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錆びついた鍵穴が回り、立て付けの悪いドアが開く。

伊住馬が壁のスイッチを押し込むと、明滅する蛍光灯の光が、

むせ返るような惨状を容赦なく照らし出した。


足の踏み場もない、という表現でもまだ足りない。玄関の土間から細い廊下にかけて、

コンビニのビニール袋や空のペットボトル、得体の知れない日用品の残骸が地層のように積み重なっている。下手をすれば特殊清掃業者の出番となる手前の、怠惰が煮詰まったような空間だった。


だが伊住馬には、そんな光景など意に介する様子もなかった。彼は靴を脱ぐより早く、

ホコリにまみれた下駄箱の上へ手を伸ばした。

ゴミだらけのこの空間には到底似つかわしくない、小さな宝石のような石を無造作にひっつかむ。


「……よかったよ。これさえありゃ、とりあえずは持つ」


安堵とともに吐き出された独り言。石を握り込んだ彼の肩から、先ほどまでの張り詰めた緊張がふっと抜けるのがわかった。それから、伊住馬はゆっくりと振り返り、本来の鋭い目つきで京太郎を真っ直ぐに射抜いた。


「で?小宮の人間が、俺なんかに何の用なんだよ。わざわざサツの世話焼いてまで引っ張り出したってことは、それなりの理由があるんだろ?」


挑発めいたその問いに、京太郎はすぐには答えなかった。彼の視線は、伊住馬の顔ではなく、

固く握りしめられたその拳へ向けられている。


「俺の用件を話す前に聞きたい。お前が持っているその石は何だ?」


京太郎の静かな追及に、伊住馬はただ口の端を歪めた。

面倒くさそうにスニーカーを脱ぎ捨て、ゴミの地層を器用に踏み越えて奥へと進む。


「……ま、立ち話もなんだろ。上がれよ」

背中越しに声が飛んでくる。

「どうせ、お互いに腹を割って話さなきゃならないみたいだしな」


京太郎は小さく息を吐き、革靴を脱いでその後に続いた。


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