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サッカーなんて、ただの調教よ  作者: やしゅまる


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16/21

第15話『決壊、シエラ再臨!』


 その奇声は、ウォームアップ中からすでに響いていた。


「カリン様ァァァァァ! 今日こそ私を壊してぇぇぇぇぇ!」


 三ヶ丘学院との再戦。あの“変態守護神”――シエラが帰ってきた。


 観客席がざわつく中、カリンは一歩も引かず、サイドラインからピッチを睨んだ。


(前より……騒がしいわね)


 試合開始。支配女学園はパスをつなぎつつ、徐々に三ヶ丘陣内へ押し上げる。


 そして前半15分、カリンが相手DFを一人いなしてペナルティエリア外からミドルを放つ。


 ――ビシィィィィッ!!


「ハイッ! カリン様のご褒美いただきましたァッッ!」


 観客「……???」


 全身でシュートを受け止めたシエラが、痙攣するようにのたうち回りながら叫ぶ。


「いいぞ!もっと罵ってくれッッ! 私のことなんて、ただのボール止め機でしょぉぉぉ!?」


 審判「…だ、大丈夫ですか?」


「幸せです!!」


 実況席も解説も絶句する中、シュートは何度も止められる。カリンが蹴っても、ヒナが押し込んでも、すべて止められる。まさに鉄壁。


 そのたびに、観客の困惑とシエラの快楽が上昇していく。


「……正面は相手のご褒美よ。ま、カリンならすぐ気づくわね。女王の進化は、命令の質で決まるのよ」


 観客席で見ていた麗奈がサングラス越しに呟く。


「カリン。彼女には“正面”からはダメ。そろそろ、攻め方を変えるときね」


 後半開始直後。カリンは味方を見渡す。そして、短く指示を出した。


「全員、ポジションシフト。私が頂点に立たなくてもいい。“流れ”で勝つわよ」


 支配を“押しつける”のではなく、流れを“導く”。


 その意図はすぐに形になった。ヒナのサイドチェンジ、サブのMFからワンタッチでミオへ。


 シエラが鋭く前に出る――が、ミオはそれを読んでいた。


 ループシュート。


 空にふわりと弧を描いたボールは、シエラの手の先をすり抜けて、ゴールへ吸い込まれた。


「うううううッ! カリン様は……進化しているぅぅぅ……ッッ!!///」


 またしても観客、沈黙。


 だが、ピッチに立つ選手たちは違った。


 カリンの動きは、まるで舞台の演出家のようだった。


 決めるべき人に、決めるべきタイミングで舞台を用意し、花を持たせる。


 それが、彼女の“新しい支配”だった。


 試合は1-0で終了。


 三ヶ丘学院の連勝は止まり、支配女学園が予選全勝へ王手をかける。


 握手の列で、カリンはシエラと向かい合う。


「次も、私の成長を楽しみにしていなさい」


「も、もちろんですぅぅぅ……! 私は……一生、カリン様の変化の記録係ですからァァァ……ッ!!」


 観客は拍手しながら少し引いた。


 その様子を見ていたヒナが、すぐ隣で呟く。


「……あなた、変わったね。命令じゃなくて、預けるようになった」


「それでも、支配の名は外さないわ。女王は、進化して当然でしょ?」


 ヒナはふっと笑って頷いた。


「うん。……ちゃんと見てるから」


 それは、信頼という名の支配だった。


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