#92「少しでもいい。彼に届けっ!」
「さあ、入ってくれ。神通力はここで鍛えられる!」
夕食後、もんちゃんに店の地下に案内された犬神少女の3人たち。ミルクベーカリーに地下があったのは驚きだが、店以上の広さにみんな言葉を失っていた。
フロアにはジムでよく見るトレーニングマシンがいくつも設置されており、ここなら心置きなく鍛えることが出来るだろう、鋼の肉体が。
「ねえ、もんちゃん?」
「なんだ、ぐらたん君?」
「筋トレしに来たんじゃないんだけど?」
ぐらたんの指摘にカオリとアギャンもコクコク頷く。
そんな3人にもんちゃんは笑みを浮かべながら答えた。
「ははは、いかにも。だがね、これはみんなオリハルコンの重りばかりだから、私はともかく、君達がそれで筋トレをしたら体を壊す」
「俺でもやりたくねーな。オリハルコンなんて」
後について来たシュトーレンもぼやくが、もんちゃんは話を続ける。
「だからそんな時にこそ、神通力を活用するんだ。神通力の基本は理解してるね? 君たち」
彼に聞かれ、カオリが答える。
「うん。エーテリオン粒子?・・・が神通力を伝えて、対象に作用させる。具体的な力を対象に与えるのには、想像力が重要」
「その通り! 神通力を己の力に変えて限界以上の力を引き出す。この通り、オリハルコンも難なく・・・」
近くに掛かっているダンベルをヒョイッと手に取るもんちゃん。しかし普段から鍛えてあるバキバキの筋肉があるので神通力で持ち上げているのかどうか、いまいち説得力に欠ける。
「・・・私が感じた通り、君達は既に基礎を理解して使いこなせている。特に私が教える事はない。どうやら短期間で君たちに神通力を教えた方は、それはもう、とても素晴らしい神なのだろう・・・一度会ってみたいなぁ」
もんちゃんはダンベルを棚に戻して腕を組んだ。代わりで彼女達に修行をつけてくれた親切な人を想像して、1人で頷く。
彼がイメージしてるほど、ろくな人じゃなかったのでぐらたん達は苦い顔で笑うのだった。
「まあ、好きに使ってくれたまえっ。その場合私も呼んでくれ。オリハルコンは重くて危ないからなぁ・・・そして!」
もんちゃんはトレーニングルームを紹介した後、別のフロアを紹介する。トレーニングルームの突き当たりにあるもう一つの部屋だ。
彼は手をかざすと、扉は両サイドにスライドして開いていく。
「ふふふっ、さあ、見てくれたまえ。私のコレクションだッ」
その奥には色んな年代の銃器がたくさん壁や棚に展示されていた。まさに武器庫だった。
ぐらたん達は再び声を失う。
シュトーレンはフロアに入って壁に展示されている古式の拳銃やライフルを眺める。
「うはっ、凄いなこりゃ・・・、数千年以上前のハバネール銃がこんな新品同然で」
彼は近くにあったハバネール銃を手に取った。その銃の特徴と言えるのがトリガーガードと一体になった大きなリング状のレバー。それを動かすことで排莢と装填をするという、いわゆるレバーアクション方式だ。
「ワイルドワラビー1175。ハバネール時代劇でもよく使われる有名なライフルだ」
「ハバネール時代劇なんて、こりゃまた化石みたいなもんを・・・残っていたとしても今見れる媒体が残ってのかね〜」
ぶつぶつ呟きながらシュトーレンは一度レバーを前後させ、動作を確かめてみる。心地よい作動音と共にカバーがスライドして薬室があらわになった。弾は入っていない。
銃を構える仕草をした後、トリガーを引きながら撃鉄をゆっくり元の位置に戻して、銃を棚に戻した。
奥の方で、アギャンが別の棚を眺めていたのでもんちゃんは近づく。
「どうかな? 何か気に入ったモノはあるかね?」
ミルクブラスターが火力不足なため、十分に発揮できる銃を選ぶアギャンだが、沢山あってどれが良いか迷う。
