07
「あなた…近々"運命の出会い"をするわ。」
座った瞬間、机の上に指を組んだシスターがそう告げた。
(木の棒も手相も見ないんかい。)
思わず心の中で突っ込んでしまった。
告げられた言葉よりもそっちの方が気になった。
「その木の棒とか、手相とか見ないんですか?」
聞いてしまう程にはかなり気になっていた。
「あっ、これ?なんか雰囲気出るでしょ?見せかけだから基本使わないのよ。」
(まさかの見せかけ。)
シスターは「ゴホン」と仕切り直しの咳払いをする。
「じゃあ続けるわね。」
(もう帰ろうかな…)
「その出会った人から、弓で射られます。」
(死ぬじゃん。)
突然の死亡宣言に流石に困惑する。
(俺、死ぬんか…
しかもこのご時世に弓で…
疲れた身体に精神的ボディブローが凄いわあ…)
困惑した表情のままシスター見れば、シスターの顔に悲観した表情はなかった。
(…ん?あっ、そうか!弓ってキューピッドの弓ってことか!始めに運命の出会いって言ってたしな。)
「キューピッドの弓みたいな…?」
「弓道で使うようなやつね。」
(死ぬな、これ。
確実に死ぬわ。)
明るい街の中、ここだけが切り取られた様に暗く重い空気が漂っていた。
(てか、これ占いなのか?占いってこういうのだっけ?なんか違くない?仮に占いだったとしてこのシスターの占い当たるのか?仮にこのシスターが凄い占い師だとして占いって当たるもナンチャラ当たらぬもナンチャラって言うよ?仮にナンチャラナンチャラだとして…つまり自分次第じゃん!?)
公太の中で答えが出たところで、やっと落ち着いて物事を考えられるようになってきた。
(疲れ過ぎて頭が働いてなかったが、このシスター適当に言ってるだけだろ。)
「それと、ラッキーアイテムは翡翠のボタンよ!」
(翡翠って…小さくても何百万するって昔母さんが言ってたな…)
「あなたとっても運が良いわ!今ここにたまたま翡翠のボタンがあるの!出会えた記念の大特価!3千円で売っちゃうわ!」
(新手の詐欺だったか…)
「…帰ります。」
「あー!嘘嘘!これはお兄さんとの出会いの記念に上げようと思ってたの!占った人皆に上げてるのよ!」
スッと席を立った俺の袖を掴み、シスターは必死に引き留めた。




