↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女ぐらたん  作者: Yorimi2
3.シークワース・バニラホワイト編
PR
94/94

#93「ネビュトロン粒子」

★★★

「・・・ネビュトロン融合理論は以上だ。2つの粒子が融合したこの粒子をネビュトロン粒子とする」


ミルクベーカリーのラボで、ネビロスはもんちゃんやはっちゃん、やどりんとウンギャンを集め、自分の理論を説いていた。


ネビュトロン粒子・・・

かつての自分もそう名付けたような気がした。

ぐらたん達が修行でいない間、ウンギャンと仮想マジカルサーキットの組み込みと同時に、断片的な記憶を頼りに整理して組み立てた理論だ。

思い出したと言うより考え直した言うのが正しいか・・・。

とにかく、ウンギャンの魔術や神通力(じんずうりき)に関する知識や、彼が提供してくれたフーカ・マナ・ミゴール著のマナ粒子論が大いに参考になった。

従来の対消滅における方程式の矛盾、その釣り合わないエネルギーの正体を新たに導き出した。

正にそれこそネビュトロン粒子の存在で、融合する条件をみんなに説明したが・・・、


「むむむ。言っている事の半分以上が理解出来なかった・・・。ご老公、本当にこれでネビュトロン融合というのができるのでしょうか?」


途中から参加した丑神は特に、マナ粒子とエーテリオン粒子が元々一つの粒子だった事に衝撃を受けた。ほぼ彼は「宇宙牛」になって聴いていた。

でも、みんな講義を聴いて同じような反応をしていたのだった。


「できるも何も、あの列車事件であのオーロラが・・・。ぐらたん曰く、どこかが違う別の世界に行ったのじゃ。その現象は間違いなくそのネビロスの言う粒子ではないじゃろうか?」


実際、見たウンギャンややどりんも静かに(うなず)いた。


「その時、お嬢様は確かにゲシュロッセン・ラウムを展開していたギャン。その空間湾曲が本当に現象を引き起こす条件なのですか?」


ウンギャンが質問してきた。


「そうだ。シミュレーションでも理論値通りの結果になっただろ? 2つの粒子が場の歪みによって位相欠陥を起こして、安定性を保とうと元の1つの粒子に戻る。場の歪み、すなわち空間湾曲が必要になる」


説明をしたが、ウンギャンや他の彼らも話について行けてない様子だった。

自分では理解したつもりだ。しかし、まだ何か引っかかる。ネビュトロン粒子が出来るのはいいが、そもそもなぜその粒子があの現象を引き起こしたのか・・・?

まだまだ未知数だ。


「・・・なるほど分からん。つまり、ネビュトロン粒子を作るのに、ぐらたんの力がいるって言いたいのか?」


やどりんの質問には懸念がこもっていた。僕も心の片隅に龍王が話してくれたイヌガミライの悲劇を思い浮かべ、ぐらたんを利用する事に抵抗感はあった。

しかし前に進む為には・・・


「ああ・・・」


ただ肯定するしかなかった。僕の返事を聞いたやどりんは静かに目を閉じてため息を漏らしたのだった。

★★★


「・・・ということで、私の力が必要ってこと?」


IG-0イヌガミコ改め、IGX-0のイヌガミギアを被り、椅子に座ったぐらたんは自らコンピュータから伸びる配線を自分の手首にテープで止めた。そして変身呪文を唱えて、テストモードを起動させる。

