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ぐうたらな聖女は用済みだと王国を追放されました。私の一族が二百年間抑えこんできたものが解き放たれますが、よろしいですか?  作者: 有郷 葉


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2/2

ミレイア、滅亡の始まりを見届ける


 喜びのあまり笑みがこぼれそうになる私とは対照的に、ランスロットさんは真っ青な顔になっていた。


「お待ちください、王子様! それは絶対になりません! ミレイア様の守護がなければこの王国は……!」


 こう詰め寄るも第一王子は全く聞く耳を持とうとしなかった。


「何が守護だ。そんな力、実際にどれほど役に立っているか分からないではないか。民達も多くは、あの聖女は自分達の血税で日々ぐうたらに暮らしているだけでは? と疑念を抱いている。見ろ、今もぐうたらだ!」


 と王子は、カップケーキを手にソファーに座る私をビシッと指差した。


 これはあなたが私のおやつの時間に急にやって来たから……。

 ……思えばこの第一王子は以前から聖女という存在に懐疑的だった。

 さらに言うなら、同じ王城で暮らす私を疎ましく思っていた節もある。自分は次期国王として厳しい指導を受けているのに次期聖女のこいつは伸び伸びと! という恨みの視線をひしひしと感じていた。


 だけどまあ、第一王子にはどう思われていようが大したことじゃない。問題は国民の多くも私をぐうたら聖女だと思っていたことだ。

 私は人生の大半を犠牲にして皆の平穏を守ろうとしているのに、ひどくない……?


「……分かりました。明日、城を出ていきます……」


 力なく私がそう言うと、ランスロットさんが大慌てで。


「お、お、お待ちを! お二方共しばしお待ちを! せめて一週間後にしてください!」


 私と第一王子は顔を見合わせて互いに頷く。


「一週間くらいなら我慢します……」

「一週間くらいならいいだろう」



 こうして猶予期間が設けられ、その間ランスロットさんは「王国を出る準備をします!」とだけ言い残して全く姿を見せなくなった。

 彼が戻ってきたのは、私が王城を退去する当日になってのこと。


「お待たせしました、ミレイア様。では参りましょう」


 いよいよ私は二年間暮らした聖域の部屋から出ることに。最後に、中央の泉に目をやった。


 うーん、なんか沸騰したみたいにポコポコと泡が……。泡だけじゃなく悪い気のようなものも出ている感じがするね……。

 もう昨日で力を注ぐのをやめちゃったから抑えが効かなくなっている模様。

 これは早々に王国からも脱出した方がいいかも。


 ランスロットさんと一緒に城門まで行くと外が何やら騒がしい。


 ……まさか、ぐうたら聖女に石を投げようと国民達が集まっているのでは!


 びびっている間に城門が開かれた。目に飛びこんできた光景に私は呆然とする。

 数えきれないほどの人が町を埋め尽くしており、その全員が姿を見せた私に向かって祈るような仕草を。


 あれ? 私、すごく慕われてる……?

 固まる私にランスロットさんが説明を始めた。


「ここにいるのは、国中から集まったミイレイア様を信奉する者達です。一週間でどうにか声をかけることができました」

「い、いったい何人いるのですか?」

「大体十万人くらいでしょうか」

「そんなに!」

「これでも全国民の5パーセントほどですよ。……残念ながら、本当に多くの国民が日々聖女様の恩恵に与っていることを忘れてしまったようです。さあ、ミレイア様を信じる彼らと共に行きましょう」


 私は十万人の信徒を率いて出発することになった。

 城下町を出た頃、ぽつぽつと雨が降りはじめる。雷も鳴り出し、数秒も経たないうちにどしゃ降りに変わった。


 ……もう来たか。ここだけじゃなく、おそらく王国全土がこのひどい雷雨に見舞われているはず。

 おっと、一緒にいる皆を守護してあげないとずぶ濡れになっちゃうね。


 私と信徒達は王城と城下町を見渡せる小高い丘に到達。この上空だけ雲に穴が空き、一切雨が降っていなかった。


「こうやって体験すると、改めてミレイア様の一族のお力は規格外だと実感します……」


 ランスロットさんがしみじみと呟く。

 うん、地下の部屋にいると全く分からないけど、私もすごいと思った。


 私の一族が持つ聖女の力とは、大自然に働きかけて運命操作する能力だ。

 例えば王国のどこかを大変な大雨が襲う運命にある場合、それを抜き取ってあの聖域の泉に封じてきた。王国各地の災害を集めた膨大な運命なので、泉から溢れてこないように常に力を注ぐ必要がある。聖域から出られないのにはそんな事情があった。


 視線を上げると、王城に連続で何発もの雷が落ちていた。

 今頃は第一王子も大慌てだろう。


 だけど、この雷雨はまだ序の口。

 あの泉には王国全土の、二百年分の災害が封じこめられていたんだから。


 たぶんこの一週間くらいで、大熱波、大嵐、大地震と次々に……。

 もう人の住める土地じゃなくなると思う。





――その後、約190万の民がミレイア一行の後を追って王国を出たそうな。

そして、皆で許しを請うた末に合流する。

新たな土地でミレイア王国が建国されたとか……。

お読みいただき、有難うございました。


また、新作短編も投稿中です。

『裏切りの代償を払ってください。~全てを懸けて私を幸せにすると言いましたよね?幸せになれなかったので全てを貰っていきます~』

5分でお読みいただけます。

この下にリンクを設置しました。よろしければいらしてください。


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