クラーケン狩り 前編
ベルセリウのギルドに所属するアーゴン級とクリプトス級の冒険者に緊急招集がかけられた。ギルドに多くのパーティが集まってきた。
「副ギルド長のアクチスだ。緊急事態だ、君たちには特別なクエストを受けてもらいたい。」
「緊急だと、どんなクエストだ?」
冒険者の1人が質問する。
「ディールズ海の湾岸に現れた、”大海の王” クラーケンの討伐だ。詳しくはメナカイトから頼む。」
「承りました。では、私の方から説明させていただきますね。クラーケンはディールズ海でも深海に生息し、人と関わることは今まで無かったのですが、ここ最近ディールズ海の湾岸でクラーケンの姿が確認されています。ディールズ海での漁に影響が出ること、そしてクラーケンは地上への侵略の恐れがあることから、冒険者の皆様にはクラーケンの討伐をお願いしたいのです。」
「普段なら、ゼノン級の冒険者たちに頼むんだが、あいにく今は全員、ここを離れている。残ったクリプトス級以下の君たちが協力してクラーケンを倒してもらいたい。」
集められた冒険者はおよそ30人程度、いつぞや、ウィットに付き纏っていた筋肉だるまもいた。
「アーゴン級どもの力なんか借りなくても、クリプトス級の冒険者であるこの俺がいれば、クラーケンなんておこちゃまみたいなもんだぜ。」
クリプトス級の冒険者らしき男が啖呵を切った。
「おまえ、あまりクラーケンを舐めてると死ぬぜ?」
アクチスの一言には凄みがあった。
「とにかく、準備をしたら、門の前に集合してください。」メナカイトの一言でその場は収まった。
ディールズ海に向かう途中で、筋肉だるまのベリルに話しかけられた。
「お前もアーゴン級に上がったんだってな。もう一度、ウィットゴードちゃんを巡って戦ってもいいが、今回は協力しないといけないだろうから、見逃してやるぜ。」
「はぁ、そうですか。それにしてもゼノン級が誰もいないなんてことあるんですね。」
「今、ベルセリウのギルドでゼノン級は4人しかいないんだ。しかもその全員がロキのメンバーだからな。」
「ロキってなんですか?」
「お前、ここで冒険者やってて、ロキも知らねえのか?ロキっていうのは、ベルセリウ1の強さを誇る冒険者ロキのパーティのことだ。ロキに憧れて冒険者になったって奴も多いんだぜ。」
「そうなんですね。」
そんな話をしていると、ディールズ海の湾岸に着いた。
「各自、いつでも戦えるようにしとけよ!」
アクチスさんが冒険者たち準備を促す。
「それにしても、良い槍が手に入って良かったわね。イリス。」
イリスは、あのオカマ鍛冶師フェルムに新しい槍を作ってもらっていた。
「ああ、あの鍛冶師は、外身はともかく、すばらしいものを作る職人だな。」
「まぁ変わった人ですけど、作るものは一級品ですよね。」
僕も、彼(彼女?)の作ったナイフを愛用している。
「私も、ダガーをいっぱい補充したし、準備万端よ!」
すると、海に大きな影が出来ていた。
「来るぞ!戦闘準備だ!」
大きな泡とともに、目の前に50mくらいの大きさはある巨大なイカが現れた。
「これが、クラーケン。噂通りの大きさだな。」
クラーケンと冒険者が堤防で対峙する。
「こっから先には行かせねえぞ。炎熱を纏い、敵を貫き矛となれ!『フレイムランス』!!」
冒険者の一人が先制攻撃を放つ。
炎の槍がクラーケン目掛けて飛んでいき、クラーケンが炎に包まれる。
「おし、命中した!イカ焼きの完成だぜ!」
だが、クラーケンの体には傷一つ付いていない。炎のダメージも全く聞いていないようだった。
「それなら、こっちよ!地の果てまで、獲物を追いかけろ!『キルチェーン』!!」
クラーケンに付けられた的に目掛けて、ウィットのダガーが投げられた。だが、クラーケンの体にはダガーは刺さらず、海に落ちた。
「また、ダガー作ってもらわないといけないじゃない!」
そっちかよ!クラーケンへのダメージより、ダガーが回収できないことによる財布へのダメージを気にしているのかもしれない。
「買ったばかりの槍を投げて、無くしてしまったらと考えるともう少しクラーケンが近寄ってこないと戦いづらいな。」
イリス!お前もか!!
「まるでダメージを受けてるようには見えねえな。」
そもそも、イカに効く化合物って何だろう。ぬめりを取るなら塩だが、こんな巨体に効くとは思えないしな。それに、ぬめり取ったから何なんだよってなるし。
「足を狙ってみてくれ!」
アクチスさんの指示に従い、何人かの冒険者が足に攻撃する。
だが、魔法は足の吸盤に吸収されているようだった。そしてこっちに吸盤を向ける。
「まずい!みんな逃げろ!!」
足の吸盤からビームが飛んできた。
「ぐわっ!!」
躱し損ねた冒険者の一人が、ビームに足を貫かれ、多量の出血を伴った。
「もっと、近くに来い!!俺様の鍛えられた上腕筋群を見よ!!」
筋肉だるまのベリルがクラーケンを挑発する。
するとクラーケンは堤防に近づいてきた。そして、その大きな足(手?)がベリルに振り下ろされる。




