02
「誰が転校なんてさせるか!」
「そうよそうよ。」
「いや、したくても出来ないから。特待生でもないのに一市民が貴族が占める一高なんかに転校出来ないから。」
憤慨する八千代とユイにモカが静かに言った。
「それはそうだけど!」
「そうなんだけど!気持ちの問題だから!」
「二人ともありがとう。その気持ちだけで嬉しいわ。」
まだ気持ちが収まらない二人に今度は響が言う。
「「ヒビキ~」」
「…」
八千代とユイはヒビキに抱きつく。
それを感情の読めない顔で少し離れた所からモカが見つめている。
「何やってんだお前ら。」
もじゃもじゃの黒髪、太縁眼鏡、グリーンのジャージ姿の男性がファイルを片手にモカの隣に並んだ。
「竹元先生。見て分かりませんか?青春ですよ。」
「これが青春かー、甘酢っぱさが1mmもないな。先生、お前らが羨ましいよ。」
「先生は青春してこなかったんですか?」
「あれを青春と呼んで良いのか分からんが…酸っぱすぎて思い出す度溶けちまうから思い出さないようにしてる。」
「青春って、時に凶器ですね。」
「お前は時に鋭いことを言うね。」
「どうも。」
「そこの3人、程ほどにして帰れよー」
竹元は立ち去りながら声を掛ける。
「「「はーい!」」」
3人が腕を上げ手を降ると、竹元は胸の前で手を振り返した。
「タケッチ、なんであんな高貴な手の振り方してんの?」
「肩上がんないんだって。」
「あー言うの何て言うんだっけ?」
「六十肩。」
「なんだっけ?」と悩む3人に合流したモカが答えを持ってきた。
「「「ああ、それ!」」」
「でも、先生まだ四十代だよ?」
(どういう経緯だったかは忘れたが、以前授業で先生が言っていた。)
「じゃあ四十肩だ。」
「四十肩って、何百年前の人間だよ。」
ユイの言葉に八千代が突っ込み、4人は声を上げて笑った。
「タケッチ、早く病院行って治してもらえば良いのに。」
「忙しくて病院も行けないんだって。」
(今の医療で治せない病気なんて片手で数えられるくらいしかない。それでもお金やら色んな事情で治せない人はいっぱいいるらしい。)
「いつの時代も先生って大変だねー」
◇◇◇
八千代とユイと分かれ、モカと響は電動自転車を押しながら運転禁止の住宅街を並んで歩いていた。
平日は学生で賑わう道だが、今日は休校日であり、ここが運転禁止道路の為今しがた老婦人とすれ違ったくらいで人の往来がほぼなくとても静かだった。
響は足を止めるとリュックを開け、中に話し掛けた。
「シリウス、出ておいで。」
中から出てきた物が響の腕を伝い肩へと乗った。




