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案内されたのは、六畳の和室だった。

だが、敷き詰められた畳は本来のい草の青さなどとうに失い、

湿気と経年劣化で茶色く変色しきっている。万年床のまま放置された薄汚れた布団の周りには、

脱ぎ捨てられた衣服や漫画雑誌が雪崩を起こし、テーブル代わりの段ボール箱の上には吸殻の山と空き缶が散乱していた。


窓のカーテンは固く閉ざされており、部屋全体に埃と男の体臭、それにわずかなカビの匂いが染み付いている。とてもではないが、人を招き入れるような場所ではない。


陰陽五家、轟の一門に連なる血筋の者が住まう場所。

その現実が、剥き出しの荒廃として六畳間に広がっていた。

伊住馬は万年床の端にどっかりと腰を下ろすと、自嘲気味に両手を広げた。

散乱するゴミと埃にまみれた六畳間を、あえて見せつけるような仕草だった。


「まあ、こんな感じだよ。俺はほとんどの間、自分の人生を生きちゃいない」


その言葉には、悲壮感よりも、長く付き合いすぎたゆえの乾いた諦観が色濃く滲んでいた。

彼の抱えるそれは、単なる霊媒体質という言葉では括りきれない。自我の扉が常に開け放たれた、

無防備な器。


強力な霊的干渉を受ければ、本人の意志など関係なく肉体の主導権を完全に奪われる。

陰陽五家の長い歴史の中にさえ、前例がないほどの異常な才能だった。

彼が本家の中枢から遠ざけられ、この潮崎の鄙びたアパートへ事実上の厄介払いを受けている理由は、

他でもないこの制御不能の力にあるのだろう。


「……こんなんでさ、よく自分自身が事故で死んでないよな、って思うだろ?」


伊住馬は、京太郎の顔に浮かびかけた懸念を先回りして叩き潰すように、薄く笑った。


「気がついたら知らない場所にいて、見覚えのない傷を作ってるなんてのは日常茶飯事だ。でも、怪我くらいのことはメチャクチャあるにしても、今回はそういうのもなかった。

サツの厄介になっただけで済んだんだから、ラッキーって感じだよ」


自らの命の所在すら運任せの事象のように語る男は、そこで言葉を切り、先ほど下駄箱から回収してきたばかりの小石を指先で弄んだ。薄暗い蛍光灯の光を吸い込むような、奇妙な透明感を湛えた石だった。


「とはいってもな、最近はこの石のおかげでかなり安定してたんだぜ」


「……そうだ、その石はなんなんだ?」


京太郎は、伊住馬の手元から視線を外さずに問いただした。単なる魔除けや護符の類ではない。

この規格外の憑依体質を、これほど安定させうる呪物が、こんな場所にあること自体が異常だった。


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