてくるでしょう」


 あの人のことを、何かおかしなもののように言うのを辞めてくれるかな。だからと言って、否定は出来ないと思ってるけど。


「ちょっと待っててくれるかな。みんなに、無事生まれたって伝えてくるから。お父さんがいたら、グラ母さんが寂しがっていたと伝えてくるからね」


 え、ええっと、寂しがっていたわけじゃないのよ。だからかすみ、そこで笑わないように。色々とキヨヒコには話をすることがあるんだからね。

 だから、わかったわよ。寂しいから会いたいって伝えてくれるかな。




 ところでこの世界ってどうなってるんです? 休暇を楽しんで……無銭飲食を繰り返してではありませんよ。私は女神なのですからね、下々の者は貢ぎ物が必要なのです。

 それは取りあえず忘れることにして、なんで人型をした竜とか、苔生したエルフに匹敵する美形のエルフとかがいるんです。しかもあそこにいるのは、人の格好をしているけど上位神様ですよね。それになんです、このバカ魔力は。こんなものを食らったら、私だって消滅してしまう代物ですよ。


 それで、苔生したエルフの拉致はどうするのか、ですか。その苔生したエルフのいる場所が、バカ魔力の充満した場所なんですけど。そんな場所に、私が入っていけると思うんですか? 女神だろう、ですか。女神にだって、無理なことは沢山有るんです。

 だから拉致前に周辺観察なんかしてみましょう。上里集落でしたか、まずは上里集落から観察してみることにします。


 場所はわかるのか、ですか。これだけ話題になっていれば、わからない方がおかしいと思いませんか。それは良いのですけど、なんですこの奇跡の大盤振る舞いと言う奴は。なんで、こんなに沢山の転移ゲートがあるんです。転移ゲートなんて、私だって1個か2個ぐらいしか作れないんですよ。それなのに、町……村なのかな、村中に沢山ばら撒かれているじゃ有りませんか。流石は、上位神様の直轄地って言って良いですか?

 それで上里集落を覗いてみたんですけど、ええ、はっきりと後悔なんかしてしまいました。可愛いエクシブ君は見つけたんですよ、そこまでは良かったんですけど、なんで人間形態を取るドラゴンが沢山いるんですか? これだけで、私の世界を滅ぼすことが出来ますよね。それなのに、なんです、あのおどろおどろしい魔王城と言うのは。いくらイケメンの魔王がいるからって、あんな所に有って良いんでしょうか? あの魔王とその眷属、うちの邪神よりも強いんじゃないの? その魔王が、どうしてお子様相手に愛想を振りまいているのよ。


 それでパンの国……これって、この世界とは別の世界よね。なんで、そんな通路が出来ているのかしら。あら、貴方はこの世界を統べる女神なのね。あなた、女神としてこの状況を認めているのかしら?


「私ごときに、手が出せるとお思いですか?」


 そうやって開き直られてもね。出せるかと言われたら、出せないと言うのが答えになるかな。だって覗いた範囲で、遙か上位の女神が沢山いるんだもの。そのうち2柱は同格だった……こちらの老人のお手つきになって、階梯が爆上がりをした……爆上がりしたの? 老人と言うのが気になるんだけど、階梯が爆上がりになるのは捨てがたいわね。

 でも、どうして貴方はお手つきにならなかったの? 出るタイミングを逸した。よほどのことが無いと手を出して貰えなくなった……女神様に手を出せるのって、もの凄く名誉なことだと思うんですけど。


「先日、女神が一人袖にされたばかりです。探してみたら……ああ、あそこの陰に隠れていますね」


 あそこの陰……確かに女神が1柱隠れているわね。見た目は、そうね、女神標準だと思うわよ。それなのに、手を出して貰えなかったと言うのね。

 それから教えて貰いたいんだけど、ハイエルフとかダークエルフとか……ダークエルフじゃなくて闇エルフ。私には同じに聞こえるんだけど。私の世界では、ダークエルフって呼んでるのよ。それ良いけど、後は翼人で良いのかしら。しかも魔王とかオークとかいるし……ここって一体何なのって聞いても良いわよね。


「聞いても良いですけど、教えられても信じられないと思いますよ。コーメー・モロボシと言うのですけど、その男のために作られた箱庭と言うのがこの集落の成り立ちなんです」


