連れ出して
次の日になっても、剣士が戻る事は無かった。
「すみません…」
「どうしたんすか?」
一体どう切り出せば良いのか…。
「少し、遠出なんていかがでしょう?」
「先輩に、何て言われたんすか…?」
私は言葉を失う。
「なんだって構わないっす。自分、ここで先輩待ってるっす。絶対っす。」
「…」
私は洞察力に自信があるわけでは無いが、あの剣士とダムキナの人柄という物が手に取る様に分かってしまった。
「あの剣士様は、しばらく遠くに出かけると言っておりましたわ。しばらくは戻らないそうですし、私の知っている事を貴女に教えてと頼まれたんですの。」
「そうなんすか?」
私の口角は無意識に上がっていた。嘘は言っていない。
「くうぅ、先輩は酷いっす!自分がまだまだだって言いたいんすね。分かったっす。」
ダムキナは荷物をまとめ始めた。
「良いっすよ。やってやりますよ。先輩が傷だらけで帰って来ても、あっと言う間に治してみせるっすよ!」
身支度を済ませ、ダムキナはクローゼットの前に立った。
「すみません、別に尻尾とか角とかは良いんすけど、夜は冷えるかもしれないのでこれ、白い薄手のコートっす。」
ダムキナはそれを私に手渡す。
「ありがとうございます。」
私はそれを羽織って、ダムキナと一緒に外に出る。肌触りは良好だ。局長も気にいるかもしれない。
『ザ………ザザ………』
何かを擦るような音が耳元で聞こえた。
『う………メア………』
噂をすれば局長からの交信が来たが、上手く行っていないみたいだ。
『ちょっとお姉ちゃん!そんなんじゃ聞こえないって!』
『雰囲気出ると思ったんだけど』
ああ、相変わらずみたいだ。顳顬交信は、人型魔族特有のコミュニケーション方法だが、練習が必要でもある。外に全く漏れないように、言葉を口の中だけで転がすイメージだ。
『どうかしました?局長。』
『順調みたいだね。旅の理由も出来たし、可愛いお友達も出来たみたいだし。そんでさ、ちょっと色々な場所調べて欲しいんだけどね。』
『はい、喜んで。』
『それじゃあとりあえず、そこから北西にお願い。そこに私達魔族を祀ってる場所があるから。』
『了解しました。それで、人間にはどれくらいの事を話してよろしいでしょうか。』
『うーん、出来るだけ知られたくは無いけど…まあその子だったら大丈夫だよ。』
『分かりました。それでは。』
『また後ほど。』
局長との交信が終わる。
「どうかしたっすか?」
「いえ、少し知り合いと話していただけですの」
「そうっすか?自分と貴方だけっすよね?ここにいる喋れる生き物は。」
「ええ、まあ。」
「それで、これからどうするんすか?」
「この先に宗教施設があります。そちらに向かってもよろしいでしょうか?」
「よし、レッツゴーっす。」




