表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
71/73

萎縮   【不動静真視点】

●不動静真



北仙丈・帯那連合 0-0 淵沢工業高等学校


「膠着状態だな」


隣に座った佃先輩が、汗を拭う。今日は、快晴で日差しが強く、突き刺すような暑さだ。

立っているだけでも体力が削がれていく。


「淵沢工業の打線は、どんな感じなんだ?」

「選球眼のあるバッターが多いですね。長打を狙っているのは3、4番くらいで、あとのバッターは、出塁率重視といった感じです」

「そりゃあ、面倒くせえな」


出塁率重視。長打を狙わず、手堅く塁に出ることを重視した戦略じゃけえ、気が抜けない。


「まあ、静真の悪癖さえでなければ、守りは大丈夫だろうけど」


和泉副将、意外に根に持つタイプじゃの。

今日は打たせて取るピッチングはしていない。

淵沢工業のような出塁率重視のチームは、塁に出すと厄介そうじゃけえのぉ。打撃も走塁も守備の隙をつくつもりじゃろ。ランナーを還す術を知っとるチームじゃけえ、経験不足のオレたちでは、手玉に取られかねん。

……できるなら、走者を刺す経験を積みたいところではあるけどのぅ。こちらの点が入らんことには、冒険はできん。


「点を取らなけりゃあ勝てないんだよなぁ。あのピッチャーから」


佃先輩のボヤキが耳に届く。


「ナックルかぁ。どうすればいいんだろ?」


辰海は近づく打順にふぅっと息を吐く。

全打席、打っている辰海にホームベースを踏ませてやりたいが……


「静真は敬遠されちまうからなぁ。俺たちが打たねえと」


佃先輩も打ってはいるが、打球の飛んでいく方向が悪く、守備に阻まれ塁を踏むことができていない。

オレは全打席、申告敬遠で歩かされてしまっとるからのぉ。

この調子だと、満塁でもないかぎり、まともに勝負はしてくれん気がする。そこまで警戒せんでものぉ。


「未完成とはいえ、ナックルなんて打ち方わかんねえのにどうしたら」


久慈が天を仰ぐような仕草をしちょる。


「……そんな弱気にならんでも。桧山のように打てばええんじゃ」

「え?オレ?」

「そうじゃ。桧山が手本を見せてくれた。思い切り振ればヒットになる。変化が少ないならナックルと思わずに、思いっきり振ったらええんじゃ」


空振りになってもええ。


「久慈も佃先輩も辰海も見すぎなんじゃ。ナックルの亡霊に惑わされて振り切れとらん。芯から外れようが思いっきり振り切ったらええんじゃ。あれはナックルボールじゃない。チェンジアップじゃ」


うちの上位打線が苦戦して、下位打線がいい当たりを出しているのには理由がある。

ナックルボールを見極める目を持っているかどうかだ。

辰海、久慈、佃先輩は目がいい。軌道を読む目を持ち、バットコントロールにも長けている。それがアダになっとるんじゃ。ナックルボールに対応しようとして、いつものようなバッティングができていない。

皮肉なことに、微妙な変化に気づかん桧山たちは、チェンジアップを打つ感覚でバットを振る。芯で捉えられんでも、当たりさえすれば、どうにかなる。

それが、煙浦の攻略法。変化が少ないなら、ナックルと思わなければええんじゃ。


「あー、耳が痛え。芯をとらえることに躍起になって、縮こまってたよなぁ」

「ン~、言われてみれば、そんな気がする」

「うまく打とうとしすぎってことか。打ち上げようが、ゴロになろうが打てばいいんだよな。打てばチャンスはある!よっしゃ!次はホームラン打つ気で振ってやる!」


久慈も佃先輩もパワーあるけえ、多少、芯から外れようが強引に振り切れば、簡単に捕られるような打球にはならん。辰海はすでに打つことができとる。バットの感覚に戸惑っとるだけじゃ。

経験不足のオレたちには、未完成とはいえナックルボールを確実に打つのは厳しいが、見慣れているチェンジアップなら打てる。

じゃけえ、チェンジアップだと思って打てばええ。あとは運任せ。


「今日の相手は力でねじ伏せる。そういう気概が必要じゃ」


煙浦は、強豪校キラーの投手といえるじゃろうのう。バッターが優秀であればあるほど惑わされる。

そういう相手には、気合と根性。それでええ。


「ワシは三人と違おて、振り切っとる」


大地が得意気じゃの。


「大地はまずバットにボールを当てないとなぁ」


大地の軽口に久慈が意趣返ししとる。


「久慈もろくに当てとらんじゃろ」


……大地にやり返されとる。久慈に相当ダメージが入ったのう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