第13話『開幕!支配の予選』
夏の陽射しが焦げるように照りつける午後、支配女学園サッカー部は予選初戦のグラウンドに立っていた。
相手は県内の公立校、清水南女子。データによれば、近年は「全員守備・カウンター」に特化した超守備型のチームだ。前線の選手すら引いて守るその戦い方は、堅牢というより、まるで岩盤。
「ふん……5バック、さらに中盤まで下がってる。10人で守る気ね」
カリンは手袋の指先を鳴らしながら呟く。その視線は冷たく、だがどこか愉悦が滲んでいた。
試合開始。カリンたちはボールを支配し続けるが、肝心のシュートまでたどり着けない。動かない相手に対し、動くほどにスタミナを削られていくのはこっちだ。徐々に焦燥がチームに広がり始めた。
10分、20分、30分――前半終了間際。
ヒナが声を上げる。「落ち着いて。相手は動いてない、でも隙はある」
「……動かない相手ほど、支配しやすい相手はいないわ」
カリンがふっと笑い、パスを呼び込む。センターサークル少し前、トラップ一つで前を向いた彼女の口がゆがむ。
「そこに突っ立ってるだけの木偶の坊共が……食らいなさい!この球体豚野郎!」
叫ぶと同時、彼女の右足がしなやかに振り抜かれた。放たれたミドルシュートは一直線にゴール右隅へ――
ゴールネットが、揺れた。
「カリン、決めた……!」
「うおおおーーっ!」
ベンチと観客席から歓声が上がる中、カリンは髪を払って静かに歩き出す。
「……支配は、静かに始まるのよ」
後半、1点を追う形になった清水南女子は、ついに守備ブロックを崩し始めた。攻めに転じるしかない。だが、それは彼女たちの生命線を断つに等しかった。
60分。ヒナが自陣深くからロングフィードを蹴り出す。走るのはミオ。相手DFとの競り合いを、身体ごとねじ伏せた。
「ここで決める!」
ボールを胸トラップ、ワンバウンドをそのまま左足で振り抜いた。低く、速いシュートがゴール右下へ吸い込まれる。
「ミオ、ナイスぅ!」
2-0。勝負あり。
残り時間をしっかり支配しきった支配女学園は、予選初戦を文句なしの勝利で飾った。
試合後、ヒナが控室でカリンに声をかける。
「……あのシュート、気合入ってたね」
「当然よ。支配されるなんて、私の美学に反するもの」
そう言いながらも、カリンの口元には小さな笑みがあった。
彼女たち、選ばれし11人が“機能し始める瞬間”だった。




