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サッカーなんて、ただの調教よ  作者: やしゅまる


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13/21

第12話『選ばれし11人(イレブン)』

全国予選、初戦まであと三日。


いつものグラウンドに、ただならぬ緊張感が漂っていた。


「今日から、レギュラー選考に入る」


カリンの一言で、部員たちの表情が引き締まる。


「え、でもこの前の試合メンバーで行くんじゃ…?」


「甘い甘い。あの女王様、全員見直すってよ」


「うわ、胃が痛い……」


如月ヒナが笑ってなだめるが、その目も本気だった。部員25名、ベストの11人を選ぶには競争は避けられない。


――だが、そこには、喜びだけでなく、不安もあった。


「……正直、あたしはレギュラー落ちだろうな」


練習後、ミオがぼそりとつぶやいた。


「何言ってるの、ミオ。あんたは試合でも結果出してるでしょ?」


「でも、他にも点取れる子いるしさ……それに、私がいると場が緩むって言われたこともあるし」


「……ミオの声がない試合なんて、ただの作業よ」


ふいに後ろから聞こえた声に、ミオが振り返る。


「カリン……」


「“勝つため”のチームじゃない。“機能する”チームを作るの。だから私が選ぶ。個じゃなく、つながりを」


その言葉に、ミオは少しだけ笑った。


だが、選考は思いのほか難航した。技術だけでなく、連携、メンタル、ポジション適性――考慮すべき要素は多すぎた。


部室でひとり、ホワイトボードを見つめるカリンのもとに、誰かが入ってくる。


「迷ってる顔ね。カリン様らしくないわ」


黒革の手袋とサングラスを外しながら、麗奈が静かに言う。


「……麗奈様」


「支配者とは、“選ぶ責任”も背負うものよ。誰かを選ぶということは、誰かを“選ばない”ということ。悩んで当然。でも、逃げちゃダメよ?」


カリンはしばし黙り――やがて、目を伏せてつぶやいた。


「……私、彼女たちの努力を知ってる。だからこそ、選ぶのが怖いの。誰かを傷つける気がして」


「なら、こう考えなさい。選ばなかった者を“負け組”にしない。ベンチだろうと応援席だろうと、“選ばれた”という気持ちにさせるの。それが、真の女王ってものよ」


麗奈の言葉に、カリンの瞳が少しだけ強くなる。


――翌日、全員が集められた朝のグラウンド。


カリンは前に立ち、深呼吸する。


「……これから、予選初戦のスタメン11名を発表する」


一人、また一人。名前が呼ばれるたびに、歓喜と落胆の声が交錯する。


呼ばれなかった数人は、唇を噛んだ。だが――


「選ばれなかった子たちも、ここにいる“チームの一員”よ」


カリンは全員を見回す。


「私たちは、ただのレギュラーじゃない。“選ばれた者たち”よ。このメンバーで、勝ちにいく。けれど――それは、ベンチにいるあなたたちと一緒に掴む勝利。全員で、戦う」


言葉に、沈黙が生まれ――次の瞬間、拍手が起こった。


「よっしゃああ! 応援席からでも魂は出すからな!」


「やば、ちょっと泣きそう……」


控えメンバーの声に、スタメンもまた背筋を伸ばす。


選ばれし者たち、選ばれなかった者たち、すべてが一つになった瞬間だった。


試合は、すぐそこにある。


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