「ミルクブラスターは、このワイルドホーク45口径オートマティックを元に作った。火力を求めるのなら口径が同等かそれ以上のものを選ぶといい」
もんちゃんは棚から白銀に光る大きな自動拳銃を取り出した。スライドの形状やグリップにミルクブラスターの面影があった。
「うーん、火力が欲しいのは勿論ギャン。でもやっぱり、射程が欲しいです。ハンドガンじゃ、圧倒的に足りないギャン」
「飛行する敵もいたからね・・・今後対抗するには長距離から狙えるモノがいいと思う」
アギャンの要望、そしてぐらたんの補足を受け止め、もんちゃんは少し考えると、
「なるほど。ミルクは乱戦時の格闘戦も素早く応戦出来るように想定してるからな〜。射程が欲しいとなると・・・」
幾つかの棚の列を見ながら向かい側の壁まで歩いて行った。
ぐらたん達も後をついていく。
「コイツくらいか」
壁に掛かった銃を見上げるもんちゃん。ぐらたん達も見上げる。
お目当ての銃はとにかく長くデカい。全長180センチあり、アギャンが扱うにはデカすぎる。
「コメット20ミリ対物ライフル。空飛ぶ相手を離れた位置からぶち抜くにはこれくらいしか・・・」
「た、対物ライフル・・・一体何と戦うつもりなんだ?!」
犬神少女には似つかわしくない物騒なデカブツに、シュトーレンはたまげて腰が引けるのだった。
それに対して即答するアギャン。
「ナイトメアユニオンに決まっているギャン」
もんちゃんはハンガーからそのデカブツを引っ張り剥がして、アギャンに持たせた。
「有効射程は4.8キロメートルってところだ。どうかな?」
アギャンはライフルを構えて、望遠鏡のような大きなサイトを覗く。
ぐらたんとほぼ変わらない小柄な彼女が巨大なライフルを構える姿はとてもアンバランスだ。しかし、重さで銃身がブレることなくしっかりと保持していることから不思議と馴染んで見える。
アギャン自身も、この銃からくる重みにしっくりと手ごたえを感じとるのだった。
「いい感じだギャン! これならどこからでも敵を狙い撃てるギャン。シュトーレン、撮ってもいいギャン。カッコいい私を写真にしっかり収めるギャン」
「・・・。可愛い女の子が目を輝かせて、物騒なものを持ってる絵面なんて・・・」
「可愛いと思ってくれるのは嬉しいギャン。でも、お前の求める答えをするのが正しい報道ギャン? 真実を伝えるのがお前たちの仕事では?」
「はあ、変わった子達だな〜」
痛いところを突かれ、シュトーレンは渋々端末でシャッターを切った。
「これで決まりだな。そいつをイヌガミルク色に染め上げよう」
「お願いしますギャン」
アギャンはもんちゃんにライフルを返した。横で黙って、端末をいじっていたやどりんが思い出したかのように、カオリに話しかけた。
「そうだ、カオリ。アンタのヴァル剣を一旦貸してくれ」
母の形見の剣ヴァル・ガ・ルウィンガーの突然の要求にカオリはキョトンとする。
「えっ、どうして?」
「黒いままじゃ、ミカンのイメージに合わねーだろ? 修行に行っている間、チマチマと拵えた」
やどりんは懐から剣のヒルトを取り出してカオリに見せた。柄は白とオレンジでイヌガミカンのイメージカラーと同じものだった。
「ヴァル剣もミカン用に調整し直したい。正真正銘、アンタの剣として生まれ変わるんだ」
新たなヴァル剣の柄を手に取るカオリ。
母の剣の姿が変わるのは何か寂しい気持ちがするが、ミカンに相応しい新たな剣に生まれ変わることをカオリは快く受け入れた。
「分かった。お願いするね、やどりん」
「じゃあ早速っ。オッサン、今更だが設備借りるぜ」
「うむ。ならば私も取り掛かるとしよう。アギャン君、ついて来なさい」
「承知!」
「私も何か手伝うよーッ!」
