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人間スイとあやかし玄が営む妖癒旅館―人とあやかしが共に生きる、もう一つの世界―  作者: 桜桃
偽物と真実

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怖い過去

 それから天狗は、再び一人で抱え込むようになってしまった。

 スイが来てからも、ずっと。


 そしてスイも、両親のようにならなければならない。

 けれど、両親の働きぶりを、実際に見ることはできなかった。


 ここまで皆に信頼され、旅館を経営してきた手腕を持つ両親。

 きっと何でもできる人たちだったのだと、そう思っていた。


 だが話を聞くと、指示は的確に出していたものの、実際に動いていたのはあやかしたちだったという。


 それを知っても、スイには勇気が出なかった。


 自分のような何もできない、しかも人間である自分が、あやかしたちに指示など出していいのだろうか。


 本当は指示などされたくないのではないか。

 関わりたくないと思われているのではないか。


 そう考えれば考えるほど、すべて自分でできるようにならなければならない。

 そう思い込んでいた。


 だが今回、皆に指示を出すと、あやかしたちは迷いなく頷き、すぐに動いてくれた。


 黒緋や九尾までもが即座に動いたことに、スイは少なからず驚いている。

 そして確実に、事態は収束へと向かっている。


 自分が前に出ない方が、うまく回っていく。


 どこか複雑な気持ちはある。

 それでも、今はこれが最善なのだと、スイは思考を切り替えた。


「天狗様」


「あ、あぁ、なんだ? 俺も何かするか?」


「いえ、天狗様はお休みください。体が回復したら、色々と経営について教えてください。今までのように『下がれ』と言うのは、禁止ですよ?」


 にこりと微笑みながら告げるスイ。

 天狗は目を丸くし、そしてつられるように笑った。


「そうか、わかった。……ここの人間は、本当に変わり者だな」


「え、そ、そうですか?」


 今度はスイが困惑する番だ。

 目をぱちくりさせる。


 天狗はどこか諦めたように、しかし静かに語り出した。


「昔はな、天狗の中でも俺の力は強すぎたらしい。制御できず、周囲の者を殺してしまったことがある。……まあ、殺されそうになって、感情のままに殺し返しただけだがな」


「え、そ、そうなんですか?」


「あぁ」


 スイは、天狗の言葉に相槌を打ちつつ、耳を傾ける。

 天狗は自分の手を見つめ、鴉の面の奥で目を細めた。


「力を抑えれば、今度は人間に襲われた。何も信じられなくなった時に、カナ様とシイ様に出会い、拾われた」


「そ、そうだったんですね――」


 言いかけた瞬間、スイは以前見た夢を思い出した。


 森の中で一人、立ち尽くす少年。

 公園でいじめられていた鴉。


 ――まさか、あの少年が……?


 固まるスイに、天狗は首を傾げる。


「どうした?」


「わ、私、多分ですけど……天狗様の子どもの頃の夢を、見ました」


「なんだと?」


 天狗は片眉を上げ、怪訝そうにスイを見る。


「前に倒れた時、夢を見たんです。森の中に佇む少年と、いじめられている鴉の夢を。変な夢だと思っていたんですが、今のお話を聞いて、もしかして……って」


 視線を落としながら話すスイに、天狗は腕を組み、天井を見上げた。


「なるほど。どういう理屈かはわからんが、今はいい。それより――お前はどう思った?」


「え? どう思った、とは……?」


 天狗は静かに続ける。


「俺は言ってしまえば人殺し――いや、あやかし殺しの危険な存在だ。感情が昂れば力が暴走する。そんな奴が、お前の大事な妖癒旅館にいていいのか。怖くはないのか。それを聞きたい」


 そう言って、鴉の面を外す。


 黒い瞳が露わになる。

 悲しげで、今にも消えてしまいそうな目。


 その姿に、スイは言葉を失う。


 沈黙の時間が、数秒続く。

 天狗は気まずくなり、目を逸らした。


「やはり、怖いよな。悪い、答えにくいことを聞いた」


「え、い、いや……」


「……答えは、わかっているのにな」


 再び面をつけようとした、その手をスイが咄嗟に掴んだ。


「な、なんだ?」


「待ってください。あの……もっと、見ていたいです」


「み、見ていたい、とは?」


 顔を近づけられ、天狗は戸惑う。

 普段、誰にも見せない素顔が晒されたままだ。


 天狗は思わず頬を染め、「ち、近い!」と、スイの顔を押し返した。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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