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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

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72/73

打球の行方    【鞍掛秀俊視点】

●鞍掛秀俊



芦崎の打球が一二塁間を抜けて行く。


「いったぁ!」

「行け!行け!行けぇ!」


余裕で1塁セーフ。


「芦崎くん、打率・出塁率ともに8割超えてるのよね。驚異的だわ」

「三振が一つもないんですよね。1打席目からガンガン打ってくれるから頼もしい」


千々和先生とマネージャーが、スコアブックを見ながらはしゃいでいる。

1,2回戦はピッチャーが俺レベルだったから、まあ、打てたのは驚くほどでもないかもしれないが。3回戦は、申し分ない実力のあるピッチャーだった。それでも、芦崎は打ってたからなぁ。


「辰海は当てるのうまいんじゃ。兄ちゃんの球も当てよる」


大地が得意気だ。

静真と大地の球を打てるなら、確かに、どんな球でも打てるよなぁ。


「辰海は目がええだけじゃなく、反射神経もええからのぅ」


静真も嬉しそうだ。


「後ろが打てないと、無駄になっちまうけどなぁ」


バットを持って出ていく凌が、緊張した面持ちでネクスト・バッターズ・サークルに向かう。

責任重大だもんな。3番は。


「ほうじゃのう。久慈と副将と佃煮が打たんことにはのぅ」

「大地ぃ、オレの苗字に『に』はついてねえからなぁ」

「ほうじゃったかのう?」


まったくぅと小さくつぶやく佃の顔には、笑みが浮かんでいる。

リラックスできているな。


「ファウル」


久慈の鋭い打球が、ファウルラインを超えてフェンスに突き刺さる。


「逸れたか。いい感じだったのにな」

「でも、今までより、いい当たりになってる」

「アドバイスが効いたようだな」


久慈は打者としての実力なら佃に引けを取らない。ただ、本番に弱いというか、ここぞという時に、打てなくなってしまう。経験が不足してるせいかもなぁ。練習試合をたくさんしていれば、もっと……


「久慈くんの実力なら打てる!次は絶対に打つ!」


千々和先生の力強い言葉に、全員うなづく。


「久慈ー!落ち着いていこー!」


みんなで声援を送る。

久慈は、実力はあるんだ。打てる!


「打ったぁ!」


鋭い打球が外野まで飛んでいく。

久慈が打って、1塁、2塁。ノーアウト

いける、いける。


「副将!リラックス!」

「凌、見せてやれー」


凌だって、バッティングは相当なもんだ。佃や静真組がおかしいんであって、一般高で凌くらい打てる奴はそうそういない。しかも静真に鍛えられて、急激にうまくなったからな。

淵沢工のピッチャー煙浦が、投げる。


「ボール」


外れた。よし、よし。4球全部外してもいいぞぉ。

煙浦が構える。脱力しているようにも見える 独特のファームはナックルボーラーだからなのだろう。

飛んできた球を、凌が打つ。1,2塁間、セカンドの正面。2塁にベースカバーに入ったショートに送球。久慈は残念ながら、アウト。

ショートが1塁に送球!……和泉もアウト。

あ~あ、当たりはよかったのになぁ、運が悪かった。

でも、芦崎はセーフ。芦崎が3塁まで進んだ。ツーアウト、3塁。


「還ってこい!芦崎!」


まだまだ、チャンスだ。みんないい当たりを出してる。

次の打者は、佃。


「佃が打ってくれたら、芦崎を還せる」

「大丈夫です!佃先輩ならこのチャンスを絶対に活かしてくれます!」


断言する桧山に、みんなの視線が佃に集中する。

佃ならやってくれる。信じてるぞ。佃!


「佃ー!頼りにしてるぞー!」


バッターボックスに立つ姿は、頼もしい。弱い俺たちを2年間、引っ張ってきたのは佃だ。

このチャンス、きっと活かしてくれる。

煙浦が投げる。

ガキーンといい音が鳴る。


「抜けた!」


芦崎が走り出す。

三遊間を抜けたが、レフトがすぐに打球に追いつく。レフトが捕って、バックホーム。

芦崎がホームに滑り込む。

球審の両腕を左右に大きく広がる。


「セーフ!」

「よっしゃああぁぁぁ、1点んんーー!!」


1点先取!

やってくれた!!


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