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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

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弱小校の投手  【淵沢工 煙浦投手視点】

●淵沢工 煙浦投手



足場作りも雑に終えると、弟が投球練習をはじめる。

体格がいいだけあって、迫力はあるな。


『 北仙丈・帯那高校連合のシートの変更をお知らせいたします。ピッチャーの不動静真くんがキャッチャーへ、ライトの不動大地くんがピッチャーへ。キャッチャーの久慈くんがライトへ 』


ポジション変更のアナウンスが流れる。

投手変更はわかるが、なんでキャッチャーまで変えるんだかな。

しかも、不動静真がキャッチャー……


「……不動静真」


オレと同じようなナックルまで投げやがるし、わけわかんねえ野郎だな。

バッティングセンスもあるみてえだし、……マジでなんなんだよ。

バッターボックスに4番井上が立つ。

打順は悪くない。4番、5番、6番。主力が揃っている。まだチャンスはあるってことだ。

7番のオレまで回してくれたら、どんな手を使ってもホームに還してやる。


「プレイ」


球審のコールで試合再開。

……弟はどんなもんかねぇ。うちの4番は、ミート力と長打力に優れている。付け焼刃でどうにかなるようなバッターじゃねえからな。

弟が上半身を大きく捻り、胸につくほど足を上げると……


「あ?」


キャッチャーミットから、バシンと音が鳴る。


「ストライク」


スコアボードのSの横にランプが1つ点灯する。

バッターは立ちすくんだまま動けない。ざわつきが波のように広がっていく。


「なんだ?今……」


投げたのは、弟だよな?だが、あれは、まるで……


「「……まるで不動静真だ」」


添田CEOのつぶやきと自分の声が重なる。

不動大地。不動静真。同じ人物かと思うほど、よく似た投球フォーム。


「不動静真だけじゃなかったのか……」


北仙丈の3年生投手なら、打ち取れる自信があった。

しかし、あの弟は……。不動静真にそっくりそのまま。投球フォームだけじゃねえ。スピードも……

不動静真に匹敵する投手が、もう一人いたとなると……


「監督、どうしたら……」


部員たちの間に、動揺が広がる。そりゃそうだ。

不動静真が復活したようなもんだ。なんなんだよ。おかしいだろ。

兄弟だからって、あんなにそっくりそのままの投球をするなんて……


「やることは変わらん。カット打法でフォアボールを狙う。1点でいい。延長戦になれば、うちが有利だ。ねばりにねばってチャンスをものにする。それがうちの、淵沢工の野球だ。諦めずに、ねばれ!」


添田CEOの叱咤激励にも、部員たちの顔色は冴えることがない。

不動静真さえ退場させれば、勝ち目はあると思って、カット打法を続けてきた。思惑通りに静真をマウンドから追いやることができたっていうのに、また同じようなのが出てきたんだからな。

あんなピッチャー、1人でも奇跡的な存在だというのに、弱小校に2人。想定外過ぎて頭が追い付かねえ。

それでも……


「やるしかねえか」


打ちに行っても、簡単には打てねえだろうな。それなら、カット打法を継続するのが得策。

疲れさせることは無理でも、カット打法を続けながら、フォアボール、甘いボールを狙っていく。

見たところ、静真ほどの制球力はなさそうだ。


「経験の浅い1年では、長期戦には耐えられんだろう。チャンスはまだ、ある」


添田CEOの言葉は、願望に近いが、今はそう思うしかない。

不動兄弟。こんなのが今まで世間に知られずに潜んでいたとはね。

甘かったよ。

弱小校だと甘く見すぎていた。



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