選ばれた少年と少女
「ぐっ…あぁ!何故それを!」
ラギアに襲い掛かってきた女性は、彼女の持っている破片に驚きを見せた。
「これは…?」
ラギアが破片を見ると暖かな光が溢れている。
これが屋敷に巣食う闇を祓うもの。そう確信した彼女は、黒いドレスの女性に破片の光をあてようとする。
そのとき、光がまっすぐな線を描き、ラギアの手の中で4方向に分かれた。
次には破片が消えており、その代わりに手にしていたのは銀の装飾が施された、十字架を模したような剣だった。
「メシア、様。貴女は選ばれた人です…。そんなものを扱ってはいけません。
闇を祓うなど、してはなりません」
女性はよろよろとラギアに近づこうとする。
「私はメシアじゃない。ラギアよ。あなたが儀式というものに関係しているのなら、“ひかり”で浄化します」
ラギアは覚悟を決めた。
(私…ルファイア一族の神隠しの真相が知りたくてここへ来たんだ。
もしも、あの白い女の人が言ってることに真相が隠されているなら、私は、闇と戦わなくちゃいけないのかもしれない)
剣をぎゅ…と握り、女性目がけて走り出す。
「あなたを、浄化します!」
女性の放つ黒い塊を剣で切り裂き、間合いを詰める。
ラギアは不思議な感覚を感じていた。
使ったことの無いものなのに、ずっと前から使っていたような感覚。
「やぁっ!」
ザクッ!
この光景に音をつけるなら、この音がふさわしいだろう。
だが相手は実体の無いものだった。
「…メシア様」
ぽつりと呟いた女性。
「私は」
「イリアス、です」
剣が刺さったままイリアスと名乗った女性は、美しい微笑を残して消えた。
「ねぇ、ラギア…」
聞いたことのある声。
「…ファリオン」
「憶えててくれたんだ。1つ言い忘れてたよ」
ファリオンは耳元でこう言った。
「僕は存在だから、どこにでも現れる。人間じゃないんだ、僕。
だけど、僕は闇じゃない。それは君に関係あるんだ」
…意味がわからない。
「君も僕も、“選ばれた”からね」
それを言い残すと、ファリオンは初めて会ったときのように消えた。




