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「営業部二課所属、犬守公太」
備品室入口に設置してあるディスプレイに"声帯認証承認"の文字が表示され、待機画面へと切り替わった。
(マジ疲れた…こんな暑い日に外回りとか死ぬわ…)
『端末機の返却を完了しました。
只今、経理部杉様より帰社の返答を承っております。返答致しますか?』
音声ナビが流れると同時にディスプレイに選択肢が表示され指示を促してくる。
(杉から?なんだろ?
まあいいや、帰ったのが分かれば連絡してくるだろ。)
「ああ、返答しといてくれ。」
『承知致しました。』
(先ずは、腹に何か入れるのが先だ。
昼飯食べそこねて水しか飲んでねー
確か、デスクの中に栄養ゼリー入ってたな。あれ飲みながら事務処理するか。)
◇◇◇
「只今戻りましたー」
営業部があるフロアに入ると至る所から「おかえりー」「お疲れ様です」と声が掛かるが、人はまばらで空席が目立っている。
(皆、外回りか。)
空席をいくつか通り過ぎ自分のデスクに戻ると、後ろの席に座る後輩の関がイスをクルリと回して振り替えった。
「先輩、お帰りなさい。」
「ただいまー」
関の机には、ドリンクを買った際に付いてくるオマケの動物のフィギュアがいくつも置かれている。
片側に寄せられ積み重なった書類も相まって乱雑さが目立つ。
が、そのまま自分のデスクへと視線を移せば、更に酷い。
中央に5cm程の戦隊ヒーローのフィギュアが5つ並び、飲み終わった栄養ドリンクの容器が3本、左右には今にも崩れてきそうな書類が積み上がり中々カオスな机となっている。
これでは関の方がまだ整理されていると言えよう。
いつもはここまで酷くないのだが、ここ最近仕事量がぐんと増えて片付けに手が回らなくなっていた。
(事務処理片付いたらちょっと整理するか…)
イスに鞄を置き、公太は辺りを見回す。
「大橋さんは?」
「休憩しに行ってます。これです。」
関は煙草を吸うジェスチャーをする。
「またかー」
呆れた顔をする公太に関は身を寄せ声を潜める。
「この間、喫煙ルームで紙の煙草吸って自慢してたらしいですよ。」
「マジかよー」
(紙煙草は俺らみたいな一般人がどうやったって手に入れられる代物ではない。
賄賂じゃないだろうな…)
「きっと営業先の賄賂ですよ。」
(やっぱそう思うよなー)
「いや、でもなー、賄賂を堂々と見せびらかすかー?」
「大橋さんならやりますよ。」
公太の頭に大橋の今までの所業がフラッシュバックする。
(あの人ならあり得なくはない。)
「ああー…やるかもな…
変なことにならないと良いんだがな…」




