デッド オア アライヴ
ガルムとフリッグから正成は離れ終えると、戦闘前のちょっとした会話に入る。
「ボンクラのチカラ見せてもらうぜ!」
フリッグが首をボキボキ鳴らしながら楽しそうに言う。
「…………」
前と同じで無言で戦闘態勢に入る。
画面にⅢ、Ⅱ、Ⅰ……と出てくる。
そして、
kämpfen!!
と、表示されて戦闘開始!
今回は前に出て攻めようかと思ったが、フリッグ相手に返り討ちにされたらと弱気なことがよぎったのでやはり正成は後ろに下がり相手の出方を伺う。
それに対してフリッグはじっとしていて何もしてこない。
不思議に思う正成。
このままじっとしていても何も始まらないので先に攻撃を仕掛けることにする。
罠のような気がしてならないがガードされてもすぐに離れればいいかと考え、フリッグに対する恐怖心とも闘いながらフリッグに走って行き中段攻撃の蹴りを入れようとしたとき、フリッグが手を前に突き出して魔法陣を出す。
「しまった!」
気付くのが遅くボタンを押していた。
ガルムの蹴りが魔法陣に当たるとガルムの動きが止まりフリッグが抜刀して上に切り上げる。
カウンター攻撃。
相手の動きを数秒だけ止める魔法陣を出し相手が触れたら抜刀。
切り上げられたガルムは画面上まで上がる。
その間に剣は鞘に納めてフリッグの目線くらいまでガルムが落ちてきたところでコンボが始まる。
右拳の中攻撃で殴り、強攻撃で右足で蹴るとガルムが少し浮くのでジャンプしてフリッグが付いて行き、中攻撃で殴り、強攻撃で剣で攻撃し2段ジャンプでもう一度同じことをして最後に切り上げて追撃が終わる。
「やばいよ……」
緊張と恐怖で立っていられなくて遠く離れて座ってしている正成。
カウンターは読みが難しい。
忘れた頃にやられると当たってしまう。
だから、最初に見せて警戒させ中盤……あるいは終盤でふと出されると厄介になる。
時間差で攻撃するか投げで対応するしかない。
警戒しすぎて攻撃しないで時間差で攻撃しようとしたら思わぬ反撃をされる。
だが、カウンターにも上段、中段、下段がある。
上段カウンターしていて下段攻撃をすると攻撃は当たりそのままコンボに持っていける。
読みが難しいことには変わりはないのだが……。
画面を見るとガルムはダウンしてフリッグは着地している。
壁際ではないので早く起きないと壁際まで持って行かれそうなのですぐに起きなくてはいけないのだがフリッグは起き上がりを待っているかのようにダッシュで近付いて来て攻撃を続ける気なのだろう。
とりあえず、ガードして耐えようと考える正成。
投げをしてきてくれるなら投げ抜けをして逃れられるからとてもありがたいが、そうでない場合中段と下段の揺さぶり攻撃が始まってガードするのがとても大変になる。相手の攻撃方法を知っているなら読みやすくはなるのだがまったく知らないのでとてもつらい。中段攻撃と思って立ちガードしていたら実は下段攻撃で倒されそのままコンボに持っていかれることも……これをこう呼んでいる。
『初見殺し』
今日初めて攻撃方法を見る正成は攻撃を見て一瞬で中段か下段ガードかを決めなくてはいけないし、もしものときは勘を頼るしかない。
一瞬の判断が命取りになることが多い。
さて、どうするか……。
正成の判断はしゃがみガードを起き上がりでする。
フリッグは頭の上まで足を大きく振り上げる。
それを見た瞬間、正成はとっさにやばいと思い立ちガードに変更する。
間に合わないかと思ったがギリギリ間に合ってガード成功。
「あ、危なかった……」
しゃがみガードをしていたらダメージを受けてコンボに持っていかれるところを回避出来た。
だが、油断していると揺さぶり攻撃で読みに失敗してコンボを受けてしまう。
すぐにしゃがみガードをして下段攻撃が来ることを読む。
足払いの下段攻撃をフリッグがすると後ろにジャンプして空中ダッシュで一旦距離をとる。
攻撃が終わった後は隙が多いので反撃を受けやすいからだ。
「さて、どうするか……」
正成は困る。こちらから攻撃をするとまたカウンターを受けてしまいそうだし、だからと言ってじっとしておくのも分が悪い。
困っていてもフリッグは待ってくれずさらに攻撃をする。