やどりんはヒヤヒヤしながら、自ら進んで実験体になる彼女を説得する。


「本気か、ぐらたん? 考え直すなら今のうちに・・・」


「ありがとう。大丈夫だよ、やどりん。私はネビロス様の力になりたいから」


それでも降りないぐらたんに、ネビロスが駆け寄った。

彼女をモルモット扱いする彼に嫌悪感を抱きながら、やどりんは2人の様子を見守る。


「すまない、ぐらたん。あの力を再現するにはお前の力が必要不可欠なんだ。安全対策は何重にも用意してあるが・・・ネビュトロン粒子は未知数だ。十分に気をつけてくれ」


「承知! 私はネビロス様を信じるよ。もし、何かヤバいことになったら構わず逃げて」


ネビロスはポンと彼女の頭に手を乗せた。


「逃げるわけないだろ?」


「えへへっ」


ぐらたんは照れくさそに彼に笑顔を向ける。

彼に尽くそうとするぐらたんもぐらたんだ。

そんな彼らのやり取りについて行けず、何を言っても無駄だと悟ったやどりんは髪をかきながらため息をつくのだった。


「はあ・・・、分かんねー。とにかく、何かあれば、緊急停止はあたしがやるからなっ」


ぐらたんは笑顔のまま相槌をした。


「さて、そろそろ時間じゃ」


「モロシステム異常なし。準備はオーケーだ」


コンピュータにははっちゃんともんちゃんが窮屈そうに座っており、準備完了したことを告げた。


神通力場(じんずうりきば)、魔力共に安定。バイタルシグナル、オールグリーンギャン。・・・お嬢様、くれぐれもお気をつけて」


最終チェックを終えたウンギャンからも声がかかり、ぐらたんは手を振って反応して見せた。

深呼吸をして、ぐらたんは神通力(じんずうりき)を増幅させる、


「じゃあ、始めるよ・・・。イヌガミックドライブッ!」


イヌガミギアのランプが発光し、ぐらたんから強い神通力場(じんずうりきば)が発生して、ぼんやりと彼女から光が(あふ)れる。


「ゲシュロッセン・ラウム!」


続けて湾曲空間を展開した。彼女の両手の間には、ネビロス玉似た水晶のような球体が浮かぶ。


「湾曲空間の形成を確認。ネビュトロンドライブを始動します」


ウンギャンはキーを入力。機器から配線を伝って、ぐらたんの手へ光が流れ込む。


「いいか、ぐらたん。右手にはマナ粒子を、左手にはエーテリオン粒子を流すようになっている。上手く神通力と魔力を制御して、少しづつその結界の中に封入するんだ」


「承知」


とは言っても、微量で上手く制御しろなんて無茶振りだ。

緊張しながら慎重に結界に、微量の2つの粒子を結界の中に流し込む。


ゲシュロッセン・ラウムの中にあるんだ。今の私の力なら、たとえ爆発的な反応があっても押さえ込めるはずだ・・・。


その瞬間、結界の中で揺らぎがキツくなり、だんだん暗くなっていった。

透き通る水晶が黒真珠のように中がわからない状態となった。

暗黒の結果に不気味さを感じながら見入るみんなだったが、その中でチカチカと小さな光が生まれた。

まるで小さな星空のようだった。

あの時見たオーロラとは違って地味だが、この手の中の星々も綺麗なものだった。


これが言っていたネビュトロン粒子が生まれてくる様子なのだろうか——。


「ど、どうだ?」


ネビロスはモニターを覗き込む。もんちゃんが記録したデータを再生する。


「青い波形がエーテリオン粒子、赤い波形がマナ粒子のグラフだ。共に数値は上昇して・・・」


彼の解説通り、二つの波形が緩やかに右肩上がりになっていく。

しかしある程度時間が経つと、その二つの波形は途切れてしまい、ずっと0を刻み続ける。


「そして共に消失したな・・・」


ウンギャンが間に割り込み、別のホロスクリーンを表示した。


「検出した光のスペクトル分布ギャン・・・シミュレーションと照らしわせて、ネビュトロンが発生したかと思われる痕跡はありませんでした。エネルギー量も理論値よりだいぶ下回ります」


