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アナザーディメンション  作者: ユリス
三章『約束の日』
8/11

「約束の日」(決戦当日編)

 決戦の日。

 考えながら正成はそのまま寝ていたので座った姿勢で目を覚まし、起きてぼーっとしていたら急にエイルが元気よく入ってきてビクッとなる。

「おはよう!」

「びっくりした……。朝から心臓に悪い……」

「ごめんごめん。今日はいよいよフリッグとの戦いでテンション上がっちゃって」

 てへっと下を出して可愛くウインクする。

 本当に可愛いのでそれ以上は何も言えなくなる。

「おはようエイル。楽しみにしすぎでしょ……」

「だって、正成が今日はフリッグを倒して認めてもらえるんだし、テンションも上がるよ!」

 ツインテールがピコピコ動いているような気がする。嬉しことがあると動くのだろうか?

「勝った気でいるの早くない!?」

「全然!」

 胸を張って何故かドヤ顔で言う。

「まだ戦いまで時間あるよね?」

「あるよー」

「ちょっと練習してもいいかな?」

「フリッグ来るまではいいよ」

「それじゃ……」

 いいながら立ち上がろうとすると、エイルが、

「ちょっと待って!」

 大きな声で止める。

「えっ? 何?」

 立ち上がるのが中途半端だったため中腰の姿勢。

「朝ごはん食べてからね」

 その言葉を聞いた正成は膝から崩れ落ちる。

 気を取り直して立ち上がると朝ごはんを食べることにする。

 エイルが支度をしていてくれたのですぐに食事にすることが出来る。

 すぐにでも練習をしたいので急いで食べているとエイルに注意され、しぶしぶよく噛んで食べることに。

 朝食を食べ終えると、エイルと外に出て練習をするが短時間の練習では一つのコンボのコツをつかめても実践で使えるレベルなのか怪しいところ。

「まだまだか……」

「それでまだまだなの? 結構すごいと思うんだけど」

 いつの間にか正成の近くに来ていたエイルが尋ねる。

「成功率六割ってところだからね。せめて九割くらいにはしないと」

「そうなんだね。私もチャレンジしてみたことあったけど技の一つもでなくてしょんぼりだったよ」

「最初はそんなものだよ。俺だって小さい時からしてるからここまで出来るんだからね。初心者だったらまずは基本技の練習からだね」

「じゃ、今度私にも教えてね」

「いいよ」

「約束だよ」

 右小指を立てて正成に向ける。

 理解した正成が同じように右小指をエイルに向けると、小指と小指を絡ませる。

「指切りげんまん。嘘ついたら針千本のーます。指切った!」

 嬉しそうにエイルがリズムにのって言う。

「これで私も正成みたいになれるね!」

「いやいやいやいや! それはものすごく時間掛かるからね!」

「無理とは言わないんだね」

「エイルなら時間は掛かりそうだけど上手くなりそうなきがするからね」

「そう? なら頑張りがいがありそうだね」

「まぁ、フリッグに勝ってからなんだよね……」

「大丈夫! 大丈夫! あっ、邪魔してごめんね」

 エイルは正成から数メートル離れる。

「なんかエイルと話してるほうが気が楽な気がするが練習しないとな」

 そんなこんなで練習を一生懸命していると、

「姉御。おはようございます」

「あっ、フリッグ。おはよう」

 フリッグ達が到着する。

 達というのは、もちろんベリとゲルドのこと。

『おはようございます。エイルさん』

「二人とも、おはよう」

 にこやかに手を振りながらエイルが挨拶している中、フリッグの第一声を聞いてビクッとなる正成。

 それでも練習を続けていると、

「鍛錬しているのかボンクラ! 殊勝な心がけじゃないか」

 背後からフリッグが声を掛けてくる。

「勝てないと生き残れないので……」

 いつもの感じで答えてしまって正成はしまったと思う。これはフリッグが怒る答え方だと……。

「せいぜいオレを楽しませてくれよ!」

 だが予想に反してフリッグは嬉しそうに答える。正成と戦うことが本当に楽しみなのだからだろうか?