「裂葉風」
抜刀して抜刀の勢いで風の攻撃を飛ばす。
「飛び道具かよ……」
遠距離、中距離で離れた相手に気、道具などを出して攻撃をすることを飛び道具と呼ぶ。
飛び道具の厄介なところは近づけさせてくれないことと、近付いてきた相手を返り討ちにしやすいこと。
隙があるとしたら技を出すときと出した後に近づいて来られて攻撃されること。
このフリッグの攻撃を正成はジャンプして避けてダッシュしてフリッグに近付いて攻撃をしようか迷う。
カウンターを受けてしまったらまたさっきのコンボでダメージを受けてしまう。だが、正成が攻撃をしないでフリッグがカウンター攻撃をするなら正成に攻撃のチャンスがある。
迷った結果、攻撃をしないで着地して攻撃をすることにしたが裏目に出てしまう。
フリッグはカウンターをしてこなかった。
「やば……」
気付いて攻撃をしようした正成だが時すでに遅し、フリッグは攻撃を始める。
右拳で殴り下段の足払いから、倒れた時に、
「塵旋風」
下から竜巻を出してガルムを浮かせる。
抜刀して剣を真上に向けて振るとガルムはさらに上昇する。
それにフリッグは付いて行き先ほどと同じように殴り剣で2回攻撃され剣で切り上げる。
「これで半分とちょっとHP持っていかれたな……」
正成は少し焦るがまだまだ逆転のチャンスはある。
ガルムの特殊攻撃は『シュメルツ・タイレン』痛み分けで攻撃を受けた分相手により大ダメージを与える効果がある。
ガルムがダウンしてフリッグが着地すると壁際まで行こうとダッシュしてこようとするのですぐに起き上がり立ちガードをする。
フリッグは中段攻撃をしてガード成功、次はどっちか読んでそのまま立ちガードをする。
「上手くいったがここからどうするか。考えている暇はなさそうだから攻撃だな」
全てガードされたのでフリッグは後ろに下がる。
すぐにガルムはダッシュしてフリッグに近付くと、カウンターの上段を読んで下段の足払いで攻撃する。
正成の読みは当たってフリッグは魔法陣を出してくるが上段でカウンター技をしているので下段攻撃には対処出来ず初ダメージを受ける。
「読みは当たったけど、ここからなんだよな……」
足払いでダウンしたので、フリッグを技で起き上がらせる。
「ほら、立てよ」
パンチして蹴り上げると、ジャンプして空中に付いていく。
アッパー、蹴り二段ジャンプしてアッパー、蹴りで白い熊の手で吹き飛ばす。
フリッグがダウンすると同時にガルムが着地すると、ガルムはダッシュでフリッグに近づいて壁際まで追いやろうとするが、もちろんフリッグはそうはさせない。すぐに起き上がるとフリッグはしゃがみガードをする。
正成はフリッグがガードするのを見て攻撃しようか迷うがここは投げで行くことにする。
「捕まえたぜ」
ガルムが言うと、胸ぐらを掴み持ち上げそのまま地面に叩きつけるとガルムの目線の高さまでバウンドする。
「よし! 投げ成功だな!」
そこから熊の手をフリッグの上から出し地面に叩くとダウン状態になり起き上がらせて、技を出す。
「風・迅・裂波!」
拳に風を纏わせ右手で腹、次に左手で顔、最後に右手で顎にアッパーをするとフリッグが少しだけ浮くので付いて行きパンチ、蹴り二段ジャンプしてパンチ、蹴りで白い熊の手で吹き飛ばす。
「半分以上は減らしたな……」
フリッグのダウンと同時にガルムが着地するとダッシュでフリッグ向かう。
すぐにフリッグが起き上がる。
「迷いどころだな。投げは抜けそうだから中段か下段か」
フリッグが立ちガードをしていたので下段で攻撃することにすると、いきなりしゃがみこんで魔法陣を出す。
「やば! しまった!」
立ちガードと見せかけて下段攻撃を誘うものだった。
ボタン入力している正成はガルムの動きを止められずそのまま足払いをする。
魔法陣に当たるとガルムの動きが止まり、フリッグは抜刀で切り上げるとすぐに立ち上がりガルムがフリッグの目線くらいまで浮く。
「これヘタしたらやられるのでは……」
口にした瞬間、死の恐怖で手が震える。
どうにかしてコンボを止められないかと正成は無駄だと分かっていてもコントローラーをガチャガチャと連打し始める。
実際無駄に終わりフリッグのコンボが始まる。
