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お宝を探せ! 後編

「それにしても、こんなに小さい子でもちゃんと冒険者をやっているというのに、私は全然ダメで情けないですね。」僕ら3人の中で小さい子と言えば・・・


「誰がチビだって??」

「落ち着いてください、お姉様。どうか、ここは抑えて。」イリスがウィットを止めに入る。


「ウィットさんに小さいって単語は禁句です。チョロいので、お姉さん扱いすればすぐ機嫌直しますよ。」フルオライトに耳打ちをする。


「本当に、ウィットさんが一緒に行動してくれると言ってくださって本当に助かりました。なんというか、大人の包容力がありますよね、ウィットさんには。」一緒に行こうって言ったの僕だった気がするがまぁいいか。


「そ、そうね。大人の包容力ね。分かればいいのよ。分かれば。」こいつマジでチョロいな。


 気付けば、洞窟の奥深くまで来ていた。遠くから、波の音も聞こえてくる。


「この辺りなら、バルフートが来ていてもおかしくないな。」

「イリス、そもそもなんで、バルフートのう◯こは高価なの?」魔物に詳しいイリスに聞いてみた。

「まずだな、「何、私の妹に汚い言葉言わせようとしてるの!」パシーン!強烈なウィットの平手打ちが飛んできた。

「痛いんですけど!いや、排泄物もう◯こも一緒でしょ。」


「一緒じゃないわよ!!!」


「オーラムは勘違いをしているようだな。」

「勘違い?排泄物ってそういうことじゃないの?」


「ああ、私たちの目的のものは、バルフートの結石なんだ。」

「結石?あ!もしかして、バルフートってクジラの魔物ですか?」

「その通りだ。もう察しがついたとは思うが、バルフートの結石、通称アンブレインストーンは、エタノールに溶かすことで他には無い香りを出すことができるものだ。この匂いに魅了された人々が、高額でクエストとして依頼しているという訳だ。」

「オーラム、分かった!?その、う、う、じゃないから!」

「う?ウィットさんどうしたんですか?何を言おうとし「うるさい!バカ!!!」


 怒られたので、ウィットさんをいじるのはこの辺にしておいた。


「お三方は本当に仲が良いのですね。」僕らのやり取りを聞いていたフルオライトはそんな感想を述べた。


「まぁ、死線をくぐり抜けてきてましたからね。」コバールトとの戦いで、さらに仲が深まった気がする。


「もうこの先は海なようだ。」遂に、行き止まりまで来た。ここで、再びアンブレインストーンを探してみることになった。


「イリス、そっちは見つかったー?」こういった根気よく、物を探したりすることにすぐに飽きるウィットが話しを始めた。

「見つからないな。もう、他の冒険者が見つけている頃かもしれぬな。」確か、30人弱はこの洞窟に来ていたことから、僕らが見つけられる可能性は低いだろう。


「見つかりましたね。」僕は呟いた。

「「「嘘!?」」」3人ともこっちを見る。すると、3人とも気づいたようだった。僕の言葉の意味が。


 そう、見つかったのは僕らの方だった。


「こいつは、オークだな。」オークは、緑の肌の色はゴブリンと同じだが、3m弱はある身長や顔などが明確に異なる。そして、ゴブリンとは比べ物にならないほど強いため、群れて行動はしない。