「頑張ります!」

 そっちもそっちで何か怖かったので元気よく正成は言う。

「気合い入ってるじゃねーか! オレも気合い入れて行かねぇーとな!」

「えっ!?」

 実力の半分以下くらいで戦ってもらいたい正成だが今の発言を聞く限りではフリッグは半分以上の実力で挑んできそうだ。

 驚きと恐怖で固まる正成に気付かずフリッグはエイル達のところに戻る。

「姉御、今日は気合入れていきますので!」

「フリッグに認めてもらうには、それくらいは必要だから当然だね」

「あのー……ガルム震えてるように見えるのは気のせいでしょうか……」

 ゲルドが正成の後ろ姿を見て恐る恐る言う。

「あれは武者震いだよ」

「えっ? いや、そんな感じには見え――」

「姉御がそう言ってんだ! そうに決まってんだろうが!」

 ゲルドが言い終わる前にフリッグが強気な声で言う。

「すみません」

「分かりゃいいんだよ」

 実際、正成はただ恐怖で震えているだけで、決して武者震いなどではない。

「お兄ちゃん変なことは言わないほうがいいよ」

「そうだな」

 項垂れながらゲルドはベリに背中をポンッと叩かれて慰められる。

「準備運動してるんで試合の準備できたら声を掛けてください」

 エイルに一言言うと準備運動をフリッグは始める。

「ガルム、準備は出来た?」

 正成の後ろからエイルが声を掛ける。

「全然って言いたいところだけど、もう時間ないでしょ……」

「そうだね。でも、あと少しくらいなら練習出来るんじゃないかな」

「そっか。時間ギリギリまで練習するよ」

「了解。フリッグの準備運動終わるまでだよ」

「それって全然時間ないのと一緒のような……」

「気にしない、気にしない」

 楽しそうにエイルが言う。

「お前大丈夫か?」

 エイルと一緒に付いて来ていたゲルドが正成に訊く。

「まったく大丈夫ではない……」

「だろうな……。何で俺っちに勝てたのか不思議なくらいだ。エイルさんが自信満々で勝てるって本気で思ってるのも不思議何だがガルムって戦いになると人が変わるのか?」

「俺にだってエイルが俺を信じてくれてること分かんないよ。むしろ俺が知りたい。後、戦いになっても俺は俺のままだよ」

 選んだ理由は聞いたが、なぜあんなに自信満々で正成が勝つことを信じているのかは理解していない。身辺調査もして正成がどれほど弱くてビビリなのかよく分かっているはずなのだが……。

「まぁ、いいさ。フリッグとの戦い見させてもらって俺っちはガルムの強さを確認させてもらうことにする」

「ちょっとお兄ちゃん! ガルムの邪魔してるんじゃないでしょうね?」

 ベリも一緒に付いてきていてゲルドの背後からひょこっと顔を出す。

「してないよ」

「本当に?」

「疑うなら本人に訊けよ」

「ガルム本当?」

「うん。邪魔にはなってないよ」

「本当のこと言ってもいいんだよ? 嘘つくの得意みたいだし」

「えっ? いや得意ではないよ。昨日は戦わないで済むようにしたかっただけなんだし」

「そうだよね。結局バレたもんね」

「はは……」

 本当のこととは言えはっきり言われると乾いた笑いしか出ない。さらに昨日の場面を思い出ししょんぼりした顔になる。

「まぁ、邪魔してなかったならよかった。フリッグさんに勝ってお兄ちゃんが実力不足ではないことを証明してほしいの。昨日お兄ちゃんはフリッグさんにどれだけしごかれたことか……」