「後、微弱な電波も出ているが・・・うーむ、多分ノイズだろうなぁ。空間湾曲させた時点で観測もされているし」


2人の報告を受け、予想した結果が得られず、ネビロスとはっちゃんは沈黙する。


「・・・」「ぬう〜」


黒真珠の中で瞬く光はネビュトロン粒子によるものではなかった・・・。

彼の力になれずガッカリするぐらたんだったが、手の中のプラネタリウムはとても綺麗だ。

ずっとぼーっと見てられる・・・。


その時(まぶた)が重たくなり、体がポカポカとしたような感じになって、急にぐらたんを眠気が襲う。


結界は収縮して消えてなくなると、力尽きたように彼女は意識を失った。


☆☆☆

「——たんっ! ぐらたんっ!! しっかりしろっ! ぐらたんっ!!」


「うるせーっ! あまり揺らすなよ、ネビロス。安静に——」


気がつけば、ネビロスの顔が視界いっぱいに収まっていた。心配そうな顔で必死に呼びかけていた。

意識を取り戻したものの、ぐらたんはまだ寝ぼけた様子で返事をした。


「・・・あ、ネビロス様」


彼女の反応があったことで、彼は胸を撫で下ろす。


「無事で良かった・・・具合はどうだ?」


「うーん・・・ちょっとだるいと言うか、眠たい感じかな〜」


ウトウトしながら、終いには欠伸(あくび)が漏れるぐらたん。大事無さそうで安心するみんなだった。

やどりんが(そば)に寄って来た。


「全く、心配させやがって・・・。ぐらたん、アンタは魔力と神通力を持つ特異体質だ。あの時みたいに倒れたのかと思ったぜ・・・」


「それはないかも〜・・・」


「そうは言っても何が起こった分からねーからな。念の為に異常がないか見させてもらうぞ、いいな?」


「うん」


今にもとろけそうな表情で生返事をしたぐらたん。

彼女からイヌガミギアを外し、手に繋いだケーブルを取り外していくやどりんは、いつもの不機嫌そうな顔で後ろに振り返る。


「ほーら、アンタらも・・・実験は満足しただろ? ボーッとしてねーで、出て行った、出て行った! 今からコイツを診るんだよ」


どやされるまま、ネビロス達はやどりんにラボを追い出されてしまった。


☆☆☆

ラボの外、ネビロス達は実験結果を話し合う。


ゲシュロッセン・ラウムを展開した後、結界は黒ずんでいった。その後間も無く結果は収縮して消えて無くなってしまったのである。そして同時にぐらたんもグッタリとしてしまった。

無事に彼女の意識が戻って良かったが、実験は失敗に終わった。

記録したデータの通りマナとエーテリオンが共に消滅して、何も観測はされなかった。

自分の理論を証明することは出来なかったのである。


計算に間違いはないが、結果は大きく異なった。むしろ従来通り・・・。

何が足りなかった・・・?


深く悩むネビロスに、はっちゃんは声をかける。


「ネビロス、諦めるのはまだ早いぞ? まだまだ失敗から学ぶ事はあるっ。ワシはもう少し、スペクトル分布を見直して見ようと思う。対消滅が起こったと言うのに、ずっと結界の中に光が残り続けていたのは少し気がかりじゃ・・・」


「ああ、分かってる。どうしてそうなったか考察・・・」


瞬時に色んな考えが頭の中で浮かぶが、考えるうちにグルグルとループして沼にハマり込む。ネビロスは頭をクシャクシャと()き回した。

思考をリフレッシュさせる。


「・・・クソぅ、もう一度練り直しだっ。とりあえず、今日はここまでにして夜食を作ろう。みんな疲れてただろ?」


特にぐらたんが・・・。


その気遣いはウンギャンにお見通しのようで、彼は微笑んでみせた。


「ふふ、きっとお嬢様も喜ぶギャン! 手伝いますよ、ネビロス様」


まだあの言葉を覚えているのか・・・!? 忘れろって言っているのにっ!


ネビロスはなんとか顔に出さないようにやり過ごす。

すると、


「ならば、私も手を貸そうっ!」


ビシッとポーズを決めて、もんちゃんも手伝う気だ。続いて、はっちゃんもその話に乗る。


「ワシも手伝うぞいっ! わらび餅くらいしか作れんが・・・ネビロスは食った事ないじゃろ?」


「ああっ! あのわらび餅美味しかったですギャン! 是非とも」


覚えていたウンギャンは舌をペロリととさせた。ネビロスも興味が出て来る。


「わらび餅・・・ワタノのお菓子か・・・、どんなものか気になるな」


その言葉にはっちゃんはやる気を出す。


「そーかそーか、腕がなるのじゃ」


彼は大きな袖を(まく)るが、その時、激しく咳き込み始める。


「ゲフンっ・・・ゲホ、ゲホっ・・・ぬっ??」


「りゅ、龍王!!?」「はっちゃん様っ!?」


尋常ではなかった。彼が口に当てていたミント色の大きな手は真っ赤な血で染まっていた。

はっちゃんは壁に寄りかかる。

ずれ落ちて倒れそうなところをもんちゃんが肩を貸して支えた。


「ご老公・・・、魔犬の毒がまだ・・・。そんな身体でタニブまで・・・本当に無茶をなさる」


「魔犬の毒・・・、まさかマナの侵食!?」


「いかにも。察しが良いな、ウンギャン。ソナタは、無事に適応出来たようじゃな・・・。フッ、ワシは魔族にはなりたくないが、そこは羨ましいのう」


魔犬の毒とは厄災の魔犬がばら()いた毒の霧で、その正体は高濃度の高エネルギーマナ粒子である。浴びれば細胞が破壊され、正常に機能しなくなる。エーテリオン粒子を持つ神々なら尚更、マナと反応して身体に深刻なダメージを受ける事になる。

