1ー2. 宰相閣下
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(……待って)
「ええ? 宰相閣下が上司!?」
タヌキ様が衝撃すぎて時差で来た次の衝撃。
「うるさい」
思いの外大きな声が出て、宰相閣下に叱られバチンと両手で口を押さえる。
そのまま、黙って後を追った。
幾度も廊下の角を曲がり、たどり着いたのは宰相閣下の執務室。
応接セットに座らされると、目の前に数枚の書類が並べられた。
契約書のようだ。
「それを読んだら必要事項を記入してサインを。質問があったら言え」
「は、はい」
それだけ言うと、宰相閣下は執務机に向かう。
書類を読む。
雇用契約書や個人情報、何か起きた際の連絡先や補償金支払い先などなど。
ペラペラとめくっていくと、最後に質の異なる用紙があった。
薄黄色の紙は、中央に薄く魔法陣が書かれ、淡く光っている。
「え? こっ、これ魔法契約書!?」
「そうだ、読んで了承したらサインしろ」
魔法契約書は国家間の決め事や重要事項の契約、重要機密保持の際に使われる用紙で、魔法の制約がある。
交わした契約は破れないようになっている。場合によっては罰が科せられることもあるという。
「もし、了承出来なかったらどうなるんですか?」
「別部署に異動だ」
(よかった、解雇にはならないのか)
「まあ入官二日目から異動することが別部署の者にどういう印象を与えるか、考えてから判断するんだな」
ピャッと肩が揺れる。
慌てて魔法契約書に視線を落とす。
内容は仕事内容及び、就業中見聞きした内容について一切漏らさない。
というものだった。
内容は至って普通のこと。ただ魔法契約書を使うほどに今後の仕事が機密であるということ、なのか。
(タヌキ様の存在は国家機密ということ? タヌキ様ってなんだ?)
とりあえず、職を失うわけにはいかないので、全ての書類に記入し、提出する。
「よし、不備はないな」
宰相閣下が魔法陣に指先を当て、魔力を通すとブンと音を立てて魔法契約書の魔法が発動する。
「これで逃げられなくなったな」
(何から!?)
ニヤリと笑う宰相閣下が怖い。
宰相閣下、笑うとものすごく怖い。
顔は笑っているのに目が全く笑っていない。
あまり知りたくなかった事実に戦々恐々しながら、目を逸らした。
「付いてこい」
有無を言わさぬ声音に後を付いていく。