もんちゃんとやどりん、そしてアギャンとカオリは武器庫を後にし、3階のラボへ向かって行った。
ぐらたんとシュトーレンがその場に残される。
「いいな〜、私も新しい武器が欲しい」
カオリ達が出て行った入り口を見ては、ぐらたんは物欲しそうに呟いた。
「な、なんだ。お前さんも何か要求すれば良かったじゃないか。こんなに沢山武器があるんだし・・・。と言うか、今ネビロスの大将がお前さんのために、新しいの作ってるだろ?」
はっちゃんが計画した犬神少女クロスプロジェクトの新しい犬神少女・・・ネビロス様もあの遺産の力を使って開発に携わっているのだ。
期待はしているが、あの力を使った新犬神少女に何か複雑な気持ちがあって、モヤモヤとするぐらたんだった。
今現在、その力を組み込むためにネビロス様とウンギャンはINU言語の学習に励んでいる。
一生懸命な彼の後姿を見て、邪魔をする訳には行かなかった。彼と沢山話がしたいが後めたさがまだあるのか、中々タイミングが掴めない。なんだが彼が遠くに感じる。
兎に角、彼とウンギャンが一緒になっているのを見てるとモヤモヤとして胸が締め付けられる思いだ。
「はあ〜」
気が付かぬうちのそのモヤモヤが、ため息として出てしまった。
シュトーレンが気にかけてくる。
「どうしたんだい、ぐらたんちゃん? 良かったらおじさんが話を聞くよ?」
端末を片手に話しかけていたので、この男が乙女の悩みにかこつけて取材しようとしているのが見え見えだった。
ジト目で彼を睨みつけるぐらたん。
「・・・取材したいのなら素直に言えばいいのに」
図星だったのか、一瞬ビクッとさせたあと、彼は笑って誤魔化す。
「ありゃ・・・お見通しだった? ごめんよ、ぐらたんちゃん。君の悩む姿が何か等身大の女の子のような気がしたからね。悪気はないんだ」
「だったら、普通に聞いてよーっ!」
頬を膨らませ、両手を彼に叩きつけるようにブンブンと振り回す。
「分かった、分かった! ひとまずこれあげるから落ち着こうか」
ポカポカと肩を叩かれてながらシュトーレンはポケットから飴玉を取り出して、ぐらたんの手のひらに置いた。
眉間に皺を寄せてぐらたんは飴玉を睨みつける。
「はぁ〜、こんなモノで懐柔出来ると思うなよ」
「そ、そう言いながら、食ってるじゃないかッ!」
気づかないうちに飴玉は口の中に入っており、甘酸っぱいイチゴの味が舌に広がる。飴玉を口の中で転がしながら、ビリッとぐらたんの中で電撃が走った。
「・・・これだけじゃ、話にならない。イチゴパフェを要求します」
「へっ!?」
突然の気の変わり様に、目の前の男には自分がチョロく映ったのかもしれない。
少し沈黙が続いた後、気前よく答えてくれた。
「いいぜ! おじさんに任せなさいっ! ・・・ええっと、近くに飲食店は・・・」
むしろ逆だ。シュトーレンがチョロい。
彼は端末で周辺にあるレストランを探し出す。
私もネビロス様の事は言えないな・・・。
ほくそ笑む本音の顔は隠して、無邪気な笑みを浮かべる。ぐらたんは彼の端末を覗いて、どこの店がいいか一緒に探すのだった。
☆☆☆
静まり返ったタニブ市を覆う真夜の空には満天の星が広がっていた。
シュトーレンと外食から帰ってきたぐらたんは、1人静かにミルクベーカリーの屋根の上で、闇に散らばる宝石を眺めるのだった。
「ふー、なかなかイイお店が空いてて良かった。でもまだ足らないや」
行ったお店は結構な高級料理店で、豪勢なデザートが沢山あった。浮気するわけではないが、流石プロの本格イチゴパフェは最高だった。もちろんネビロス様のが1番に決まっている・・・。
何杯食べたか10杯以降は覚えていない。空になったパフェの容器が積み重なるごとにシュトーレンの顔が青ざめていったのは、はっきり覚えている。
