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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

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9回裏    【淵沢工 添田監督視点】

●淵沢工 添田監督



9回表の北仙丈連合の攻撃を、うちのエースがきっちり抑え1点差のまま9回裏に突入。

最後の攻撃。まだ、勝つチャンスはある。

1点。あと1点。同点でもいい。延長になればこちらが有利だ。

不動静真さえ退場させることができれば、私たちが勝つ。



北仙丈・帯那連合の選手たちが守備に就くためグラウンドにでてくる。

その姿に、ざわめきが起こる。


「どういうことだ?」


キャプテンの戸惑いの声に同調するように、ベンチ内が騒がしくなる。

選手たちが訝るのも、当然だ。北仙丈・帯那連合の守備位置が変わった。ここまでは予想通りだ。

だが、マウンドに向かうのは、兄の不動静真でも3年のピッチャーでもなく……

背番号10。弟の不動大地。


「弟もピッチャーなのか?」


記録員に確認をとる。

そんな覚えはなかったのだが。


「いえ、不動大地選手は、ここまで一度も投げたことはないようですね。練習試合も含めて」


対戦相手のことは一通り調べる。それがどんな弱小校であっても。うちの情報網は、信用できる。

ということは……


「弟は投手ではない?」


煙浦が不審げにマウンドの不動大地に視線を向ける。


「苦肉の策ってことか」


キャプテンが安堵の息を吐き出す。

兄の不動静真が投げられなくなったための臨時措置。

部員の少ない弱小校だと、投手経験のない野手が投手を務めることも珍しくない。

投手の数が揃わなければ、少しでも投げられる者が、投手をやる。

しかし、投手というのは一朝一夕でできるものではない。

それなりに投げられる者がいたとしても、ストライクが入らないか、コントロールを意識しすぎて甘い投球になるかだ。

それでも、3年の投手よりは可能性があると踏んだのだろう。

それはいい読みだ。

1、2回戦時の3年生投手では、うちの打線を抑えることはできない。


「まあ、よくやったさ。あれだけの投手がいても、一人では勝てないということだ」


野球は優れた投手一人いれば勝てるというほど、甘くはない。1試合だけなら、ともかく、トーナメントでは人材の豊富さがものをいう。投手の数が、勝利への重要なファクター。


「それが野球だ。遠慮はいらん。打って来い」


弟には気の毒だが、勝ち上がるためには甘さは捨てなくてはな。

勝負の世界に情はいらない。



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