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夏の訪れ

「あなたたち、なんでウォルフラムさんに歯向かったのよ!!敵うわけないじゃない!!」


ウィットの怒号が僕らに飛ぶ。


「やってみなければ、分からないだろう。」


イリスは好戦的だ。


「自分が守ると決めたものには、勝てないからと言って、逃げるわけには行かないですよ。」


「そういうところは、カッコいいってそうじゃなくて、あのゼノン級よ!無策で勝てるわけないしょ!エルフがいつの間にかいなくなってて良かったわ。」


「そのことなんだが、あれはエルフではないだろうな。」


「え?じゃあ、私たちが見たエルフはなんなの?」

「あれは、ドッペルゲンガーという魔物だな。ドッペルゲンガーは自身が見たことのある魔物に姿を変えることが出来る。それで、エルフに姿を変えていたのだろう。」

「なるほど、それで捕らえられていても、姿を変えて抜け出せたという訳ですね。」


「それにしても、イリスはどうして人の多いところにエルフを連れていくのを拒んだの?」


「それは、エルフの魔力量が多すぎるということにあるのだ。本物のエルフは、桁外れの魔力をその体内に保有し、僅かではあるが常に放出し続けている。実力のある冒険者ならまだしも、一般人がその魔力の影響を受け続ければ、体内の魔力量がキャパシティーを超え、体が破裂する可能性すらある。」

「そんな危険な魔物だったんですね。でも、ドッペルゲンガーも今回の件でエルフに変身するのは懲りたんじゃないですかね。」

「そうね。エルフの格好なんて、してもいいことないからね。」


 しばらくして、ベルセリウ付近でのエルフの目撃情報は無くなり、サラマンダーはクライゼンへと帰っていった。


「それにしても、最近暑くなってきたな。夏も近づいているだろう。」

「そうですね。僕らは軽装ですけど、鎧なんかを着て戦っている冒険者にとっては地獄の季節でしょうね。」


 要らぬ心配をした。


「それよ!夏よ!」

「どうかしたんですか、ウィットさん?」


「夏らしいクエストを受けましょう!」

「「夏らしいクエスト??」」


 2人でハモった。


「そうよ!私がクエストを受けておくから、夜になったらギルドの前に集合ね!」


「何を倒すんですか?」

「それは、夜になってからのお楽しみよ!!」


 そして、夜になりギルドの前に向かった。もう2人は先に来ていた。


「遅いわよ、オーラム!待ちくたびれたじゃない!」


 時間ピッタリのはずだったのだが、どれほど楽しみにしていたのだろうか。


 ウィットの先導で、バラールの森へと入っていく。そういえば、夜のバラールの森に入るのは初めてのことだった。


「夜でなければいけないということは、今回の目的は、夜行性の魔物ってことですか?」

「考え方は悪くないわね。大体あっているわ。」

「もう、教えてくれても良いのでは?」


 イリスも何も教えてもらっていないようだ。


「ここまで来たら分かるかしら?」


 ここが目的地らしい。暗い雰囲気のある湖のようだが、何がいるのだろうか?


「ほら!あそこ見て!あそこ!!」


 ウィットが指差す方を見ると、そこには光る球状の物体がふわふわと浮いていた。


「あれも魔物なんですか?」

「なるほど、あれはウィルオーウィスプ。夜の池のほとりに現れる魔物だ。」


「今回のクエストは、ウィルオーウィスプを生け捕りにするクエストよ!!」

「でも、なんでウィルオーウィスプを捕まえるクエストが夏っぽいんですか?」


「心霊現象みたいで、肝試しみたいだからよ。」


 理由しょうもねぇな。


「まぁ、早速捕まえますか。」


 腕をまくり、光る方に行こうとする。


「オーラム、ウィルオーウィスプには素手で触れない方がいいぞ。」

「どうしてですか、イリス?」

「ウィルオーウィスプは、放電して光る魔物だ。素手で触れれば感電は免れないぞ。」


 そうだったのか、知らずに感電死するところだった。


「ウィットさん、どうやって捕まえる予定だったんですか?捕まえる準備してきましたよね?」

「え、えっと、ウィルオーウィスプが入る大きさのガラス瓶は持ってきたわよ。ただ、ちょっとどうやって、瓶まで運ぶかを考えていなかっただけで・・・。」

「えー!僕らにクエスト内容教えずに、ここまで連れてきた挙句、準備するべきものも準備できないって、そんなことあり得ますか?」


「うわーん!!オーラムがいじめるよー!!」


 そう言って、ウィットはイリスの胸に飛び込んだ。何処からどう見てもイリスの方がお姉さんにしか見えなかった。


「とにかく、電流をどうにかできるものが無い限り、生け捕りは難しいだろうな。今日のところは帰るべきだろう。」

「ちょっと待ってください。少し試したいことがあるので。」


 僕はそう言うと、頭の中に構造を思い浮かべる。想像するのはCH2CH2:エチレンだ。それを何千個と分岐するように並べていく。


「重合してくれ!」


 そう言うと、手から白色の柔らかいドロドロとした物体が現れた。


「出来たけど、これはすごい量の魔力を使うな。」

「その気持ち悪い見た目のやつはいったい何?」


 イリスが恐る恐る聞いてくる。


「高分子化合物のポリエチレンですよ。ただ、これだけの量でも、ほとんどの魔力を使い切ったので、高分子を戦闘で使うのは難しそうですね。」


「それで、なんでポリエチレンを出したの?」

「それは、絶縁性が高いのでこれならウィルオーウィスプを触れるかなと思ったんですよ。」

「じゃあ、早速試してみてくれる?」


 結果から言うと、ポリエチレンを纏った僕の手で、ウィルオーウィスプを捕まえることが出来た。そして、ウィット1人に受けるクエストを任せると碌なことにならないことを学んだ。


・解説コーナー

 ポリエチレンはエチレンが重合した高分子ですね。今まで出てきた化合物は全部低分子に分類される化合物で、高分子は分子量がだいたい1万を超えるものですね。ポリエチレンのような高分子の中で最も有名なのは、ペットボトルの原料であるポリエチレンテレフタレート(PET)ですよね。これは、テレフタル酸にエチレンが結合しているものが何千と重合しているものですね。高分子は日常生活に多数存在していて、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックやゴム、ナイロン、グルコマンナンなど例を挙げればキリがないほど高分子は私たちの生活にとって重要なものなんですね。


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