第五話 戦略的星取り
女性なら、知っている男性の誰にでもレビューを書けるわけではない。
男性の側に、その女性と恋愛や性的な関係を持つつもりがあり、女性も、そのつもりで近づいてきたと受け取っている必要がある。
親切にされたのを好意だと思いこんだだけでは書けない。反対に、男性がどれだけ好意を込めていても、女性に伝わっていなければ書けない。
ただし、誘いに応じる必要はない。
口説かれたとわかれば、その場で断った女性にも、レビューを書く資格が生まれる。
つきあおうと言ったかどうかは関係ない。遊びのつもりだった、そんな約束はしていない、という説明も通用しない。
そのあたりは、怨念が見抜くらしい。
男の本心を見抜く力が、生きているうちにあればよかったのに、と友人が言っていた。僕もそう思うが、それを怨念に伝える窓口は見つかっていない。
一度書けるようになれば、あとから星や本文を変えることもできる。
僕についた星三つも、次に会えば四つになるかもしれない。
合コンで知り合った彼女には、その後、二度ほど食事の誘いを送った。
どちらもそっけなく断られ、別の日を提案されることもなかった。
三度目に挑戦するほど、僕も鈍感なつもりはなかった。
どうやら彼女の中では、僕は星三つの男で確定してしまったらしい。
だったら、いっそレビューを書いてもらいたくなかった。
星は一つでも、レビューが一件しかないことには、まだ好感を持ってもらえる余地があった。実際、あの合コンでは、ひとりの女性と長くつきあったことを誠実だと受け取ってもらえた。
ところが、そこに無難な男という評価が一件加わった。
長くつきあえば星一つ。一晩だけなら星三つ。
前よりよくなったとは、どうしても思えなかった。
かといって、星を四つか五つにしてくれとは頼みづらい。「後日、星を三つから五つに変えてほしいと頼まれました」などと追記されては、沽券にかかわる。
僕はため息をついた。
こんなことで悩んでいる男を、これまでは腹の底で笑っていた。
友人は元カノに土下座をして、星一つを三つに変えてもらっていた。
僕は浮気こそしていないが、似たような立場になった今ならわかる。きっと、あれは勇気ある行動だったのだ。
もっと彼らに共感するべきだった。
とはいえ、僕には土下座をする勇気はなかった。とくに元妻とは、もう話もしたくなかった。
今ある評価を変えてほしいと頼めないなら、新しく高い評価をもらうしかない。
女性に片っ端から声をかける方法もあるが、増えるのは星五つとは限らない。三つならまだいい。二つでは上がらないし、一つなら今より下がってしまう。
僕は恋愛の達人ではない。ひとりの女性と長くつきあった経験はあるが、その結果については、すでに詳しいレビューが残されている。
星を増やす方法について調べると、すでに多くの人が知恵を絞っていた。
解説記事もあれば、体験談もある。人工知能に相談すると、いくつもの方法を挙げてくれた。
金で星を買うことも、不可能ではない。
投稿する女性まで、こちらを好きになる必要はない。そのため、キャバクラやガールズバーを利用する方法は、いくつもの記事で紹介されていた。
気になる女性を口説き、飲み物を頼み、楽しく過ごす。相手にも、客を喜ばせて次につなげたいという事情がある。
ただし、コメントの内容までは保証されなかった。
ある男性は、何度か店に通った末、念願の星五つをもらっていた。
「いつも指名ありがとうございます。またお待ちしています♡」
そう書かれた画面が、失敗談として載っていた。
評価は高い。しかし、どういうところで得た評価なのかも、よく伝わる文章だった。もっと控えめな書き方でも、見る人が見ればわかるらしい。
できれば、普通に知り合った女性から、自然な文章で高く評価されたい。
記事を読み進めるうちに、婚活パーティーを勧めるものが目に入った。
一度の参加で、十数人の女性と話せるという。一人ずつ会う約束をして、店を探す手間が省ける。気になる女性に好意を示しても、場違いにはならない。
もちろん、僕自身が相手に関心を持ち、それが伝わる必要はある。それでも、一度に何人もの女性と知り合えるなら、機会は多いはずだった。
席を移りながら、全員と数分ずつ話す。
数分なら、感じよく話せる気がした。
元妻に書かれたような話し合いをする時間はないし、相談事に解決策を出してしまう場面も、おそらくない。相手の話を聞き、笑顔で答え、また話したいと伝える。
長く一緒に過ごすほど、欠点を知られる機会は増える。
だったら、まだ知られていないうちに、評価してもらえばいいのではないか。
僕は近場の婚活パーティーを探し、開催日と参加費を確認した。




