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魔法少女ぐらたん  作者: Yorimi2
3.シークワース・バニラホワイト編
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#95「ワクワクが止まらないッ・・・からっ!」

ミルクベーカリーのラボ、

ウンギャンはIGX -0のイヌガミギアの調整を行っていた。

根幹となるメインシステムは停滞している以上、進めれる所は進めておいた方がいい。


同じく、隣ではっちゃんも作業を進めている。

ホロスクリーンにはイチゴミントを踏襲した白と赤の新ドレスが表示されていた。

龍王はウンギャンの調整を元に、そのドレスに神導回路(じんどうかいろ)とマジカルサーキットの組み込んでは、双方の回路のコールバックを確認していた。


「ウンギャン、ソナタもカオリ達と共にテーマパークに遊びに行かなくてもよかったのか?」


「大丈夫です、はっちゃん様。ネビロス様にとって必要な事です。だからあの子たちの為に、某(それがし)は今某(それがし)に出来る事をするだけです」


彼の赤い瞳はずっとホロスクリーンを注視たまま、小さな手がコンピュータのキーボードを打鍵する。

こうなってしまったのも自分の体のせいだと負い目を感じながら、高速でコーディングしていく彼を見つめるはっちゃん。


「そうか、すまないの・・・ソナタらに気を遣わせてしまって」


ウンギャンは手を止めて、微笑みながらはっちゃんに振り返る。


「気にしないでください。こういうのは好きでやってますギャン。それに私は、貴方様やネビロス様と違って、ちゃんと限度をわきまえてますから」


「フっ・・・コヤツ、言ってくれおるの」


若い者達が頑張っていると、じっとしていられない。はっちゃんは作業を進めて行く。


☆☆☆

シュトーレンから貰ったチケットで入場ゲートを潜ったぐらたんとネビロス。

パーク内には、1500年くらい前の様式で統一された中世の建物が広がっていた。

まるでタイムスリップしたみたいで、この小さな王国に2人は感嘆する・・・が、ぐらたんは直ぐに現実に引き戻され、沈黙するのだった。


これって、もしかして・・・もしかしてだけど、デートなのでは?


みんながくれた特別な時間。

喜んで行ってみたものの、はっきり言ってこの状況を理解して後悔する気持ちもあったぐらたん。


荒ぶる心臓——


緊張のあまり、今この状態を維持するのが精一杯である。

助けてを呼びたくても出来ない。それはもう、自分自身が望んだことだから。

この戦場は、増援も補給も許されない。単独で突破しなければ・・・ッ! 決死の覚悟だ。


「大丈夫か? ぐらたん。顔が赤いが、熱でも?」


ネビロスがぐらたんを心配して覗きこんできた。返ってそれがぐらたんにダメージを与えるのだった。


「ふぁっ!!? ダイジョブッ! ワクワクが止まらないッ・・・からっ!」


「そんなにッ!? そっか、それは良かった。お前も分かるようになったか! モフモフはいいぞ!」


そうじゃなくてッ!!


勝手に同族にされて、歯痒い気持ちでさらに身体中がヒートするぐらたん。

そっぽ向くように目を配れば、獣人のカップルや家族連れが沢山。余計に意識してしまい、目を休ませる所がない。

思考が追いつかずグルグルするが、兎に角、手持ち無沙汰な手が携帯端末に触れたことが幸いだ。

ぐらたんは落ち着かない様子で端末を取り出して、漸(ようや)くガイドマップを開くに至った。

立体マップと共にホログラムで猫のようなマスコットキャラと犬のようなマスコットキャラが飛び出した。


『遊びに来てくれて、ありがとう!』『タニブモフモフパラダイスキングダムへ、ようこそ! 僕たちが案内するニャー』


「す、凄い! ネビロス様、見て見てっ!」


まるで2匹がアギャンとウンギャンのようだ。

ぐらたんは少し和んで、何とかネビロスに話しかけることができた。しかし、肝心の彼は沢山のモフモフなお客達に目を配らせるのに忙しい。


「見てみろ。凄いぞ、ぐらたんっ! まさにモフモフパラダイスだっ! 本当にあったんだな、タニブ市に」


いつも通りの彼でぐらたんは安心しつつも、呆れた顔でネビロスの耳を引っ張る。


「もうっ! ネビロス様、それはアトラクションじゃないからっ!」


「あはは、済まない。つい・・・」


その時、モフモフの家族連れがぐらたん達に近づき、声をかけて来た。


「あら、貴方達もここに来てたなんてね」


聞き覚えのある声の虎の女性は私服でわからなかったが、あの凛々しい顔立ちは、マッドシスターポラリスを逮捕した女警官のレナだった。一緒に手を繋(つな)いでる獣人の子は息子さんで、隣に立っている大柄で立派な立髪を生やしたライオンの獣人が小さな獣人の女の子を抱きかかえていることから、旦那さんと娘さんであろう。

