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「サーベル部門3位おめでとー!
響、凄く格好良かったよ!」
「ありがとう。」
格好良いと言われるのは素直に嬉しく、はにかみながらお礼を言うと、ユイに続き八千代とモカからも「おめでとう」と声を掛けられた。
(3人は休校日にもかかわらず騎士部の練習試合に応援に来てくれた。本当ありがたい。)
瑠璃色のセーラー服を着た4人が並び、首都第三高校の正門へと歩いていく。
道の両側に植えられた桜の花は既に散り、青々とした葉が幾重にも重なっている。
「これを皮切りにヒータンの凄さが皆にも浸透して行くと思うと…クククッ、嬉しさで震えるわ。」
八千代は悪い顔で笑い、肩まである黒髪のポニーテールを小刻みに揺らしている。
「八千代、大げさ。加納先輩が出てたら私なんて3位に入れてないんだから。」
「ヒータンの謙遜は置いとくとして…」
「置いとくなあ。」
八千代は響の言葉を無視しつつ話を続けた。
「加納先輩も大変だよね。中継ステーションのテロでシャトルが遅延してなかったら間に合ったのに。」
モカが紅柄色の緩くカールしたショートの髪を揺らし大きく頷くと口を開いた。
「昨日のHM観戦の抽選に当たったばかりにね。
終了時間も遅いから朝一で帰って来るしかなかったんだろうけど、次の日に備えて行かない選択肢はなかったのかしらね。」
その言葉に八千代は直ぐ様反応する。
「いやいや、当たったら行くでしょ?」
「「「いくー」」」
(疑問を投げかけたモカでさえ行くと言うHM、私はどちらかと言えば競技者として出たい。
HMが行われているのは、八公が一つ『緑の公爵』の領土。
領土と言うには大き過ぎるそこは、緑の公爵家が作った月の32分の1の大きさの人工衛星で、ありとあらゆる娯楽があるといわれている。
これが、別名『娯楽の公爵』と言われる所以だ。)
「そう言えば、観客席にスカウト来てたね。」
「そうなの!?気付かなかったー」
端を歩いていたユイが、驚いた顔を隣の八千代に向ける。その勢いで、腰まである長い桃色の髪が肩からサラサラと流れ落ちた。
「ああ、一高狙いのね。」
(私達三高は端から眼中にはない。それを裏付けるように、こちら側の応援席には関係者しか座っていなかった。)
「だから一高の人達、名乗りに気合い入ってたんだね。」
八千代は納得したように数回頷いた。
「公式試合ならあのくらいは珍しくないけど、
練習試合で三高相手にやるのはちょっとビックリした…いつも軽い感じの名乗りだったからさ。」
「スカウトにそんなとこアピールしてどうすんだか。格好良さもなかったよなー」
「でもでも、フェンシング決勝の佐藤先輩とアーバルさんの名乗りは格好良かったよね!」
呆れる八千代に、ユイは両手を握りしめ興奮して言った。
「確かに!あれは別格だよね。もう、内なる気品と言うか気迫というか、ぞくぞくする程伝わってきたわー」
モカは目を伏せ、静かに口を開いた。
「あの二人はいずれ騎士になるでしょうね。」
「騎士かあ…」
八千代とユイは目を合わせ、元気なく言葉を吐いた響にぐいっと近付く。
「響もあれだけ強いんだから、騎士のスカウト来ちゃうかもよ!」
「そうだよ!いずれはヒータンも騎士にー」
「なんのご冗談かしら。」
悪意ある声に4人は後ろを振り返った。
八千代は苦虫を噛み潰した様な嫌な顔をする。
「げっ、一高の…」
そこにいたのは一高のジュリアだった。
腰まである赤に近いオレンジ色の髪は、立てに巻かれそれだけでとてもゴージャスな雰囲気を醸し出している。
ふんわりとしたボリュームのある膝下丈スカートの白い制服、手には小さな青い宝石が一つ嵌め込まれた扇子を持っているが、扇子自体青いので宝石がついているのは良く見ないと判別出来ず、気付いている者は殆んどいなかった。
八千代の声は小さかったが、ジュリアには聞こえていた。それでもジュリアは眉一つ動かさず表情を変えなかった。
「練習試合のサーベル3位になったくらいで、騎士になれるとでもお思いかしら?」
バカにしたように笑う姿に、八千代は今にも噛みつきそうな犬のように逆立っている。
「次は分からないですよ。うちの響は強いので、貴方に勝って1位になるかも。」
八千代の言葉に、ジュリアの右眉がピクリと動いた。しかし、それは良く見ていないと分からない程の反応で、モカしか気付いていなかった。
「そういうことを言っているのではありませんわ。
騎士は、ハイネスに乗ってこそ騎士。
ハイネスに乗らない者を騎士とは言えませんわ。
百歩譲って、サーベルだけでお話ししたとしても、今の段階で私にすら勝てない方が…
フフッ、笑わせて下さいますこと。」
「くぅ…」
八千代は歯を噛み締めて悔しがっていたが、響はそれに反して冷静だった。
(ジュリア、最近やたらと絡んでくるんだよなー
そういうお年頃か?いや、同い年だったわ。)
「ジュリア、その言い方は三高の方に失礼だよ。」
「葵。」
後ろから現れ横に立った葵をジュリアは見上げた。
髪は白縹色のベリーショート、透き通った肌、女性だが男性用の一高の制服を着ている。
響は以前噂で、首都第一~五高全てに葵のファンクラブがあると聞いたことがあり、話半分で疑っていたが、始めて見かけた日に「この美しさならありえる」と思った。
「三高にはハイネスを導入出来る予算がないんだからさ。」
「そうでしたわね。学生では一高か二高でなければハイネスには乗れませんでしたわ。フフフ、お可愛そう。」
「ジュリア。」
葵は微笑んだままジュリアをたしなめる。
「もし、貴方がハイネスに乗れたとしても、
私、ハイネスでも負けませんわ。
でも、貴方がハイネスに乗れなければそれを証明して差し上げることも出来ませんわね。残念ですわ。」
「余裕ぶってられるのも今のうちなんだから!
勝つのは響なんだから!ハイネスさえあれば貴方なんかに負けないんだから!」
「まあ、フフフ。どれだけ吠えようと虚しいだけですわね。」
「はあ!?」
「悔しかったらハイネスがある一高に転校してくることね。いつでもお相手して差し上げましてよ。首を長くして楽しみにお待ちしておりますわ。」
「ジュリア、葵、そろそろ時間だ。」
いつ現れたのか、振り返ると一高の制服を着た褐色の肌の男子生徒が立っていた。
「あら、もうそんな時間でしたか。では皆さん、御機嫌よう。」
ジュリアは高笑いをしながら去っていく。
その後ろに葵と男子生徒が続いた。




