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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

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48/50

候補     【芦崎辰海視点】

●芦崎辰海


教室で大地と昼食をとっていると乃生が弁当をもって合流してきた。

乃生が感心した目を、大地に向ける。


「……大地がデカい理由、よくわかるわ。そんだけ食べてたらデカくなるよなぁ」

「これでも昼は少なめじゃ。持ってくるの面倒じゃけえのぅ」

「補食にデカいおにぎりも食べてるから、大地のリュックの中身ほぼ食べもんだもんな」


大地の弁当は、小ぶりの鍋みたいな大きさの2つの保温ランチジャー。それとおにぎりをいくつか。これだけ食って、横に増えず背と筋肉が増えていくんだから、優秀な肉体だよな。


「一応、部活に入ってないクラスメイトにマネージャー頼んでみたけど、やっぱり無理だった」


乃生の報告に残念な気持ちはわかない。まあ、そうなるのはわかってた。


「だよなぁ。部員確保でさえ苦労してんのに、マネージャーなんてそうそう」

「部活に入ってなくて、運動部のマネージャーになってくれそうって難しいよなぁ」


静真兄ちゃん目当てじゃなくて、マネージャーになってくれそうな人材というのは、そういない。

運動好きならマネージャーより運動部に入って汗水流したいだろうし、運動嫌いならそもそも運動部に興味がない。

スポーツは好きだけど自分でやるより観戦したいタイプで世話好き。そんな人材、どう探せば。


「大地くうぅぅぅん、柔道の授業のあと、更衣室に帯を忘れていったでしょ?」


ゆるふわボブの一見かわいらしい女子が、大地に駆け寄っていく。


「おう、すまんの」


帯を受け取った大地が、首をかしげる。


「……ん?なんで女子が男子更衣室に入っちょるんじゃ?」

「ボクも男だもん。いっしょに柔道の授業を受けてたの、覚えてない?」

「覚えとらん」

「うぅ、じゃあ、今から覚えて。隣のクラスの酒盛千秋!ね?」


かわいらしく大地にアピールする酒盛に、大地は怪訝な顔のままだ。


「タマついちょるんかついちょらんのかわからん奴じゃのぉ」

「やだぁ、大地くんのえっちぃ」

「何がえっちなんじゃ」


すごい組み合わせだな。

隣のクラスの酒盛千秋。美少女に見えるけど男なのだとか。

男の中の男って感じの大地と並んでると、とても同じ性別とは思えない。


「あ!大地くん、肩のとこ、ほつれてる。ボクが繕ってあげようか?」


酒盛が大地の肩のところをちょいちょいと指で示す。

確かにわずかだけどほつれがある。よく気づくなぁ。


「ほいじゃぁ、頼むかのぉ」


大地が立ち上がり、スウェットをたくし上げる。


「きゃ!こんなとこで脱ぐなんて大胆ん……、なんだぁ、アンダーシャツ着てたのぉ。残念」


酒盛はどういう目で大地を見てるんだ?

まあ、深く追及すると怖いから考えるのはやめとくけど。

自前っぽい裁縫道具を持ってきた酒盛が、器用に大地のスウェットを縫いだす。


「大地くん、ボク、こういうの得意だから、いつでも言ってね」

「ほうかの、じゃったら、野球部のユニフォームの繕いもやってくれんか。全員分」

「全員分?大地くん、容赦なさすぎ!でも、そんなとこもいいかもしれない。ふふ、仕方ないなぁ。やってあげる」


酒盛のあのノリを、まったく意に介さない大地もすげえ。

さりげなく全員分押し付ける大地もアレだけど、引き受ける酒盛もわけわかんねえな。


「うちの野球部にあってるかもしれない」


ぽつりとつぶやいた乃生の目は、酒盛を映してる。

あってる?うちの野球部にあってるってことか?マネージャーにってことか。……酒盛が野球部のマネージャーかぁ。

……いいかもしんない。


「な!酒盛!部活入ってなかったらさ、野球部のマネージャーになってくんねえ?」


善は急げ。ダメもとでも言ってみるだけ言ってみねえとな!


「野球部のマネージャー?ボクが?……んん~、マネージャーかぁ。興味ないわけじゃないけど。大変そうだし。どうしようかなぁ」


お?わりと好感触?


「大地くんがどうしてもっていうならぁ、やってもいいかなぁ」


酒盛が背中を押してほしそうに大地をチラチラ見る。だが、大地が気づくはずもなく……


「そげんことは自分で決めるもんじゃろ」


そっけない返し。大地ぃ、興味なくても、もう少し言いようが!


「いやぁん!大地くん、男前!もう、マネージャーになっちゃうぅ!」


あれでなってくれるんだ……。あれでいいんだ。

わっかんねえなぁ。


「キャラ濃くなりすぎたかな。うちの野球部」


今さら、遅いぞ。乃生ぇ。


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