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焼きそばパン大戦争  作者: 清泪(せいな)
最終章 焼きそばパン大戦争

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第百十七話 貸出カウンターは大体成人の平均身長の腰より高いくらいを想定してます。

 咄嗟に投げつけた光の短刀は、実の所それほど殺傷能力を有してはいない。それは、刀を作る上で中途半端に止めた形で生成されたものである、ということ以上に光の刀も光の短刀も白鬼としての力、つまるところ認知による力であるからだ。

 認知の力である以上、突き刺さった相手側の認知力、想像力によって殺傷能力は左右される。今の場合、那間良かもしくは赤鬼の残滓が短刀に刺された事を致死として受け止めれば言葉通り死に至るわけだが、赤鬼という存在が短刀に突き刺されたぐらいで死ぬほど臆病なことはありえないし、残滓による影響と本人のアドレナリンからして那間良も一瞬動きを止めた程度でしか短刀のことを意識しなかった。


 その那間良の光の短刀への認知のしようは良くも悪くもと言ったところで、一瞬でも動きを止めた事は和美にとって反撃に出るチャンスとなったし、肩に短刀が刺さったことを一瞬気にする程度で再び攻撃の姿勢を取り直した那間良には下手すれば顔面に投げつけたところで死に至らしめることは出来ないのかもしれない。あるいは死ぬことを認知した上で殴り殺し切るまで動き続けてしまうのではないかと、和美は慄いた。


 投げ返してやる、そういうつもりで自分の左肩に手を伸ばす那間良。その手が光の短刀の持ち手に届く直前、短刀は光の粒子となって宙に溶けた。

 反撃の利用を避けた訳では無い。中途半端に生成した短刀は長い時間存在出来なかった。生成した和美本人も、あ、消えた、などと間の抜けた感想を抱きながら手に新たな短刀を生成しながら那間良へと距離を近づける。

 一歩、二歩。鼻から血が流れるのがわかるが、それを拭う暇など無い。和美は右手に生成した短刀を逆手に構え、まるでフックのように振りかざす。インファイトは相手の土俵、圧倒的不利なのはわかっているが、距離を開けての戦闘は和美にとっても不得手なのはわかっている。

 相手の土俵となる超接近戦をいつまでも得意顔でいられるわけにはいかない。この一手はそういう牽制を込めたものであり──


 那間良は左肩へと伸ばしていた手をそのまま裏拳気味に前へと振ると、迫る和美の右フックを打ち落とした。その際、短刀が手の甲を切りつけたが痛みなど構わず那間良は一歩踏み込むと迫る和美の腹に左ショートアッパーを振り上げた。


 ──和美の一手は得意顔で迫る那間良への陽動であった。返されるのはわかっていた。拳のスピード、瞬発力が段違いだ。なので、一手目は捨ての一撃になった。

 和美は痛む左腕を歯を食いしばって動かし貸出カウンターに手をついた。ついた手を支えにして、迫るショートアッパーを避けながらの右膝蹴り。那間良のショートアッパーに膝がぶつかり激痛に悲鳴を上げそうになる。那間良の身体はぶつかった衝撃に後ろに仰け反った。

 和美は膝の痛みに耐えながら、そのままカウンターを支えた手に力を入れて下半身を飛びあがらせて、飛び蹴りとも言えないような形で両脚を那間良にぶつけた。蹴りとして威力はそれほどとはいえ、身体をぶつけた衝撃に那間良はカウンターに打ちつけられる。


 和美はそのまま貸出カウンターに乗り上げて、乗った勢いを利用して駒のように身体を一回転させ、那間良の顔面を蹴った。垂れる鼻血が回転の勢いで跳ねたので、ようやく拭うことにした。

 貸出カウンターに上半身を乗せて蹴られた勢いで滑っていく那間良。和美はカウンターの上に立ち上がり、それを追いかけていく。距離が開いた、光の刀を生成するならば今だ。


 蹴られた那間良は和美が駆けて近づいてくるのを察すると、上半身を貸出カウンターに乗っけたまま下半身を上へと振り上げた。逆立ちで起き上がるつもりか、そう構えた和美は那間良が姿勢を立て直す瞬間に振り下ろす為、生成を始めた刀を上段に構えながら踏み込んだ。


 振り上げた下半身、那間良はそれを思いっきり振り下げて貸出カウンターの側面を叩いた。強い振動が和美の足もとを揺るがせ、足を止めさせる。


「な──」


 驚く和美。側面を叩いた反動で、前に倒れるようにカウンターから落ちていく那間良。

 逃した。和美がそう理解した時には、那間良は冷たい床の上を転がって距離を稼いでいた。互いの距離では最早無く、仕切り直しを強要する間合い。

 手に持つ刀を投げようかと和美は一瞬考えがチラついたが、既に那間良は身体を起こしていてその驚異的な瞬発力からすると避けられることは容易に想像できた。むしろしっかりと生成することが出来た刀を逆に利用されかねなかったので、悪手が過ぎると和美は構えを解いた。


「鼻血、ちゃんと拭けてないよ、高城さん」


 手の甲で暴力的に撫でた鼻血は和美の頬を染めていた。今は鏡は見たくないなと和美は思う。


「そっちこそ、拭いといた方がいいですよ、鼻血」


 顔を上げた那間良も鼻から血を垂らしていた。普段ボクシングをやってるとは思えない腫れのない綺麗な顔に、和美の靴跡が赤く残っていた。垂れる鼻血が様になっていて、和美はちょっと卑怯じゃないかと愚痴をこぼしたくなった。 

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