13 姉がアイドル(偽)になっていた。
気が向いたら書く、の姿勢です。テヘペロ。
「うわあ…!」
「す…っごい、セルリアンブルーの海初めて見ました…!」
海鳥が空を滑り、白い波頭にイルカが顔を見せ、大橋を渡る馬車に併走している。
そして橋の向こうは眩しい白い建物が林立していた。
おうふ、古代ギリシャみたい~!!
はしゃいでいるのは別にプレーヤーだけでなく、NPCの住人も同様だ。
彼らが言うには、ドゥジエムはリゾート地とのこと。島全体が断崖になっているファンシーやプルミエでは体験できない砂浜での海水浴ができると。これは胸が高鳴ります。
でも、プルミエ付近は湖があるので、そこが島では保養地だとか。
「そっか、プルミエは湖があるのかぁ。プルミエ飛ばして来ちゃったから知らなかった。まだまだ楽しそうな場所ありそうだね」
「へえ、俺も」
「そうですね…! はあ、アガル」
サーシャもテンションあがっている。
彼女は北国の出身で、海は泳げないものらしい。冷たくて。ちなみに暗い淀んだ色だとのこと。ううむ。
大橋を馬車が渡りきるとカランカランというシステム音と伴に、アナウンスが入った。
《--観光都市ドゥジエムに初めてプレーヤーが到達しました。解放プレーヤーに特典が与えられます》
それからの個別アナウンス。
『観光都市ドゥジエム解放特典:1万ゼニー。ロイヤルドゥジエムホテルのスイート無料宿泊券10回を手に入れました』
「おおお、ワールドアナウンスか!」
「お金と宿泊券! 10回分! うれしい~」
「これは今日のお宿は決まりですね…!」
ドゥジエムの駅舎につくと、私たちも馬車から降り、アオハお兄さんは別行動するとのことだった。
「せっかくだから、動画投稿しようかと。アッチちょろちょろ、コッチちょろちょろして街中映していくよ。面白い情報あったら教えてくれ」
「私たち、夜はご飯折角だから屋台でとるけど?」
「一緒するよ。あとでロイヤルドゥジエムホテルで落ち合おう」
そう言うとアオハお兄さんともフレンド登録してお兄さんは鼻歌まじりに雑踏の中に歩いていった。
お兄さんは投稿とかする人なのか。私はそういうのに映るのはちょっとなー。
「結構面白い番組ありますよ?」
「サーシャも詳しいよね」
「こういうファンタジーとかオタ系好きなんです…」
あたりを見回すサーシャの目がキラキラしている。
獣人は私たちだけだが、賑わう市場の中には見たことない動物を連れた商人や旅人が行きかい、屋台からは香ばしい香りが潮風に運ばれている。足元の道路も、白なのだ。
クロ一人、白一点のグループで私たちはドゥジエムの街を駄弁りながら観光する。
まるで、海外の風景をそのまま再現した美しい町並みに感嘆し、思い切りスクリーンショット撮りまくりました。
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「すっごい、堪能しました…!」
「あー、わかるー。おねーさんもこういうファンタジー衣装作りたくて始めたし」
ホノカお姉さんは生産中心に考えているそうだ。
エキセントリックな風情の市場は、ゲームの世界の中にまさしく飛び込んだ、という情景で私も二人同様興奮していた。
「リアルでコスプレ衣装作るには時間と技術がないのよね…。あと、着て行く場所も。イベントはこの歳だと敷居高くって」
「そこで、VRですよね…! わかります」
おおう、中学の家庭科の被服では完成できた提出物がタイトスカート一着の私が混ざれる話題ではない。
合流したアオハお兄さんと一緒に屋台で夕食を摂る。
「あ、ここ、ここ。ここから先の草原にモンスターがいるんだけどログアウト前に行ってみる?」
アオハお兄さんが眼前にモニターを広げた。
お兄さんが『ファンシーライトオンライン』のSNSにアップした町歩きの放送だ。
これから行くフィールドの予習にと、皆でそれを覗き込む。
お兄さんが串焼きを齧って言った。
「地元のNPCに聞いたら、モーギューって牛とか、電気羊とか、トンソクって豚に似た食用モンスターだと。売れば良い値になる。買取するよと言っていたよ」
「豚だけ部位なのね…」
「オーク肉じゃなくて良かった…」
丁度食べている屋台のお肉がトンソク肉だった。フツーに豚肉だ。おいしい。
串カツもあったのでそれも頼む。ウマウマ。
「フィールドの芝が綺麗だねぇ」
あ、電気羊がモコモコとしながら近寄ってくる。近くに寄ると帯電しているのが分かる。お兄さんが慌てて避けて、コケた。画面いっぱいの芝が…。
他にも色々、『ファンシーライトオンライン』のゲーム実況がアップされている。
このゲームのビジュアルは高画質の環境ゲーに近いそうで、”××ちゃん散歩”的な内容が多いそうだ。
そうだねぇ、歩いているだけで楽しいもんね。
「あ! 文月麻耶も放送アップしている! 生放送だ!!」
明るい声を上げたのはサーシャ。
「もしや、麻耶さ…んのファン?」
「うんそう。だって、スラっとしててカッコいいじゃないですか。あ、パーティーメンバー変わっている。ぐわ、なにこれ眩しい。イケメンが二人!」
サーシャの見ているモニターを今度は私とホノカお姉さんが覗き込む。
「おや、本当だ。公式提供のフェイスの中にないパターンだね。てことは、このゲームって自分の顔もフェイスパターンとして使えるよね。地顔に近いのかな」
(麻耶さん同様、地顔です)
二人のリアルを知っているけど、お口にチャック。
お姉さんも おおー、とイケメン二人に釘付けだ。視聴数が跳ね上がっています。
姉も白いローブに変わっていて、初期装備から衣装チェンジ済み。
えいっとか言っているよあの人。家だと 太い声で せい! とか言うくせになに、カワイコぶっちゃって。
擬態している…。と、思っていたら、モーニングスターでモンスター一撃で沈めた。
え? エルフだったよねお姉ちゃんの種族。ステータスどうなってんの!?
やったぁだと!? 内股でピョンピョン跳ねている。付け焼刃してんじゃねえ。実の姉の大根ぶりにイラっとするぜぇ…。
イカンイカン。私のココロが大嵐。
これは見てはいけない映像だ。
けれどお姉さんやサーシャには面白ーいと受けている。
「ふおおお。リアルのお顔公開は私にはムリです。フェイス2をいじっています」
「私は3。私もちょこっと、いじっているよ」
思わずサーシャに同意。さすがに自分の素顔では出来ない。
お姉ちゃんもそう。確か6。
パターンは10種類あったよね。麻耶さんやペケポンさんたちが素顔だったから思い込んでいたけど、セシリアさんもフェイスパターンからかな?
でも、何となく自分の素顔に近いパターン選んじゃったんだよね。あまりに違いすぎるとむしろ恥ずかしいので。でも個性もほしい。難しいお年頃なのよ。わかって!
「私 地顔。ン十年前の写真からだけど。それくらい経過すると、別人だしね」
ホノカお姉さんが笑顔で牛串にパクつく。
サーシャと私、クロが思わずお姉さんをガン見。
お姉さんは本格的に大お姉さんだった…。
そして今まで誰も口にしなかったことをアオハお兄さんが口にした。
「クロ君は文月麻耶そっくりだよね」
「ファンなんで」
あ、華麗にかわした。ソフィスティケイトされてるのう。
思わず私はクロを尊敬の目で見た。
2020/8/11 ワールドアナウンスの表現改稿しました。




