サラマンダーが追うものとは?
マグネスに頼まれていたクエストを終え、5日ぶりにベルセリウへと戻ってきた。
「こんなにこの町を離れたことが無かったから、新鮮に感じるわね。」
ウィットはずっとベルセリウで暮らしているのだろう。3人でギルドへと向かった。すると、ギルドではウォルフラムが待っていた。
「おう、ちゃんとヘルハウンドを狩ってきたようだな。それにしても、マグネスのいとこ君は変わった魔法を扱うようだね。」
「マグネスのいとこ君ではなく、オーラムと言います。それにしても、まだベルセリウにいたのですね。」
「ああ、まだヤツはこの辺りにいるらしいが、見つけられていないんでな。パーティメンバー総出で探しているところだ。」
「それで、何を追っているのだ?本来、あなた方が受けるべきクエストを私たちがやったのだ、教える義理くらいはあるだろう。」
「一応、他の冒険者には言うなってことになってんだけどな。まぁいいか。うっし、外へ出るぜ。ついて来い。」
ウォルフラムはウォラストンの町に向かっているようだった。
「それで、人のいないここまで来たんですから、話してくれますよね?」
「ただ、俺が喋ったってアクチスとかに言うなよ?俺の口が軽いみたいに思われるんだからな?」
いや、あなた絶対、口軽いでしょ。
「他の人に喋れないほど、危険な魔物ってことですか?」
「まぁ危険というよりは珍しいという感じかな。」
「ウォルフラムさん、もったいぶらずに教えてください。」
「分かったよ、俺たちが探しているのはな、エルフだよ。」
「「エルフ!?」」「こんなところに来ているのか!?」
イリスと僕らで反応が違った。
エルフといえば、おとぎ話の世界で有名な耳の尖った人型の生物である。実在しているものだとは知らなかった。
「背ぇ高ぇ姉ちゃんはエルフのことを知っているみてぇだな。まずは、知らねえ2人のために説明しておくと、エルフってのはお前さんたちの想像通りの耳が尖ってる人型の魔物だな。魔物と言っても、エルフ以外の魔物とは敵対してるし、人里離れた森を拠点にするから、第三勢力みたいなもんだな。だが、最近この辺りでエルフを見たっていう報告がいくつも上がってやがる。それで、何故か俺たちが借り出されたのさ。」
「見つけたらどうするのだ?見つけて終わりという訳ではないだろう?」
「安心しな。捕まえて金持ちに売ったりはしねーよ。うちんとこの親分がエルフと交渉したいことがあるんだとさ。」
「サラマンダーのリーダーである、あなたに上がいるんですか?」
「うちのギルドのボスだよ。」
クライゼンのギルド長がエルフを欲しているらしい。
「そんなに簡単にエルフは捕まえられるとは思えないがな。」
「そうなのか?俺自身は実物を見たことはねぇんだが、姉ちゃんはエルフについて詳しいんか?」
「姉ちゃんじゃなくて、イリスだ。確かに、私はエルフが人里を離れた場所に住む理由も知ってはいるが、知っているからこそエルフがこの辺りにいるとは思えん。」
「そうなのか、じゃあ、あれはなんだ?俺の幻覚か?」
そう言って、ウォルフラムが指差したのは、耳の尖った色白の僕の想像通りの姿をしたエルフだった。
「そんな、馬鹿な!?」
イリスは信じられないといった表情だった。
「おい!そこのエルフ、話がしたいんだが?」
ウォルフラムの問いかけに対し、エルフは口をつぐんだままだった。
「だんまりならしょうがねぇ。まぁ、これも仕事なんでね、言う事聞かないなら捕まえさせて貰うしかないねぇ。」
ウォルフラムはそう言うと、両手を地面に当てた。
「地脈に根付きし、大地の龍よ、我の望む敵を喰らえ!『ランドパニッシャー』」
地面が隆起し、エルフに向かって攻撃する。エルフは地面に叩きつけられ、両腕を拘束された。
「おいおい、エルフっつーのはもっと強ええもんかと思っていたが、そうでも無いらしいな。とにかく、これで目的はクリアっと、ってなんだ、どうしたお前ら?」
僕とイリスは、ウォルフラムの行き手を阻むように、エルフの前に立った。
「流石に、魔物とはいえ、無抵抗の相手を捕まえようとするのは、良くないと思っただけですよ。」
「私もそうだ。エルフを人の多い場所に連れていく訳には行かないのでな。」
「それは、俺と一戦交えたいという認識で構わないかな?」
「当然だ!」「まぁあなたが引いてくれないのであれば、そうなりますね。」
「2人ともやめなさい!あなたたちが勝てる相手ではないわ!」
ウィットが僕らを止めに入る。だが、僕らはその場を離れなかった。
「いいぜ、殺す気で来ないと、お前さんたち・・・死ぬぜ?」
言い終わると、再び地面に手を当てた。
「ぶっ潰せ、『アースクラップ』」
一対の土の壁が僕らを挟むように現れ、僕らに迫ってきた。
「オーラムはそっちの壁を頼む。」
そう言い、イリスは槍を構える。恐らく、壊すつもりなのだろう。だが、僕はイリスの腕をつかみ、迫ってくる壁をよけた。
「僕の魔法じゃ、物を壊すのは難しいんですよ!一緒に冒険してきたから知ってるでしょ!」
「なんだぁ?仲間割れか?喋っててもいいが、次の壁が来るぞ。」
ウォルフラムの言う通り、土の壁がみるみる湧き出てくる。壁の相手をするより、魔法の使用者を叩いた方が早いだろう。僕は、ウォルフラム目掛けてエタノールを放った。だが、ウォルフラムは土の壁を自分の目の前に作り、防がれた。
「詠唱無くても魔法が打てるってのは、本当だったんだな。事前に聞いてなかったら危なかったぜ。あと、もう終わりだぜ。」
気づいたときにはもう遅く、地面から伸びた、土できた手が、僕らの足を捕まえた。
「まぁ、ホーナー村の一件で借りを作ってるから、殺すのはやめといてって、エルフがいねねじゃねえか。手や足を自切しなきゃ抜け出せないはずなんだがなぁ。」
捉えられていたはずのエルフの姿が見当たらない。どうやって逃げ出したのかは分からないが、捕まらなくてよかった。
「もう、お前さんと戦う理由もないし、拘束は解いてやるよ。ただなぁ、次に俺の邪魔をするときは、死ぬ覚悟してこいよ。」
そう言って、ウォルフラムは去っていった。
また、化学の話出来なかった・・・




