↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
79/84

秘策    【不動静真視点】

●不動静真


大地には躊躇がない。バッターの準備ができると、すぐにワインドアップの体勢を取り投げる。

バッターが引きつけてから振ったバットが空を切る。


「ストライク」


1球目から、カット打法?

通常、ファウル打ちは、2ストライクからやるものだ。

ファウルはストライクとしてカウントされるが、2ストライク以降は、何回ファウルを打ってもストライクにはカウントされない。じゃけえ、2ストライクまで長打を狙わんのは、自らチャンスをつぶしとるだけちゅうことになる。

わざわざ敵に2ストライク渡してまで、カット打法をノーカウントから試みているのは……


「大地の球に合わせに来とるいうことか」


2ストライクから、いきなり合わせるのは厳しいからのぉ。

そこまでして、カット打法にこだわるのは、つぶす目的というより、フォアボール狙いじゃろうのぉ。

チャンスは1イニングしかないけえ、自信のあるカット打法に賭けるのは、作戦としてはありじゃ。

フルスイングで長打を狙うより、フォアボールを狙っていくほうが可能性があると踏んだんじゃろ。

困ったことに、ええ判断じゃ。

大地は未完成ナックルを投げられんからのぉ。

大地が淵沢工のカット打法を打ち破る方法は、ただ一つしかない。

カットできないほどの球威で打者を仕留める。

ただ、それはリスクが高い。

速い球っちゅうのは、どうしたって荒れる。しかも、大地は試合で投げるのははじめてじゃけえ、コントロールが安定せん可能性がある。フォアボール狙いに来ている淵沢工のバッターには好都合ということになる。

あれほどまでに、カット打法を極めとる選手たちじゃ。当然、盗塁に自信があるんじゃろうからのう。大地はランナーを意識したピッチングは不慣れじゃ。塁にだすわけにはいかん。

最後の一イニング。リスクは極力、減らさんとのぉ。


「ストライク・ツー」


ボールはサイン通りのコースを描いて……。バットが空を切る。

甘いのぉ。

速さでねじ伏せるよりも、リスクが低く、効果的な方法が、オレたちにはあるんじゃ。

そのための仕込みは、すでにしてある。


「ストライク・スリー」


カット打法を試みたバッターが、空振り三振。先ずは、ワン・アウト。

仕掛けは、うまく機能しとるようじゃのぉ。

二人目がバッターボックスに入ってくる。


大地が投げる。

ボールがバットにはじかれ転がっていく。

ゴロをサードが捕ってアウト。これでツーアウト。


「くそ!」


淵沢工のバッターが、荒ぶっとるのう。

どうしてカット打法が成功しないのか、気づいとらんようじゃ。

淵沢工の選手たちが、慌てとる。


三人目。

この打者を、打ち取れば試合は終わる。

あと一人。


「ストライク」


空振り。打てんじゃろ。

大地は球威を落としコントロール重視で投げとるだけじゃけどのう。それがバッターを追い詰めることになっとるんじゃ。

淵沢工の選手たちには、大地がオレと全く同じに見えとるはず。

大地はマウンド上のオレのフォームから仕草までマネしよったけえ、何から何までオレにそっくりじゃ。

そっくりじゃけどのう。

オレと大地では、体格も筋力も手の大きさも違う。同じように投げとっても、リリースポイントや高低差、スピード、変化量に違いがでてくる。

淵沢工の選手がカット打法なんて高度なことができたのも、オレをよく観察し、オレをよく知ったからこそ。

それがアダになっちょるんじゃ。

オレの球に慣れた淵沢工の選手たちは、オレの時と同じタイミングで打つ。

当然タイミングが合わずにカットできん。

気づいたとしても、一イニングでは修正できんじゃろう。


「ストライク・ツー」


修正し即座に反応できる淵沢工の選手がいるとしたら、投手の煙浦くらいじゃろう。

淵沢工の選手の中で、唯一、状況を理解し、機転を利かせられる。

じゃけえ、煙浦には回さん。この打者で終わらせる。

これが最後の一球。

大地の手からボールが離れる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。