13.トレーニングエクスプロージョンLv.1
ハジメとリリのによる迷宮主の魔石回収によって、ひとまず崩壊の危機を免れた魔王城。
その空気は明らかに変わりつつあった。
「……リリ、こっちに来てくれ」
玉座に座る俺の表情は、自分でも分かるくらい険しかった。
「はいっ、魔王様!」
ぱたぱたと小走りで近づいてくる。
軽い足取り。翻るメイド服のスカート。
そして、そして揺れるたわわな胸元。
ボンッ。
「……っ」
俺の眼前で、ピンクの火花が弾けた。
「これが、今の俺たちの最大の問題だ」
思わず顔をしかめる。
「問題……ですか?」
リリがぴたりと足を止めて、きょとんと首を傾げる。
その仕草に、
ボンッ。
「だからそれだ」
深く息を吐く。
「俺のスキル『リア充爆発しろ』には二種類の爆発がある。戦闘用の制御可能なものと、感情と連動するオートの爆発だ」
「つまり……私のこと、可愛いなって思ったら爆発するんですね?」
「……そうだ」
全く否定できない。
「リリが可愛すぎるのが悪い」
「えへへ……」
照れたように笑う。
(やめてくれ…それが、一番効く)
ボンッ、とすぐに爆発する。
「……だから訓練だ」
話を強引に戻す。
「感情の昂りが原因で爆発が起きるなら、感情が揺れない様な強い精神力を身につければいい。そして、リリがいる日常を当たり前のものだと思えれば良いはずだ」
「慣れですか……」
少し考えてから、ぱっと顔を上げる。
「頑張ります!私、勇者なので体の丈夫さには自信あるんです!」
頼もしい限りだ。
「じゃあ、早速………俺はリリと手を繋ぎたい!」
「は……はい!」
リリも、少しだけ緊張した顔で手を伸ばす。
指先と指先。
あと少し。
(……近いな)
細い指。白い肌。
ほんの少しだけ震えてる。
(……緊張してるのか)
可愛いな。
その瞬間。
ボンッ。
「ひゃっ!?」
「…くそっ。触れる前にこれか」
だが、その直後。
リリが、ふっと顔を上げた。
「私もハジメと手を繋ぎたい!」
笑っている。
さっきより、ずっと近い距離で。
一歩。
さらに踏み込んでくる。
「……おい、近い」
「頑張りましょう!」
もう一歩。
距離が、一気に縮まる。
(……近い近い近い)
顔が近い。息がかかり、視線が合う。
「ハジメ」
名前を呼ばれる。
柔らかい声で。
少しだけ、甘く。
「ちゃんと……一緒にいられるように、なりたいです」
限界だ。
ボンッ!!
さっきより明らかに強い爆発。
「きゃっ!?」
衝撃でリリと俺が吹き飛ばされる。
「きゃっ…」
メイド服の胸元が、ばっさりと裂けた。
白い肌が露わになり、一瞬時間が止まる。
リリは慌てて胸元を隠すがその細い腕では、全てを隠せない。体を捻ると余計に横から柔らかな白い果実が見える。
爆破慣れして来たが、流石に頬が赤くなる。
「ちょ、ちょっとだけ……破れちゃいました」
ちょっとじゃない。
かなり危ない。
しかも無防備にこっちを見るな。
(……やばい)
思考が止まる。
視線が固定される。
(近い、柔らかい、白い――)
「……っ!!」
ドンッ!!
今度は俺だけが吹き飛ぶ。
「うおっ!?」
衝撃が玉座を直撃する。
ガゴンッ、と重たい音。
「……は?」
「え?」
リリと同時に間の抜けた声が出る。
煙の向こうで、俺の玉座が無残に転がっていた。
「……」
「……」
「……リリ」
「は、はい」
「これは、訓練以前の問題だな」
「……はい」
「場所を変えようか。俺たちの愛の力に城の方が耐えられない」
リリが小さく頷く。
「……ですね」
一拍置いて。
少しだけ照れたように笑う。
「いけるな」
「はい!」
嬉しそうに頷く。
その笑顔を見て、
ボンッ。
先の長い戦いがこれから始まる。




