第14話『笑顔の価値、ミオのゴール』
二戦目の相手は、個の突破力を武器にする攻撃型の強豪、神代高校。
「1トップの7番、抜け出しとフェイントがうまい。油断すると一発で崩されるよ」とヒナが事前に警戒を促す。
前回と違い、今回は相手が引かない。主導権を握りたい支配女学園にとっては厄介な展開だった。
そのぶつかり合いの中で、焦っていたのはミオだった。
「うわっ、クロス高すぎ!?」「今のドリブル、誰もついてきてないよ〜」
前のめりになった動き、ちぐはぐな連携、空回り。自分でも気づいているのだろう。ミオの笑顔が徐々に消えていく。
(あれ……なんでうまくいかないの? 私は……いつも通りやってるだけなのに)
前半30分、相手のエースが裏を突き、あっさりと1点を決められた。
「失点、1……いや、悪くない。ここから“支配”を取り戻せばいいだけ」
カリンは冷静だったが、その視線はすぐにミオに向いた。
「ミオ。あなた、何を見て走ってるの?」
「え……な、何って、ボールと……ゴール……?」
「嘘ね。それ、あなたらしくないわ。……命令じゃなく、“期待”で動けるのが、あなたの良さでしょ?」
その言葉に、ミオの目が揺れた。
(期待……私が動くことで、誰かが笑ってくれた。そうだった。私、ゴールのためじゃなく……笑顔のために、走ってたんだ)
後半、ミオの動きが変わる。無理に突破せず、味方との連携を意識し、空いているスペースを読む。
「ナイスワンツー!」「今の抜け、速い!」
そして、65分。カリンの浮き球パスをミオが右サイドで追いつく。ゴール前にはフリーの味方が一人。
「これが、私のゴール!」
軽くインサイドで送り出したパス。味方がスライディングで押し込み、同点!
ベンチもスタンドも沸いた。ミオはその歓声の中心で、ようやく笑った。
「……私は、ゴールより、みんなの笑顔が見たくて、走ってたんだ」
カリンが小さく頷いた。「それでいいのよ。あなたは、そういう“役割”なの」
そして試合終了間際、再びミオのスプリントが生きた。相手DFの油断を突き、クロスを引き出し――
味方のヘディングが決まり、逆転。
2-1。支配女学園、連勝。
試合後、ヒナが静かに呟く。
「“支配”って、命令することじゃない。……きっと、可能性を信じて任せること」
それに応えるように、カリンがふっと目を細めた。
「期待に応える者が現れれば……支配は、もっと美しくなるのよ」
選ばれし11人の中で、“役割”が輝き始めていた。