侵食の影響は個人差があり、エーテリオンを失う代わりにマナに適応して魔化する者もいる。


「・・・。(それがし)は・・・、別に魔犬の毒ほどマナを浴びたわけでは・・・。そんなことより、早くやどりんに診てもらった方がっ!」


龍王は手の甲で口元の血を拭い、もんちゃんから離れては、自力で歩き出すはっちゃん。


「よせ・・・。ぐらたんや、カオリ達に余計な心配をかけさせる訳にはいかん。このことは誰にも言うんじゃないぞ。何としてでもIGX -0を完成させねば・・・」


ヨロヨロとフラつく後ろ姿を追いかけ、ネビロスは心配そうに彼を見る。


「ど、どうしてそこまでして・・・」


ネビロスに視線を向けて、はっちゃんはフッと微笑んで見せた。


「愚問じゃな。この世界が好きなのじゃから・・・」


そして再び前を向きいて歩き出し、階段を下っていく。


「この老いぼれ1人の命など、どうでも良い・・・。未来ある若者達の方が大切じゃ。その未来を守るためには、あの力が必要なのじゃ・・・」


彼の覚悟に圧倒されたネビロスは足を止める。その場に浮かんだまま複雑な心境で、下へ降りていく彼を黙ったまま見る事しか出来なかった。

同じく、後ろのもんちゃんやウンギャンも沈黙したままであった。


☆☆☆

ラボの中。

ベッドで眠っているぐらたんの横で、やどりんはそっと彼女の額を撫でる。


「すまねーな、ぐらたん。本当なら、最初から実験自体アイツらにさせなかった。が、アンタの可能性に()けてみたくなる気持ちが・・・同じようにあったんだ。許してくれ・・・」


あの奇跡を見たことでやはり心の奥底で期待はあった。

結局、やどりん自身も同類で、嫌悪感を抱いたネビロスやみんなに悪い事は言えない。もちろん彼らにも謝るべきだが、性格上素直になれない。


やどりんは検査結果をコンピュータで(なが)める。


「心配のし過ぎか・・・。アンタは大したヤツだよ、全く」


恐ろしい程に彼女に異常は無かった。

あるとすれば、神通力(じんずうりき)を使った事による疲労だ。


そこはいい・・・


穏やかな表情は一変し、やどりんは深刻な顔になり、スタンドに刺さった採血スピッツを目にやる。

血液に含まれるマナが漏れないように特殊なフィルムで包んでいるため、外からは採取した彼女の血は見えない。


もちろん血液にも異常は見られない。溶血もなく、白血球の遺伝子も正常で損傷はない。

ただ、赤血球は特殊で、パンデモニウムが含まれていた。つまり血液がマナを運んでおり、全身に循環させていることが理解出来る。そして赤血球の中に珍しく、細胞小器官があった。それは血球外でも単体で血中を流れていたものもある。

白血球から取り出したぐらたんの遺伝子とは違うDNAを持っており、構造も働きも全く謎で一体何なのか分からなかった。


言える事はただ一つ、構造上明らかに天然には存在しないものだ。


やどりんの額から汗が(にじ)み出る。


初めて魔族を詳しく診たが・・・、これが魔族にとって普通のなのか?


ここでやどりんは最初に湧いて出た疑問を思い出し、ハッとする。


——血液循環系がマナを司り、神経伝達系がエーテリオンを司っているという神がかったものだ——

——しかし、そんなものが生まれながら自然と出来上がることなんてあり得るのだろうか?——


あり得るはずがない・・・ッ!


やどりんは目を見開いて思わず口を手でおさえた。


ぐらたん・・・アンタは、一体・・・っ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。