12 暁旅団、登場
さて、手元に燦然と輝く"ファンシー大橋通行許可証"。
ファンシーとプルミエの町が島の中だったなんてびっくりだよ。そこから、大陸に大橋がかかっていると。
私は手元の通行許可証を再度まじまじと見た。
町役場から出て、私たちはパーティーを解除せず雑談しながらファンシーの町を歩いていた。
なんか、注目されている気がする。
役場から出てきたところ見られたからかな?
「ねー、どうする? おねーさんはこのまま、大陸のドゥジエムの街まで行って、ログアウトしたいかな」
「それもいいですね…。どうやら、乗り合い馬車で移動出来るみたいですよ。新しく駅がマップに出ています。乗り合い馬車はイベントフラグ踏まなければ、戦闘回避出来るそうです。戦闘が不安な人にオススメと説明出てます」
ホノカお姉さんとサーシャは乗り気だな。
「う~ん、それもいいか。どうやら、これ譲渡不可だし」
アオハお兄さんも うんうん頷く。
クロがそれをチラと見て尋ねた。
「譲渡考えていたの?」
「だって、今これを所持しているの、どうやら俺たちだけらしいよ。売れば高額間違いなし。このゲーム、開始当初の所持金少ないからなあ…。今は謝礼金で少しは懐温かいけどさ」
アオハお兄さんは許可証の鑑定結果を掲示板に書き込んでいた。
慣れているんだろうか。
掲示板はフレンドゴーストの後色々見ていたけど、あれきりだなあ。
「俺も戦闘不安だけどドゥジエムの街を観光してまたこっちに戻ってレベル上げをしたらいいかな。フェザントはどう?」
クロの提案に私も頷く。
それにホノカお姉さんの尻尾がピンと立った。
「おっしゃ! じゃあ、早速皆で乗合馬車の駅へレッツらゴー!」
………。
ホノカお姉さんは思ったより年上かもしれない…。
乗り合い馬車の駅へ到着すると、そこには思った以上の人がいた。
NPCの商人が大荷物持って歩いていたり、子供連れが楽しそうに駅のベンチに座っている。
その中に、チラホラ プレーヤーも混ざっていた。
「なんでプレーヤーが?」
「まあ、乗れなくてもマップに新しく駅が表示されたから集まったんじゃない?」
フフ~ンと私はクロの疑問に適当に返す。
「そうかな…」
「なぁに、クロさんや。なにか心配かね?」
ホノカお姉さんにあてられたのか、私も少々浮かれ気分で駅を歩いていた。
隣のクロ見ると、クロが少々怖い顔している。
そして彼はそっと私に促した。
その促した先には、人ごみの中、真っ赤なドレスアーマーの女性が、黒装束の男達を従えこちらに歩み寄ってきていた。
そして、彼女は私の眼前にヒールの音立てて止まった。
「あなた。あなたが"ジャイアントキリング"持ち?」
「へ?」
「それとも、あなたかし…?」
彼女はクロにも向き直り、そして驚愕の顔になった。
「……マーヤ! なに、そのふざけた格好…!」
「人違いだけど。オレ、男だし」
あら、この人マーヤさんの知り合いだ。
「え、だって、その顔! ……あ、ホント男性だわ。このゲーム、性別は偽れないから…。あ、あら、失礼…。じゃあ、あなたかしら」
そう言って彼女達はアオハさんやサーシャをくる、と見回す。
「なんなの、あんた達。名乗りもせずにいきなり他人の称号聞くのはマナー違反じゃない?」
ホノカお姉さんが私達をかばうように前に一歩出る。
その態度に彼女の後ろの黒装束の一人がわざとらしくププと笑う。
「初心者装備が偉そうに…。プププスー」
はい、敵認定!
私の短気が火を噴くぜ!
「あら、失礼したわね。私はクラン【暁旅団】の紅薔薇。称号"ジャイアントキリング"持ちよ。特定の称号は新しく称号持ちが増えると所持者に運営からお知らせが入るのよ。【暁旅団】では、期待の新人として称号"ジャイアントキリング"を取得したプレーヤーをスカウトしているのよ。
……新しい街の開放イベントで高レベルPKを返り討ちにしたと聞いたわ。それってあなた達、初心者組でしょ。それで、アタリをつけて来たのよ。
あのK2のヤツは、β時代から弱い者苛めが好きな悪趣味野郎でキモかったからいい気味だわ。なので、私達【暁旅団】はキミ達を歓迎します。…で、誰が?」
……ポッカーーン。
え、人の話聞かない人?
つか、あのPK、K2って名前だったの?
「オレはさすがにそこまで書き込んでいないぞ」
アオハお兄さんがホノカお姉さんに睨まれプルプル首を振っている。
「プルミエの街頭新聞に出ていたのよ」
紅薔薇さんは鼻で笑った。
それを見て、私たちは顔を見合わせる。とりあえず。
「「「「「黙秘します」」」」」
声を揃えて答えた後、私たちはそそくさと馬車に乗り込んだ。
通行証を持たない彼らは馬車には乗れず、馬車の外でキイキイ言っていた。
が、さすがに他のプレーヤーに注意されて散っていった。
なんだ、あの集団…。
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「【暁旅団】は最古のクランで、クランマスターがさっきのドレスアーマーの剣士、紅薔薇さん。クランの人数は多いが戦闘力ではそうでもない…とのこと。経済クランらしいですよ」
馬車の中でサーシャがネットにアクセスして調べてくれた。
経済クラン? 経済ヤクザと同じようなものかな?
「【暁旅団】はNPCには評判良くないですね。今回の人斬り討伐の、間接的にですけど原因も作っていますし。プレーヤーには…、意見分かれるトコですね」
「ああ、オレも聞いたことある。【暁旅団】はNPCはあくまでデータと考えるって。プレーヤー本位をうたっているんだよな。そういうのを支持するプレーヤーには存外人気が高い。紅薔薇がβからの古参なこともあるらしいけど」
「ふーん…。NPCがデータかあ…。まー、おねーさんもそういう考えはそれはそれでわからなくもないかな」
馬車は私達のパーティー含めて10人ほどが乗っていて、対面に人が向かい合って座っている。
それぞれが、画一的でなく、個々に動いていて、普通に喋って笑っている。これがデータなんて思えない。
「今のVRってすごいよね…」
思わず呟く。
それをクロが拾ってくれた。
「このゲーム、割と後発だから、高い技術惜しげなく使っているんだろうな。数年前のVRだと、食べ物の味や香りの再現はかなり劣っていたし。VRの場合 俯瞰視点じゃないから、リアルになりすぎたNPCに感情移入しすぎるとイベントやストーリーが逆に楽しめないって風潮も確かにあるんだ」
「私は武器屋さんや、そのご一家、娘のリオンちゃんにもとってもお世話になったから…今はそうは考えないな。でも、始めた当初はあんまりプレーヤー以外には気を使ってなかったかも」
どうせ、ゲームだしと思っていたかもなあ。
チュートリアルのロビン師匠以外で初めて喋ったNPCはフレンドゴーストだったし、アレはコント仕様だったし。
私の感想に 私もそうかも、とホノカお姉さんやサーシャも同意してくれた。
私たちを乗せた乗合馬車は町の門を出て田園風景を通り抜ける。
その先に大きな橋が見えた。そのさらに先には、素晴らしい青い海と白い家々が立ち並ぶ対岸が--あった。




