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「おととい来やがれ!」
外にまで聞こえる程の怒鳴り声が響いた。
公太は首根っこを掴まれ放り出され、人通りがない広い道に倒れこむ。
「イテテッ…」
強くぶつけた肘を擦りつつ上体を起こし、今しがた自分が飛んできた所を見れば、顔に影がかかった大男が鼻息を荒くし立っていた。
建物の中で働く作業着姿の従業員が3人手を止め、様子を伺っている。
壁には見るからに古い機器が積まれており、先程の怒鳴り声でいくつか崩れ落ちていた。
建物から出てくるその男の顔から影が徐々に取れ、怒りの表情が現れる。
「こちとらきっちりかっちり納めるもんは納めてんだ!契約切られる筋合いはねえ!確認して出直して来な!」
親方は勢いよく大きな引戸を閉めた。
ガシャンと大きな音をたて閉まる戸に、ビクリと肩が跳ねる。
公太は溜め息を吐き、仰向けに倒れると空を見上げた。
(こんなん上手くやれるかー)
青い空に白い雲が流れていく。
(空見てる場合じゃないな…
帰ろう…)
立ち上がり、服に付いた土埃を払う。
(話はした。
もしかしたら担当じゃない俺だったから納得してもらえなかったのかもしれないしな。
担当者である高橋さんが話したら案外納得するかもしれない。
………月がひっくり返っても無理な考えなのは百も承知だ…
だけど、俺の仕事はここまで。後は高橋さんに任せよう。)
◇◇◇
(ああー、緊張してスッゲー喉カラカラだ。
しかも、今日やたら暑くないか?
気温調整機壊れてんのか?
あーダメだ、なんか飲まねーと倒れる。
確か、入り口に自販機あったな。)
体をふらつかせながら、工業地帯の入口を抜けた所にある自販機の前までたどり着いた。
(水は、と…
110円ね…
ん?)
自販機に手をかざすが、なんの反応もない。
手を振ってみるが、それでも変わらなかった。
(この自販機…
キャッシュ専用かよ!マジか!始めて見たわ!最早博物館に置くレベルだろこれ!
あー待てよ、災害時用にいくらか鞄に入れておいたはず。どこに入れたっけえ。)
鞄の底に沈んでいた小銭入れを引っ張り出すと、チャックが半分開いていた。
中には100円玉1枚しか入っていない。
(記憶が正しければ、500円入れてたはず…
これ…鞄の中に迷い込んでるやつか…)
見つけた100円を自販機に投入し、また鞄の中に手を突っ込んだ。
鞄を漁る公太の額には、暑さで汗が浮き上がっている。
(このままじゃ干からびちまうー
早く硬貨よ我の手に来たれー)
もう限界が来ていた。
カチャンと目の前から音がして自販機のボタンが点灯する。
公太は顔を上げ、硬貨投入口に今しがた硬貨を入れた人物の手から腕、顔へと視線を移した。
自販機を見る女の子が、公太に視線を向ける。




