局長の話
「はー…はー…はー…」
やはり、一年も引きこもっていては、筋力も当然落ちていた。街並みも大なり小なり変わっている。なので、なんとか知っている道を探して、目的地へとたどり着いた。しかし、もう足が棒の様になっている。そもそも、長距離を歩くことすらあまり慣れていない。
「やっと着きましたわ…界間交通局…」
と、ご馳走の香りが、疲れきった私を襲う。ああ…これはきっと…新鮮な、馬の血の匂いだ。いけないいけない。気が散ってはダメだ。早く局長を探さないと。まだデザイナーの仕事の時間では無いはず。
「ん…?ああ!君はもしかして!」
「ご無沙汰…しております…ペンドラさん。」
私の足ほどの身長をした、小さな少女が私を見つける。しかし、私よりも何百歳も年上で、ここの副局長だ。魔族的な身体的特徴は無く、見た目は9歳ほどの人間の少女だが、実際は魔族でも最高位の力を持つ高等種族だ。ただ、
「久し振りー!こっち来てー!」
性格も、可愛らしい少女の如く無垢なので、格式と実力が符号しないのだが。
「一年もどこにいたのー?風邪でも引いちゃったのー?」
「少し、調子が悪かっただけです。それより、局長はどこでしょうか?」
「ん…今、ご飯の時間だよ。お姉ちゃんに何か御用?」
「はい、突然街に現れた天使について聴きたいのですが。」
「ええ!?天使さんが!?何で!?」
「?」
副局長とはいえ、界間門の管理は彼女の役目のはず。ペンドラさんが知らないとなると…
「お…お姉ちゃーん!お姉ちゃーん!」
ペンドラさんがここまで慌てるのは、ぬいぐるみを無くした時か、迷子になった時くらいだ。ただ事では無いのは明白だ。
「スウウウウゥゥゥ・・・」
ペンドラさんの呼びかけに答える様に、天井から紫霧が降りて来た。
「どうしたの?また人形でも無くしたの?」
「ご無沙汰しております。ルドラさん。」
「んん?やあ、おひさしぶり。」
ペンドラさんよりは成長した様に見えるが、それでも私よりも小さな少女の形を、その紫霧は形作った。ルドラさんはここの局長だ。
「ん?」
「それでルドラさん、聞きたいことが…」
「素晴らしい…」
「あの…?」
「その斬新なスタイル!素晴らしい!」
「きょ…局長…?」
「包帯にゴシック調のスカートと言う、絶妙な装飾と非装飾の狭間を見事についた革命的なコーディネーティングスタイル!ぜひ内の事務所で…」
「ルドラ局長!」
「は!い…いけない!つい熱が入ってしまった。」
やはり、コートくらい羽織っておくべきだったか。少しずつ、局長と言う性格を思い出してくる。すると、ペンドラさんが嬉しそうに牛を丸々一頭を担いで来た。
「見て見てー!またお供え物が来たよー!」
「ええー!またー?もう食べきれないよ…悪魔崇拝者大杉…あ。そうだ。」
局長は私の顔を、上目遣いで凝視する。そんな英雄か何かを見るような目で見られても…
「ねえ、これ、要る?」