 ハンカチを出して涙を拭くふりをする。。

「うるせー! そんなこといちいち言わなくていいだんよ!」

「何よ! お兄ちゃんのために言ってるんでしょ!」

「それは俺っちのためになってないって! むしろ、恥ずかしい話暴露してるだけだろ!」

 目には見えない火花を散らしながら言い合っている二人を止めに入ろうとするが、

「はははははははははは!」

 正成が声を上げて笑ったので、エイルが止めに入る必要がなくなる。

「何がおかしいんだよ!」

「何がおかしいのよ!」

 ゲルドとベリが正成を見てハモる。

「いやいや、喧嘩するほど仲がいいって言うけど本当なんだなって思って」

『仲良くない!』 

「ほら、仲がいいじゃないか」

「ちっ……これのどこが仲がいいんだよ」

「俺には兄妹はいないから、そういうの見ると仲がいいなって思うんだよ」

「そうかよ……」

「ありがとう。少しは気が楽になったよ」

 話していたおかげで少しは震えが治まる。

「そうかよ。なら絶対に勝てよ」

「まぁ、出来るだけのことはするよ」

「おいおい、そこは勝つって宣言するところだろ?」

「フリッグ相手だから宣言までは……」

 弱気な発言をしていると、

「勝ってよね! もし負けたら許さないよ」

 ベリが追い打ちかける。

「は、はい……」

「フリッグの準備いいらしいけど、ガルムは大丈夫?」

 話しているうちに時間が経っていてエイルがフリッグから聞いてきたので正成に報告する。

「いや……うん……まぁ、大丈夫……かな」

「フリッグ、大丈夫だって!」

 エイルがフリッグに手を振りながら叫ぶとフリッグが正成のところに来る。

「じゃ、始めようぜ」

 正成が立ち上がってフリッグを見ると、少し治まっていた震えが再発する。

「足……足……」

 小声でゲルドに言われるが正成自信止めたいのだがこればかりはどうしようもない。

「えーっと、人払いの結界は張ってあるから、迷い込んでは来ないと思うので思いっきりやっても大丈夫だからね」

「人払いの結界してるのにフリッグ達よく入れたね」

「姉御がオレ達は入れるようにしてくれたんだよ」

「なるほど」

「そうだよー。私にかかれば簡単なんだよ!」

 ドヤ顔でエイルは正成を見るが、それがどのくらいすごいのかよく分からないので苦笑いの表情になる。

「姉御が本気を出したらオレ達でさえ入ってこれないからな」

 うんうんと頷きながら何故か満足そうなフリッグ。

「そうなの!?」

 驚きの顔でエイルを見る。

「まぁ、出来ないこともないけどフリッグクラスだったら全力に近いくらいの結界じゃないと難しいかな。かなり疲れるから滅多なことがない限りやらないけどね」

「それでも全力ださないでいけるんだね……」

「補助に関しては私に任せて!」

「頼もしい……」

「でも、フリッグ以上の実力者だったら全力の結界でも無理かもね」

「そうそういないような気もするが……」

「何人か知ってるから侮ってはいけないよ」

「マジで?」

「マジだよ」

「…………」

 正成は開いた口が塞がらない。

「だから今日ここでフリッグには勝ってもらわないと!」

「えっ? それってこの先はフリッグより強い人達が待ち受けてるってこと?」

「そう考えていたほうがいいよ」

「はぁ……」

 もしフリッグに勝てたとしてもその先のことを考えると頭が痛い。

「おい、ボンクラ! さっきの勢いはどうした! 己より強いやつらがいるなら修行して強くなればいいだけだろうがぁ!」

「は、はい!」

 条件反射で元気よく返事をする。

「よし! 話しはずれたが始めるとするか」

「そうだね。ガルムもいいよね?」

「う、うん」

 ガグガクブルブルの状態の正成にゲルドがジト目で、こいつ本当に大丈夫なんだろうな、と言わんばかりの視線を送っているが正成は当たり前だが気付いてはいない。そして、ゲルドはこんなのに負けたのかと溜息をつく。

「じゃ、私達は遠くで観戦してるね」

「姉御、出来るだけ離れていてくださいね」

「はーい」

 離れながら後ろ姿の状態で手を上げて振る。

「命日にならないよう頑張れよ!」

「努力します!」

「それじゃ、始めるぜ!」

 右手をグーにして左手の平にパンッと軽く叩き気合を入れる。

「は、はい! では……コンソール、リンク!」

 銀のコントローラーを出し目の前にコンソールを表示させると、ガルムが目の前に現れる。

「…………シュラハトフェルト!」

 正成は深呼吸をしてギュッとコントローラーを握ると2D画面にする。と、同時に逃げるようにその場から離れる。

 正成の二度目の生死を賭けた戦いが始まる。

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