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サッカーなんて、ただの調教よ  作者: やしゅまる


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17/21

第16話『氷の前哨戦』

「本当に……勝てるのかしら、私たち」


その呟きは、スタジアム全体の静寂と同化して消えていった。


決勝トーナメントを決めた翌日、カリンたちは準決勝第1試合――聖セレナ女学園の試合を観戦していた。


「すげぇ……なんだあのパス回し……」


呆然と漏らすミオの隣で、ヒナが黙って首を振る。


パスは一切の無駄がなく、1タッチ、2タッチのリズムで相手の守備網を切り裂いていく。だが、それは決して“派手”ではなかった。冷たく、静かで、まるで冷凍庫のような支配だった。


ゴールが決まっても、歓声はごくわずか。代わりに鳴り響くのは、セレスの短い指示のみ。


「ライン上げて。5番、スペース埋めて」


彼女の声に、チームは無音のまま応じる。


戦術的に洗練された、機械のような11人。それが聖セレナだった。


「……あれが、“完璧な支配”」


カリンが息を呑む。隣のヒナはうなずく。


「違う。あれは“制御”だよ。誰も迷っていない。自由すら最初から用意されていない」


「でも……勝ってるじゃない」


「うん。勝つための最短距離を、彼女たちは何の迷いもなく進んでる」


そのとき、場内アナウンスが流れた。

試合後インタビュー。聖セレナのキャプテン・セレスのコメント。


「次はどのチームが上がってこようとも、構いません。私たちは、自分たちを制御するだけですから」

「“支配”に頼りすぎているチームほど、崩れるのも早い。私はそう考えています」


会場がざわめく。明らかに、カリン率いるチームへの牽制だった。


ミオがカリンを見る。「……なぁ、カリン、大丈夫か?」


だがそのとき、彼女の表情は誰よりも静かだった。

目だけが、炎のように燃えていた。


「ふふっ……よくわかってるじゃない。確かに、私は“支配”に縋ってたかもしれない。でも――」


スタジアムの照明が彼女を照らす。


「私は“違う支配”を見せるわ。自由を奪わない、でも導く。そんな支配があるって、知らしめてやる」


その横顔に、ヒナもミオも言葉を失う。


そして――

試合の終わりを告げるホイッスルが響いた。


氷のようなチームが、無表情のまま、また一つ勝利を積み重ねる。


観客たちが帰り始める中、カリンはひとり座席に残っていた。


その目に、静かな決意が宿っていた。


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