驚くことなくネビロスはニコニコしながら、すぐに挨拶した。


「貴方達も来てたなんて驚きですよ。レナ巡査、アランさんもお久しぶりです。・・・レオナード、アルマ、元気にしてたかい?」


そして彼はホッコリした顔で、お子さん達にも手を振った。


「うん!」「妖精さん、お久しぶりーッ!」


お子さん達も元気よく挨拶を返して手を振ってくれた。

いつの間にか彼と親しくなっていた家族に妬きながらもぐらたんは、レナが奥さんであったことに驚く。


「え・・・ご家族さんですか? レナ巡査」


「ええ、覚えてくれたのね、ぐらたん。紹介するわ。ウチの旦那のアラン。そして息子のレオナードと娘のアルマよ」


「「おはよーっ! ぐらたん」」


モフモフな子供達から元気な挨拶が来て、ぐらたんは思わず表情が緩んでしまう。これはネビロスじゃなくてもそう反応せざるを得ない。可愛いから。


「へへ、おはよー。可愛いお子さん達ですね、レナ巡査」


挨拶を返すと、イカついライオンの旦那が娘を抱えたまま、ぐらたんの目の前まで一気に寄って来た。


「君が犬神少女かい!?」


「え、ええ」


少しビクッとするぐらたんだったが、旦那の顔はすぐさまにニコニコの笑顔になった。


「あはは〜っ! アルマ、このお姉ちゃんがね、犬神少女だよッ!」


「すご〜いっ!」


娘は喜びを見せるのだが、それ以上に旦那の方がテンションが高かった。彼はかがみ込むと空いた手でぐらたんの手を握り、ブンブン激しく振った。肉球の感触が伝わってくる。


「会えて、光栄だよ。君たちがあのシークワーライナーの件で沢山の人々の命を救ったんだ。僕からもお礼を言わせて欲しい。ありがとうッ!」


「あ、いや・・・どうも」


「写真いいかなッ? 他の子達は? 僕としたら、イヌガミルクと一緒に撮りたい。何たって、我々警官がモチーフなんだからね。明るいコバルトブルーがとてもクールで正にヒロイックな姿だよ。しかもミルクブラスターがワイルドホークをベースにしているなんてマニアックじゃないか! おっとゴメンよ、君は確か、え〜とイチゴミントだったかな? ナースモチーフの姿も可愛らしい。武器もミントロッドで正に王道なスタイルッ!」


「おねーちゃんがイチゴミント? 私イチゴミントが大好きっ!」


旦那はミルク推しらしい。娘さんはやっぱりイチゴミントが好きで嬉しいのだが、熱く語り出したら止まらない旦那にぐらたんは困惑する。


「ごめなさいね。彼、魔法少女オタクなの・・・。ほら、アナタ、ぐらたんが困ってるわよ」


レナに注意されて、我に返った旦那のアランは、ぐらたんから手を離す。


「ははっ、ゴメン。でも、これも何かの縁だし、一緒に回ってみないかい? 娘も喜ぶ・・・」


ぐらたんやネビロスも誘うが、妻から鋭い視線を感じて旦那は固まってしまう。


「アナタ、2人の邪魔はダメよっ。そろそろ行きましょ」


「ゴメンよ、レナさん・・・」


「じゃあね、ぐらたん、ネビロス。・・・頑張ってね」

「「じゃーねっ!」」


レナはアランの腕を引っ張って人混みの中へ消えていった。それまで子供達は最後まで手を振ってくれた。


振った手を下ろして、再び2人きりに戻ったぐらたんとネビロス。

レナ達のおかげで少し緊張はほぐれた。


「・・・。私達もいきましょ!」


「そうだな」


ネビロスはガイドマップのマスコット達に話しかけた。


「モフモフ出来るアトラクションはどこ?」


『申し訳ありません』『お客様やスタッフにご迷惑をおかけしないように、マナーを守ってお楽しみください』


マスコット達は申し訳なさそうな顔で頭を下げた。


「クッ・・・」


ネビロスは歯を噛み締めて悔しがった。

しっかりと対策されていて、結構細かい作り込みに感心するぐらたんだった。


「せっかく初めて来たんだから、ケモハラはやめてよね、ネビロス様」


「冗談さ」


冗談には聞こえなかったのでぐらたんは苦笑いする。


『初めての方ですか?』『それならモフモフドリームシアターをどうぞ!』


『僕たちのことや、モフモフパラダイスキングダムのことが分かるアトラクションです。初めての方におすすめですニャー』


マスコット達が、施設までの道筋を指し示してくれた。


「へえ〜、近いし、まずはこっちにいきましょ!」


ぐらたんはネビロスを引っ張り目的地へ進んでいった。


☆☆☆

ゲート付近の広場にある大きなモニュメントの裏から、カオリ達が頭を出した。


「行ったわね・・・。どうなるかと思ったけど、良かった〜っ。まさかレナ巡査まで来てたなんて・・・」


「家族がいたのも驚きだギャンッ! ふふふっ、それにしても、旦那が私推しなのは嬉しいギャン」


浮かれるアギャンの顔を見て、カオリは逆に悲しくなる。


「いいな〜、アルマちゃんはミント推し・・・。私のことも忘れないで〜っ!」


彼女が嘆いているところ、シュトーレンは笑いながらフォローを入れる。


「まあ、もしかすると息子さんは、お前さん推しかも知れないぜ? そう気を落とすなよ」


「どうかな・・・、あの歳頃だと、ヒーローものの方が好きだと思うけど。ハルキもそうだったし、魔法少女ものが気になり出したのは結構最近だったし・・・はあ〜」


「勇者だろ? カオリちゃん」


彼の言葉に腑に落ちずカオリは悩むが、そのくだらない悩みに蹴っ飛ばすように先を急ぐやどりん。


「ほら、無駄口叩いてないで、早く行くぞっ! そうしているうちにシャッターチャンスを逃すかも知れねーんだぞ?」


「そうだったっ! 2人をしっかり撮らなくちゃっ!」


目的を思い出したカオリは直ぐに気を取り直した。

4人はぐらたん達を追ってモフモフドリームシアターへ向かうのだった。

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