終いには泣きつかれて、かわいそうだったから結局自分が軍資金を使って奢ってあげた。まだまだ非情になれないものだ。
今は綺麗な星空を眺めて、暖かいイチゴミルクを口につけるぐらたん。こんなにも星々は綺麗なのに、ナイトメアユニオンと世界を賭けた戦いをしているのがまるで嘘の様だ。自分達がちっぽけな存在だと言うのが思い知らされ、暗い気分も自然と抜けていく。
そんな時、白い奇妙なキメラのぬいぐるみが下から飛んできた。
「ネビロス様?」
「やっぱりここにいたか」
「どうして?」
なぜ分かったのか、彼は微笑みながら答えてくれた。
「どれくらい付き合いがあると思っている。もう一年以上になるぞ? お前は、ノグラカフェでもよく夜な夜な空を眺めていただろ? 仕事後とか」
「もうそんなに経つんだ。えへへ、契約1周年を迎えた記念に、何かお祝い・・・」
「結婚記念日みたいに言うな・・・」
遠く感じていたのはやはり錯覚だった。ネビロス様がちゃんと自分を見てくれていた事が嬉しかった。そして今2人っきりで邪魔する者はいない。
こうして2人だけでいる時間がとても嬉しく、ドキドキする。
彼はいつも通りの感じで、横にちょこんと座ってきた。
「そう言えば孤児院にいたころ、僕も夜空を眺めてたな・・・。周りに明かりがない分、ここよりももっと星が沢山見えるんだ。あと、オーロラもな・・・」
「へえ〜、そうなんだ。いつか孤児院でも・・・いや、やっぱりいいや」
見てみたいとは言えなかった。彼の家は、ポラリスの家でもある。雪原の夜空は興味あるが彼女にだけはあまり会いたくない。
彼女の顔を思い出しては、ぐらたんは苦い笑みを浮かべながらテンションと共に視線を下げて行く。
それを見て、何を思っているのかネビロスにはお見通しだった。
「ははっ、修行じゃ随分と先生にしごかれたみたいだな」
「うん、もう・・・本当にッ! だけど、空間を捻じ曲げる力を使いこなせるようになったよ」
修行は身になったので、そこだけは感謝している。
ぐらたんは自身の手のひらを見る。
「そうだ、ネビロス様、ぬいぐるみから出てきて! 試したいことがっ・・・。その結界も空間湾曲によるものだから、もしかすると・・・」
「本当かっ!?」
結界が解けるかも知れない。ネビロスは早速言う通りにぬいぐるみから出てきた。
ぬいぐるみの上に浮かぶ水晶の中には、一週間振りの彼の姿があった。
「・・・。何だか、だいぶ髪伸びたね。ネビロス様」
以前より彼の髪が伸びていて、特に右目が前髪に隠れ気味だった。そんな短期間で変わるのはあり得ないが、たった1週間という空白が彼の変化を気付かせてくれた。
「確かに、言われてみれば・・・少し鬱陶しいかな」
彼も気づいてなかった様で、言われて前髪を掻き上げる。
「えへへ、封印が解けたら切ってあげよっか?」
「結構だ」
クスクス笑いながら、ぐらたんは右手をネビロス玉に当てる。
「ゲシュロッセン・ラウム・・・ッ」
水晶に触れた手からバチバチと稲妻がほとばしり、そこから水晶の曲面が激しく波打った。
「くっ・・・」
ぐらたんは更に集中する。
しかし結果は波打つばかりで解ける気配がない。それほどまでに邪龍レヴィアタンの力は巨大なもだった。
「ぐぬぬっ・・・諦めるもんかッ!」
そこに、ネビロス様がいるんだ・・・!
ぐらたんは喰らいつくように自身が作り出した湾曲空間で結界に干渉し続けた。
彼女の想いが力になったのか、彼女の手が次第に結界の中に浸透して行った。
どんどんと入り込み、肘まで沈み込む。そして中に閉じ込められた彼へ手を伸ばす。
少しでもいい。彼に届けっ!
「ネビロス様・・・っ」
「ぐらたん・・・」
上から差し伸べられた手を取るように、彼も手を伸ばす。
お互いの指先が触れた。
もう少し、もう少し!