ジャンプしてガルムに近付き蹴り、剣で攻撃してフリッグが先に着地する。
「助かったのか?」
冷や汗ダラダラで正成は見守る。
残念ながらフリッグの攻撃は終わっていない。
着地をして少しだけ時間をおいて蹴りを入れてからの下から上に大きく切り上げると、フリッグより高く浮くとフリッグは目線より下のところにガルムが落ちてきたところで一線して切りながらガルムの後ろに行く。
正成は終わったかと思ったがまだほんの少しHPは残っている。
「よかった……」
心臓バクバクでひと安心するが一撃でも当たったらやられてしまうのでもう一撃も当たることは許されない。
格闘ゲームはやられるまで勝負は分からないもので例え相手のHPが満タンであっても逆転の可能性は十分にある。
「とりあえず、魔力ガードだな。普通のガードだと削られてやられてしまいそうだからな」
ガルムは起き上がると、フリッグは近付いて来ていて攻撃してこようとしている。
失敗は許されない緊張感でガード出来るか怪しいがやるしかない。
正成はしゃがみガードをするとガルムの前に半透明の半円が出る。
フリッグは下段攻撃をすると剣を振り上げる。
気付いた正成は慌てて立ちガードに変更すると、フリッグは振り上げた剣を振り下ろしてくる。
中段攻撃なので立ちガードをしていないと正成は確実にやられていたので、ギリギリセーフ。
「あ、危なかった……今なら反撃いけるか?」
試しに技を出す。
「風・迅・裂波!」
三回攻撃は見事にヒットする。
追撃をしたいが手の震えで成功するか分からないので一旦距離をとる。
ダウンしている間にエイルが近寄ってきて、
「ほら、これを見て」
鎮静の青い炎を正成に見せると、正成の手の震えが止まる。
今回もエイルに助けてもらって正成は勝つことでエイルに助けてもらったことを返せるしかないと考える。
「ありがとう」
その一言で冷静さが戻ってくる。
画面を見るとフリッグが起き上がる。
フリッグのHPは四分の一くらいでコンボして必殺技を決めれば勝てるくらいで、スターライトゲージはガルムとフリッグはⅢ溜まっている。
次コンボを当てれば勝てると正成は思う。
今の状態でコンボをミスする気が全く無い。
ガルムがダッシュして近付くとフリッグは立ちガードをしている。
ある程度近付くとガルムはジャンプして空中ダッシュする。
フリッグを飛び越える瞬間を狙って白い熊の手でフリッグを殴る。
瞬時にガードボタンが逆になるのでガードが出来にくくフリッグはダメージを受ける。
この攻撃方法を『めくり』と呼ぶ。
『めくり』はコンボに入れるのが難しいので一撃だけ当てる。
この調子でガンガン攻めようとする正成。
フリッグに近付き中段か下段か迷って下段で攻撃をすると、暗転と同時にフリッグが一瞬光ると抜刀の構えをする。
「え?」
正成は考えたくはなかったがこれはカウンター必殺技。
「ちょっと待ったー!」
もうボタンを押しているからガルムは攻撃してフリッグに当たる。
カウンター必殺技は中段でも下段でも攻撃が当たれば発動するが投げと飛び道具は例外で発動はしない。
だが今は下段攻撃をしているガルムは発動条件を満たしている。
「レーゲン流一ノ型『驟雨』」
抜刀して剣を鞘に納めるとガルムは剣撃を十連ヒットしてそのままHPがなくなる。
「ま、負け……」
正成はショックでコントローラーを落とす。
画面ではフリッグが、
「出直してきな」
ガルムに背を向けながら言う。
正成はエイルの顔を見れない。
エイルの期待に応えられない情けなさと正成自身に対しての悔しさで今エイルの顔を見てしまったらもう二度と立ち上がることは出来ないような気がしてならない。
だが、勝負に負けたらフリッグに殺されてしまうのだから立ち上がることはどの道出来はしないよなと正成は思って下を向いたままで、
「ごめんな。エイル」
と言って涙を堪えながら下唇を噛む。
コンソールが消えると正成の意識がなくなっていく。
これで人生終わりなんだな、と正成は消えゆく意識の中で思う。
「よく頑張ったね。お疲れ様」
薄っすらとだったがエイルが言っているのが聞こえて倒れる体を受け止めてくれる感じがしたとき正成の意識は完全になくなった。