「ウオガガアガガアガガア!!!」何言っているか分からないが、仲良くしようとしてくるわけではないことは分かった。


「フルオライトさんは下がってて、ここは私たちで倒すわ。」


 オークは石の棍棒を持って突撃してくる。


「オークの攻撃を一撃でも喰らったら、終わりだと思った方がいい。」あの巨体から繰り出される攻撃をまともに受ければ、全身骨折は免れないだろう。


「ただ、体が大きいのはメリットだけでは無いんですよね。」僕はそう言うと、手からNaOH:水酸化ナトリウムの水溶液をオークの足目掛けて放った。


「ウガガ?ウガガガアアアアー!!」水酸化ナトリウムの強塩基性がオークの肌を侵す。


「ウィットさん!足を狙ってください!!」

「分かったわ!ハッ!」投げられたダガーは、水酸化ナトリウム水溶液でぬるぬるになったオークの足の皮膚を削り取っていく。オークは手をつき、前方に倒れた。


「今よ、イリス!!」イリスは槍に魔力を注ぐ。


「我、この矛先に風神の加護を授けん。穿て!『ウィングスピア』!!」イリスはオークの背から心臓目掛けて一突きにした。


「ガアアァァァアアアアアアア!!!」オークは背中に乗ったイリスを振り落とし、槍が体に突き刺さったまま立ち上がると、我を忘れて暴れ始めた。持っている棍棒を振り回すが、僕らを狙っているという訳では無く、とにかく暴れている。


 近くの岩なども棍棒に当たり、崩れ去っていった。


「まだ、こんなに動けるの?」ウィットが少し怯えたように言う。

「いや、もう終わりだろう。」イリスの言った通り、周りの岩などを散々壊した後、オークはその場に倒れた、魔石となった。


「ふぅ、強敵だったわね。」

「フルオライトさん、大丈夫ですか?」戦いに集中していて、忘れていた。戦いの巻き添えを喰らっていないといいのだが。


「おーい!みなさん!!こっちですよ!こっち!!」フルオライトがいる場所は、さっきまで岩で囲まれていた場所だった。オークが周りの岩を壊したのだろう。


「どうしたんですか、フルオライトさんってこれは!?」

「ああ、間違いない。」


 そこには、琥珀色に輝く塊、そうアンブレインストーンが落ちていた。


「本当にありましたよ!この色はそうですよね!?」僕は拾い上げて匂いを嗅ぐ。

「確かに、嗅いだことがない匂いがしますね。」

「私も、実物は初めて見たわ。見た目も綺麗ね。」


「それで、このアンブレインストーンは、お三方がギルドに持っていってください。私一人だったら、まずゴブリンたちに囲まれたあの時に死んでいたかもしれませんから。」


「いやいや、これはフルオライトさんが見つけたものじゃないですか。それを貰うなんて僕には出来ませんよ。」

「そうよ。あなたに冒険者は向いてないわ。それを売ってもう一度農業を始めることね。」

「私たちはあのオークの魔石で十分だ。」


「なんて、あなたたちは良い人なんだ。」フルオライトは泣きながら僕らに感謝を述べた。


 結構な数の魔物を狩ったこともあり、帰りは特に何もなくギルドまで帰っていった。


「何から何まで、今日は本当にありがとうございました!アンブレインストーンを売ってまた農業を始めたいと思います。この御恩はいつか必ず返したいと思うので、少しでも何か力になれそうなことがあれば、いつでも教えてください。」


「そうね。また、いつかね。」アンブレインストーンを手に入れるというクエストは失敗したかもしれないが、これはこれで、良かったのだろう。


・解説コーナー

 クジラの排出物(結石)について解説しましょうか。マッコウクジラの結石は、龍涎香と呼ばれ、香料として実在します。マッコウクジラから排泄された龍涎香は、偶然海岸に流れ着くことでしか、手に入れることができないのでとても貴重な香料なんですね。龍涎香の主成分であるアンブレインは化学合成によって人工的に作られていますが、龍涎香そのものの複雑な化合物組成を真似することは難しいので、未だに高額で取引されているらしいです。

 NaOH:水酸化ナトリウムの水溶液は、以前話したKOH:水酸化カリウムと同様に、タンパク質に対する高い腐食性があり、とても危険です。また、水酸化ナトリウムは一応、一般人が買う事も出来るのですが、水に溶かす際に滅茶苦茶熱くなり、急激に加えた場合は突沸することがあるので、気を付けましょう。あと、手に着いたらヌルヌルするので、すぐによく洗ってください。


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