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最強スキル「リア充爆発しろ」 〜元社畜魔王は、幸薄勇者を倒せない〜  作者: 絵夢


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17.間話 真実

その夜、魔王城の片隅。


特訓でボロボロになり、山盛りのお米の幸せに包まれて眠りについたリリは、不思議な空間にいた。


そして目の前には、転生の時に見た覚えのある、神々しい美女が立っていた。


「……ちょっと、リリ! 起きなさい!」


「……むにゃ。……魔王様……おかわり……」


「おかわりじゃないわよ! この駄勇者!」


女神の怒声に、リリは飛び起きた。


「わっ!?」


「……あなたは……女神様?」


「そうよ! ようやく起きたわね!」


女神は腕を組み、ギリィッと歯噛みした。


「なんでここに……?」


「なんでじゃないわよ!」


一歩踏み込んでくる。


「あなた、自分が何してるか分かってるの!?」


「え……?」


「勇者よ!? あなた勇者! それが魔王と地下にこもって、何してるのよ!」


「……特訓、ですけど」


「どこがよ!!地下シェルターにこもってハァハァ言いながら爆発してるだけじゃない!」


「私の教典にそんな不潔なイベントはありません!」


「不潔って……。私は、魔王様の専属メイドとして、玉の輿……いえ、城の平穏のために特訓に励んでいるだけで……」


「しかもあんた」


ぐいっと顔を寄せてくる。


「ハジメのこと、本気で好きになってるでしょ」


「っ!?そ、それは……」


視線が泳ぐ。


「やっぱりね」


女神がため息をつく。


「もう分かりやすいのよ、全部」


「そ、それは……魔王様は優しいですし……ご飯もいっぱいくれますし……」


「それに…ハジメが触れて爆発するの私だけですから…」



「それよ!その爆発の事なんだけど、教本当の事をえてあげる!」


女神はリリに指を突きつけて言う。


「あのスキル、あいつだけの能力じゃないから」


「……え?」


「ハジメをこの世界に呼んだのも、スキルを与えたのも私よ」


「前世のハジメはクリスマスイブに残業してて………」


女神から語られるハジメの転生直前の話。



「その時の、天を突くような『非リアの怨念』に私は深く共感したの」


女神の目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。


「……私だって、数万年ずっと生涯独身よ! 祈りを捧げてくる人間も魔族も、どいつもこいつも『愛する人と結ばれますように』だの『子供を授かりますように』だの……! 気持ち悪い! 吐き気がするわ!」


「……女神……様?…」


「だから私はあいつを呼び、あのスキルを与えたの。……いい? あれはただの爆破スキルじゃないわ。あいつの視界や感知範囲に入った『リア充』を、私が天上から見つけて、手動で爆破ボタンを押す事も出来るのよ!!」


「えぇぇぇぇぇぇ!!?」


叫びが響いた。


「あいつがイチャつく奴を憎めば、私のセンサーも共鳴する。だからは木っ端微塵にしたわ。……なのに! 最近のあいつはどうかしら!? お前に対して、デレデレしやがって! なんで私が、あなた達二人のイチャイチャを見させられなゃならないのよ!」


女神はきーっと言いながら、エアボタンを激しく連打する仕草をした。


「……じゃあ、私と特訓してる時のあの爆発は……ハジメのスキルじゃなくて、女神様の嫉妬なんですか?」


「そうよ! ハジメの愛情を爆発に変えて阻止してるのよ! なのに、なによ……あなた、途中から『気持ちいい』とか言い出して……! 私の聖なる嫉妬を、快感で上書きするんじゃないわよ! この変態勇者!」


少しの沈黙のあと、


「……あ、でも。女神様」


リリがポツリと言った。


「女神様がいくらボタンを押しても、ハジメが私を好きな気持ちは止まりません」


「それに、私も……爆発すればするほど、ハジメが愛おしくなっちゃうんです。……ザンネンでしたね?」


「なんですってぇぇぇぇ!! もういいわ、これ以上見てられない! あなたの記憶から、この真実を消去してやるわ!」


女神がヤケクソ気味に指を振る。


「いい? 爆発はまだ続くわよ! 私が満足するまで、あなたたちは絶対に平穏なイチャイチャなんてできないんだからぁぁ!!」


まばゆい光がリリの意識を飲み込んだ。





「……んん……」


リリは、窓から差し込む朝日で目を覚ました。


なんだか、とても大事な、世界の真実に関わるような話を聞いた気がする。


でも、思い出そうとすると、頭の中に浮かぶのは誰かがボタンを連打している変なポーズだけだった。


「……? 何だったかな。……ま、いっか!」


リリは元気にベッドから飛び起きると、早速ハジメの寝室へと向かった。


「魔王様! 朝ご飯の用意が出来ましたよ! さあ、今日も元気に特訓しましょう!」


「……朝から元気だな」


ハジメが少し眠そうに顔を上げた。


「ま、ほどほどにな……」


そう言いながら立ち上がる。


その時、妙な感覚を感じた。


「……なんだ?」


天井を見上げる。


「誰かが、見ている……?」




空の彼方、神界で。

一人の独身女神が、歯を食いしばりながら爆破ボタンに指をかけたのを、二人は知る由もなかった。


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