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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

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雨     【桜宮八尋視点】

●桜宮 八尋


雨。雨。雨。ここのところ雨が続いてるよなぁ。梅雨だから仕方ないけどな。

まあ、音研部にとっては、雨も乙なもんだ。

静かな旧校舎が、雨音で満たされるのも悪くない。


「今日は、ちょっと肌寒いよなぁ。コーヒーでも淹れて」

「ワシはミルクたっぷりがええのぅ」


がらりとドアが開いて大地が入ってくる。

何か食べようとするとやってくるけど、どんな嗅覚してんだよ。いや、聴覚?どっちにしろ怖えぇよ。


「残りもんのパンくらいしかねえけどいいか?」

「充分じゃ。いただくとしようかの」


棗は家がパン屋ってこともあって、残り物をよく持ってくるが、ほぼ大地の胃袋に収まっている。


「大地ぃ、見たぞぉ」

「なにをじゃ」


瓜生の顔が、ニヤついたものになっている。


「野球部のかわいいマネージャーにストレッチ手伝ってもらってただろ?やるねぇ」

「大地にも春が来たかぁ」


パンを頬張る大地を揶揄う。こういうチャンスは滅多にないからな。


「春ならとうに過ぎたじゃろ」

「とぼけちゃってぇ。あんなかわいい女の子がマネージャーなんて贅沢だよなぁ」


美少女マネージャーと仲がいいなんて、けしからんことになってんだから揶揄わないとな!


「マネージャーは男じゃ」

「ん?男?」


……男?


「……おう、そうかぁ、……うん、そうかぁ」


瓜生があからさまに、がっくりと肩を落とす。あのマネージャー、瓜生の好みドンピシャだったもんなぁ。

美少女にしか見えなかったけど、男だったのか。

野球部、さらに面白いことになってんな。


「メンバー揃ったんだろ?地方予選、勝てそうか?」


あののんびりした野球部じゃあ、まあ、1回戦を勝てるかどうかだろうけど。


「地方予選?」

「夏の大会だよ。甲子園目指す」

「ほういえば、そげなもんがあったのぅ」


冗談じゃなく、大地、本当に忘れてたな?


「のんきすぎるだろ」


高校球児にとって、夏の大会は特別なもんじゃないのか?

カフェオレを堪能している大地からは全く緊張感を感じることができない。


「まあ、本気で甲子園を目指してるわけじゃないなら、そういう感じになるのか」

「エンジョイ勢ってやつだよな。野球部は」


瓜生と棗が、のんびりとした空気を醸し出しながらコーヒーを飲む。

まあ、そうだよな。本気で野球がやりたければ、強豪校に行くだろう。

うちのようにまともな環境が整っていない学校の野球部に入ったってことは、そこまで本気で野球をやっているわけじゃあないんだろう。大地も大地の兄ちゃんも体格がいいし本気でやれば、結構いいとこまでいけそうなのにな。もったいねえなぁ。

音研部でのんべんだらりと過ごしてるオレたちが、言えることじゃねえけど。


「ほうじゃのぅ。ワシは楽しいことしかしたくないのぅ」

「野球部、常に楽しそうだもんな」


野球以外のことしてる時間が多いんだよな。バスケにサッカーに鬼ごっこみたいなゲーム……

ほとんど遊びのようなことしてる野球部は、そりゃ楽しいよな。


「失礼しまーす」


扉が開いて、野球部の1年2人が顔を出す。


「大地ー、卓球やるから来いよー」

「おう、ええのう」


卓球?相変わらずだなぁ。


「音研部の皆さんもどうですか?卓球かピンポンキャッチいっしょにやりませんか?」


野球部1年がオレたちを遊びに誘う。


「ピンポンキャッチ?」

「複数のピンポン玉を投げ合ってキャッチする遊びです。Rって書いてある球は右手でキャッチして、Lは左手。3人以上でやると結構面白いんですよ」


雨の日の遊びとしては面白そうだ。


「面白そうだな。やるやる」

「しゃーねえなぁ」


瓜生がやる気みたいだし、音研部も参加するか。

部室を出て、野球部が遊んでいるところにお邪魔するが……


……あれ?なんか想像してたのと違う。


「投げるスピード速すぎねえ?」


ピンポン玉の文字なんて見えねえよ。卓球のほうもプロかってくらいのスピードでやってる。

これだから体育会系は……


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