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(美少女って、こういう子のことを言うんだろうなー)
日の出前の澄んだ空を思わせる濃紺の大きな瞳、すっと通った鼻筋、日の光に照らされキラキラと輝くボブの髪は、満天の星を覆う空の如く深い紺青だ。
白のハイネックに瑠璃色のセーラー服、胸元には大きな白いリボンが揺れ、肩にはフルメタル仕様動物型補助機械が乗り、主人と同じくこちらを見ていた。
「おじさん、酷い顔してるよ。」
(お、おじ…)
フラフラの身体に、ボディブローを入れられたと錯覚する程の衝撃が走る。
「早く水分補給した方が良いよ。」
女の子はそれだけ言うと、後ろに停めていた電動自転車に乗り、工業エリアへと入っていく。
「えっ!ちょっ!」
電動自転車は徐々にスピードを上げ、女の子の姿が小さくなっていく。
鞄の中に突っ込んでいた手に硬貨の感触がして、取り出して見れば探していた10円だった。それを掴み手を上げ大きく降る。
「待って!お金!返すー!」
声が届いていないのか、後ろを振り返ることなく走っていく。
自販機のボタンを押し、出てきた水のボトルを手にして公太は女の子の後を追いかけた。
◇◇◇
「お水のお代わりはいかがですか?」
月へ向かうシャトルの中、客室乗務員の女性が水の入ったピッチャーを手に、エコノミー席を順に回っている。
声を掛けられたプラチナブロンドの高齢男性は、にこりと深緑の瞳を細め微笑んだ。
「ああ、ありがとう。お願いするよ。」
客室乗務員は、サイドテーブルに置かれていたグラスを手に取り、水を注ぎ元の位置に戻す。
ふと窓際の席に目が留まった。
透明な袋にラッピッグされたグレーの大きな犬のぬいぐるみが座っている。
「とても可愛らしいですね。プレゼントですか?」
「そうだんだ。孫の誕生日プレゼントでね。」
「そうなんですか。おめでとうございます。」
「ありがとう。
今日は特に特別な日でね。長い間この日を待っていたんだ。だが…
まだ会えそうにないねえ。」
眉を下げた老人に、客室乗務員は何とも言えない気持ちになった。
「あとどのくらいで運行は再開するだろうか?」
「中継ステーションで起きたテロは鎮圧されましたので、あと1時間程で再開される予定です。」
「そうか…
待っていてくれると良いんだが…」
「きっと、お待ちになってますよ。」
「そうだね。」
老人は窓の外に視線を移した。
そこから大きな月が見える。
人類が月に移住して約800年。
月で繰り返された代理戦争も今は昔のこと。
幾度となく起こるテロの脅威にさらされていた時代があったことも記憶から薄れ始めていた。
だが、今また、脅威が少しずつ現れ始めた。
次の時代が幕を開ける。




