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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

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ポジション変更    【不動静真視点】

●不動静真



カット打法を続ける淵沢工のバッターに、インコース!

……ゴツリと鈍い音が響く。

弾かれたボールは浮き上がりサードが捕って、アウト。


「上手くいった」


回転を変えて、打球がファウルゾーンに飛んでいかんようにした。

カット打法はフェアゾーンに打たせてしまえば、処理は簡単じゃ。うちの内野手の守備なら、アウトに必ずしてくれる。

ベンチに戻っていくバッターが、何度も振り返ってオレを見ていく。


「不思議がっとるのう」


ファウルになるはずが、サードの目の前に飛んでいったんじゃからのう。


「淵沢工のピッチャーの未完成ナックルはええ勉強になった」


未完成の球を面白い使い方しよる。

おかげでカット打法の攻略法を増やせた。


「オレも未完成ナックルなら、投げられるんじゃ」


ゴールデンエイジの間に、名前のついてる球種はすべて投げる練習をした。

揺れが甘い未完成ナックルは、速度の遅い変化球にしかならんけえ使い物にならんと思うとったけどのう。使い方次第でバッターを翻弄できるんじゃのう。

ピッチングには、もっと柔軟な考えが必要だということを勉強させてもらった。


「強い相手と対戦すると、ええ勉強になるもんじゃのぅ」



○゜。○。


8回裏

スリーアウトを取って、ベンチに戻ると、みんなが集まってきた。


「よくやった!静真」

「静真、大丈夫か?肘に痛みはないか?」

「静真兄ちゃん、早く座って、座って」


心配をかけてしまっとるのう。そこまで疲れとらんのじゃけどのぅ。


「スポドリ、どうぞ!」

「肩、冷やしますね」

「兄ちゃん、甘いもん食うか?疲れが取れるけえ。チョコパンと蒸しパンとクリームパン、どれがええ?」


大地はなんでそげなもんベンチに持ってきとるんじゃ。


「静真くん、大丈夫?無理してはダメよ」


千々和先生の労わる視線には、葛藤が見える。交代を言い渡そうか、逡巡しているのだろう。

疲れはそれほどない。

ただ、慣れないナックルもどきは思った以上に、腕に負担を強いてしまっている。

ナックル独特の握り方で手首をひねらずに押し出すように投げるため、いつもと違うところに力が入ってしまっているようだ。

あとのことを考えると、あまり無理はできない。


「あと、1イニングか……」


久慈の噛みしめるようなつぶやきが耳に届く。

久慈にも負担をかけとるからのう。

未完成とはいえナックルもどきの球を捕球するのは、心身ともに疲弊する。

子供の時から、オレの捕手を務めてくれとる久慈だから食らいついてくれとるけど。投げとるもんもどこに行くかわからん、あげな厄介球をぶっつけ本番で捕らされとるんじゃ。限界なのは、久慈もじゃろうのぅ。

スコアボードに目が行く。

1点差でうちが勝っている。次の9回裏で打たれなければ勝ちだ。


「俺が代わろう。静真にこれ以上無理させるよりは、俺が」


鞍掛キャプテンが重責を背負う覚悟で申し出てくれる。

淵沢工は鞍掛キャプテンのピッチングを研究してきとるじゃろうからのぅ。淵沢工の打線を抑えるのは厳しいものになる。1球も甘い球は許されない。

ええ先輩じゃ。キャプテンもそれをわかっとる。わかっていて、申し出てくれている。

全員が覚悟を決めた目になっとる。どんな打球でも捕る覚悟をしてくれとる。部員全員が、オレに無理させるくらいなら、重責も厭わない。

ええ、チームじゃのう。オレの投げるナックルもどきで、内野にはずいぶんと負担をかけとるのにのぅ。

オレも覚悟を決めんとのう。


「先生、ポジションの変更をお願いします」



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