第六話 僕の社会的信用
婚活パーティーにいくつか申し込んでから、僕はいつもの定食屋へ向かった。
歩いているうちに、どうして婚活パーティーにまで申し込んだのか、わからなくなってきた。
離婚したのは最近だが、別居してからは半年ほどたっている。一人で食事をし、一人で眠る生活にも慣れていた。
だからといって、今すぐ積極的に恋愛をしたいわけではない。もう一度結婚したいのかと聞かれても、そうだとは答えられなかった。
だったら、しばらく星のことなど気にせず、過ごせばいい。
ただ、レビューを見るのは、恋愛相手を探している女性だけではない。
仕事で知り合った人や取引先が、僕がどんな人間なのか知ろうとして、ページを開くこともあるだろう。
仕事と恋愛は別だ。それでも、打ち合わせのあとの雑談で、相手が何を考えているのか気になってしまう。
こいつは理屈で女性を叩きのめす男なのだな、とか。感じよく話しているつもりだろうが、実際に会った女性からは星三つだったのだな、とか。
そう思われているという根拠はない。ただ、恋愛を休んだところで、あの二件が消えるわけではなかった。
しかし、五分かそこら話した相手から星をもらえば、その問題は解決するのだろうか。
元妻とは、交際から数えて十年を一緒に過ごした。その相手からつけられた星は、一つだった。
数分話した女性から五つもらえば、平均は上がる。だが、それで僕自身が、一緒にいて楽しい男になるわけではない。
申し込んだばかりのパーティーが、無性にばかばかしく思えてきた。
定食屋に着いて、のれんをくぐると、彼女がいつもの席に座っていた。
「こんにちは」
僕に気づくと、笑顔で挨拶をしてくれた。顔を合わせるのは、洋食屋で一緒に食事をして以来だった。
僕も、なるべく感じよく挨拶を返した。
その笑顔を見て、レビューを読んだのだろうかと気になった。
元妻の投稿だけを読んだのか、新しい星三つまで見たのか。そもそも、まだ何も読んでいないのか。
笑顔で声をかけてくれたのだから、悪く受け取る必要はないはずだった。
それでも、まだ何も読んでいないことを願った。
一緒に食事をした仲ではあるが、近くの席に座るのはためらわれた。近くに座りたいと思うくらいでも、好意に数えられるのだろうか。
『一度食事をしただけで、隣に座ってくるようになりました』
そんなことを書かれてはたまらなかった。
僕は、いつもの席に座った。
何も話さないのも変だと思い、注文をすませてから声をかけた。
「今日は暑いですね」
「ですね。朝は寒かったので、上着を着てきちゃいました」
彼女は笑顔で、隣の椅子に置いた上着を見た。
「僕のレビューって、読みました?」
彼女がこちらを見た。
天気の話を、もう少し続けるべきだったかもしれない。