 コーメー・モロボシって、のんびりとした男のことかしら。そう、その男のことなんだ。ちなみにだけど、その男って私の世界にいたりしたのよ。それが邪神にたぶらかされた者たちのせいで、苔生したエルフによって異空間に封印されてしまったのよ。

 それはそうと、どうして私が睨まれないといけないのかしら? この混乱を起こした原因と言ってくれるのですか? ええっと、ですね。濡れ衣と言わせていただきます。私は、ですね。普通に世界を管理していたんですよ。聖邪の戦いも、適当にバランスが取れて一進一退の状況になっていたんです。そこにおかしなバランスブレーカーを投入したのは、私のせいじゃありませんからね。


 それで、何をしに来たのかと聞いてくれるのですね。今更って言っても良いですか? 言っても良いけど、その代わり上位神様に言いつけてくれると言うのですね。いえ、それは勘弁して頂けたらと思います。

 それでですね、私は迷子の捜索に来たんですよ。はい、勇者エクシブ君と、苔生した魔法使いのラズライティシアの二人です。元々私の世界の住人なんですからね、連れて帰っても問題がないと思うんです。


 なぜ、命知らずって言ってくれるんですか?


 ここには、女神をものともしないものが揃っているのですか。上位神様の他にも、コーメー・モロボシと言う非常識がいる。普通の人間のはずの老人も、底知れない恐ろしさがある。当然のように、魔王とか竜人も敵う相手じゃないと言ってくれるのですね。

 そりゃあ、正面からぶつかったら勝てないと思いますよ。それぐらいのことは、上位神様の姿を見て理解していますよ。だからですね、じっくり観察をして隙を狙おうかなって。優先するのは苔生したエルフ……こちらでは容姿に不自由をしているエルフと言うのですね。いえ、事実には違いないんですけど、私の昔なじみだったりするんですよ。だから、流石に可哀想かなぁって思ってしまいました。


 それでですね、ラズライティシアを攫っていこうかなって。なんです、その命知らずと言うのは、こちらの老人に惚れているので、死に物狂いで抵抗してくれると言うのですね。

 ええ、それぐらいはわかっていますよ。だからですね、しっかり機が熟すのを待っていたりするんですよ。それでですね、ちょっと離れたところでバカ魔力を放出なんかしているんです。幾ら魔力タンクのラズライティシアでも、こんなこといつまでも続けられるとは思わないんです。魔力を放出しきって疲れたところを眠らせてそのまま拉致。と言うのが私の計画なんですよ。どうです、うまくいきそうな計画だと思いませんか?


「そうね、竜人のお産でバタバタしているから、隙を狙うのには良いタイミングだと思うわ。あの化け物……老人なんだけど、容姿に不自由をしているエルフから注意が逸れていると思うし」


 さっきから聞いていると、上位神様より老人を気にしているように思えるのだけど。それって、私の気のせいですか? 気のせいじゃない、一番得体が知れないと言ってくれるのですか? 上位神様も、その存在を理解出来なくなっている。ねえ、それって本当に人なんですか?

 たぶん人……たぶんなんですね。ええ、だったらその老人とやらにも注意を払うことにいたします。相手を観察し、油断さえしなければ拉致程度難しいことじゃないはずです。だからこそ、油断をしてはいけないと思っているんですよ。


 それはそうと、私のことをチクったりしませんよね。その損得を考えているところ。チクることでお手つきになれるのなら、そのまま引っ捕らえて差し出してくれると言うのですね。私たちは同格なんですよ、ここで一戦やらかすつもりなのですか。やめておいた方が良いと忠告させていただきます。

 甘い、甘いと言ってくれるのですね。1対1などするつもりはない。物陰に潜んでいる女神も味方に付けると言いますか。なるほど、それだったら勝てませんね。それから私は、勝てない戦いをしない主義なんです。ですので、危なくなったらさっさと撤退をすることを信条としているんですよ。

 はい、ちゃんと退路を確保なんかしているんです。と言うことなので、尻尾を巻いて逃げ出すことにいたします。たぶんですけど、二度と会うことはないと思いますよ。では、バイナラ!



明日からちょっと取材(温泉旅行とも言う)に言ってきます。良いですよね、疲れたときに有休を取って温泉でのんびり。今回のテーマはお酒なので(いつもの気がするが)、ゆっくり飲んできます。

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