限界まで己の神通力を高め、ぐらたんは更に奥まで伸ばす。
そしてついに、ぐらたんとネビロスの手が繋がった。
「やった・・・!」
久々の彼の手の温もりを感じ、ぐらたんは心から打ち震える様に喜びが込み上げる。
結界を隔て、ぐらたんの手を握るネビロスも同じく喜びを感じていた。
「本物の・・・本物のネビロス様の手だ。あったか〜い・・・」
「お前は冷たいな・・・冷えすぎ何じゃないのか? そんなところで星を眺めるから・・・丑神みたいに風邪引くぞ?」
「えへへっ・・・」
今はこれが精一杯かのかも知れない。だけど大きな一歩だ。
彼と今触れ合える事が、ただただ嬉しい。
このままずっと彼の手を繋いでいたい。そんな気持ちがぐらたんの鼓動を加速させるのだった。
しかし、甘酸っぱい雰囲気はこれ以上続かなかった。
闇の中から視線を感じて、ぐらたんとネビロスはふと横を向く。金色の瞳と目があった。
屋根の淵から顔を出す大きなモフモフの塊はニコっと笑顔を見せた。
「ふふっ、どうしたのじゃ? 気にせず続けるが良い」
はっちゃんだっ!
屋根に肘をかけてぶら下がる形でずっと2人の様子を見ていたのだ。
固まっていたぐらたんはプルプルと体を震わせる。加熱された金属のように顔が真っ赤っかになると、取り乱した彼女は言葉にならない悲鳴を上げて後ろにすっ転んでしまった。
その拍子にぐらたんの右腕からすっぽ抜けたネビロス玉が1、2回バウンドして屋根を転がって行く。
「う、うあああああっ!?」
「おっとっと・・・危ないのじゃ」
屋根から転げ落ちそうなところで、はっちゃんが受け止めた。
モフモフの塊はネビロス玉を手にしたまま、屋根の上によじ登る。
まだ取り乱したままのぐらたんは、はっちゃんへ詰め寄った。
「は・・・はっちゃんっ! い、いつの間にっ!? なんでいるのッ!!?」
「言ったじゃろ? ワシもここに来るって。今先ほど港に着いてここまで飛んできたのじゃ・・・フフフッ、中々良いモノを見せてもらったの」
ほっこりとした顔で答えるはっちゃんのお腹にボフボフとぐらたんのラッシュが埋もれる。
「もおおおおおおおっ! はっちゃんのバカバカッ!!」
「フフッ、元気そうで何よりじゃ・・・ゴホッ、ゴホッ」
まるで可愛い孫娘に対して揶揄う龍神だったが、いきなり咳き込む。
「だ、大丈夫か? 龍王・・・」
「心配はいらん・・・。ソナタらに早く会いたくてな。全速力で飛んできたのじゃ」
「全く、風邪も流行ってるから気をつけてよね」
とにかく余計な心配だったようで、ぐらたんとネビロスは安堵した。
「そうじゃな。じゃが、見ての通りモフモフじゃ。寒いところなぞ無敵じゃよ」
「わふふっ! 確かに」
ぐらたんは、ぎゅっとはっちゃんの体に抱きついた。彼女の体が龍神の体毛に埋もれる。
「これこれ、やめぬかっ」
じーっと羨ましそうに眺めるネビロスと目が合い、一度目を逸らすはっちゃんだったが真面目な話を持ちかける。
「・・・。例のはどうじゃ? 順調か?」
「ああ。ウンギャンのお陰で早くもモロシステムに仮想マジカルサーキットを組み込むことが出来た。近い内にマナとエーテリオンの融合シミュレーションが出来る」
「ふふふっ、通話越しで見ておったが流石じゃな、2人とも。ワシも船の中で、ドレスのデザインを考えておった。ぐらたん、ロールアウトの日も近いぞ。楽しみておれ」
「うん!」
はっちゃんはぐらたんをくっ付けたまま、ぴょんと屋根から飛び降りた。
だがその直後、再び屋根の上に戻ってきて、忘れ去られていたネビロスのぬいぐるみを回収した。
モロシステム:犬神少女の変身シーケンスや、神道導回路の制御を行うシステム。プラットフォームは秘匿された場所にあり、常に神通力場で変身した犬神少女とリンクしている。




